幸せの名言集

社会的比較志向のなさの名言53選

「他人と比較してものを考える習慣は、致命的な習慣である」

The habit of thinking in terms of comparison is a fatal one.

— バートランド・ラッセル 『幸福論』(1930)

比較の習慣化は幸福を根こそぎ奪う

心理学では
ラッセルが戒める習慣は、心理学でいう社会的比較志向性(自分の能力や境遇を、他人と比べることで測ろうとする傾向の強さ)にあたる。Whiteら(2006)は成人を対象とした調査研究で、日頃から他人と比べる頻度が高い人ほど、妬み・罪悪感・後悔・自己防衛といった否定的な感情や行動を多く抱えていることを示した。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人は隣で課題に取り組む人の出来ばえに自分の気分や自己評価をあまり左右されず、幸福感の低い人ほど他人との比較に振り回されていた。比べたくなったときは、視線を相手から外し、昨日の自分や自分の目標と照らし合わせることが、心の平穏を守る助けになる。 参考:Whiteら(2006)「Frequent Social Comparisons and De…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
英国の哲学者・数学者(1872-1970)。ノーベル文学賞
「乞食は百万長者を妬まない。しかし、より稼ぎのよい乞食を必ず妬む」

Beggars do not envy millionaires, though of course they will envy other beggars who are more successful.

— バートランド・ラッセル 『幸福論』(1930)

妬みは遠い他人ではなく近い他人に向かう

心理学では
ラッセルの言葉は、社会的比較理論(他者と比べて自分を評価する心の働き)の「類似性仮説」を言い当てている。Festinger(1954)は、人は自分と似た相手を比較の物差しに選びやすいと論じた。これを給与で確かめたのがCardら(2012)である。大学職員に同僚の給与を閲覧できるサイトを知らせる実験を行ったところ、同じ部署の中で給与が低い側の人は職務満足度が下がり、転職を考える傾向が強まった。心を揺らすのは遠い富豪ではなく隣の同僚なのである。SNSは身近な人の暮らしを絶えず見せ、この比較を増やしやすい。妬みを覚えたら、比べている相手が誰かに気づき、昨日の自分との比較に目を移すことが心の平穏につながる。 参考:Festinger(1954)「A Theory of Social Comparison Proc…」 ↗/Cardら(2012)「Inequality at Work: The Effect of …」 ↗
人物
英国の哲学者・数学者(1872-1970)。ノーベル文学賞
「人は人 吾は吾なり とにかくに吾行く道を 吾は行くなり」

— 西田幾多郎 自筆の歌として知られる

他人がどうであれ、自分の道を行く

心理学では
この歌は、心理学でいう社会的比較志向(自分を他人と比べて評価しようとする傾向)の低さを表している。つまり、他人の物差しではなく自分の基準で歩む姿勢である。Gibbons & Buunk(1999)は、比較志向の個人差を測る尺度を作った。そして、比較しがちな人ほど自尊感情が低く、神経症傾向(不安や落ち込みやすさ)が高いことと関連すると報告した。またLyubomirsky & Ross(1997)は、大学生が他の参加者と並んで課題に取り組む実験を行った。その結果、幸福感の高い人ほど、相手の出来に気分や自己評価を左右されにくいことが分かった。人と比べたくなったときは、昨日の自分より進んだ一歩に目を向ける。それが、自分の道を歩み続ける支えになる。 参考:Gibbons & Buunk(1999)「Individual differences in social c…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
日本の哲学者(1870-1945)。京都学派の創始者。『善の研究』
「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」

— 孔子 『論語』子路第十三

成熟した人は、人と調和するが、考えもなく同調はしない。未熟な人はその逆で、表面だけ周囲に合わせるが、本当の調和は生まない ──「協調すること」と「同調圧力に流されること」を分ける古典的な基準

心理学では
この名言は、心理学でいう同調(周囲の多数派に合わせて意見や行動を変えること)と、自分を保ったままの協調とを分ける視点に重なる。Woodら(2008)は真正性(自分の価値観に沿って生きている感覚)を測る尺度を作り、大学生などを対象とした相関研究で、自分らしく生きている人ほど自尊心や人生満足度が高く、他者の期待に流されやすい人ほど幸福感が低いことを示した。またNemeth(1986)は一連の実験をもとに、少数派の異論が集団の思考を広げ、より質の高い判断を促すことを論じた。違う意見を持ちながら関係を大切にする姿勢は、本人にも集団にも益になる。会議や会話では、相手への敬意を言葉にしたうえで自分の考えを一言添えることが、本当の和につながる。 参考:Woodら(2008)「The authentic personality: A theor…」/Nemeth(1986)「Differential contributions of majo…」 ↗
人物
春秋時代の思想家(BC551-479)
「君子は諸(これ)を己に求め、小人は諸を人に求む」

— 孔子 『論語』衛霊公第十五

立派な人は、うまくいかない原因も、行動の基準も、自分の内側に求める。未熟な人は、原因を他人のせいにし、基準を他人の目に置く ── 内的基準で生きることの古典的な定式

心理学では
この言葉は、心理学でいう内的基準(自分の価値観や目標に照らして自分を評価する姿勢)と、社会的比較志向(他人と比べて自分の位置を測ろうとする傾向)の対比として読める。Gibbons & Buunk(1999)は比較志向を測る尺度を開発し、他人と比べがちな人ほど自尊心が低く、神経症傾向(不安や落ち込みやすさ)が高いことを報告した。また Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象にした実験で、幸福感の高い人は隣の人の出来に自己評価を左右されにくく、幸福感の低い人ほど他人の成績に振り回されることを示した。うまくいかないときは「誰と比べてどうか」ではなく「昨日の自分と比べてどうか」と問い直すことが、心の安定につながる。 参考:Gibbons & Buunk(1999)「Individual differences in social c…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
春秋時代の思想家(BC551-479)
出典に諸説あり
「常に自分自身の一級品であれ。他の誰かの二級品になってはいけない」

Always be a first-rate version of yourself, instead of a second-rate version of somebody else.

— ジュディ・ガーランド 発言として流通

誰かの劣化コピーより、唯一の自分

心理学では
この名言は、他人を物差しにする社会的比較(自分と他者を比べて評価すること)から離れ、本来性(オーセンティシティ:自分の価値観に沿って生きること)を大切にせよと説いている。Lyubomirsky & Ross(1997)は、隣の人が自分より課題をうまく解く場面を実験で設けた。その結果、幸福感の低い人ほど他者の出来に気分や自己評価が揺さぶられ、幸福感の高い人はあまり動じないことを示した。またWoodら(2008)の相関研究では、自分らしく生きている感覚が強い人ほど、自尊心や人生満足度が高かった。人と比べて落ち込みそうなときは、誰に近づけたかではなく、自分らしくいられたかを問い直す。それが心の安定につながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Woodら(2008)「The authentic personality: A theor…」
人物
米国の女優・歌手(1922-1969)。『オズの魔法使』
出典に諸説あり
「天上天下唯我独尊」

— ブッダ 誕生偈として伝わる(『長阿含経』ほか)

誕生時の言葉という伝承。解釈には諸説あり

「自分だけが偉い」という意味に誤解されがちだが、本来は「天にも地にも、この私という存在はただ一つしかなく、その存在はそのまま尊い」という意味に解釈される。誰かと比べるまでもなく、一人ひとりの命がかけがえなく尊いという宣言

心理学では
この名言は、心理学でいう「無条件の自己価値」(成果や他人との優劣に左右されない、存在そのものへの価値の感覚)を表している。自尊心を他者との優劣に預けると気分が揺れやすくなることは、Crocker & Wolfe(2001)が「自己価値の随伴性」(自尊心が何に条件づけられているか)の理論で論じている。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象に、隣の人が自分より速く課題を解く場面などを設けた実験を行い、幸福感の高い人ほど他者の出来ばえに気分や自己評価が揺さぶられにくいことを示した。人と比べたくなったときは、自分という存在は比べる前から一つきりで尊いと思い出すことが、心の安定につながる。 参考:Crocker & Wolfe(2001)「Contingencies of self-worth.」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
古代インドの宗教家(BC5世紀頃)。仏教の開祖
「ある人が仲間と歩調を合わせないのは、別の太鼓の音を聴いているからだ。その人には、その音に合わせて歩ませればよい」

If a man does not keep pace with his companions, perhaps it is because he hears a different drummer.

