2026.10.03

はぴテク相談室:決まりきった仕事に「遊び心」をひとつまみ

相談者

はぴテクさん、こんにちは。私、物流倉庫で商品を箱詰めする仕事をしています。職場の人はいい人ばかりで、仕事自体はきらいじゃないんです。ただ、やることも手順も時間も全部決まっていて、「今日もまた同じ一日かあ」と思うと、夕方にはどっと疲れちゃって。もっと楽しく働けたらいいのになあと思うんですけど、自分で変えられることなんてあるんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

こんにちは!「仕事はきらいじゃない、でも毎日が同じで疲れる」って、すごく正直で素敵な相談ですね。実はちょうどぴったりの研究があるんです。ノルウェーの海軍士官候補生57人に、帆船で北米へ向かう航海中、20日間毎日アンケートに答えてもらった研究なんですよ。帆船の仕事って、帆の操作や甲板掃除、夜の見張りなど、やることも順番も厳密に決まっていて、繰り返しが多いんです。つまり、あなたの「全部決まってる」状況に、けっこう近いんですよね。

相談者

へえ、帆船の上って意外と地味な仕事なんですね。それで、何を調べたんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

「プレイフル・ワーク・デザイン」というものを調べたんです。かみ砕いて言うと、「仕事の中身は変えられなくても、取り組み方に自分で遊び心を足す」ことです。研究では、これに2つのタイプがあるとしています。ひとつは「楽しさをつくる」。たとえば、長時間の力仕事にリズムをつけて歌いながらやる、作業の中にユーモアを見つける、みんなが楽しめる工夫を探す、といったことです。もうひとつは「挑戦をつくる」。たとえば、マストに登るときに「心拍数を落ち着かせたまま登れるか」と自分に小さなゴールを設定する、仕事を「わくわくする挑戦の連続」として見てみる、といったことですね。

相談者

楽しさと、挑戦。箱詰めで言うと、「鼻歌まじりにきれいに詰める」と「この棚は何分で終わらせられるか自分と勝負」みたいな感じでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそんなイメージです!しかも、やらされるんじゃなくて、自分で選んでやるというのが大事なポイント。研究では「競い合うけど、やらなきゃいけないからじゃなく、楽しいからやる」という項目で測っていました。さて、20日分・約1,000日分のデータを分析すると、こんな傾向が見えました。「楽しさをつくる」ことを普段より多くした日は、わくわく・やる気といった元気な前向き気分が高く、しかも疲労感が低かった。「挑戦をつくる」ことを多くした日も、前向き気分は高かった。ただし、こちらは疲労感とははっきりした関係が見られませんでした。

相談者

えっ、挑戦のほうは疲れが減らないんですか?ちょっと意外です。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。研究者たちの解釈では、「楽しさをつくる」は自分の持ち札(周りとのつながりや気分のよさなど、支えになる要素)を増やす働きが中心で、「挑戦をつくる」は自分で「やりがいのある負荷」を足す働きが中心だから、だそうです。負荷を足すぶん、疲れを直接減らす役割は弱いのかもしれませんね。ただ、ここからが面白いところで、2つを「同じ日に一緒に」やると、よさが強まる傾向があったんです。

相談者

一緒にやると強まる?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。「楽しさをつくる」と前向き気分の結びつきは、同じ日に「挑戦をつくる」こともよくやっていたときのほうが強かったんです。それから疲労感については、「楽しさをつくる」だけの日では疲れとのはっきりした関係が見えなかったのに、「挑戦」も一緒にやった日は、楽しさをつくるほど疲労感が低い、という関係が出ました。研究者たちは、ゲームが「ストーリーの楽しさ」と「クリアすべき目標」の両方でできていることにたとえて、楽しさと挑戦はセットで働きやすい、と考えています。ただし「なぜ組み合わせると強まるのか」の仕組みまでは、この研究では特定されていません。

