幸せの名言集

吉田兼好の名言2選

鎌倉末期の随筆家(1283頃-1352頃)

「名利に使はれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ」

— 吉田兼好 『徒然草』第38段

名声とお金に「使われて」(=振り回されて)、心静かなひとときもないまま一生を苦しめ続けるのは、まことに愚かなことだ ── 出世競争の渦中からではなく、そこから降りた場所から書かれた人生批評

心理学では
兼好の言う「名利に使はれ」る生き方は、心理学でいう外発的目標(富・名声・外見など、他者の評価や報酬に向かう目標)に人生をゆだねた状態にあたる。Niemiecら(2009)は大学卒業後の若者を追跡する縦断研究を行い、富や名声の目標を達成した人ほど幸福感が高いわけではなく、むしろ不安などの不調と関連することを示した。一方、人とのつながりや成長といった内発的目標の達成は、幸福感の高さと関連していた。またKasser & Sheldon(2009)は、時間的ゆとり(自由に使える時間が十分あるという感覚)を持つ人ほど幸福感が高いことを報告している。名利のための予定を一つ手放し、静かな時間を意識して確保することが、心の充足につながる。 参考:Niemiecら(2009)「The path taken: Consequences of at…」 ↗/Kasser & Sheldon(2009)「Time Affluence as a Path toward Pe…」 ↗
「花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは」

— 吉田兼好 『徒然草』第137段

満開や満月だけでなく、欠けたもの・過程にも美はある

心理学では
この段の知恵は、心理学でいう「セイバリング(よい体験に意識を向け、楽しみを味わい深めること)」の対象を、盛りの瞬間だけでなく、待つ時間や移ろいにまで広げる見方に重なる。兼好は、散りぎわの花や雨に隠れた月を思いやる心にも趣を見いだした。Kurtz(2008)は卒業を控えた大学生を対象に実験を行い、卒業までの残り時間が短いと意識させられた学生のほうが、その後の幸福感が高く、大学生活を楽しむ行動も増えることを示した。またVan Boven & Ashworth(2007)の実験では、出来事を振り返るよりも、これからの出来事を思い描くほうが感情が強く動くことが分かった。盛りを待つ時間や終わりの気配も、喜びの源になるのである。季節の変わり目や仕事の途中経過にこそ目をとめ、その一瞬を味わう習慣が、日々の喜びを増やすことにつながる。 参考:Kurtz(2008)「Looking to the Future to Appreciat…」 ↗/Van Boven & Ashworth(2007)「Looking forward, looking back: Ant…」 ↗

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