— ヘンリー・D・ソロー 『ウォールデン 森の生活』(1854)

人にはそれぞれ固有のリズムがある

心理学では
ソローの言葉は、心理学でいう社会的比較(他人と自分を比べて自分を評価すること)にとらわれず、自己一致した目標(自分の興味や価値観から生まれた目標)に沿って歩む姿勢にあたる。Lyubomirsky & Ross(1997)は、隣の人と並んで課題に取り組む実験で、幸福感の高い人ほど隣の人の出来に自己評価や気分を左右されにくいことを示した。またSheldon & Elliot(1999)の縦断研究では、自己一致した目標を追う人ほど目標を達成しやすく、その達成が幸福感の高まりと結びついていた。周りの歩調が気になったときは、「これは自分の太鼓の音か」と問い直すことが、自分のペースを取り戻す助けになる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」
人物
米国の思想家・作家(1817-1862)。超越主義
「私は私のことをし、あなたはあなたのことをする。私はあなたの期待に応えるためにこの世に生きているのではない」

I do my thing and you do your thing. I am not in this world to live up to your expectations.

— フリッツ・パールズ 「ゲシュタルトの祈り」(1969)

互いの期待からの解放が本当の出会いを生む

心理学では
この名言は、心理学でいう「随伴的自己価値」(他者の承認や期待に応えられたかどうかで自分の価値が上下する状態)から距離を置く姿勢を表している。Crocker & Wolfe(2001)は先行研究を整理し、自尊心を他者の評価に預けている人ほど、評価のたびに感情が揺れやすいことを理論としてまとめた。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、隣で同じ課題を解く人が自分より速くても遅くても、幸福感の高い学生ほど気分や自己評価が揺らぎにくかった。ただし、これは他者と無関係に生きることではないので、互いの自由を尊重したつながりと組み合わせるとよい。迷ったときに「これは誰の期待か」と一度問い直すことが、自分らしい選択と対等な関係につながる。 参考:Crocker & Wolfe(2001)「Contingencies of self-worth.」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
ドイツ出身の精神科医(1893-1970)。ゲシュタルト療法の創始者
出典に諸説あり
「かけがえのない存在になるためには、常に人と違っていなければならない」

In order to be irreplaceable one must always be different.

— ココ・シャネル 発言として流通

独自性こそ代替不能性の条件

心理学では
この名言は、最適弁別性理論(人は集団への所属と、他者と区別される独自性の両方を求めるという考え)と重なる。Brewer(1991)は、人は周囲と似すぎても孤立しすぎても落ち着かず、適度に際立つときに自己が安定すると論じた。また、Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人ほど、隣の参加者の出来に気分や自己評価を左右されにくかった。他人と同じ物差しで競わず、自分の持ち味を育てる姿勢は、心の安定と結びつく。ただし、独自性は仲間とのつながりと両立させると生きやすい。日々の仕事では、他人との優劣より「自分にしかできない工夫」を一つ探すことが、かけがえのなさにつながる。 参考:Brewer(1991)「The Social Self: On Being the Same…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
フランスのファッションデザイナー(1883-1971)
「みんなちがって、みんないい」

— 金子みすゞ 詩「私と小鳥と鈴と」(大正末期)

パブリックドメインの詩の結び

違いは優劣ではなく、それぞれの良さである

心理学では
この詩句は、社会的比較志向(他人と自分を比べて自分の位置を測る傾向)から距離を置き、違いを優劣ではなく持ち味として受けとめる見方である。Gibbons & Buunk(1999)は比較志向を測る尺度を開発し、比べる傾向の強い人ほど神経症傾向(不安や落ち込みやすさ)が高いことを報告した。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人ほど、隣の人の課題の出来に自分の気分や自己評価が左右されにくかった。人との違いに気づいたら、「どちらが上か」ではなく「それぞれの良さは何か」と言い直してみる。その小さな習慣が、自分にも他人にも穏やかなまなざしを向ける助けになる。 参考:Gibbons & Buunk(1999)「Individual differences in social c…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
日本の童謡詩人(1903-1930)。没後に再評価
「桜梅桃李:桜は桜、梅は梅、桃は桃、李は李として、それぞれの花を咲かせる」

— 日蓮の遺文に由来する語 『御義口伝』

「桜梅桃李の己々の当体を改めずして」に基づく

それぞれが自分の花を、自分の時期に咲かせればよい

心理学では
この言葉は、社会的比較(他人と自分を比べて自分の位置を測ること)にとらわれず、自分固有の基準で育つ姿勢を表している。Lyubomirsky & Ross(1997)は、幸福感の高い学生と低い学生に、隣の人が自分より速く課題を解く場面を経験させる実験を行った。幸福感の低い人は他人の出来に気分や自己評価が左右されやすく、幸福感の高い人は影響を受けにくかった。またWhiteら(2006)の相関研究では、他人と比べる頻度が高い人ほど、羨望や後悔などの否定的な感情を多く抱く傾向があった。人が伸びる時期や形は違って当然である。比べたくなったら、昨日の自分と比べて伸びた点を一つ数えると、自分の花に目が向く。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Whiteら(2006)「Frequent Social Comparisons and De…」 ↗
人物
鎌倉時代の僧(1222-1282)。日蓮宗開祖
「雑草という草はない。どんな草にも名前がある」

— 牧野富太郎 随筆・言行録より

昭和天皇が侍従に語った言葉としても流通(入江相政の記録)

一括りにされるものにも固有の名と価値がある

心理学では
「雑草」と一括りにせず一本一本の名を見る姿勢は、心理学でいえば社会的比較(他人と自分を比べて優劣を測ること)から離れ、個々の固有の価値に目を向ける態度である。Gibbons & Buunk(1999)は社会的比較志向(他人と比べがちな傾向)を測る尺度を作り、比べがちな人ほど自尊心が低く、神経症傾向(不安の感じやすさ)が高いという関連を報告した。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人は、隣の人が自分より上手に課題をこなしても自己評価が揺らぎにくかった。人を「その他大勢」で括らず、その人ならではの持ち味に目を向けることが、比べ合いから離れる助けになる。 参考:Gibbons & Buunk(1999)「Individual differences in social c…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
日本の植物学者(1862-1957)。「日本の植物学の父」
「おごらず、人と比べず、面白がって、平気に生きればいい」

— 樹木希林 インタビュー・著書より

比較を降りて、面白がって生きる

心理学では
この言葉は、社会的比較志向(他人と自分を比べて自分を評価しようとする傾向)を手放し、出来事を「面白い」と捉え直す認知的再評価(物事の意味づけを変えて感情を整える方法)を勧めている。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象にした実験で、幸福感の高い人ほど、隣の人が自分より良い成績を上げても気分や自己評価が揺らぎにくいことを示した。またGross & John(2003)の相関研究では、再評価をよく使う人ほどポジティブな感情や幸福感が高かった。人と比べてしまったときは「これは面白い」とつぶやいて見方を変えることが、平気に生きる助けになる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Gross & John(2003)「Individual differences in two emot…」
人物
日本の俳優(1943-2018)。晩年の言葉が多くの共感を集めた
出典に諸説あり
「比較は、喜びを盗む泥棒である」

Comparison is the thief of joy.

