2026.09.02
「誰かのため」の仕事が、人生の幸せにつながる 〜天職を超えた、'大いなる天職'〜
仕事の動機と人生の充実(フローリッシング)についての、スペイン・アメリカの最新研究
世界各地の働く人536人(会社員437人+自営業99人)のデータから調査頂きました。
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「あなたは何のために働いていますか?」
この研究では、仕事の捉え方を4タイプに分けています。
①単なる職(ジョブ):お金や生活のため
②キャリア:スキルアップ、承認、昇進のため
③天職:誰かの役に立つため、世の中を良くするため
④大いなる天職:自分より大きな何か(世界から呼ばれる、みたいな。)とのつながりの中で働く
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そして、それぞれのタイプが、
幸福・健康・人生の意味・人格・人間関係を合わせた「人生全体の充実度」と
どう関係するかを調べました。
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結果としては、
①単なる職(ジョブ)
は、人生の充実と関係なし。
②キャリア
も、意外なことに関係なし。(成長とか昇進とか、頑張ってるのに。。。)
③天職
は、めっちゃ関係あり。4つの中で一番強い。幸せに効く。
④大いなる天職
も、③ほどじゃないけど、しっかり関係あり。
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ポイントは、
「自分のため」(お金、スキル、承認)にとどまっているうちは、仕事は人生の幸せに届かない。
「誰かのため」に踏み出した瞬間から、仕事が人生の幸せと結びつき始める。
ということ。
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これ、天職の人はお金や成長を気にしない、という話ではないんです。
お金も成長も含んだうえで、さらに「誰かの役に立っている」感覚があるかどうか、が違いを生む。
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・個人視点で言えば、今の仕事を「誰の役に立っているか」で捉え直してみるだけで、幸せの入口が開くかも。
・会社視点で言えば、給料や昇進制度だけ整えても、社員の人生は豊かにならない。「うちの仕事は誰を幸せにしているか」を語れることの方が大事。
という感じ😊
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ただし、回答者はヨーロッパと南北アメリカがほとんどで、アジアは2%だけ。日本でも同じ結果になるかは、これからの研究待ちですね。
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Motivations and Meaningful Work: A Core Foundation of Virtuous Fulfillment in Life, or Flourishing
動機と意味ある仕事:人生の徳ある充実(フローリッシング)の中核基盤
Rita Jácome(IECO研究所、スペイン), Joaquin Aldas-Manzano(バレンシア大学、スペイン) & Matthew T. Lee(ハーバード大学、アメリカ)
Humanistic Management Journal, 2026/8/29
https://doi.org/10.1007/s41463-026-00230-9
仕事と人生の「新しい地図」 科学が証明した、働くことの本当の意味と『豊かな人生』へのコンパス 現代のパラドックス:私たちはかつてなく働き、かつてなく疲弊している 5.3/10 世界中の人々の「人生の評価」の平均スコア。 10%未満 現在の仕事が「幸福いい(熱意を持って取り組んでいる)」と答える人の割合。 仕事は人生の大部分を占めるのに、なぜそれなら多くの人が「働きがい」を見失っているのでしょうか? An Gallup Notebook 目的地は「お金」ではなく、人生の開花(Flourishing) 幸福と生活の満足 意味と目的 心身の健康 人格と美徳 豊かな人間関係 個人の幸せを追い求めるだけではなく、この5つの要素が満たされた状態(ウェルビーイングの北極星)こそが、人間の真のゴールです。 私たちが迷子になる理由:不完全な地図 ルートA:仕事=単なる 「お金の交換ツール」(Job) ルートB:仕事=「ステータスと 承認の獲得」(Career) ほとんどの人は、この2つのルートしか書かれていない地図を使って毎日の仕事をナビゲートしています。しかし、この地図には「重要な高地」が欠落しています。 働く意味の4つの次元(The 4 Levels of Work) Level 4: 大いなる天職(Spiritual Calling) 精神的・宇宙的な目的との繋がり Level 3: 天職(Calling) 他者への貢献と道徳的価値 Level 2: キャリア(Career) 自己成長とステータス Level 1: ライスワーク(Job) 物理的な報酬と安全 心理学と哲学の融合から生まれた新しいモチベーションの地図。 