2026.08.22

はぴテク相談室:三日坊主と、仕組みと、自分を責めない話

相談者

はぴテクさん、聞いてください。今年こそ運動しようと思ってジムに入ったのに、もう2か月行ってないんです。毎年これで。自分、ほんと意志が弱くて。

はぴテクさん
はぴテクさん

毎年チャレンジしてるだけで立派ですよ。でも「意志が弱い」は一回置いておきましょう。最近の行動変容のレビュー論文(Voelkel, Milkman & Duckworth, 2027)が、まさにそこを整理してくれてるんです。

相談者

行動変容のレビュー論文?

はぴテクさん
はぴテクさん

数十年分の研究を1本にまとめた論文です。結論から言うと、行動を変えるには「やる気」「実行」「習慣」の3段階があって、つまずく段階によって効く対処法が違う。だから「意志」でひとまとめにすると、何が起きてるか見えなくなるんです。

相談者

3段階か。私はどこでつまずいてるんだろう。

はぴテクさん
はぴテクさん

一緒に見ていきましょう。まず「やる気」段階。ジムに入った時点で、運動したい気持ちはあったわけですよね?

相談者

ありました。健康のためにやった方がいいとは、ずっと思ってます。

はぴテクさん
はぴテクさん

じゃあ「やる気」はある。論文によれば、やる気があっても行動に移るのは半分くらい、というメタ分析があるんです(Webb & Sheeran, 2006)。意図を1動かしても行動は0.5ちょっとしか動かない。つまり「決めたのにやらない」は人間の標準仕様なんですよ。

相談者

えっ、みんなそうなんですか。ちょっと安心しました。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうです。で、論文は「実行」段階のつまずきを3つに分けてます。「忘れる」「面倒」「我慢できない」。どれが近いですか?

相談者

うーん。仕事終わりに「疲れたし今日はいいか」ってなって、そのまま忘れていく感じです。

はぴテクさん
はぴテクさん

「面倒」と「忘れる」の合わせ技ですね。まず「忘れる」対策として、論文でいちばんシンプルで効くとされているのがリマインダー。スマホの通知とかです。ただ面白いのは、人はリマインダーの効果を過小評価していて、使わなさすぎる、って書いてあるんです。

相談者

通知くらいで変わるのかなって、確かに思ってました。

はぴテクさん
はぴテクさん

38件の実験をまとめると、ちゃんと効果が出てます。もうひとつ効くのが「もし〇〇なら、△△する」と先に決めておく方法。実行意図っていうんですけど、「もし18時に疲れてたら、家に帰らず駅のジムに直行する」みたいに、状況と行動をセットにしておく。

相談者

先に決めておくだけ?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。てんかんの患者さんに「何時に、どこで、何をしたあとに薬を飲む」と決めてもらっただけで、予定通りの服薬が23.5ポイント増えたという実験があります(Brown et al., 2009)。その場で考えると「疲れたし」が勝つ。先に決めてあると、考えずに動ける。

相談者

なるほど。「疲れたら帰らずジム」って、朝のうちに決めとく感じですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう。次に「面倒」。論文のキーワードは「最小努力の道」。人は一番楽な道を選ぶようにできてる。だから根性で逆らうんじゃなくて、楽な道の先にジムを置く。家にマットを敷いておく、ジムウェアのまま出勤する、とか。

相談者

ウェアのまま出勤は勇気いるな(笑)。でも、ジムが会社から遠いのは確かに面倒の原因かも。

はぴテクさん
はぴテクさん

それ、大事な気づきです。論文には「軽すぎる工夫は効かない」という話もあって、不健康なメニューを別冊子に隠すと効いたけど、2ページ目に移しただけでは効果ゼロだった(Wisdom et al., 2010)。面倒を減らすなら、思い切って減らす方がいい。

相談者

じゃあ、会社の近くのジムに変えるとか。

はぴテクさん
はぴテクさん

いいですね。そして3つめ「我慢できない」。今の楽しさと将来の健康なら、今の楽しさが勝つのが人間。これには「楽しさとセットにする」のが効きます。ジムでしか聴けないオーディオブックを渡したら、ジム通いが27%増えた実験があります(Milkman et al., 2014)。