— セオドア・ルーズベルト(とされる) 典拠不詳

※帰属に諸説あり(トウェイン版「比較は喜びの死」も典拠不詳)

比較した瞬間、満足は目減りする

心理学では
この名言は、心理学でいう社会的比較(他人と自分を比べて自分を評価すること)、とくに上方比較(自分より恵まれた人と比べること)が満足感を損なうという知見と重なる。Vogelら(2014)は、SNS上で自分より活動的で魅力的に見える人のプロフィールを見せる実験を行い、見た直後に自尊心(自分を価値ある存在と感じる気持ち)が下がることを示した。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人ほど隣の人の出来ばえに気分や自己評価を左右されにくかった。比べたくなったら、他人ではなく昨日の自分と比べ、いま手にしているものに目を向ける。それが日々の喜びを守る助けになる。 参考:Vogelら(2014)「Social comparison, social media, a…」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
米国第26代大統領(1858-1919)
「他人と比べるな。比べるべきは、昨日の自分である」

Compare yourself to who you were yesterday, not to who someone else is today.

— ジョーダン・ピーターソン 『12 Rules for Life』(2018)第4ルール

比較の対象を他者から過去の自分へ変える

心理学では
この名言は、比べる物差しを社会的比較(他者との比べ合い)から時間的比較(過去の自分との比べ合い)へ移すことを勧めている。Lyubomirsky & Ross(1997)は、幸福度の高い人と低い人に課題に取り組ませ、隣で課題をこなす人の出来を操作する実験を行った。その結果、幸福度の低い人ほど他者の出来に気分や自己評価が左右されやすいことを示した。一方、Wilson & Ross(2001)は一連の研究で、人は過去の自分を現在の自分より低く評価しやすく、それによって「成長してきた」という実感を得て自己評価を支えていることを明らかにした。一日の終わりに、昨日より一歩進んだ点を一つ書き留める習慣が、他人に振り回されない自信につながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Wilson & Ross(2001)「From chump to champ: People's appr…」 ↗
人物
カナダの臨床心理学者(1962-)。トロント大学元教授
出典に諸説あり
「誰もが天才だ。しかし魚を木登りの能力で評価すれば、魚は一生、自分を落ちこぼれと信じて生きることになる」

Everybody is a genius. But if you judge a fish by its ability to climb a tree, it will live its whole life believing that it is stupid.

— アインシュタイン(とされる) 典拠不詳

※アインシュタインの言葉ではない可能性が高い(QI検証済)

評価軸の選び方が「できない人」を作り出す

心理学では
この名言は、能力を一つの物差しで測ることの害を突いている。人は社会的比較(他者と比べて自分の位置を判断すること)を通して自己概念(自分についての見方)を作るため、物差しや比べる相手しだいで自己評価は不当に下がる。Marsh & Hau(2003)は多くの国の生徒を調べ、同じ学力でも優秀な生徒が集まる学校にいる生徒ほど学業の自己概念が低いことを示した。一方、Seligmanら(2005)の実験では、自分の強み(その人らしい長所)を新しい方法で使う課題に取り組んだ人で、幸福感が高まり抑うつ症状が減る効果が数か月続いた。他人の得意分野で自分を測るのをやめ、自分の強みが生きる場面を探して力を注ぐことが助けになる。 参考:Marsh & Hau(2003)「Big-Fish--Little-Pond effect on ac…」 ↗/Seligmanら(2005)「Positive Psychology Progress: Empi…」
人物
理論物理学者(1879-1955)
出典に諸説あり
「あなたの同意なしに、誰もあなたに劣等感を抱かせることはできない」

No one can make you feel inferior without your consent.

— エレノア・ルーズベルト(とされる) 『This Is My Story』(1937)の趣旨に基づく定型化

※定型文としての初出には議論がある(QI検証済)

劣等感の最終決定権は自分にある

心理学では
この名言は、心理学でいう「自己価値の随伴性」(自分の価値を他人の評価や成果しだいで決める傾向)を手放すことに当たる。Crockerら(2002)は大学院を受験する学生の日々の気持ちを追跡し、学業の成果に自己価値を預けている人ほど、不合格の通知を受けた日に自尊心が大きく落ち込むことを示した。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人ほど、隣の人が自分より良い成績を出しても気分や自己評価が揺らぎにくかった。他人の評価は役立つ情報として受け取りつつ、自分の価値の判定とは切り離す。比べて落ち込みそうなときに「これは私の価値を決めるものか」と問い直すことが、心の落ち着きにつながる。 参考:Crockerら(2002)「Hopes Dashed and Dreams Fulfilled:…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
米国のファーストレディ・人権活動家(1884-1962)
「完璧は、善の敵である」

Le mieux est l'ennemi du bien.

— ヴォルテール 『哲学辞典』所収の格言(イタリアの諺として引用)

直訳は「より良きは良きの敵」

理想との比較が現実の良さを殺す

心理学では
この名言は、心理学でいう「最大化傾向」(常に最善を求める傾向)と「満足化」(基準を満たす十分によいもので納得する姿勢)の対比に重なる。Schwartzら(2002)は質問紙による相関研究を行い、最大化傾向の強い人ほど幸福感や生活満足度が低く、後悔や他人との比較が多いことを示した。Iyengarら(2006)は就職活動中の大学生を追跡する縦断研究を行った。その結果、最大化傾向の強い学生ほど給与の高い職に就きながらも、結果への満足度が低く、不安や落胆を強く感じていた。選ぶ前に「これで十分」という基準を決め、それを満たしたら探すのをやめる。そうすることが、目の前の良さを味わう助けになる。 参考:Schwartzら(2002)「Maximizing versus satisficing: Hap…」/Iyengarら(2006)「Doing Better but Feeling Worse」 ↗
人物
フランスの啓蒙思想家(1694-1778)
「我々は、他の人々と同じようになろうとして、自分自身の四分の三を失う」

We forfeit three-fourths of ourselves in order to be like other people.