私たちは、働き方をこの4つの標高のどこに設定するかを選ぶことができます。 Gemma Notebook Base Camp Level 1: ライスワーク(Job)—取引としての仕事 Diagnostic Details 動機のベクトル:「受け取る」(Receiving) 求める価値:物理的な有用性(お金、安全性、生活の維持) 仕事を「生活を維持するための手段」としてのみ捉える状態。適正な給与であっても、この動機だけで働くと、仕事は「自由な時間を買い取るために支払う対価」に過ぎなくなります。 Level 2: キャリア(Career)— 自己成長としての仕事 Diagnostic Details 動機のベクトル:「達成する」(Achieving) 求める価値:心理的な満足感(スキル向上、 承認、昇進、自尊心) お金のためだけでなく、自身の能力を試 し、評価を得るために働く状態。素晴らし い動機力ですが、焦点は依然として「自分自 身の成長と利益」に向いています。 Steep Ascent Gemesis Notebook Level 3: 天職(Calling)— 他者への奉仕としての仕事 Diagnostic Details 動機のベクトル:「与える」(Giving) 求める価値:道徳的・倫理的な善(思いやり、理解、社会への貢献) 自分の才能を使って、他者の人生を良くし、 世界に意味のある足跡を残そうとする状態。 日々の業務が「誰かのためになっている」と いう実感に満ちています。 High Plateau Genius Notebook Level 4: 大いなる天職(Spiritual Calling)―崇高な目的への応答 Diagnostic Details 動機のベクトル: 「応答する・返す」(Returning) 求める価値: 精神的・超越的なつながり(大いなるもの、自然、神、宇宙への畏敬と感謝) 自分の仕事が、個人の枠を超えた「大いなる目的」や「宇宙の調和」の一部であると深く信じる状態。生命の贈り物に対する感謝として仕事に取り組みます。 The Summit どの地図が「最高の人生」に辿り着くのか? Level 1 (Job) Level 2 (Career) Level 3 (Calling) Level 4 (Spiritual Calling) 動機の焦点 自分 (自己保存) 自分 (自己実現) 他者 (社会への貢献) 超越 (大いなる目的) 求めるもの お金・安全 地位・スキル 意味・道徳 調和・感謝 世界中のビジネスパーソンと起業家500名以上を対象にした大規模な調査により、 「どの働き方が、人生の開花(Flourishing)に直結するのか」が統計的に 明らかになりました。 © Genius Notebook 衝撃の事実:「キャリア」の追求だけでは、人生は豊かにならない Work Level 1 & 2: 相関なし (No Impact) Flourishing (北極星) Level 3 & 4: 強い正の相関 (Massive Positive Impact) データが示す真実は残酷かつ希望に満ちています。「ライスワーク」はもちろん、「キャリア(自己成長・出世)」をいくら追い求めても、人生の幸福度や充実感には統計的影響を与えませんでした。 人生を開花させる唯一の架け橋は、仕事を「他者への奉仕(天職)」へ昇華させることだったのです。 なぜ「キャリア(自己実現)」は頭打ちになるのか? Career の限界(閉じたループ) ステータス 獲得 Closed Loop さらなる ステータス 燃え尽き (Burnout) Calling の無限性(開かれた螺旋) 無限の開花 (Flourishing) さらに与える 能力の拡大 他者へ 与える 意味の発見 「心地よさ」や「個人の成長」を求める動機(Career)は素晴らしいものですが、最終的には自分の中だけで完結するため、限界(燃え尽き)が求まります。 一方、「他者へ与える」道徳的な動機(Calling)は、無限のエネルギー源となります。 転職ではなく「天職」への視点シフト(ジョブクラフティング) 「天職」とは、特定の特別な職業(医者やボランティアなど)を指すのではありません。 今の自分の仕事が「誰の痛みを和らげ、誰の喜びに騎がっているのか」というレンズを通して仕事の目的を再定義すること。これが、どんな仕事も「天職」に変える魔法です。 意味と豊かさのエコシステム 高次の動機 他者へ与え、貢献 しようとする意志。 意味のある 仕事 毎日のタスクに貢 献と喜びを見出す。 人生の開花 心身の健康、幸福、 豊かな人間関係の 実現。 他者への 愛と実践 深くされた個人が、 さらに良い職場と仕 事を生み出す。 働く動機が変われば、仕事の意味が変わる。仕事の意味が変われば、人生が開花する。開花した人生は、さらに良い仕事を生み出します。 次の一歩を踏み出すために 科学が示す通り、私たちが何のために働くか(動機)が、 私たちがどう生きるか(人生の開花)を決定づけます。 あなたは明日、どの「地図とコンパス」を使って、 自分の仕事に向き合いますか?
