2026.09.20

はぴテク相談室:「人の目が気になって」着けるマスクと、つながりと、孤独感の話

相談者

職場でいまだにマスクを着けているんですが、正直「外したら何か言われそう」で着けているだけなんです。なんだか息苦しいし、職場で少し浮いている気もして、ちょっと孤独で…。

はぴテクさん
はぴテクさん

その息苦しさ、マスクの布のせいだけじゃないかもしれませんよ。ちょうど、学習院大学の宮崎先生が、約2,500人を週1回×4週間追いかけて、マスクと幸せの関係を調べた研究があるんです(宮崎, 2026)。

相談者

マスクと幸せ? 関係あるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

ポイントは「着けるかどうか」より「なぜ着けるか」なんです。この研究では動機を3つに分けています。
①人のため(うつさないように、周りを安心させたい)
②自分のため(自分がうつりたくない)
③人の目が気になるから(着けていないと否定的に見られそう)

相談者

私、完全に③です…。

はぴテクさん
はぴテクさん

正直でいいですね。結果はこうでした。
①の気持ちが強い人ほど、翌週の「人とつながっている感覚」が高くなっていました。それを通じて、前向きな気持ちが増え、孤独感が減っていました。
②は、幸せにも孤独感にもほぼ影響なし。
③は、職場のマスクを調べた調査で、つながっている感覚を下げて、孤独感を高める方向でした。
※「人とつながっている感覚」は、専門的には関係性欲求の充足といいます。お互いを気にかけ、支え合うつながりを持ちたいという、人間の基本的な欲求が満たされることです(Ryan & Deci, 2017)

相談者

えっ、じゃあ私の孤独感って、マスクの着け方のせいなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そこは慎重にいきましょう。効果はとても小さいと著者自身が書いていますし、孤独感には他にもたくさんの要因があります。ただ、ヒントにはなります。ここからは私の解釈ですが、③で着けているとき、周りの人は「自分を評価してくる人」に見えます。①のとき、周りの人は「大切にしたい人」に見える。同じように他人を意識していても、まなざしの向きが逆なんですね。

相談者

確かに…周りを監視役みたいに見ていたかもしれません。でも、日本人ってコロナ禍でみんなマスクしていましたよね。思いやりのある国民ってことじゃないんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そこが面白いところで。日本人は本当によくマスクをしていました。一方で、寄付や人助けの国際調査では、日本は低めに出ることが多いんです。つまり、行動は同じでも、中身が「人のため」とは限らない。人の目を気にして着けていた人も多かったのかもしれません。だとしたら、もったいないなと思うんです。

相談者

もったいない?

はぴテクさん
はぴテクさん

同じ行動をしているのに、幸せにつながる着け方と、つながらない着け方があるからです。他者のためを思って行動すると、行動した本人の幸せが高まりやすく、良い人間関係も築かれやすいことが分かっています(Crocker et al., 2017)。どうせ着けるなら、幸せにつながる方がいいですよね。

相談者

じゃあ、明日から「人のため」と思って着ければ、幸せになれますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

正直に言うと、そこまでは確認されていません。「同じ人が思いやりの動機を強めたら、翌週その人の幸せが上がる」という変化は、この研究では出なかったんです。見えたのは、普段から人のためを思ってマスクをする「人」が、つながりを感じやすく、幸せを感じやすいという傾向です。著者は、調査が4週間と短かったことを理由の一つに挙げています。

相談者

即効性のある魔法ではないんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。ただ、幸せな人ほど人のためを思いやすい、という逆向きの流れも見つかっています。思いやりと幸せは、お互いを高め合う循環になっていると言われているんです(Hui, 2022)。小さくても回し始める価値はあります。マスクは毎日繰り返す行動なので、小さな差が積み重なっていく可能性がある、と著者も述べています。

相談者

具体的には、何をすればいいでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

マスクを着ける瞬間に、誰か一人の顔を思い浮かべてみてください。「この人にうつさないように」「この人が安心できるように」。それだけです。

相談者

それならできそうです。隣の席の先輩、お子さんが生まれたばかりなんですよね。

はぴテクさん
はぴテクさん

いいですね。そう思った瞬間、先輩は「自分を評価してくる人」から「守りたい人」に変わります。それが、つながりの感覚の入口です。これはマスクに限りません。あいさつでも資料作りでも同じです。

相談者

「怒られないように」じゃなくて「相手が助かるように」、ですね。同じ作業でも気分が全然違いそうです。

はぴテクさん
はぴテクさん

その通りです。行動を変えなくても、そこに込める気持ちは自分で選べます。明日のマスク、ごきげんに着けてみてくださいね。

■ 今日のまとめ

  • 同じマスクでも、動機によって幸せへの影響が違う。「人のため」はつながりの感覚を通じて前向きな気持ちや孤独感の低さに結びつき、「人の目が気になるから」は逆方向に働く可能性がある
  • ただし効果はとても小さく、「気持ちを変えればすぐ幸せになる」とまでは確認されていない。思いやりと幸せは、少しずつ高め合う循環として捉えるのがよさそう
  • マスクを着ける瞬間に誰か一人の顔を思い浮かべる。「評価してくる人」を「大切にしたい人」に変えるまなざしが、つながりの入口になる

■ 出典・注意事項

  • 宮崎 弦太 (2026). マスク着用の向社会的動機と主観的幸福感および孤独感――2つの短期縦断調査による検討―― 心理学研究, 97(3), 131-141. https://doi.org/10.4992/jjpsy.97.25005

  • Crocker, J., Canevello, A., & Brown, A. A. (2017). Annual Review of Psychology, 68, 299-325.

  • Hui, B. P. H. (2022). Current Opinion in Psychology, 44, 231-236.

  • Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2017). Self-determination theory. The Guilford Press.

  • 対象は日本の20代〜50代の調査モニターで、「人の目が気になるから」の悪影響が確認されたのは、未婚の就業者を対象に職場でのマスクを調べた研究2です

  • 「日本人の利他的な行動は国際調査で低めに出ることが多い」という話題は、この論文の内容ではありません

  • 「まなざしの向き」の解釈や、マスク以外の場面への応用、具体的な実践方法は、論文を踏まえたはぴテクさんの提案で、論文で検証されたものではありません

  • 相談者は架空の人物です。孤独感やつらさが続く場合は、専門家への相談もご検討ください

投稿者による補足(1件)
補足 1

論文紹介はこちら😊
「誰かのため」のマスクは、つながりと幸せに結びつく
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-20-1789888200/

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