— アルトゥル・ショーペンハウアー 『幸福について(処世術箴言)』

同調の代償は自己の大部分である

心理学では
この名言は、他者の基準に合わせ続けると本来性(オーセンティシティ:自分らしさ)が損なわれ、自己疎外(自分の感情や価値観から切り離された感覚)が生じることを指している。Woodら(2008)は大学生などを対象に本来性尺度を作成し、相関研究によって、自己疎外が強い人ほど不安やストレスが高く、自分らしく生きる人ほど自尊感情や人生満足度が高いことを示した。Sheldonら(1997)も、役割ごとに性格を大きく変えて振る舞う人ほど、本来性の感覚と主観的幸福感が低いことを見いだしている。周りに合わせる前に「これは本当に自分が望むことか」と一度問うことが、自分を取り戻す助けになる。 参考:Woodら(2008)「The authentic personality: A theor…」/Sheldonら(1997)「Trait self and true self: Cross-ro…」
人物
ドイツの哲学者(1788-1860)
「人は、自分の意見と能力を評価するために、他者との比較を行う」

— レオン・フェスティンガー 「社会的比較過程の理論」(1954)

比較は人間の基本的な認知過程である

心理学では
フェスティンガーが説いたのは、社会的比較(他者と照らし合わせて自分を評価する心の働き)が人に備わった基本的な仕組みだということである。比較そのものは避けられず、幸福を左右するのはその向きや頻度、受け止め方である。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、隣の人が自分より速く課題を解く場面でも、幸福感の高い人ほど自己評価や気分が揺らぎにくかった。Gibbons & Buunk(1999)は他者と比べやすい傾向(比較志向性)を測る尺度を作り、その傾向が強い人ほど神経症傾向(不安になりやすさ)が高いことを報告した。比較に気づいたら、昨日の自分や自分の目標と照らす材料に切り替えることが、ありのままの自分を保つ助けになる。 参考:Festinger(1954)「A Theory of Social Comparison Proc…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Gibbons & Buunk(1999)「Individual differences in social c…」 ↗
人物
米国の社会心理学者(1919-1989)。認知的不協和理論でも著名
「嫉妬は無知であり、模倣は自殺である」

Envy is ignorance; imitation is suicide.

— ラルフ・ワルド・エマーソン 「自己信頼」(1841)

羨望も模倣も、自己の放棄である

心理学では
エマーソンの言葉は、社会的比較(他人と比べて自分を評価すること)に振り回されず、自己一致した目標(自分の価値観から生まれた目標)を生きる大切さと重なる。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人ほど、隣で同じ課題に取り組む人の出来に自己評価や気分を左右されにくかった。またSheldon & Elliot(1999)の縦断研究では、自己一致した目標を追う人ほど目標を達成しやすく、その達成が幸福感の向上と結びついていた。ただし他人から学ぶ場面では、自分の目標に照らして取り入れるとよい。誰かをうらやんだときに「自分は本当は何を望むのか」と問い直すことが、借り物でない一歩につながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」
人物
米国の思想家・詩人(1803-1882)。超越主義
「隣の芝生は青い」

The grass is always greener on the other side.

— 日本のことわざ(西洋由来) 英語の諺「The grass is always greener on the other side of the fence」

他人のものは実際より良く見える

心理学では
このことわざは、心理学でいう上方比較(自分より恵まれて見える人と比べること)と、その背景にある情報の非対称性を言い当てている。人は他人の暮らしを外から見える表面でしか知らないが、自分のことは悩みや失敗まで知っている。Jordanら(2011)は大学生を対象とした一連の研究で、人が周囲の人の否定的な感情の頻度を実際より少なく見積もること、そしてそう見積もる人ほど孤独感が強く、人生満足度が低いことを示した。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福な人ほど自分より成績のよい他者がいても気分を左右されにくかった。他人の芝生がまぶしく見えたときは、見えていない舞台裏があると思い出すことが、自分の庭を落ち着いて手入れする助けになる。 参考:Jordanら(2011)「Misery Has More Company Than Peopl…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
「上を見ればきりがない、下を見てもきりがない」

— 日本のことわざ

比較の梯子には終わりがない

心理学では
このことわざは、社会的比較志向(他人と比べて自分を測ろうとする傾向)を手放す知恵を語っている。上方比較(自分より上の人との比較)は劣等感を、下方比較(下の人との比較)はつかの間の安心を生む。しかし、どちらも物差しを他人に預けている点では同じであり、比べる相手は尽きない。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象に、隣で同じ課題を解く人の出来を操作する実験を行った。その結果、幸福度の高い人ほど他人の出来に気分や自己評価を左右されにくく、幸福度の低い人は上にも下にも振り回されることが分かった。比べたくなったら、昨日の自分や大切にしたい価値を物差しにすると、心の揺れが小さくなる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
「よそはよそ、うちはうち」

— 日本の家庭の言い回し

関西を中心に広く使われる

他の家と比べない、という生活の知恵

心理学では
この言い回しは、心理学でいう社会的比較志向(暮らしや持ち物を他人と比べて評価しがちな傾向)を、家庭ぐるみで弱める知恵である。Luttmer(2005)は米国の大規模調査を分析し、本人の収入が同じでも、近所の人々の収入が高いほど幸福感が低いという関連を見いだした。比べる相手が「よそ」にいるだけで、満足は目減りしやすいのである。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福な人ほど、そばにいる他者の出来ばえに気分や自己評価を左右されにくかった。子どもに「みんな持っている」とせがまれたときこそ、この言葉で物差しを家の中に戻し、わが家が大切にしたいことを一緒に確かめることが、家族の満足感を守る助けになる。 参考:Luttmer(2005)「Neighbors as Negatives: Relative E…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
「人の振り見て我が振り直せ」

— 日本のことわざ

他人は妬む対象ではなく、学ぶ鏡である

心理学では
この言葉は、社会的比較(他者と自分を比べること)を、優劣の判定ではなく自己改善動機(自分を高めたいという動機)のために使う姿勢を表している。Wood(1989)は、比較には自己評価・自己高揚・自己改善という異なる目的があると整理した。Lockwoodら(2002)は大学生を対象とした実験で、失敗の例となる「反面教師」の人物が、失敗を避けたい意識の強い人の学業への意欲を高めることを示した。ただし相手を裁く気持ちが強まると比較は苦しさに変わるので、視線を自分の行動に戻すことを意識するとよい。気になる振る舞いに出会ったら「自分ならどうするか」を一つ考えることが、日々の学びにつながる。 参考:Wood(1989)「Theory and research concerning soc…」 ↗/Lockwoodら(2002)「Motivation by positive or negative…」 ↗
「人の頭の蠅を追うより、己の頭の蠅を追え」

— 日本のことわざ

他人への干渉より自分の課題に集中せよ

心理学では
このことわざは、社会的比較志向(自分と他人を比べようとする傾向)を手放し、注意を自分の課題に向けることを説いている。アドラー心理学の「課題の分離」(自分の課題と他人の課題を分けて考えること)にも通じる考え方である。Lyubomirsky & Ross(1997)は、大学生に隣の人と同じ課題を解かせる実験を行った。その結果、幸福度の低い学生ほど隣の人の出来に気分が左右され、幸福度の高い学生は他人の成績に揺らぎにくかった。Whiteら(2006)の調査でも、他人と頻繁に比べる人ほど妬みや後悔を抱きやすい。他人の振る舞いが気になったら「いま自分がすべきことは何か」と問い直す。その習慣が、心の落ち着きと仕事の質を守る助けになる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Whiteら(2006)「Frequent Social Comparisons and De…」 ↗
「周囲の文化が役に立たないのなら、自分自身の文化をつくりなさい」

The culture we have does not make people feel good about themselves. Create your own.