【背景】
■ 1. 出発点:人類の多くは「thriving(生き生きと栄えている)」状態にない
・ギャラップの160カ国調査によると、人々の人生評価は平均5.3点(10点満点)で、「素晴らしい仕事」(仕事に没頭し、生き生きしている状態)に就いている人は10%未満(Clifton, 2022)
・その大きな原因の一つが「職場の劣悪な条件」だとされる(Ritchie-Dunham, 2025)
・つまり「仕事の質」が人生の質を左右している、というのが議論の出発点
▼ 人間中心経営(Humanistic Management)という立場
・組織とは「人の共同体」であり、経済的成果だけでなく「人間の尊厳」と「人間のフローリッシング」を促進すべきだとする考え方(Pirson, 2017, 2022)
・仕事は単にお金を生む手段ではなく、人が潜在能力を発揮し、人として成長し、公共善に貢献し、意味ある目的を経験する場である、と捉える
・この論文全体はこの立場に基づいている
▼ ESH(Ecosystem of Sacred Hospitality:聖なるもてなしの生態系)
・「あらゆる関係において、活力があり、相互に有益で、健全な関わり方が支配的な社会的容器」と定義される(Lee et al., 2025a, p. 9)
・搾取ではなく、各人の尊厳を尊重する「深い共有目的」が組織を動かしている状態
・ただしこうした組織はまだ稀で、大規模には実現できていない
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■ 2. 「フローリッシング」とは何か:幸福より広い概念
▼ 幸福・ウェルビーイングの限界
・幸福やウェルビーイング(心身が良好な状態)は人生の大事な目標だが、「自分のためだけに他者を犠牲にして追求する」と問題が生じる
・例:健康を犠牲にして成果を追う仕事中毒、集団レベルでは内集団の物質的快適さが外集団への敵意や環境負荷を生むこと(Lee & Datta, 2025; Raworth, 2018)
・そこで各ウェルビーイング領域を統合し調和させる概念として「フローリッシング」が注目されている(Lomas et al., 2025; Ritchie-Dunham et al., 2024; Lee et al., 2025b)
▼ VanderWeeleによるフローリッシングの定義
・フローリッシングとは「complete well-being(完全なウェルビーイング)」であり、以下の5つの中核領域からなる(VanderWeele, 2017)
・幸福と人生満足
・心身の健康
・意味と目的
・人格と徳
・親密な人間関係
・これらは「他の目的の手段」ではなく「それ自体が目的」として誰もが望むもの
・この5領域を測る10項目の尺度が「Flourishing Index(FI)」で、これに「経済的・物質的安定」を加えたものが「Secure Flourishing Index(SFI)」
▼ なぜ「一緒にしか」フローリッシュできないのか
・フローリッシングには徳(VanderWeele, 2017)、時間を超えた持続可能性(Lomas et al., 2025)、システム間の相互作用(Lee & Mayor, 2023)が含まれる
・したがって「限られた幸福は一人でも追求できるが、フローリッシングは他者と共にしか実現できない」という主張につながる
・自然界や(信仰者にとっては)聖なる秩序まで含めた「生態系全体のフローリッシング」という広い枠組みも提案されている(Lomas et al., 2025; Ritchie-Dunham et al., 2024)
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■ 3. 職場とフローリッシングの関係:これまでの実証研究
▼ 人生のウェルビーイングと職場のウェルビーイングは互いに影響する
・縦断研究(同じ人を時間を追って調べる研究)により、人生満足と仕事満足、人生の幸福と職場の幸福は互いに関連することが示された(Weziak-Bialowolska et al., 2020)
・ただし一方向のものもあり、「人生の意味」は「仕事の意味」に影響するが、その逆はなかった
▼ 職場の「思いやりの風土」がフローリッシングを高める
・職場の「心理的コンパッション風土」(メンバーが互いの苦しみに気づき応答していると感じられる雰囲気)はフローリッシングと正の関連(Nolan et al., 2022)
・「心理的ケアリング風土」(組織が自分を気にかけてくれていると感じられる雰囲気)でも同様(Weziak-Bialowolska et al., 2023; Lee & Wellinghoff, 2024も参照)
▼ 「フローリッシングのビジネスケース」は強い
・米国上場企業1,782社(従業員調査100万件)を分析した研究で、従業員ウェルビーイングは企業の収益性や企業価値と関連していた(De Neve et al., 2024)
・感情的健康や社会的つながりが高いと、その後の「仕事中の注意散漫」が減る(Fung et al., 2024)
・社会的つながりが良いと、うつ病や不安症と診断されるリスクが下がり、医療保険コストにも影響する(Weziak-Bialowolska et al., 2022)
・また、従業員ウェルビーイングと組織成果の関連は他の研究でも示されている(Huettermann & Bruch, 2019; Taris & Schreurs, 2009)
▼ 著者たちの問い
・「フローリッシングは会社の利益になる(business case for flourishing)」は分かった
・では逆に「会社で働くことは人をフローリッシュさせるのか(flourishing case for business)」は成り立つのか?
