はぴテク相談室:子育て大好き!でも、気づけば「がんばらなきゃ」になってる?
はぴテクさん、聞いてください〜。4歳の娘がいる父親です。子育てが本当に楽しくて、休みの日は公園、絵本、おやつ作り、と全部やりたい派なんです。ただ最近、妻に「ちょっと休んだら?」と言われて。自分でも、娘と離れると「もっと何かしてあげなきゃ」ってソワソワしちゃうんですよね。これって、いいことなんでしょうか?
素敵なお父さんですね!まず、子育てが楽しいって感じられているのは、それ自体がとても幸せなこと。ただ、その「ソワソワ」のお話、ちょうどぴったりの研究があるので、一緒に見てみましょうか。2026年に日本の未就学児(3〜6歳)の親1000人(お母さん519人、お父さん481人)を対象に行われた調査で、「子育てへの情熱」を2つのタイプに分けて調べたものなんです。
情熱に2つのタイプ?情熱って、多ければ多いほどいいんじゃないんですか?
そう思いますよね。でもこの研究が土台にしている考え方(「情熱の二元モデル」といいます)では、情熱には「調和的な情熱」と「強迫的な情熱」の2種類があるとされているんです。
「調和的な情熱」は、自分で選んで、やりたいからやる。やめたいときはやめられるし、やっているときも後も気持ちがいい。
「強迫的な情熱」は、やらずにいられない感じ。「〜しなきゃ」という内側や周囲からのプレッシャーに動かされて、ほかの生活とぶつかったり、気持ちが揺れたりしやすい。
ポイントは、この2つは正反対ではなく、同じ人の中に両方あってもおかしくない、ということです。実際にこの調査でも、2つは弱くですが一緒に高くなる傾向がありました。
あ……「娘と離れるとソワソワ」は、強迫的のほうに近い気がしてきました。ちょっとショックです。
あわてないで大丈夫(笑)。研究者自身がはっきり書いているのですが、「強迫的な情熱が高い=ダメな親」という読み方はしないでほしい、と。この調査では、強迫的な情熱は調和的な情熱とも、親自身の幸福感とも一緒に高くなる傾向があったんです。つまり、子育てにしっかり関わっているからこそ、そこに「〜しなきゃ」も混ざってくる、という姿が見えたということ。それは関わり方の一つの形であって、欠点というわけではないんですよ。
へえ、親が幸せだと、両方の情熱が高くなりがちなんですね。じゃあ何が違うんですか?
ここが研究の一番のポイントです。親から見たお子さんの「生活の質(QOL)」との関連を見ると、2つの情熱は逆の向きだったんです。
調和的な情熱が高い親ほど、お子さんのQOLを高く評価する傾向。
強迫的な情熱が高い親ほど、お子さんのQOLを低く評価する傾向。
そしてこの「逆向き」は統計的にもちゃんと違いがあると確認されました。研究者の解釈では、調和的な関わりは柔軟で子どもに合わせた応答につながりやすく、強迫的な関わりは硬くなったり、過干渉になったりしやすいのではないか、と。ただしここは「かもしれない」の段階で、親の関わり方の行動そのものは測っていません。
なるほど……。じゃあ、僕があれこれ全部やろうとするのは、娘にとって逆効果ってことですか?
そこは慎重にいきましょう。この研究は1回きりのアンケートで、「関連がある」ことは示していますが、「強迫的な情熱が子どものQOLを下げる」という因果関係は示せていないんです。研究者も「どちらが原因かは分からない」と繰り返し書いています。それに、お子さんのQOLを評価したのも親自身なので、同じ人が答えたことによる見え方のかたよりも否定できません。
だから「逆効果だ」と結論づけるのではなく、こう考えるのはどうでしょう。「子育てに関わる量」ではなく「関わり方の質」が、子どもの幸せに関係しているかもしれない、というヒントをもらった、と。
「量より質」かあ。具体的には、自分のどこを見ればいいんでしょう?
研究で使われた質問の雰囲気で言うと、「子育てに関わりたい気持ちを抑えるのが難しい」「子育てが自分を支配している感じがする」といった項目が強迫的な情熱に当たります。なので、ご自身にこう問いかけてみてください。
「今これをやりたいからやっている?それとも、やらないと落ち着かないからやっている?」
前者なら調和的、後者なら強迫的の色が濃いサイン。どちらが混ざっていてもいいんです。ただ、「やらないと落ち着かない」が強い日は、一度立ち止まって深呼吸するだけでも、関わり方の色が変わるかもしれません。
あ、それなら今日からできそうです。ちなみに、僕みたいなお父さんって珍しいんですかね?
実はこの調査では、お父さんのほうがお母さんより強迫的な情熱を高く答える傾向がありました。研究者は、日本では父親の子育て参加が「期待されているけれど、まだ当たり前ではない」状況だからかもしれない、と仮説を出していますが、これはあくまで記述的な結果で、理由はまだ分かっていません。測定の仕方の差の可能性も残っています。でも、「がんばらなきゃ」と感じるお父さんが一定数いる、というのは少し心強いですよね。あなただけじゃないですよ。
なんだかホッとしました。娘を好きな気持ちはそのままに、「〜しなきゃ」のほうは少しゆるめてみます。
それがいちばんです。「好き」は手放さず、「しなきゃ」だけ少し手放す。奥さまの「ちょっと休んだら?」は、きっとそのための優しいきっかけですよ。お父さんが機嫌よくいられることも、調査では両方の情熱と一緒に高くなる傾向がありましたから、ご自身のご機嫌も大事にしてくださいね。
■ 今日のまとめ
- 子育てへの情熱には「やりたいからやる(調和的)」と「やらずにいられない(強迫的)」の2つがあり、同じ人の中に両方あってもおかしくない。
- この調査では、調和的な情熱は親から見た子どものQOLの高さと、強迫的な情熱は低さと関連していた(ただし因果関係は不明)。
- 関わる「量」より「質」を意識して、「今これをやりたいから?やらないと落ち着かないから?」と自分に問いかけてみる。
■ 出典・注意事項
- Ebihara, M., & Fujita, T. (2026). Harmonious and Obsessive Passion for Child-Rearing Show Opposite Associations with Preschoolers' Quality of Life: A Cross-Sectional Study of Japanese Parents. Education Sciences, 16(11), 1779. https://doi.org/10.3390/educsci16111779
- この研究は1回きりのアンケートによる横断研究で、示されているのは「関連」であり、「情熱の形が子どものQOLを変える」という因果関係は断定できません。
- 親の幸福感・情熱・子どものQOLをすべて同じ親が評価しているため、回答者が同じことによるかたよりが結果に影響している可能性が研究者自身によって指摘されています。
- 調査対象はオンラインパネルから集めた日本の親で、日本の親全体を代表するものではありません。また「子育てへの情熱」の尺度は既存の尺度を子育て用に改変した暫定版です。
- 研究者は「強迫的な情熱が高い=悪い親」という解釈をしないよう明記しており、本記事もその立場に従っています。
- この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。
研究自体の紹介はこちら😊
子育ての"〜すべき"で駆動する情熱も、親の幸せにはつながる。(子供の幸せは下がるけど。)
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-24-1792851300/