— モリー・シュワルツ ミッチ・アルボム『モリー先生との火曜日』(1997)

世間の基準を鵜呑みにせず、自分の価値基準を編む

心理学では
この言葉は、世間の価値(お金・地位・若さ)を鵜呑みにせず、自分の価値を主体的に選ぶことを説く。心理学でいえば、富や名声などの外発的目標(他者の評価や報酬を求める目標)より、成長やつながりなどの内発的目標(それ自体が満足となる目標)を軸にする生き方である。Kasser & Ryan(1996)の成人を対象とした調査では、外発的目標を重視する人ほど幸福感が低かった。Kasserら(2014)は縦断研究で、物質主義(お金や物を重んじる傾向)が弱まった人ほど幸福感が向上していたことを示し、青年への介入では物質主義を下げ、自尊心を高める効果を確認した。「この目標は誰の基準か」と問い直す習慣が、自分の文化を育てる第一歩になる。 参考:Kasser & Ryan(1996)「Further Examining the American Dre…」/Kasserら(2014)「Changes in materialism, changes in…」
人物
米国の社会学者(1916-1995)。ALSの闘病中の対話が世界的ベストセラーに
「嫉妬にご用心。それは緑の目の怪物で、餌食にする者をもてあそぶのです」

O beware, my lord, of jealousy; it is the green-eyed monster.

— シェイクスピア 『オセロー』第3幕第3場(イアーゴーの台詞)

「green-eyed monster」の出典

嫉妬は抱く本人を食い荒らす

心理学では
この台詞が描くのは、嫉妬が相手より先に、抱く本人をむしばむ姿である。心理学では、疑いや比較の考えが頭の中で堂々めぐりする状態を反すう(同じ考えを繰り返し思い返すこと)と呼ぶ。Carson & Cupach(2000)は恋愛関係にある人を対象に質問紙調査を行い、嫉妬について反すうする人ほど、相手を責めたり探りを入れたりといった破壊的な反応をとりやすいことを示した。またSmithら(1999)の研究では、妬みやすい気質の人ほど抑うつが強く、人生への満足度が低いことが分かっている。嫉妬の芽に気づいたら、考えを紙に書き出して事実と想像を分けてみる。それだけでも、怪物に餌を与え続けないための助けになる。 参考:Carson & Cupach(2000)「Fueling the flames of the green‐ey…」 ↗/Smithら(1999)「Dispositional Envy」 ↗
人物
英国の劇作家(1564-1616)
「金持ちとは、妻の妹の夫より年収が100ドル多い人間のことである」

A wealthy man is one who earns $100 a year more than his wife's sister's husband.

— H・L・メンケン 随筆より

豊かさの実感は絶対額ではなく比較で決まる

心理学では
この名言は、相対所得仮説(満足感は収入の絶対額より、身近な比較相手との差で決まるという考え)をみごとに言い当てている。Neumark & Postlewaite(1998)は米国の姉妹のデータを分析し、姉妹の夫の収入が自分の夫より高い女性ほど働きに出やすいことを示した。まさに「妻の妹の夫」が比較の物差しになっていたのである。またLuttmer(2005)は米国の調査データから、自分の収入が同じでも、近隣住民の収入が高い人ほど幸福感が低いことを報告している。他人の年収ではなく、昨日の自分や手元の暮らしに注意を向けることが、豊かさの実感につながる。 参考:Neumark & Postlewaite(1998)「Relative income concerns and the r…」 ↗/Luttmer(2005)「Neighbors as Negatives: Relative E…」 ↗
人物
米国のジャーナリスト・批評家(1880-1956)
「経済成長は、必ずしも人々の幸福を高めない」

— リチャード・イースタリン Easterlin (1974)「イースタリンのパラドックス」

国が豊かになっても幸福が上がらないのは比較のため

心理学では
この名言は、幸福が豊かさの絶対量よりも、社会的比較(他人と比べて自分の位置を測ること)や期待水準(「これくらいは当然」と感じる基準)に左右されることを言い表している。Easterlinら(2010)は多数の国の長期データを分析し、十年単位で見ると経済成長と生活満足度の上昇がはっきりとは結びつかないことを報告した。またLuttmer(2005)は米国の世帯調査データを分析し、自分の収入が同じでも、近隣住民の収入が高い人ほど幸福感が低いことを見いだした。豊かさを測る物差しを他人との比較から自分にとって大切なものへ移すことが、満ち足りた暮らしにつながる。 参考:Easterlinら(2010)「The Happiness-Income Paradox Revis…」 ↗/Luttmer(2005)「Neighbors as Negatives: Relative E…」 ↗
人物
米国の経済学者(1926-)。幸福の経済学の創始者
「地位財(他人との比較で価値が決まる財)の追求は、幸福をもたらしにくい」

— ロバート・フランク 『Choosing the Right Pond』(1985)ほか

車や年収は比較で目減りし、健康や自由は目減りしない

心理学では
フランクの言う地位財とは、社会的比較(他人と自分を比べて評価すること)によって価値が決まる財であり、周囲の水準が上がれば満足は目減りする。Solnick & Hemenway(1998)は大学の学生や教職員への調査で、人々が収入では他人より多いことを強く望む一方、休暇の長さではあまり比較を気にしないことを示した。またLuttmer(2005)は米国の大規模調査から、自分の収入が同じでも近隣住民の収入が高い人ほど幸福感が低いことを見いだした。年収や持ち物で人と競うより、健康や家族との時間、自由に使える時間といった比べても目減りしないものに力を注ぐことが、長続きする幸福につながる。 参考:Solnick & Hemenway(1998)「Is more always better?: A survey o…」 ↗/Luttmer(2005)「Neighbors as Negatives: Relative E…」 ↗
人物
米国の経済学者(1945-)。コーネル大学教授
「友人が成功するたびに、私の中の何かが少しずつ死ぬ」

Whenever a friend succeeds, a little something in me dies.

— ゴア・ヴィダル インタビューでの発言

皮肉・自嘲としての発言

比較心理の毒を自嘲的に告白した言葉

心理学では
この言葉は、自己評価維持モデル(身近な人の成功が自分にとって大切な分野で起きると、自尊心が揺さぶられるという理論)が描く心の動きを率直に言い当てている。Tesserら(1988)は友人同士と見知らぬ者同士を組にした実験で、自分にとって重要な課題で親しい相手に上回られたときほど、否定的な感情が強く表れることを示した。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の低い人ほど、隣で課題に取り組む他者の好成績に心を乱されやすかった。妬みを恥じて隠すより、まず「いま比べて痛んでいる」と気づき、比べる相手を昨日の自分に置き換えることが、比較の毒から距離をとる助けになる。 参考:Tesserら(1988)「Some affective consequences of soc…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
米国の作家・批評家(1925-2012)
「私たちが不安になるのは、自分の舞台裏を、他人のハイライト映像と比べてしまうからだ」

We struggle with insecurity because we compare our behind-the-scenes with everyone else's highlight reel.