・著者たちは「適切な動機があれば成り立つ」と考え、この論文の主題に入っていく
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■ 4. 理論の核:Guillénの「動機の地図」
この論文の理論的土台は、2023年に急逝したバレンシア大学のManuel Guillén教授の著書(Guillén, 2021)にある動機づけの類型論です。論文はGuillén教授に捧げられています。
▼ 従来の動機理論の限界
・心理学では長らく、動機を「外発的動機」(報酬など外から受け取るために動く)と「内発的動機」(達成や成長それ自体のために動く)の2つで捉えてきた
・Herzberg、Maslow、McClelland、Alderfer、Ryan & Deciらの理論がその代表(Guillén, 2021; Xipell-Font et al., 2024)
・しかしこれでは「物質的なもの」と「快いもの」の2つの善しか扱えず、人間を自己利益中心の存在として描くことになる
・実際には、富や技能はより広い目的の手段として、心理的満足や承認も楽しみのために求められる。それ自体が究極目的ではない
▼ 追加すべき2つの善:道徳的善と霊的善
・アリストテレスの立場からは「道徳的善」(それ自体の価値のために追求されるもの:正義、尊敬、徳など)を含めなければ動機の理論として不完全(Guillén, 2021)
・さらに霊性(スピリチュアリティ:生死の神秘、自分より大きな何かとのつながり)が人間行動に影響することも研究で示されている(Pargament & Mahoney, 2005; Saucier & Skrzypińska, 2006; Pargament, 2013)
・Maslow自身も晩年、自己実現の先にある「自己超越」を論じていた(Maslow, 1971)
・こうして「善の種類」は、有用(物質的)・快(心理的)・道徳(倫理的)・霊的の4段階になる
▼ 追加すべき2つの動機:「与える」と「返す」
・「受け取る」(外発)と「達成する」(内発)だけでなく、「与える」ことは人間行動の普遍的で根深い動因であることが研究で一貫して示されている(Benkler, 2011; Grant, 2013)
・Guillénはこれを「超越的動機」(transcendent motivation:自我を超え、他者や大きな目的のために動く動機)として追加(Maslow, 1971; Melé, 2003; Guillén, 2021)
・最後に「返す」動機として「宗教的動機」を追加。神から受けた賜物を賛美や奉仕として返す、という捉え方
・宗教の定義は論争があるが(Nongbri, 2013)、Guillénは世界人口の過半を占める三大一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)を主に想定した。他の宗教伝統への適用については別途指針がある(VanderWeele et al., 2021; Crabtree et al., 2024)
▼ 4×4=16の動機マップ
・善の4段階(有用・快・道徳・霊的)×動機の4種類(受け取る・達成する・与える・返す)で16の動機ができる
・例:有用×受け取る=生計、快×達成する=満足(成長・自尊心)、道徳×与える=理解(慈愛・優しさ)、霊的×返す=賛美(讃美・栄光)
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■ 5. 仕事の4つの意味:job・career・calling・spiritual calling
▼ 「意味ある仕事」研究の背景
・仕事は人のアイデンティティを形づくり、人間の尊厳の承認と保持に深く結びついている(Bolton, 2007; Sison et al., 2016; Fontrodona & Melé, 2022)
・仕事は意味・目的・アイデンティティ・帰属感の源になりうる(Michaelson et al., 2014)
・したがって仕事は、金銭や昇進を超えた動機に根ざして行われる必要がある(Bunderson & Thompson, 2009)
・「仕事の意味」と「意味ある仕事」は文献上ほぼ同じ意味で使われる(Rosso et al., 2010; Xipell-Font & Méndiz-Nogero, 2024)
・哲学・経済学・社会学・組織心理学の分析を総合すると、仕事は「目的に満ち、成長を可能にし、組織をより人間的にする」とき、より意味あるものとして経験される(Bailey & Madden, 2017; Pratt & Ashforth, 2003; Steger et al., 2012; Laaser & Bolton, 2022; Haarjärvi & Laari-Salmela, 2022)
▼ 古典的な3分類:job・career・calling
・仕事への向き合い方を「job(生計のための仕事)」「career(出世・成長のための仕事)」「calling(天職)」の3つに分ける枠組みは古典的(Bellah et al., 1985; Wrzesniewski et al., 1997; Rosso et al., 2010)
・Guillénは16の動機マップからこの3つを導き直し、さらに「spiritual calling(霊的天職)」を加えて4分類にした(Guillén, 2021)
▼ 4つの意味の定義(Guillén, 2021)
・job:収入や休息など、有用な善を得る手段としての仕事。これだけだと仕事は「他の善を得るために払う代価」になり、人は仕事の外に充実を求めるようになる(p. 185)
・career:技能習得、名声、承認、昇進の手段としての仕事。「達成感、熟達、地位、組織内での昇進への道」(p. 191)
・calling:仕事が自分のアイデンティティの一部になり、才能や能力を「充実感、他者への利益、日々の仕事がもたらす目的意識」に向ける(p. 191)。社会に意味ある足跡を残し、世界をより良くすることが究極の目的
