はぴテク相談室:尊敬する先輩に反対されて、自信がなくなった話
はぴテクさん、聞いてください。先月、初めて大きな企画を任されたんです。自分なりに必死で考えて、けっこう良い案ができたと思ってたんですよ。
おお、いいですね。初めての大役だ。
それで、発表前に、尊敬している先輩に見てもらったんです。そしたら「うーん、ここは違うんじゃない?」って、けっこう反対されちゃって。
なるほど。それでどうなりました?
それが変な話なんですけど…先輩の指摘には、全部反論できるんです。頭の中では「いや、そこはこういう理由でこうしたんです」って言える。なのに、反対されたってだけで、急に自分の案に自信がなくなっちゃって。発表するのが怖くなってるんです。私、メンタル弱すぎですかね。
いえいえ、それ、弱いんじゃないんです。実はリーダー育成の研究で、まさにその状態がちゃんと説明されてるんですよ。「大人の発達段階」という考え方なんですけどね。
大人の発達段階?大人になっても発達するんですか?
するんです。体じゃなくて「ものの捉え方の枠組み」が、ですね。ざっくり3段階ありまして。1つめは「依存段階」。周りにどう思われるかが心の拠り所で、みんなの承認で動く段階。2つめが「移行段階」。自分の考えは作れるんだけど、誰かのお墨付きがないと自信が持てない段階。3つめが「自立段階」。自分の信念で堂々と動ける段階です。
…私、思いっきり2つめですね。自分の案はある。でも先輩のハンコがないと不安。
ふふ、気づきましたね。でもね、これは恥ずかしいことじゃなくて、順調に育っている証拠なんです。研究によると、組織のリーダーの大半は1つめと3つめの間のどこかにいるそうですから。しかもあなたは「反論できる」ところまで来てる。自分の考えはもう育ってるんです。あとは、それを承認なしで使う練習が残ってるだけ。
練習…って、どうすればいいんですか?根性で乗り切るとか?
根性は要りません(笑)。その研究が面白いのは、「1人で頑張るな」って言ってるところなんです。人が育つには「ホールディング環境」、つまり不安なときでも安心して悩みと向き合える、抱えてくれる環境が必要だと。で、それは1人の完璧なメンターじゃなくて、複数の支援者のネットワークで作るのがいい、というんですね。
複数…。私、その先輩一筋だったかもしれません。相談相手として。
そこ、実はポイントでしてね。1人に頼りきると、その人に反対された瞬間、世界が終わった気がしちゃう。でも支援者が3人いれば、1人の反対は「3分の1の意見」になるんです。
たしかに…!先輩の言葉が「絶対」になってました。
それとね、支援する側にもコツがあるとされてるんです。あなたのような移行段階の人に必要な支援は2種類。1つは「確証」、つまり「あなたの案、いいね」って承認してあげること。もう1つが「矛盾」といって、あえて反対して、承認なしでも動けるかを試すことなんです。
えっ。じゃあ先輩の反対って、もしかして悪いことじゃない…?
そうなんです。むしろ絶好の練習問題なんですよ。「尊敬する人に反対されても、自分の案で行けるか」って。この研究では、反対されてもなお自作の案で行動できたとき、人はぐっと次の段階に進む、とされています。
うわー、そう聞くと景色が変わりますね。逃げたら練習問題を白紙で出すようなものか…。
いい表現ですね(笑)。あともう1つ、実践的なコツを。相談相手を複数持ったら、それぞれの人に「他の人からはこう言われてるんです」って共有するといいそうです。
え、それ言っていいんですか?なんか告げ口みたいで気が引けます。
逆なんです。支援者同士って、普通お互いを知らないでしょう?だから黙ってると、Aさんは慰め役、Bさんも慰め役、みたいに支援がかぶったり、逆に正反対のアドバイスで引き裂かれたりする。あなたが「先輩には反対されてて、でも自分では行けると思ってる」と別の人に話せば、その人は「じゃあ私は背中を押す役をやろう」と、自然と役割を調整できるんです。
なるほど、私がハブになるんですね。支援って、受け身で待つものだと思ってました。
そこがこの研究の一番いいところでね。育ててもらうんじゃなくて、育つ環境を自分で編集する、という発想なんです。
よし…。まず、発表はやります。先輩の指摘には、考え抜いた反論をちゃんと添えて。それから、相談相手をあと2人くらい増やして、それぞれに状況を共有してみます。
完璧です。ひとつ予言しておくと、承認なしで一歩踏み出す経験を何回か積むとね、いつか「反対されたけど、まあ私はこう思うから」って自然に言える日が来ます。それが3つめの段階の入り口ですよ。
その日が来たら、先輩に感謝しなきゃですね。反対してくれてありがとうって(笑)。ありがとうございました!
■ 今日のまとめ
- 「自分の案はあるのに、反対されると自信が消える」のは弱さではなく、大人の発達の途中段階(移行段階)にいるサイン。反対されても自作の案で動けた経験が、次の段階への扉になる
- 支えは1人の完璧なメンターより、複数の支援者のネットワークで。1人に頼りきると、その人の反対が「絶対」になってしまう
- 支援者それぞれに「他の人からはこう言われている」と共有すると、支援者同士の役割が自然と調整され、支援の質が上がる
■ 出典・注意事項
- Ghosh, R., Haynes, R. K., & Kram, K. E. (2013). Developmental networks at work: holding environments for leader development. Career Development International, 18(3), 232-256.
- 本論文は理論研究(命題の提案)であり、実証データによる検証はこれからの段階です。対話中の「こうすれば育つ」という部分は、理論に基づく仮説としてお読みください。
- 発達段階は人の優劣ではなく、また同じ人でも場面によって揺らぐことがあるとされています。段階のラベルで人を評価する使い方は本来の趣旨に反しますのでご注意を。
論文本体の紹介はこちら😊
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