— スティーブン・ファーティック 説教での言葉(2011頃)

SNS時代の比較の構造を突いた言葉

心理学では
この言葉は、心理学でいう上方比較(自分より恵まれて見える相手と比べること)が、偏った情報をもとに起こるしくみを言い当てている。他人の悩みや失敗は表に出にくく、目に入るのは成功や楽しい場面ばかりになりやすい。Jordanら(2011)は大学生を対象とした一連の調査で、人は他者の落ち込みや悩みを実際より少なく見積もりやすく、そう見積もる人ほど孤独感が強く、生活満足度が低いことを示した。またChou & Edge(2012)の大学生調査では、Facebookの利用期間が長い人ほど「他人は自分より幸せで良い人生を送っている」と感じる傾向があった。他人の投稿に心がざわついたら、その人にも見えない舞台裏があると思い出すことが、比較から距離を取る助けになる。 参考:Jordanら(2011)「Misery Has More Company Than Peopl…」 ↗/Chou & Edge(2012)「“They Are Happier and Having Bette…」
人物
米国の牧師(1980-)。エレベーション教会創設者
「上見て暮らすな、下見て暮らせ」

— 日本のことわざ

後段の「下を見る」処方は現代的には慎重な扱いが必要

上方比較をやめよ、という庶民の知恵

心理学では
このことわざは、上方比較(自分より恵まれた人と比べること)を控え、下方比較(より厳しい状況の人と比べること)で心を守る知恵である。Wills(1981)は、人が不安や挫折にさらされたとき、下方比較によって気分や自尊心を立て直すことを理論としてまとめた。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福な人ほど自分より優れた他者を目にしても気分や自己評価が揺らぎにくいことが示された。ただし下を見るときは相手を見下すのでなく、自分の恵まれた点に気づく感謝と組み合わせるとよい。SNSを眺めて焦りを感じたら、今日のよかったことを三つ書き出す習慣が心の安定につながる。 参考:Wills(1981)「Downward comparison principles in …」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
「名利に使はれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ」

— 吉田兼好 『徒然草』第38段

名声とお金に「使われて」(=振り回されて)、心静かなひとときもないまま一生を苦しめ続けるのは、まことに愚かなことだ ── 出世競争の渦中からではなく、そこから降りた場所から書かれた人生批評

心理学では
兼好の言う「名利に使はれ」る生き方は、心理学でいう外発的目標(富・名声・外見など、他者の評価や報酬に向かう目標)に人生をゆだねた状態にあたる。Niemiecら(2009)は大学卒業後の若者を追跡する縦断研究を行い、富や名声の目標を達成した人ほど幸福感が高いわけではなく、むしろ不安などの不調と関連することを示した。一方、人とのつながりや成長といった内発的目標の達成は、幸福感の高さと関連していた。またKasser & Sheldon(2009)は、時間的ゆとり(自由に使える時間が十分あるという感覚)を持つ人ほど幸福感が高いことを報告している。名利のための予定を一つ手放し、静かな時間を意識して確保することが、心の充足につながる。 参考:Niemiecら(2009)「The path taken: Consequences of at…」 ↗/Kasser & Sheldon(2009)「Time Affluence as a Path toward Pe…」 ↗
人物
鎌倉末期の随筆家(1283頃-1352頃)
「他人の心の中を見ないことで不幸になる人はいない。しかし、自分の心の動きを見張らない者は、必ず不幸になる」

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第2巻

注意を他人の内面詮索から自分の内面管理へ

心理学では
この名言は、注意の向け先を他人の内面の詮索(社会的比較:他人と自分を比べること)から、自分の心の動きへの気づき(マインドフルネス:いまの思考や感情にありのまま注意を向けること)へ移すよう勧めている。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象とした実験で、幸福感の低い人ほど、隣で課題を解く他者の出来に気分や自己評価が左右されやすいことを示した。またBrown & Ryan(2003)の相関研究では、自分の心の動きに気づいている人ほど幸福感が高く、否定的な感情が少なかった。他人の胸の内を推し量りそうになったら、いま自分が何を感じているかに一度注意を戻す。その小さな習慣が、比較に振り回されない落ち着きにつながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Brown & Ryan(2003)「The benefits of being present: Min…」
人物
ローマ皇帝・ストア派哲学者(121-180)
「評判よりも人格を大切にせよ。人格は本当のあなたであり、評判は他人があなたをどう思うかにすぎない」

Be more concerned with your character than your reputation, because your character is what you really are.

— ジョン・ウッデン 著書・講話より

他者の目ではなく自分の実質を磨く

心理学では
この名言は、心理学でいう「随伴的自尊感情」(他人の承認や評価によって上下する自己価値)に頼らず、自分の価値観に根ざした人格を育てることの大切さを示している。Kasser & Ryan(1996)は成人を対象とした質問紙調査で、名声やイメージなど他者からの評価を人生の目標として重視する人ほど、活力や自己実現の感覚が低く、身体の不調の訴えが多いことを報告した。またCrocker & Park(2004)は多くの研究を総括し、他者の承認を通じて自尊心を追い求めることには、不安の高まりや人間関係の損失といった代償が伴いやすいと論じている。一日の終わりに「人にどう見えたか」ではなく「自分は誠実に振る舞えたか」を振り返る習慣が、揺らがない自己を育てる助けになる。 参考:Kasser & Ryan(1996)「Further Examining the American Dre…」/Crocker & Park(2004)「The Costly Pursuit of Self-Esteem.」 ↗
人物
米国のバスケットボール指導者(1910-2010)。UCLAを10度の全米制覇に導いた名将
「世の人は 我を何とも言わば言え 我が成す事は 我のみぞ知る」

— 坂本龍馬 自作の歌として伝わる

世間の評価に関係なく、自分の仕事を貫く

心理学では
この歌が示すのは、社会的比較志向(自分を他人と比べて評価しがちな傾向)の低さと、自分の価値を世評に預けない姿勢である。Gibbons & Buunk(1999)はこの傾向の個人差を測る尺度を作り、比べがちな人ほど神経症傾向(不安や落ち込みやすさ)が高いことを示した。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生に課題を解かせる実験で、幸福感の高い人ほど、隣の人が自分より速く解いても自己評価が揺らぎにくいことを見いだした。ただし他人の助言は、評価ではなく情報として受け取るとよい。周りの声が気になる日は、昨日の自分より進んだ点を書き出すことが、自分の仕事に集中する助けになる。 参考:Gibbons & Buunk(1999)「Individual differences in social c…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
幕末の志士(1836-1867)。薩長同盟の仲介、海援隊
出典に諸説あり
「花は、隣の花と競おうとは考えない。ただ咲くだけである」

A flower does not think of competing with the flower next to it. It just blooms.

— 禅の言葉とされる 出典不詳

※禅語としての典拠は確認されていない

開花は競争ではなく、それぞれの自然な営み

心理学では
この名言は、社会的比較志向(他人と自分を比べて自分を評価しようとする傾向)から離れ、自分の営みに専念する姿を表している。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象に、隣で同じ課題を解く人の出来ばえを示す実験を行い、幸福感の高い人ほど自分より優れた他者の成績に自己評価や気分が左右されにくいことを示した。またVogelら(2014)は、SNSをよく使う人ほど上方比較(自分より恵まれた人との比較)が多く自尊心が低い傾向にあること、そうした投稿を見せると一時的に自尊心が下がることを報告している。人の様子が気になったときは、昨日の自分と比べる習慣を持つことが、自分らしく咲くことにつながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Vogelら(2014)「Social comparison, social media, a…」
「十人十色」

— 日本のことわざ(四字熟語)

好みも考え方も人それぞれである

心理学では
「十人十色」は、好みや価値観に個人差があるのは当然だという見方である。心理学でいえば、社会的比較(自分を他人と比べて評価すること)を、ひとつのものさしで行う意味を薄める考え方である。Gibbons & Buunk(1999)は、他人と比べる傾向の強さ(社会的比較志向)を測る尺度を作った。そのうえで、この傾向が強い人ほど神経症傾向(不安や落ち込みの感じやすさ)が高いことと関連すると報告した。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福な人ほど隣の人の出来の良し悪しに自己評価が左右されにくかった。人との違いに気づいたときは、優劣ではなく「色の違い」として受け止める。それが、自分の基準で日々を味わう余裕につながる。 参考:Gibbons & Buunk(1999)「Individual differences in social c…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
「蓼食う虫も好き好き」

