2026.10.02

はぴテク相談室:「ひとりの時間が一番わたし」…でも誘われちゃった

相談者

はぴテクさん、こんにちは。42歳、週末は一人で陶芸をするのが何よりの楽しみなんです。ろくろを回していると「あ、これが本当の自分だな」って感じるんですよ。それが最近、近所の陶芸サークルに「一緒にやりませんか」と誘われて…。嬉しいんですけど、人と一緒だと、あの「自分らしさ」が薄まっちゃう気がして迷ってるんです。贅沢な悩みですよね(笑)

はぴテクさん
はぴテクさん

いえいえ、素敵な悩みですよ! 「これが本当の自分だ」と感じられる活動を持っているって、それだけでとても豊かなことです。心理学ではその感覚を「パーソナル・エクスプレッシブネス(personal expressiveness)」と呼んでいて、幸せの土台のひとつと考えられています。ちょうど最近、この「自分らしさ実感」と「人と一緒かどうか」の関係を大人を対象に調べた研究があるんですよ。

相談者

えっ、まさに私の悩みそのものじゃないですか。どんな研究なんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

2つの調査からなる研究です。1つめは、23〜78歳の大人294人に「自分にとって大切で、自分を表しているような活動」を1つ挙げてもらい、それが「一人でやるもの」「グループでやるもの」「両方」のどれかと、その活動でどれくらい「本当の自分だ」と感じるかを答えてもらったものです。

相談者

で、どうだったんですか? やっぱり一人のほうが「自分らしさ」は強かった…とか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それが、意外なことに、一人でやる活動・グループでやる活動・両方、どれも「自分らしさ実感」の平均はほぼ同じだったんです。年代で分けても差はありませんでした。つまり、この研究の範囲では「一人でやるか、みんなでやるか」で自分らしさの強さが決まる、という証拠は見つからなかったんですね。

相談者

へえ〜! 一人じゃないと薄まる、ってわけじゃないんですね。ちょっとホッとしました。

はぴテクさん
はぴテクさん

ちなみに、「人とのつながりが中心の活動」(友人や家族と過ごす、ボランティアなど)は、数字の上では少し高めに見えたんですが、人数が少なくて統計的にはっきりとは言えない程度でした。なので「一緒だと薄まる」どころか、少なくとも「薄まるとは言えない」というのが1つめの結論です。

相談者

なるほど。じゃあ2つめの調査は?

はぴテクさん
はぴテクさん

こちらが面白いんです。52人の大人にスマホで1日6回、1週間にわたって「今、何をしていて、どれくらい自分らしいと感じているか」「今、誰と一緒にいるか」を答えてもらいました。その瞬間瞬間の記録を集めたんですね。

相談者

リアルタイムで記録するんですね。それで?

はぴテクさん
はぴテクさん

まず、「自分らしさ実感」の変動の約4分の3は、「人による違い」ではなく「同じ人の中での、瞬間ごとの違い」でした。同じ人でも、時間帯や場面によって「今はすごく自分らしい」「今はそうでもない」と揺れ動くということです。そしてその揺れを見ると、その人の普段より「自分らしさ」が高い瞬間ほど、誰かと一緒にいる確率が高かったんです。一人のときの平均と比べると、誰かといるときの平均のほうが少し高めでした。

相談者

えっ、一人の時間こそ「わたし」だと思ってたのに、誰かと一緒の瞬間に「自分らしい」と感じやすいんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

あくまで「そういう瞬間が重なりやすかった」という関連です。ここは大事なところで、「人と一緒にいるから自分らしくなる」のか「自分らしくいられる時間に人といることを選んでいる」のか、方向はこの研究では決められないと著者もはっきり書いています。それに、さらに次の記録のタイミングを見ると、誰かといた人はその次も誰かといることが多く、「自分らしい瞬間」→「誰かと一緒」→「その後も一緒」というつながりが、日常の中に自然に埋め込まれているようでした。

相談者

じゃあ、私がサークルで陶芸をしても「自分らしさ」が消えるわけじゃなくて、むしろ誰かと一緒の時間と「自分らしい瞬間」は相性が悪くないかもしれない、と。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう受け取ってよいと思います。この研究の著者は、大人になると「自分らしさ」は「どんな活動か」より「その瞬間をどう生きているか」に表れやすく、しかもそれは人とのつながりの中で起こりやすいようだ、とまとめています。論文のタイトルも「With Others, More Myself(他者とともに、もっと自分らしく)」なんですよ。もちろん、一人の陶芸の時間も大切な「自分らしさ」の時間であることは変わりません。どちらかを選ぶというより、両方をもっていい、ということですね。

相談者

なんだか勇気が出ました。一人の時間は守りつつ、サークルも試してみます。「ろくろを回す自分」を誰かと分かち合う瞬間が、どんな感じか楽しみになってきました!

はぴテクさん
はぴテクさん

いいですね! 一度行ってみて、「今、自分らしいな」と感じる瞬間が一人のときと比べてどうか、ご自身で観察してみてください。研究の人たちがやったように、ちょっと記録してみるのも面白いですよ。どちらの時間も、あなたの「本当の自分」の居場所になりますように。

■ 今日のまとめ

  • 大人294人の調査では、「一人でやる活動」と「みんなでやる活動」で「これが本当の自分だ」という実感の強さに違いは見られず、年代による差もなかった。
  • 1週間のリアルタイム記録では、「自分らしさ実感」は同じ人でも瞬間ごとに大きく揺れ、普段より高い瞬間ほど「誰かと一緒にいる」確率が高かった(あくまで「重なりやすい」という関連)。
  • 一人の時間を手放す必要はないけれど、「人と一緒だと自分らしさが薄まる」と決めつけなくてもよさそう。両方の時間を、自分らしさの居場所として持っていい。

■ 出典・注意事項

  • Waxler, E. A. (2026). With Others, More Myself: Personal Expressiveness as Identity Enactment in Adult Daily Life. Journal of Adult Development. https://doi.org/10.1007/s10804-026-09579-5

  • 本研究はいずれも相関研究(横断調査と経験サンプリング)であり、「人と一緒にいると自分らしくなる」といった因果関係は断定できません。著者自身も、瞬間ごとの関連の方向性は決められないと述べています。また調査2は52人と小規模な便宜サンプルで、「一人か誰かと一緒か」の二択で記録されているため、相手との関係の質などは区別されていません。

  • この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。

投稿者による補足(1件)
補足 1

「自分らしさ」は、誰かと一緒にいる時に感じやすい
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-02-1790898780/

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