・spiritual calling:仕事を、エネルギー・宇宙・高次の存在・宗教・神といった深い確信とつながる手段と捉える。「その源が高次にあり、霊的・超越的・超自然的な起源をもつ天職」(p. 193)。こうした確信は仕事に高い目的意識を与える意味の源になる(Rosso et al., 2010)
▼ 測定方法の先行研究
・16の動機と4つの仕事の意味を結びつける対応関係は、Guillén, Ferrero & Hoffman(2015)に従う
・job=有用×外発
・career=快×外発、有用×内発、快×内発
・calling=道徳×外発、道徳×内発、道徳×超越、有用×超越、快×超越
・spiritual calling=霊的×超越、霊的×外発、霊的×内発、宗教的
・この尺度の信頼性は先行研究で確認済み(Xipell-Font et al., 2024; Xipell-Font & Méndiz-Noguero, 2024)
・フローリッシング尺度(FI/SFI)の信頼性も複数の国で確認済み(Weziak-Bialowolska et al., 2019; Sattler et al., 2023; Gonçalves et al., 2025; Ha et al., 2026; Zambelli et al., 2025)
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■ 6. 天職(calling)研究の先行知見
▼ 天職と良い結果の関連
・天職を感じている人は、仕事の意味、キャリアへのコミットメント、仕事満足、人生の意味、人生満足が一貫して高い(Duffy & Dik, 2013)
・ただし「天職だと感じる」だけでなく「実際に天職を生きる」ことが重要
・「Work as Calling Theory(WCT)」は、その理由を説明する理論で、ジョブ・クラフティング(自分で仕事を工夫して作り変えること)や機会へのアクセスの役割を示した(Duffy et al., 2018)
・WCTの実証研究では、人と環境の適合、キャリアコミットメント、意味ある仕事の存在が「感じる天職」から「生きる天職」への移行に重要だった(Duffy et al., 2019)
・「スピリチュアル・リーダーシップ・モデル」は、マインドフルネスや内省の実践が信仰・希望・愛を育み、帰属感と目的意識の基盤になることを示す(Fry et al., 2026)
▼ この論文に最も近い先行研究(スペインの教員調査)
・career と calling は仕事への没頭(エンゲージメント)を高め、job は下げる(Xipell et al., 2024)
・calling は組織への帰属感を高め、job は下げる(Xipell-Font & Méndiz-Noguero, 2024)
・spiritual calling はフローリッシングを高め、job は下げる(Xipell-Font & Méndiz-Noguero, 2025)
・ただしこれらはすべて「教育業界のみ・スペインのみ・やや粗い動機分類」という限界があった
▼ その他の関連研究
・job/career/calling を直接扱った研究はあるが部分的(Wrzesniewski et al., 1997; Pitacho et al., 2021)
・霊的な仕事観の枠組みはあるが「善の理論」と結びついていない(Kalinowski et al., 2024)
▼ 研究ギャップ(この論文が埋めようとする空白)
・「4種の善×4種の動機」から4つの仕事の意味を実証的に導き、それがフローリッシングとどう関連するかを国際的・業種横断的なサンプルで調べた研究は、これまで存在しなかった
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■ 7. 以上から導かれる4つの仮説
・H1:job(有用な善を受け取る仕事観)は、意味・目的・人格・深い人生満足への道を提供しないので、フローリッシングとは無関係だろう
・H2:career(快い善を達成する仕事観)は、自尊心や熟達につながるので、フローリッシングと正の関連があるだろう
・H3:calling は、意味・目的・徳・人生満足と本質的に結びつくので、フローリッシングと正の関連があるだろう
・H4:spiritual calling も同様に、フローリッシングと正の関連があるだろう
▼ 結果の予告
・実際の分析では、H1は支持(jobは無関係)、H2は不支持(careerも無関係)、H3とH4は支持(callingとspiritual callingはフローリッシングと正の関連、特にcallingが最も強い)という結果になっています
【研究内容】
■ 1. 研究の狙いと4つの仮説(おさらい)
・問い:仕事を「どんな動機で捉えているか」は、人生全体のフローリッシング(幸福・健康・意味・徳・人間関係を含む「完全なウェルビーイング」)と関係するのか
・仕事の捉え方は4種類
・job:収入など有用な善を得る手段としての仕事
・career:技能・承認・昇進を達成する手段としての仕事
・calling(天職):他者や社会への貢献、道徳的な善を目指す仕事
・spiritual calling(霊的天職):神・宇宙・高次の存在とのつながりを感じる仕事
・仮説
・H1:jobはフローリッシングと無関係
・H2:careerはフローリッシングと正の関連
・H3:callingはフローリッシングと正の関連
・H4:spiritual callingはフローリッシングと正の関連
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■ 2. 調査対象とデータ収集
▼ 誰を調べたか
・「人間中心リーダーシップ・プログラム」の研修セミナーに参加した企業の管理職・一般社員、および自営業者
