2026.10.11

はぴテク相談室:「身内びいき」は悪いこと? 仲間への優しさと、よその人への優しさ

相談者

はぴテクさん、聞いてください。私、地元の仲間や職場のチームがすごく好きで、差し入れしたり、困っていたら真っ先に助けたりするのが楽しいんです。でも先日、友人に「そうやって身内ばかり大事にしてると、よその人には冷たい人になるよ」って言われちゃって。たしかに「内輪で固まる人ほど外に排他的」ってよく聞きますよね。私、知らないうちにイヤな人になってるんでしょうか…?

はぴテクさん
はぴテクさん

ご相談ありがとうございます。まず、仲間に差し入れしたり助けたりするのが「楽しい」というのは、とても素敵なことですよ。そのうえで、ご友人の言う「身内を大事にする人ほど外に冷たい」という考え方なんですが、実はこれ、社会科学の世界でも長く「常識」のように語られてきたんです。ところが2026年に発表された大規模な研究が、それとは違う結果を示しているんですよ。

相談者

えっ、違う結果? どんな研究なんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

121の社会、のべ74万人以上のデータを使って、「自分の仲間(内集団)への思いやり」と「よその人(外集団)への思いやり」の関係を調べた研究です。研究者が注目したのは、「仲間かよそ者か、どちらかを選ばされる場面」ではなく、「仲間への行動と、よその人への行動を、それぞれ別々に決められる場面」でした。すると、6つの異なるデータすべてで、「仲間に親切な人ほど、よその人にも親切な傾向がある」という正の関係が見つかったんです。

相談者

へぇ! でも「親切」って、アンケートで聞いただけじゃないですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

いい質問ですね。実は幅広いんです。家族や隣人への信頼と、外国人や初対面の人への信頼を聞いた世界規模の調査。同じ民族・違う民族の移民をどれだけ受け入れるかという寛容さの調査。さらに、実際にお金を分け合うゲーム、つまり「自国の人と組んだとき」「他国の人と組んだとき」にどれだけ相手に渡すか、同じ宗教の人・違う宗教の人への分け方、地元の人・地元外の人への貢献…といった、お金が実際に動く実験も含まれています。それでも全部、同じ方向の結果だったんですよ。

相談者

すごい。じゃあ私、仲間に優しいからって、外の人に冷たいとは限らないんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

その研究の結果から言えば、「仲間への親切」と「よその人への親切」は、むしろ一緒に現れやすいものです。研究者は統計的な分析(因子分析というもの)もしていて、両者は「別々の性質」というより、「人に親切にする、というひとつの傾向」の表れとして見るのが最も当てはまる、という結論でした。しかも121の社会すべてで、この正の関係が確認されています。

相談者

でも正直、私も「地元の人」と「初めて会う人」とでは、ちょっと態度が違う気はするんです。それはやっぱりダメなことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そこがこの研究の面白いところで、正直に書いてあるんです。「人は仲間のほうに、よその人より少しだけ多く親切にする」という傾向も、同じデータではっきり確認されています。つまり、「仲間びいきはある。でも、仲間に優しい人はよその人にも優しい。ただしその度合いは少し低い」。研究者はこれを「不完全な普遍的向社会性」と呼んでいました。かみ砕くと、「みんなに優しい、でも身内にはちょっと多めに」という姿が、人の平均的な姿だということですね。

相談者

「不完全な普遍的な優しさ」…なんだかホッとします。じゃあ、どうして「身内びいき=外に冷たい」ってイメージが広まったんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究者の指摘では、これまでの多くの研究は「仲間を助けるには、よその人を犠牲にするしかない」という、奪い合いの構図(ゼロサム)があらかじめ組み込まれた場面を調べていたから、だそうです。たとえば戦争や選挙のように、片方が得すれば片方が損する状況ですね。そういう場面では確かに「仲間への愛」と「よそへの敵意」が同時に出やすい。でも、どちらかを選ばされない場面では、人は両方に親切にしていた、というのがこの研究のメッセージです。

相談者

なるほど。じゃあ、私が日常でできることって何かありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究が示唆しているのは、「仲間とよその人を、奪い合いの関係に置かない」ことの大切さです。研究者は、実際にはゼロサムでない状況まで「奪い合いだ」と思い込んでしまう「ゼロサム・バイアス」にも触れていて、正確な情報や共通の目標に目を向けることで、そうした思い込みが減らせる可能性に言及しています。たとえば職場で新しい人が来たとき、「私たちのチームの席が取られる」と構えるのではなく、「一緒に達成したいこと」を共有する。そんな小さな見方の切り替えが、仲間への優しさとよその人への優しさが並び立つ土台になるかもしれません。

相談者

あ、それなら今度新しく入る方に、いつもの差し入れを一緒に渡せばいいだけですね! なんだか肩の荷が下りました。

はぴテクさん
はぴテクさん

素敵です。ただ一つだけ補足を。この研究はあくまで「同時に起きている」という関係を調べたもので、「仲間に優しくすれば、その結果よその人にも優しくなる」という因果関係まで証明したわけではありません。それでも、「仲間を大切にすることと、よその人に開かれていることは、両立しないどころか、一緒に現れやすい」という事実は、安心して仲間を大切にしていい、という心強い根拠になると思いますよ。

■ 今日のまとめ

  • 121社会・74万人超のデータで、「仲間への親切」と「よその人への親切」には一貫して正の関係があり、仲間に優しい人はよその人にも優しい傾向があった。
  • ただし人は仲間のほうに少し多めに親切にする傾向もあり、その平均的な姿は「不完全な普遍的な優しさ」と表現できる。
  • 仲間への愛とよそへの敵意が一緒に出やすいのは「どちらかを選ばされる奪い合いの構図」のとき。日常では、仲間とよその人を奪い合いの関係に置かない見方が、両方への優しさが並び立つ土台になりうる。

■ 出典・注意事項

  • Otten, K. (2026). The co-occurrence of ingroup and outgroup prosociality across 121 societies. Proceedings of the National Academy of Sciences, 123(3), e2517013123. https://doi.org/10.1073/pnas.2517013123

  • 本研究は既存の大規模データを用いた相関研究(横断的な観察データ)であり、「仲間への親切」が「よその人への親切」を引き起こすといった因果関係を証明したものではありません。社会ごとの違いに関する分析も相関にとどまります。また、同じ人が同じ方法で内集団・外集団への判断を同時に行っているため、共通方法バイアスなどの可能性も論文内で指摘されています。

  • この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。

投稿者による補足(1件)
補足 1

研究自体の紹介はこちら😊
身内を大事にする人は、よそ者にも優しい
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-11-1791654060/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 ありがとうなんとかなる 感謝・親切・向社会性人間関係・恋愛文化と幸福・日本的幸福

📮 毎週土曜の朝、メールで届きます

その週にご紹介したウェルビーイング研究のダイジェストを無料でお届けします。

確認メールのリンクで登録完了。いつでも配信停止できます。 📧 サンプルを見る

← 検索にもどる