2026.08.09

はぴテク相談室:自分へのご褒美じゃ、埋まらないもの

相談者

はぴテクさん、ちょっと聞いてもらえますか。最近、なんだか毎日が空っぽな感じがして…。

はぴテクさん
はぴテクさん

空っぽ、ですか。もう少し詳しく教えてもらえますか?

相談者

仕事はちゃんとやってるし、休みの日は自分を甘やかしてるんです。マッサージに行ったり、美味しいものを食べたり。「自分へのご褒美」ってやつです。でも、その時は気持ちいいのに、終わるとまた空っぽに戻っちゃう。

はぴテクさん
はぴテクさん

なるほど。自分を大切にすること自体はとても良いことですよ。ただ、実はその感覚、研究で説明がつくかもしれません。

相談者

え、そうなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

2023年に発表された研究で、オーストラリアの成人671名を対象に、面白い実験が行われたんです。参加者を4つのグループに分けて、15日間、それぞれ違う行動をしてもらいました。

相談者

どんなグループですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

①他人への親切をする人、②自分への親切をする人、③外向的に振る舞う人、④芸術や読書などに触れる人、の4つです。そして「行動している最中に何を感じたか」を何度も記録してもらったんです。

相談者

あ、②の「自分への親切」って、まさに私がやってることだ。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。それで結果がどうだったと思いますか?

相談者

うーん…どれもポジティブな行動だから、どれも同じくらい良い気分になりそうですけど。

はぴテクさん
はぴテクさん

それが違ったんです。「意味を感じる」「自分に自信が持てる」「うまくやれている感覚」——この3つは、①他人への親切をしたグループだけが、他のすべてのグループより高かったんです。

相談者

えっ、自分へのご褒美より、他人への親切のほうが?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。しかも面白いのは、他人のための行動なのに、高まったのは「自分への自信」だったこと。研究者たちは、自分の行動が誰かの役に実際に立ったこと、そして「ありがとう」と言われる経験が効いたのでは、と考えています。

相談者

ああ…。マッサージは気持ちいいけど、誰かに「ありがとう」とは言われないですもんね。

はぴテクさん
はぴテクさん

いい気づきですね。あなたの言う「空っぽ」は、快適さが足りないんじゃなくて、意味や手応えが足りないのかもしれません。心理学では、気分の良さを「ヘドニック」な幸せ、意味や充実を「ユーダイモニック」な幸せと呼んで区別するんですが、ご褒美で満たされるのは主に前者なんです。

相談者

なるほど…。じゃあ私、何をすればいいんでしょう。ボランティアとか始めるべきですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そんなに大げさじゃなくていいんですよ。この実験で参加者がやったのは「家族に夕食を作る」「家族の家事を代わりにやる」「後ろに並んでる人のコーヒー代を払う」——そのくらいの、日常の小さな親切です。

相談者

それだけでいいんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それだけでいいんです。ちなみにこの研究、もうひとつ発見があって。「人とのつながり」の感覚は、親切をした人と、ただ外向的に振る舞った人で、差がなかったんです。

相談者

つまり…つながりだけなら、人と関わるだけでも得られる?

はぴテクさん
はぴテクさん

その通り。でも親切なら、つながりに加えて、意味と自信までついてくる。一つの行動で3つ手に入る、いわば「一石三鳥」なんです。

相談者

ご褒美をやめる必要はないけど、そこに小さな親切を足してみる、ってことですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそれです。今週、何かひとつできそうなこと、ありますか?

相談者

そういえば、実家の母がスマホの設定で困ってたなあ…。週末、手伝いに行ってみます。

はぴテクさん
はぴテクさん

いいですね。きっと「ありがとう」が返ってきますよ。その瞬間の気持ちを、ぜひ味わってみてください。

相談者

はい!なんだか、空っぽの正体が分かった気がします。ありがとうございました!

■ 今日のまとめ

  • 「自分へのご褒美」で得られるのは主に快適さ。「意味」「自信」「うまくやれている感覚」は、他人への小さな親切のほうが高めてくれる(4つのポジティブ行動を比較した実験の結果)
  • 他人のための行動なのに、上がるのは「自分への自信」。誰かの役に立った手応えと「ありがとう」が効いている可能性
  • 大げさなことは不要。家族の家事を代わる、誰かにコーヒーをおごる——日常の小さな親切で十分

■ 出典・注意事項

  • Regan, A., Margolis, S., Ozer, D. J., Schwitzgebel, E., & Lyubomirsky, S. (2023). What is unique about kindness? Exploring the proximal experience of prosocial acts relative to other positive behaviors. Affective Science, 4, 92-100.

  • 本研究の効果量は小さめです。ただし4条件すべてがポジティブな行動同士の比較(保守的な検証)だったことが一因と考えられます

  • 感情の評定は行為の後の振り返りによる報告のため、「親切は意味深いはずだ」という思い込みが影響した可能性は残ります

  • 対話はフィクションであり、研究結果を分かりやすく伝えるための創作です

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1
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