相談者

なるほど……。じゃあ私なら、「同僚と今日のベスト梱包をゆるく見せ合う」とか「鼻歌しながら、この列は崩さずに詰め切るぞ」とか、楽しさと小さな目標を両方入れてみるのがよさそうですね。でも、そんなことして仕事の質は落ちないですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

いい質問!研究ではそこも見ていて、遊び心を足した日は、前向き気分が高まったり疲労感が下がったりすることを通じて、「今日は与えられた目標を達成できた」という本人の評価も高い傾向があったんです。「遊び=サボり」ではなさそう、というわけですね。ただし注意点もあります。まず、これは本人の自己評価で、上司や客観的な数字で測ったものではありません。それから、効果は「その日のうち」に見られたもので、翌日以降に持ち越される証拠はほとんどありませんでした。研究者たちも「遊び心は蓄積して効くというより、その日その時の体験を変えるものかもしれない」と慎重に書いています。

相談者

じゃあ、「一回やったら貯金になる」じゃなくて、「毎日ちょっとずつ、その日の味つけ」として考えるのがよさそうですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

その表現、とてもいいですね。それともうひとつ、研究者からのやさしい注意があります。「挑戦をつくる」は、自分で選んで、自分の過去と比べる、自分の上達を楽しむ形がいいだろう、ということ。人と比べる競争になりすぎると、協力の空気を壊したり、プレッシャーを増やしたりしかねないからです。さっきの「同僚とゆるく見せ合う」も、順位をつけるんじゃなくて、「お、今日のそれいいね」と笑い合う感じがちょうどよさそうですよ。あと、同じ遊び方に慣れてくると新鮮さが薄れるかもしれない、とも書かれているので、たまに遊び方を変えてみるのもおすすめです。

相談者

なんだか明日の箱詰めがちょっと楽しみになってきました。やることは変えられなくても、「どうやるか」は私のものなんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そのとおり!この研究のいちばんのメッセージは、「決められた仕事の中にも、自分で選べる小さな余白がある」ということだと思います。明日はぜひ、鼻歌と小さなゴールをひとつまみ。無理のない範囲で試して、また様子を聞かせてくださいね。

■ 今日のまとめ

  • 仕事の中身を変えられなくても、「楽しさをつくる」「挑戦をつくる」という取り組み方の工夫(プレイフル・ワーク・デザイン)は自分で選べる。研究では、そうした日ほど前向きな元気な気分が高い傾向があった。
  • 「楽しさをつくる」は疲労感の低さとも関係していたが、「挑戦をつくる」単独では疲労感とのはっきりした関係は見られなかった。2つを同じ日に組み合わせたときに、前向き気分・疲労感の両面でよさが強まる傾向があった。
  • 効果は「その日のうち」に見られたもので、翌日以降への持ち越しはほぼ確認されていない。挑戦は人との競争ではなく、自分で選んだ・自分と比べる小さな目標にするのが研究者のすすめ。

■ 出典・注意事項

  • Bakker, A. B., Hetland, J., Scharp, Y. S., Olsen, O. K., & Espevik, R. (2027). The duality of playful work design: A diary study of designing fun and competition. Journal of Business Research, 218, 116566. https://doi.org/10.1016/j.jbusres.2026.116566

  • 本研究はノルウェー海軍士官候補生57人を対象にした20日間の日誌調査(約1,046日分のデータ)で、因果関係を証明する実験ではありません。「遊び心を足したから気分がよくなった」と断定はできず、あくまで同じ日の中での関連(相関)を示したものです。

  • 対象は若い士官候補生で、業績評価も含めすべて本人の自己報告です。一般の職場にそのまま当てはまるかは慎重に見る必要がある、と著者ら自身も述べています。

  • この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。

投稿者による補足(1件)
補足 1

研究自体の紹介はこちら😊
仕事に「楽しさ」と「ちょい競争」を混ぜると、幸せに成果が出る😊
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-03-1790969520/

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