2026.10.10

はぴテク相談室:なでなくても、そこにいるだけで?——教室で静かに眠る犬と不安の話

相談者

大学のゼミで発表やディスカッションがあると、始まる前から心臓がバクバクして、ノートを取る手が止まっちゃうんです。最近キャンパスで「セラピードッグに会える日」があるって聞いて、行ってみたいんですけど…私、人がいっぱいいる中で前に出て犬をなでに行くのが恥ずかしくて。部屋の隅っこから眺めてるだけって、やっぱり意味ないですよね?

はぴテクさん
はぴテクさん

ゼミ前のドキドキ、よく分かります。しかも「犬に会いたいけど前に出るのは恥ずかしい」って、すごく正直で素敵な悩みですね。実はちょうど、その「眺めてるだけ」に光を当てた研究があるんですよ。チリの大学で行われたもので、いつもどおりの授業の間、訓練された犬が教室の前のほうで静かに寝そべっているだけ。学生はなでたり遊んだりしない、という条件で不安の度合いを調べたんです。

相談者

え、なでないんですか? それで何か変わるものなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

結果から言うと、犬がいた教室の学生は、犬がいなかった教室の学生より、「今この瞬間の不安(状態不安と呼びます)」の得点が低めでした。しかも授業の前後で見ると、犬がいた教室では不安が下がる方向に動き、犬がいなかった教室では横ばいか、少し上がる傾向だったんです。獣医学部でも法学部でも、似た動きが見られました。

相談者

ただそこで寝てるだけなのに…なんだか不思議。犬って何をしてくれてたんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究者たちはいくつか「こういう理由かも」と考えています。ひとつは、犬が「評価しない存在」だということ。教室って、発表や成績、周りとの比較など、いつも誰かに見られている感じがありますよね。そこに、何も採点せず、ただ穏やかに寝ている存在がいる。それが「評価されないサポート」として働いて、教室の空気を少しやわらげたのでは、という考え方です。ただしこれはあくまで解釈で、この研究で「なぜ」までは測れていないんですよ。

相談者

それなら、私みたいに隅っこで眺めてるタイプでもよさそうですね。ちょっと安心しました。ちなみに私、もともと心配性なんですけど、犬のおかげで性格まで変わったりしますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そこは研究者もとても慎重でした。この研究では「もともと不安になりやすい傾向(特性不安)」の得点も、犬がいた教室のほうが低かったんです。でも研究者は「1回の授業で性格の土台が変わったとは考えにくい」と言っています。たぶん、その瞬間に気持ちが軽くなったことで、自分のことを少しやさしめに答えたんだろう、と。だから一番信頼できるのは「その場の不安が軽かった」というほうの結果なんです。性格を変える魔法ではなく、「今日のこの時間」を少し楽にしてくれるかもしれないもの、と思っておくのがちょうどいいと思います。

相談者

なるほど。じゃあ、これって「犬のおかげ」って言い切っていいんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

いい質問! 実はそこが大事なところで、この研究は学生をくじ引きで「犬あり」「犬なし」に分けたわけではなく、もともとあるクラス単位で分けています。だから「犬がいた」以外の違いが影響した可能性は消しきれません。実際、犬なしのクラスのほうが授業前から不安がやや高めでした。それに、不安は自己申告のアンケートだけで測っていて、犬も1頭だけ、測ったのもその授業の直後だけです。なので正確には「犬の静かな存在と、不安の低さに関連があった」までで、「犬が不安を下げた」と断言はできないんです。

相談者

ちょっと冷静になりました(笑)。でも、行ってみる価値はありそうですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう思います。この研究の犬は、小さい頃から大学の環境に慣れていて、ハンドラーさんがそばについている訓練された犬でした。キャンパスのイベントも、たぶん似た条件ですよね。なでに行くかどうかは、その日の気分で決めていい。研究では誰もなでていないのに、不安が下がる方向だったんですから。「犬がいる空間に、自分のペースでいる」だけで、もう十分スタート地点です。ただ、この研究には犬が苦手な人やアレルギーのある人は参加していないので、もし少しでも無理を感じたら、距離をとるのも大事ですよ。

相談者

自分のペースでいい、って言われると気が楽です。ゼミの前にその部屋に寄ってみようかな。

はぴテクさん
はぴテクさん

いいですね。もうひとつ付け加えると、この研究は特別なセラピールームではなく、いつもどおりの授業の中で行われたのが特徴なんです。生活の中にそっと混ざる、お金も手間もあまりかからない工夫として、研究者は注目していました。あなたにとっての「隅っこで眺めるだけ」も、立派な参加の形。もし行ってみて「ちょっと落ち着いたかも」と感じたら、それを自分の心のメモに書き足しておいてください。それがウェルビーイングを育てる小さな一歩になりますよ。

相談者

ありがとうございます。寝てる犬を遠くから眺めて、こっそり深呼吸してきます。

■ 今日のまとめ

  • チリの大学の研究では、訓練された犬が授業中に静かにいるだけの教室で、学生の「その場の不安」が低めで、授業の前後で下がる方向に動いた。なでたり遊んだりする必要はなかった。
  • 「性格が変わった」とまでは言えない。研究者も、信頼できるのは「その場の不安」の結果だと慎重に述べている。
  • くじ引きでクラスを分けた研究ではなく、自己申告・犬1頭・直後の測定のみなので、「関連があった」までで「犬が不安を下げた」とは断定できない。

■ 出典・注意事項

  • Cavieres, M.; Urrutia, A.M.; Chavez, G.; Cañon-Jones, H. Beyond Direct Touch: Passive Canine Presence Is Associated with Lower Anxiety in South American University Students. Pets 2026, 3, 45. https://doi.org/10.3390/pets3040045

  • 本研究は参加者を無作為に割り付けていない準実験研究であり、犬の存在と不安の低さの「関連」を示したもので、因果関係を断定することはできません。不安は自己申告のアンケート(STAIスペイン語版)のみで測定され、犬は1頭、測定は授業直後のみ、参加者はチリの一大学の学生127名です。犬アレルギーや犬恐怖症のある人は研究に参加していません。

  • この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。

投稿者による補足(1件)
補足 1

研究自体の紹介はこちら😊
犬がただ教室にいるだけで、不安は下がる
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-10-1791569400/

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