相談者

ジムでだけ見られるドラマ、とか決めればいいのか。それは行けそう。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう。ただ正直に言うと、その実験、感謝祭の休暇で効果が消えてるんです。論文でも「休暇1回でジム習慣は消える」と何度も出てくる。だから次は「習慣」段階の話。

相談者

やっぱり続かないんじゃないですか…。

はぴテクさん
はぴテクさん

ここが今日いちばん伝えたいところ。論文に意外な実験があって、「毎日同じ時間にジム」より「ばらばらの時間にジム」の方が、介入が終わったあとも習慣が残ったんです(Beshears et al., 2021c)。

相談者

えっ、習慣って決まった時間にやるものじゃないんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そう思われてきたんですけど、決まった時間にしか動けない習慣は、予定が崩れたとき一緒に崩れる。「朝でも昼でも夜でも、空いたとこで行く」と決めておく方が、崩れにくい。あと「週に1回は休んでもカウントに入れない」っていう予備日を作るのも、1回の失敗で全部投げ出すのを防ぐそうです(Sharif & Shu, 2021)。

相談者

私、1回サボると「もうダメだ」ってなって、そこから行かなくなるんです。まさにそれ。

はぴテクさん
はぴテクさん

それ、論文で「どうにでもなれ効果」って名前がついてます(Cochran & Tesser, 1996)。名前がついてるくらい、みんなそうなる。だから予備日を最初から設計に入れておく。失敗込みの計画にしておくんです。

相談者

なんか、全部「自分を鍛える」じゃなくて「仕組みを変える」話なんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そこが幸せの観点でも大事で。幸せの4つの因子の「やってみよう因子」って、根性で育つものじゃなくて、小さな「できた」が積み重なって育つんです。毎回「意志が弱い」と自分を責めていたら、「できた」が貯まる前に自己効力感、つまり「自分にはできる」という感覚がすり減っていく。

相談者

確かに、毎年の失敗で「どうせ自分は」が強くなってました。

はぴテクさん
はぴテクさん

論文も最後に「最近の厳密な研究ほど効果は小さく、行動変容はやっぱり難しい」と正直に書いてるんです。難しいのが当たり前。だから自分を責めるんじゃなくて、どの段階でつまずいたかを見て、仕組みをひとつ直す。それだけで十分前進ですよ。

相談者

じゃあ今日決めるのは、「疲れてたら会社近くのジムに直行」「ジムでだけ見るドラマ」「週1回は休んでOK」。この3つですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

完璧です。続かなかったら、それは失敗じゃなくて「次はどの段階を直すか」の情報。そう思えたら、もう半分成功してますよ。

相談者

ありがとうございます。なんか、初めて「続けられそう」って思えました。

■ 今日のまとめ

  • 続かないのは意志の弱さではなく、「やる気・実行・習慣」のどの段階でつまずいているかの問題。決めても動けないのは人間の標準仕様
  • 効くのは根性ではなく仕組み。「もし〇〇なら△△する」と先に決める、面倒を思い切って減らす、楽しさとセットにする
  • 習慣は「きっちり」より「ゆるく柔軟に」。時間を固定しない、予備日を最初から入れる。失敗込みの設計が、自分を責めずに続ける一番の近道

■ 出典・注意事項

  • Voelkel JG, Milkman KL, Duckworth AL. 2027. Behavior Change. Annual Review of Psychology 78:5.1–5.28. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-031626-111545

  • 本稿は「Review in Advance」版(公刊前)に基づくため、最終版で内容が変わる可能性があります

  • 文中の数値は論文に記載された個別研究やメタ分析の推定値で、著者自身が「桁の目安」として扱うよう注意しています。同じ効果が誰にでも出ることを保証するものではありません

  • 対話中の相談内容は架空のもので、特定の個人の事例ではありません

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

論文の紹介はこちら😊
行動を変えるには「やる気・実行・習慣」の3段階がある
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-08-22-1787395800/

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