— 日本のことわざ

何を好むかは人それぞれで、優劣はない

心理学では
このことわざは、好みの良し悪しを他人の物差しで決めない姿勢、つまり社会的比較志向(自分と他人を比べやすい傾向)の低さに通じる。Lyubomirsky & Ross(1997)は、幸福感の高い学生と低い学生に課題に取り組ませ、隣の人の出来を見せる実験を行った。その結果、幸福な人ほど他人の出来によって気分や自己評価が揺れにくいことを示した。またWhiteら(2006)の調査では、他人と頻繁に比べる人ほど、ねたみや後悔などの否定的な感情を抱きやすいことが報告されている。自分の「好き」を他人の基準で測り直さず、選んだものを素直に味わうことが、日々の満足を守る助けになる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Whiteら(2006)「Frequent Social Comparisons and De…」 ↗
「山高きが故に貴からず、樹有るを以て貴しとす」

— 『実語教』 平安末期から庶民教育に用いられた教訓書

「人肥えたるが故に貴からず、智有るを以て貴しとす」と続く

外形の大きさではなく、中身が価値を決める

心理学では
この名言は、心理学でいう外発的目標(富・名声・外見など、他人の目に映る価値)と内発的目標(成長・人間関係・貢献など、中身の充実)の区別に重なる。Kasser & Ryan(1996)は成人を対象とした相関研究で、外発的目標を重視する人ほど活力や自己実現の感覚が低く、不安や抑うつが強いことを示した。Dittmarら(2014)のメタ分析でも、物質主義(物や地位を幸福の中心に置く価値観)が強い人ほど幸福感が低い傾向が確認されている。肩書きや持ち物を人と比べたくなったら、自分が育てている技能や人とのつながりという「樹」に目を向けることが、満ち足りた日々につながる。 参考:Kasser & Ryan(1996)「Further Examining the American Dre…」/Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」
出典に諸説あり
「あなたが唯一無二の存在であることを、いつも忘れずに。ほかのみんなと同じようにね」

Always remember that you are absolutely unique. Just like everyone else.

— マーガレット・ミード(とされる) 典拠不詳

※帰属に諸説あり

「特別さ」への執着をユーモアで相対化する

心理学では
この名言は、独自性欲求(人と違う特別な存在でありたい気持ち)の逆説を突き、誰もが唯一である以上、違いは優劣の証ではないと気づかせる。これはセルフ・コンパッション研究でいう「共通の人間性」(自分の特徴も弱さも人類に共通するものと捉える見方)に通じる。Neff(2003)は、この見方を含む自分への思いやりが強い人ほど、抑うつや不安が低いことを示した。またLyubomirsky & Ross(1997)が大学生を対象に行った実験では、幸福感の高い人ほど、隣の人の課題の出来に気分や自己評価を左右されにくかった。自分の個性を勝ち負けの材料ではなく「みんなが持つもの」の一つとして眺めることが、比べる苦しさから離れる助けになる。 参考:Neff(2003)「The Development and Validation of …」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
米国の文化人類学者(1901-1978)。『サモアの思春期』
出典に諸説あり
「ただ幸福になりたいのなら、簡単に叶うだろう。しかし人は、他人より幸福になりたいと望む。だから難しい」

If we only wanted to be happy, it would be easy; but we want to be happier than other people.

— モンテスキュー(とされる) 典拠不詳

※帰属に諸説あり

幸福を困難にしているのは「より」の一語である

心理学では
この名言は、社会的比較(自分の状態を他人と比べて評価すること)と地位財志向(絶対的な豊かさより他人との差を重んじる傾向)の落とし穴を突いている。Solnick & Hemenway(1998)の調査では、絶対額が減っても周囲より多く稼げるほうを選ぶ人が少なくなかった。他人より上を目指す幸福は、誰かが上がれば誰かが下がる奪い合いになる。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福な人ほど隣の人の出来の良さに気分や自己評価を左右されにくかった。満足を測る物差しを他人との差ではなく、昨日の自分や自分の価値観に置くことが、手の届く幸福につながる。 参考:Solnick & Hemenway(1998)「Is more always better?: A survey o…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
フランスの啓蒙思想家(1689-1755)。『法の精神』
出典に諸説あり
「謙遜とは、自分を低く評価することではない。自分について考える回数が減ることである」

Humility is not thinking less of yourself, it's thinking of yourself less.

— C・S・ルイス(とされる) リック・ウォレンによるルイス思想の要約(2002)が定型文の初出

※ルイス『キリスト教の精髄』の趣旨をウォレンが要約した文

謙虚さの本質は自己卑下ではなく自己没入からの解放

心理学では
ルイスの言う謙遜は、心理学でいう「低自我的(hypo-egoic、自分へのとらわれが薄い)」な状態に近い。Tangney(2000)も、謙虚さの核心を自己卑下ではなく「自分を忘れること」と整理している。Mor & Winquist(2002)のメタ分析(多数の研究の統合)では、自己注目(自分の状態や評価に意識を向けること)が強い人ほど、抑うつや不安が強いことが示された。また、Waymentら(2015)の研究では、自分と他者のバランスを保つ「静かな自我」が高い人ほど、幸福感も高かった。人と比べて落ち込みそうなときは、目の前の相手や作業に注意を向け直すことが、心を軽くする助けになる。 参考:Tangney(2000)「Humility: Theoretical Perspectives…」 ↗/Mor & Winquist(2002)「Self-focused attention and negativ…」 ↗/Waymentら(2015)「The Quiet Ego Scale: Measuring the…」 ↗
人物
英国の作家・批評家(1898-1963)。『ナルニア国物語』
「人は皆、有用の用を知りて、無用の用を知る莫きなり」

— 荘子 『荘子』人間世篇

「役に立つ」ものの価値は誰でも知っているが、「役に立たない」ものの価値(無用の用)を知る人はいない ── 曲がりくねって材木にならないからこそ切られずに大樹となった木の喩えで、有用性という単一のものさしを相対化する

心理学では
この言葉は、物や時間を「役に立つか」という手段的価値(目的のための道具としての価値)だけで測る見方を戒めている。Toniettoら(2021)は、余暇を「時間の無駄」とみなす信念を調べ、そう考える人ほど余暇を楽しめず、幸福感が低く、抑うつやストレスが高いことを調査で示した。実験でも、余暇は非生産的だと説く文章を読んだ人は、その後の楽しい活動をあまり楽しめなかった。有用性のものさしを外したときにこそ、休息や遊びは心を満たす。予定表に目的のない時間をあえて残しておくことが、日々の豊かさにつながる。 参考:Toniettoら(2021)「Viewing leisure as wasteful underm…」 ↗
人物
戦国時代の思想家(BC369頃-286頃)。道家
「ヤンテの掟 ──「自分が特別だと思ってはならない」」

Janteloven (the Law of Jante).