・組織を通じて質問票を配布する「有意抽出(目的に合った対象を選ぶ方法)」または「便宜抽出(協力を得やすい対象を選ぶ方法)」。無作為抽出ではない点に注意
・2021〜2022年に、従業員437名、自営業者99名、合計536名の回答を収集
・バレンシア大学の倫理委員会で審査免除の判定を受けている
▼ 回答者の内訳(Table 1)
・性別:男性55.8%、女性44.2%
・年齢:25歳未満8.8%、25〜34歳25.9%、35〜44歳25.6%、45〜54歳28.4%、55歳以上11.4%
・雇用形態:自営業18.5%、被雇用81.5%
・地域:ヨーロッパ44.0%、中南米34.8%、北米15.4%、アフリカ3.8%、アジア2.1%
・つまり「国際的」ではあるが、欧米・中南米中心で、アジアはごくわずか。日本人にとってはここが読み解きのポイントになります
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■ 3. 何をどう測ったか
▼ 仕事の4つの意味(動機)の測定
・0(全くそう思わない)〜10(強くそう思う)の11段階で、各動機に関する質問に回答
・Guillén, Ferrero & Hoffman(2015)に従い、16種類の動機(「有用・快・道徳・霊的」の4つの善×「受け取る・達成する・与える・返す」の4つの動機)を、次のように4つの仕事の意味にまとめた
・job=有用×外発(生計・安全のために働く)の1因子
・career=快×外発、有用×内発、快×内発の3因子(承認・技能・成長のために働く)
・calling=道徳×外発、道徳×内発、道徳×超越、有用×超越、快×超越の5因子(尊敬・善さ・他者理解・奉仕・思いやりのために働く)
・spiritual calling=霊的×超越、霊的×外発、霊的×内発、宗教的の4因子(希望・賜物・聖性・賛美のために働く)
・これらは「2次因子」(複数の下位因子をまとめた上位の概念)として扱われる
▼ フローリッシングの測定
・VanderWeele(2017)の10項目版フローリッシング指標(FI)を使用
・5領域(幸福と人生満足、心身の健康、意味と目的、人格と徳、親密な人間関係)を各2項目、0〜10で回答
・「経済的・物質的安定」の領域は今回含めていない。理由は、これは「それ自体が目的」ではなく「他の目的を支える手段」として後から追加された領域だから(Weziak-Bialowolska et al., 2019)
・この尺度も先行研究で信頼性(クロンバックα=内部一貫性の指標、0.86〜0.89)が確認されている
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■ 4. 分析方法
▼ PLS-SEM(部分最小二乗法による構造方程式モデリング)
・構造方程式モデリング(SEM):複数の「目に見えない概念」(動機やフローリッシング)同士の関係を、質問票の回答から同時に推定する統計手法
・PLS-SEMはその一種で、「結果変数の分散をどれだけ説明できるか」を重視し、正規分布しないデータや複雑なモデルに強い(Hair et al., 2019, 2022)
・今回のモデルは「2次因子5つ、1次因子19個」という複雑な構造なので、この手法が適していると判断(SmartPLS 4を使用)
・有意性検定には「ブートストラップ」(データから何度も再抽出して推定のばらつきを調べる方法)を1万回実施
▼ 分析の前に確認した「モデルの健全性」
・信頼性と収束的妥当性(Table 2):各質問がきちんと同じ概念を測っているか。クロンバックα、合成信頼性、rho_Aはすべて0.70以上、因子負荷量(各質問と概念の結びつきの強さ)はすべて0.70以上、AVE(概念が質問の分散を説明する割合)は0.50以上。問題なし
・弁別的妥当性(Table 3):4つの仕事の意味がそれぞれ別の概念として区別できているか。Fornell-Larcker基準は満たしたが、HTMT比(概念同士の重なりを示す指標)でcareerとcallingの間だけが0.90をわずかに超え、「やや重なりがある」と注記されている
・共通方法バイアス:同じ人が同じ質問票で全部答えることで生じる歪み。VIF(分散拡大係数)が1.12〜1.40で、基準の3.3を大きく下回り問題なし(Kock, 2017)
・内生性:説明変数と誤差が相関して推定が歪む問題。ガウシアン・コピュラ法(Park & Gupta, 2012)で15通りのモデルを検討し、いずれも問題なし(Table 4)
・統計的検出力:536名・説明変数5つで99%(基準80%以上)。サンプルは十分
・多重共線性:説明変数同士が似すぎていないか。VIFは最大2.82で、基準の5を大きく下回る
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■ 5. 結果
▼ 説明力と予測力
・4つの仕事の意味でフローリッシングの分散の18.8%(調整済みR²)を説明。R²は「結果のばらつきをモデルがどれだけ説明できるか」の指標
・予測力の検証(新しいデータにも当てはまるか)
・CVPAT:モデルの予測誤差は「平均値を答えるだけの単純な予測」より有意に小さく、「線形回帰モデル」とは差がない(Table 6)
・PLSpredict:5領域すべてで予測力あり(Q²がプラス)、線形モデルより誤差が小さいのは5領域中2領域(Table 7)
・結論として「中程度の予測力」があり、過学習(そのデータだけに合いすぎて他に使えない状態)はしていない
▼ 仮説検定の結果(Table 5)
・H1 job → フローリッシング:β=−0.064、有意でない。仮説どおり「無関係」
・H2 career → フローリッシング:β=0.031、有意でない。仮説に反して「無関係」
・H3 calling → フローリッシング:β=0.321、p<0.01。仮説どおり「正の関連」で、4つの中で最も強い
