「名利に使はれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ」
— 吉田兼好 『徒然草』第38段
名声とお金に「使われて」(=振り回されて)、心静かなひとときもないまま一生を苦しめ続けるのは、まことに愚かなことだ ── 出世競争の渦中からではなく、そこから降りた場所から書かれた人生批評
- 心理学では
- 兼好の言う「名利に使はれ」る生き方は、心理学でいう外発的目標(富・名声・外見など、他者の評価や報酬に向かう目標)に人生をゆだねた状態にあたる。Niemiecら(2009)は大学卒業後の若者を追跡する縦断研究を行い、富や名声の目標を達成した人ほど幸福感が高いわけではなく、むしろ不安などの不調と関連することを示した。一方、人とのつながりや成長といった内発的目標の達成は、幸福感の高さと関連していた。またKasser & Sheldon(2009)は、時間的ゆとり(自由に使える時間が十分あるという感覚)を持つ人ほど幸福感が高いことを報告している。名利のための予定を一つ手放し、静かな時間を意識して確保することが、心の充足につながる。 参考:Niemiecら(2009)「The path taken: Consequences of at…」 ↗/Kasser & Sheldon(2009)「Time Affluence as a Path toward Pe…」 ↗