— アクセル・サンデモーセ 小説『逃亡者はおのが轍を横切る』(1933)で定式化

風刺として書かれた点に注意。近年の北欧では乗り越えの対象としても語られる

北欧の田舎町の暗黙律を10か条にした風刺。「自分を特別と思うな」は、突出を許さない同調圧力として批判される一方、過度な自己顕示や地位競争を抑え、平等と信頼を支えてきた側面も指摘される

心理学では
この掟は、心理学でいう社会的比較志向(自分を他人と比べて位置づけようとする傾向)を弱め、地位競争から降りる姿勢と言い換えられる。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象にした実験で、幸福感の高い人ほど、隣の人の方が成績がよいという情報に気分を左右されにくいことを示した。またOishiら(2011)は米国の長期調査データを分析し、所得格差が小さい年ほど人々の幸福感が高く、それが公正さや他者への信頼の感覚と結びついていることを見いだした。ただし、他人の突出を責める同調圧力としてではなく、自分の比較癖を手放す戒めとして用いるとよい。誰かと比べて焦ったときは、昨日の自分との違いに目を向けることが心の安定につながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Oishiら(2011)「Income Inequality and Happiness」
人物
デンマーク生まれのノルウェーの作家(1899-1965)
「行いは我にあり、毀誉は他人の主張。我関せずと存じ候」

— 勝海舟 『氷川清話』(晩年の談話録)

自分にできるのは行動まで。褒めるか貶すかは他人の仕事であって、自分の管轄外である ── 幕臣として「裏切り者」と罵られ続けた男の、評価との距離の取り方

心理学では
この名言は、心理学でいう「自尊心の随伴性」(自分の価値を何に結びつけているか)の考え方で読み解ける。Crocker & Wolfe(2001)は、他者からの承認に自己価値を預けている人ほど、周囲の評価が上下するたびに自尊心や気分が揺さぶられやすいと論じた。またLyubomirsky & Ross(1997)は、課題中に隣の参加者の出来を操作する実験を行った。その結果、幸福感の高い人は他人との比較に左右されにくく、幸福感の低い人ほど比較情報に敏感に反応した。行いという自分で決められる部分に軸を置き、評判を相手の領分として手放す姿勢は、心の安定と結びつく。人の評価が気になったときは、「いま自分にできる行動は何か」へ問いを戻すことが助けになる。 参考:Crocker & Wolfe(2001)「Contingencies of self-worth.」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
幕末〜明治の政治家(1823-1899)。江戸無血開城を成し遂げた
「人の目を気にして小さくなってるなんて、もったいない。自分がハッピーかどうかで決めればいい」

— 渡辺直美 インタビュー等での発言の趣旨

体型への嘲笑を、世界で活躍する武器に変えたエンターテイナーの信条。評価の審級を「人の目」から「自分のハッピー」へ移す ── 外見への同調圧力が強い社会での、実演付きの独立宣言

心理学では
この言葉は、心理学でいう「自己価値の随伴性」(自分の価値を何に懸けているか)を、人の評価から自分の内側の基準へ付け替えることにあたる。Crocker & Wolfe(2001)は、見た目や他者の承認のような外的な領域に自己価値を懸けるほど、出来事しだいで自尊心が上下し、不安定になりやすいと論じた。またLyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福度の高い学生ほど隣の人の出来の良し悪しに気分や自己評価を左右されにくかった。一方、幸福度の低い学生ほど他人との比較に振り回されることが示された。人の目が気になったときは「自分はこれで楽しいか」と問い直し、その答えを選択の物差しにする。 参考:Crocker & Wolfe(2001)「Contingencies of self-worth.」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
日本のお笑いタレント(1987-)。NYを拠点に世界的な支持を得る
出典に諸説あり
「私は、すべての凡庸なる者たちの守護聖人だ」

I am the patron saint of mediocrities.

— サリエリ(映画『アマデウス』) ミロス・フォアマン監督(1984)

史実のサリエリとモーツァルトの確執は誇張とされる

努力の人サリエリが、天才モーツァルトへの嫉妬に生涯を焼かれていく物語の結び。彼を壊したのはモーツァルトではなく、「比較」そのものだった ── 隣の才能との比較が人生をどう毒するかを描いた、映画史上最も痛切な嫉妬の教材

心理学では
サリエリの悲劇は、心理学でいう上方比較(自分より優れた人との比較)が慢性化した姿として読める。Tesser(1988)の自己評価維持モデル(身近な人が自分にとって大切な領域で優れていると、自己評価が脅かされるという理論)は、当代一流の成功者だった彼を苦しめたのが、同じ音楽の道で隣にいた天才だったことをよく説明する。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人ほど、隣で同じ課題に取り組む他者の出来ばえに自分の評価や気分を左右されにくかった。他人ではなく昨日の自分と比べる習慣を持つことが、比較の毒から心を守る助けになる。 参考:Tesser(1988)「Toward a Self-Evaluation Maintenan…」 ↗/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
人物
アカデミー作品賞受賞作(史実には脚色が多い)
「憧れるのを、やめましょう。憧れてしまっては、超えられない。今日一日だけは、彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」

— 大谷翔平 WBC決勝・アメリカ戦前の声出し(2023)

スピーチ全文は報道で広く共有された

スター揃いの相手を前に、大谷が仲間に語った言葉。憧れ(見上げる構え)は、相手を自分より上に固定する認知である ── 敬意は保ちつつ、試合の間だけ序列の前提を外す。比較の心理学をロッカールームで実装した歴史的スピーチ

心理学では
大谷の言葉は、心理学でいう上方比較(自分より優れた相手と比べること)の扱い方の核心を突いている。憧れは相手を「手の届かない存在」として上に固定する見方であり、自己効力感(自分はやれるという感覚)をしぼませやすい。Lockwood & Kunda(1997)は大学生を対象にした実験で、際立って優れた手本の人物は、その成功が自分にも届きうると感じられるときには自己評価を高めるが、もう届かないと感じられるときにはかえって自己評価を下げることを示した。相手への敬意は保ったまま、挑む場面だけは「超えうる相手」と見直すことが力を引き出す。大事な試合や商談の前には、相手の肩書きではなく、自分が勝つためにすべきことへ意識を向けることが助けになる。 参考:Lockwood & Kunda(1997)「Superstars and me: Predicting the …」 ↗
人物
日本のプロ野球・MLB選手(1994-)。投打二刀流で歴史を塗り替え続ける
「「トマトとメロン」の書 ── トマトがメロンになろうとせず、トマトのままで本物であることの価値を説いた作品(本文は原典でご確認ください)」

— 相田みつを 『にんげんだもの』ほかに所収

著作権保護期間中のため本文は掲載せず、作品の紹介に留めた(管理:相田みつを美術館)

高級なメロンを羨んでトマトが背伸びをすれば、トマトの良さごと失われる ── 品種の比較の無意味さを通して、自分という「種」のままで熟すことを促す書。仏教の「桜梅桃李」(桜は桜、梅は梅として咲く)の八百屋版ともいえる親しみやすさが持ち味

心理学では
この書が説くのは、社会的比較(他人を物差しにして自分を測ること)から離れ、自分に固有の強みを生かす生き方である。Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福度の高い学生ほど、隣で自分より上手に課題をこなす人を見ても、気分や自己評価が揺らぎにくかった。またSeligmanら(2005)の介入研究では、自分らしい強み(その人に特有の長所)を新しいやり方で使う課題に、幸福感を高めて抑うつを和らげる効果があり、その効果は長く続いた。他人のメロンを羨む代わりに、自分というトマトの持ち味を一つ見つけ、今日の仕事や暮らしで使ってみる。その積み重ねが、自分のままで熟す毎日につながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Seligmanら(2005)「Positive Psychology Progress: Empi…」
人物
日本の詩人・書家(1924-1991)。「書の詩人」と呼ばれ、没後にミリオンセラーとなった

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