・H4 spiritual calling → フローリッシング:β=0.163、p<0.01。仮説どおり「正の関連」
(βは標準化係数。−1〜+1の値で、絶対値が大きいほど関係が強い)
▼ 結果の要約
・「収入のため」「出世・成長のため」という動機は、それ自体では人生のフローリッシングと結びつかない
・「他者や社会への貢献」という道徳的な天職感が最も強く結びつき、「高次の存在とのつながり」という霊的な天職感もそれに続く
・論文の言葉では「超越的動機(自我を超えて他者や大きな目的に向かう動機)が仕事の意味に占める割合が増えるほど、フローリッシングへの影響が大きくなる」
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■ 6. 考察
▼ この研究の貢献
・16の動機と4つの仕事の意味を測る新しい尺度(Guillén, 2021)が、働く人のサンプルで使えること、そしてフローリッシングを予測することを示した
・従来の研究(教育業界・スペインのみ)を、国際的・業種横断的なサンプルに拡張した
・著者らの予備研究では、学生の「学業」にも同じ枠組みが使えそうだという
▼ 組織レベルの示唆:フローリッシングを促す組織構造
先行研究が示してきた「組織として整えるべきこと」が改めて整理される
・崇高な目的に貢献する意味ある仕事の機会(Laloux, 2014)
・協働の仕方に関する「暗黙の合意」の健全さ(Ritchie-Dunham et al., 2025)
・自律性・有能感・関係性という基本的欲求の充足(Ryan & Deci, 2000)
・自然を再生する実践(Raworth, 2018)
・思いやりのある構造と人間関係(Nolan et al., 2022; Trzeciak & Mazzarelli, 2019; Weziak-Bialowolska et al., 2023)
・官僚制の非人間化を最小限にすること(Hamel & Zanini, 2020)
▼ 個人レベルの示唆:今の仕事を「天職」として捉え直す
・組織改革と並んで、個人が「今の仕事」を道徳的天職や霊的天職として捉え直す余地がある
・天職は「発見し、育てる」ことができ、以前は仕事に意味を感じられなかった人でも可能(Dik & Duffy, 2015)
・「意味の危機」と言われる時代でも、「意味の4本柱:帰属、目的、物語、超越」は強化できる(Smith, 2017, p. 41)
・組織はこの4本柱を仕事の日常に組み込める。例としてスペインの企業Ilunion(障害者や脆弱な立場の人の雇用を事業の中心に据え「誰も排除しない、より良い世界をつくる」を目的とする)が挙げられている
▼ 宗教・霊性の役割
・世界各国のデータで、宗教的儀式への参加はフローリッシングの強い予測因子(VanderWeele et al., 2025)
・宗教は唯一の道ではないが、深い意味や道徳的・霊的な天職感を育みうる(Hernandez et al., 2011; Herzog et al., 2018; Putnam & Campbell, 2012; Yoon et al., 2015)
・今後の研究課題として、16の動機のうち「賛美(acclamation)」(人生という賜物を神に喜んで返すという動機)を質的インタビューで掘り下げることを提案
▼ 限界(著者自身が挙げているもの)
・サンプルが比較的小さく、ビジネス分野のみ
・横断研究(1時点の調査)なので「関連」は言えるが「因果」は言えない。因果には実験や縦断研究が必要(VanderWeele et al., 2025)
・すべて自己申告。客観指標や質的データとの組み合わせが望ましい
・人口統計変数が少なく、交絡(見かけの関係を生む第三の要因)を十分に統制できていない
・天職には「燃え尽き、仕事中毒、上司による搾取」という負の側面もあり(Duffy et al., 2018)、今回はそれを検討していない
▼ 結論
・仕事を「天職」や「霊的天職」として経験できるとき、仕事は人間の尊厳にふさわしい意味ある目的を追求する場となり、フローリッシングの源になる
・これは人間中心経営(Pirson, 2017)の中核命題「組織は経済成果だけでなく、意味・奉仕・人としての成長を育む仕事を通じて人間的価値を生む」に対する実証的な裏付けになる
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■ 読み解きのポイント(日本の文脈で考えるための補足)
・最も強かったのは「霊的」ではなく「道徳的」な天職感(β=0.321)。宗教色の薄い日本でも「誰かの役に立っている」「社会を良くしている」という感覚が鍵になりうる
・careerが無関係だったことは注目に値する。「成長」「承認」「昇進」は仕事のエンゲージメントには効くが(Xipell et al., 2024)、人生全体の充実にはそれだけでは届かない、という読み方ができる
・ただしサンプルはアジア2.1%。日本での再現研究が待たれる
■16の動機と4つの仕事観
この論文の理論的骨格を一枚にまとめます。縦軸に「求める善の種類」(4段階)、横軸に「動機の向き」(4種類)をとり、その掛け合わせで16の動機ができます。
そして、その16のうちどれが強いかで、仕事観が4つに分かれます。
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■ 1. 軸の説明
▼ 縦軸:求める善の4段階(下から上へ高次になる)
・有用な善(物質的領域):生きるために役立つもの。お金、安全、技能
・快い善(心理的領域):心が満たされるもの。承認、つながり、成長、自尊心
・道徳的善(倫理的領域):それ自体が正しく善いもの。尊敬、徳、慈愛
・霊的善(高次の霊的領域):自分を超えた大きなものに関わるもの。恵み、聖性、希望、賛美
▼ 横軸:動機の4つの向き
・受け取る(外発的動機):外から善を受け取るために動く
・達成する(内発的動機):自分の内で善を実現するために動く
・与える(超越的動機):自我を超えて他者や大きな目的のために善を与えるために動く
・返す(宗教的動機):受けた賜物を神や超越的存在に返すために動く
・従来の動機理論は「受け取る」「達成する」の2列と「有用」「快い」の2行、つまり左下の4マスだけを扱ってきた。Guillénはそれを4×4に拡張した
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■ 2. 16の動機(4×4マトリクス)
▼ 有用な善(物質的領域)
・受け取る=生計(サステナンス):支援、安全
・達成する=有能さ(コンピテンス):技能、熟達
・与える=奉仕(サービス):助け、援助
・返す=忠実(フィデリティ):同意、従順
▼ 快い善(心理的領域)
・受け取る=尊重(エスティーム):関係性、所属
・達成する=満足(サティスファクション):成長、自尊心
・与える=優しさ(カインドネス):思いやり、ケア
・返す=感謝(グラティチュード):ありがとう、感謝の念
▼ 道徳的善(倫理的領域)
・受け取る=敬意(リスペクト):称賛、評判
・達成する=卓越(エクセレンス):徳、善良さ
・与える=理解(アンダースタンディング):慈愛、温和さ
・返す=崇敬(アドレーション):畏敬、礼拝
▼ 霊的善(高次の霊的領域)
・受け取る=賜物(ギフト):贈り物、恵み
・達成する=聖性(ホーリネス):神聖さ、完全さ
・与える=希望(ホープ):救い、祝福
・返す=賛美(アクラメーション):讃美、栄光
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■ 3. 16の動機から導かれる4つの仕事観
論文では、16のうち以下の動機の強さを測り、それぞれの仕事観の得点にまとめています(Guillén, Ferrero & Hoffman, 2015に基づく対応)。
▼ job(単なる職):「生活のため」の仕事
・構成する動機:1つ
・有用×受け取る=生計
・仕事は収入・休息・余暇など「有用な善を得るための手段」
・これだけだと、仕事は「他の善を得るために払う代価」になり、人は仕事の外に充実を求めるようになる(Guillén, 2021, p. 185)
▼ career(キャリア):「成長・承認・昇進のため」の仕事
・構成する動機:3つ
・快い×受け取る=尊重(承認、所属)
・有用×達成する=有能さ(技能、熟達)
・快い×達成する=満足(成長、自尊心)
・仕事は「達成感、熟達、地位、組織内での昇進への道」(Guillén, 2021, p. 191)
・金銭を超えてはいるが、まだ「自分のため」の範囲にとどまる
▼ calling(天職):「他者や社会のため」の仕事
・構成する動機:5つ
・道徳×受け取る=敬意(称賛、評判)
・道徳×達成する=卓越(徳、善良さ)
・道徳×与える=理解(慈愛、温和さ)
・有用×与える=奉仕(助け、援助)
・快い×与える=優しさ(思いやり、ケア)
・特徴は「道徳的善」の行と「与える」の列が入ってくること
・仕事が自分のアイデンティティの一部になり、才能や能力を「充実感、他者への利益、日々の仕事がもたらす目的意識」に向ける(Guillén, 2021, p. 191)
・究極の目的は「社会に意味ある足跡を残し、他者のウェルビーイングに貢献し、世界をより良くすること」
▼ spiritual calling(精神的な天職):「高次の存在とのつながりの中で」の仕事
・構成する動機:4つ
・霊的×受け取る=賜物(贈り物、恵み)
・霊的×達成する=聖性(神聖さ、完全さ)
・霊的×与える=希望(救い、祝福)
・宗教的動機(返す)=賛美(讃美、栄光)など
・仕事を、エネルギー・宇宙・高次の存在・宗教・神といった「深く個人的で親密な確信」とつながる手段と捉える
・「その源が高次にあり、霊的・超越的・超自然的な起源をもつ天職。霊的領域への信仰、信仰者にとっては神の存在への信仰を要する」(Guillén, 2021, p. 193)
・宗教的である必要はなく、非宗教的な霊性(自然や宇宙とのつながりなど)も含む
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■ 4. 4つの仕事観の「入れ子」構造
・Guillénの図では、4つの仕事観は排他的ではなく「入れ子」になっている
・job:左下の1マス
・career:左下2×2の4マス(jobを含む)
・calling:左下3×3の9マス(careerを含む)
・spiritual calling:4×4の16マス全部(callingを含む)
・つまり、高次の仕事観ほど「より多くの種類の善と動機を含む」。天職の人が収入を気にしないのではなく、収入も成長も含んだうえで、さらに他者貢献や超越的な意味を仕事に見ている、という構図
・論文の統計分析では重複を避けるため、上記3の「非重複の割り当て」で測定している
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■ 5. 結果との対応
・job(生計):フローリッシングと無関係(β=−0.064、有意でない)
・career(尊重・有能さ・満足):フローリッシングと無関係(β=0.031、有意でない)
・calling(敬意・卓越・理解・奉仕・優しさ):フローリッシングと最も強い正の関連(β=0.321、p<0.01)
・spiritual calling(賜物・聖性・希望・賛美):フローリッシングと正の関連(β=0.163、p<0.01)
・要するに、マトリクスの「道徳的善の行」と「与える列」に踏み込んだとき、仕事は人生の充実と結びつき始める、というのがこの論文の発見
動画解説はこちら😊
https://youtu.be/2vfoxQF3rVI
会話形式での紹介はこちら😊
はぴテク相談室:「給料も上がって昇進もしたのに、なんか空しい」の話
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-02-1788327120/