2026.10.17

はぴテク相談室:長く一緒にいる猫と、「そばにいる時間」をもう一度

相談者

はぴテクさん、こんにちは。うちには8歳の猫がいて、もう7年以上一緒に暮らしています。大好きなんですけど、最近ちょっと気になることがあって。迎えたばかりの頃は毎日ワクワクして「猫がいるだけで幸せ!」だったのに、今は「いるのが当たり前」になっちゃって。猫もわりとマイペースで、隣の部屋で寝ていることが多いんです。これって、猫との関係が薄くなってるのかなあ…なんて。

はぴテクさん
はぴテクさん

こんにちは。7年以上も一緒なんて、素敵な歴史ですね。「いるのが当たり前」になるのは、信頼が深まった証でもあると思いますよ。ただ、相談者さんが感じている「最初のワクワクが落ち着いた」感覚、実は研究でも似たことが指摘されているんです。

相談者

えっ、そうなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。猫と暮らすことの心への良い影響は、犬の場合と比べてはっきりしないことが多くて、ある古い研究では「猫を迎えて最初の1か月は効果があるけれど、その後は差が見えなくなった」という報告もあるんです。そこで最近、京都大学と麻布大学の研究チームが「猫と飼い主のあいだで、体の中で何が起きているのか」を調べた論文を出しました。飼い主19人と飼い猫29匹を1か月追いかけて、尿から2つのホルモンを測ったんです。

相談者

ホルモン? どんなものですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

ひとつは「オキシトシン」。親子の絆や、人とふれあうときに関わるとされるホルモンで、「絆ホルモン」なんて呼ばれ方もします。もうひとつは「コルチゾール」。こちらはストレスを感じたときに増えやすい、いわば「ストレスの目印」です。それに加えて、飼い主さんの気分を質問紙で調べ、さらに面白いことに、猫の首輪に小さなBluetoothの発信機をつけて、飼い主さんのスマホとの距離を1か月間ずっと記録したんです。

相談者

猫と飼い主の「物理的な近さ」を測ったんですね! それで、何がわかったんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

いくつかあります。まず、飼い主さんのオキシトシンが高い家庭では、猫のオキシトシンも高い傾向がありました。逆に、飼い主さんのコルチゾール(ストレスの目印)が高い家庭では、猫のオキシトシンは低めだったんです。一方で、飼い主と猫のコルチゾール同士には、はっきりした関係は見られませんでした。犬と飼い主ではストレスの同調がよく報告されているので、猫との関係は「ストレスの共有」というより「絆ホルモンの側で結びついている」のかもしれない、と著者たちは考察しています。

相談者

へえ、猫らしいというか…。じゃあ、私の気分と猫は関係あるんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

関係が見られました。猫のオキシトシンが高いほど、飼い主さんの「怒り」「混乱」「落ち込み」「緊張・不安」といったネガティブな気分の得点が低い傾向があったんです。ただし、ここは大事なところなのですが、これは「同時に測ったら一緒に動いていた」という関係で、「猫のオキシトシンが上がったから飼い主の気分が良くなった」と言い切ることはできません。元気な飼い主さんがよく猫と関わるから猫のオキシトシンが高いのかもしれないし、よく寄ってくる猫と暮らすことが飼い主の気分を支えているのかもしれない。どちらの向きもありうる、と論文自身が書いています。

相談者

なるほど。じゃあ、私が気になっていた「一緒にいる年数が長いと関係が薄くなるのか」というのは…?

はぴテクさん
はぴテクさん

ここが相談者さんに一番お伝えしたい点です。この研究では「同居年数」と「日々の物理的な近さ」を別々に調べているんです。すると、飼い主さんの「活気」の高さと結びついていたのは、同居年数ではなく「猫との物理的な距離の近さ」でした。この関係は、別の方法で計算し直しても残っていた、比較的しっかりしたものです。同居年数のほうは、一度はネガティブな気分と関係があるように見えたのですが、計算の仕方を変えると支持されませんでした。つまり「何年一緒か」よりも「今日、どれだけ近くで過ごしたか」のほうが、飼い主さんの元気さと結びついていたんですね。

相談者

あ…それ、ちょっと救われます。「もう7年だから新鮮味がない」んじゃなくて、「最近そばにいる時間が減っていた」ってことかもしれないんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう考えてみるのも良いと思います。もちろんこの研究は、猫を無理に抱っこしなさい、と言っているわけではありません。むしろ、研究の最後に行った行動テストでは、オキシトシンが高めの猫ほど、相手が飼い主でも初対面の人でも「自分から近づいていく」確率が高かった。猫の「自分から寄ってくる」という社会性が鍵になっているようなんです。だから、相談者さんにできるのは、猫が来やすい状況を用意しておくこと。同じ部屋で過ごす時間を増やす、座っているときに近くに来たらそっと声をかける、くらいの穏やかなことでいいと思いますよ。

相談者

隣の部屋で寝ている猫のところに、私がノートパソコンを持って行くのもアリですね(笑)。

はぴテクさん
はぴテクさん

とても良いアイデアです(笑)。ひとつだけ付け加えると、この研究は19家庭・29匹という小規模なもので、飼い主さんのほとんどが女性でしたし、同じ家に住んでいれば生活音や気温など環境も共有しているので、ホルモンの関係がそのせいである可能性も著者たちは認めています。「猫と近くで過ごす時間を少し増やしてみる」のは、実害がなく、幸せのヒントになりうる試み、というくらいの受け止め方がちょうどいいと思います。

相談者

わかりました。「当たり前になった」のを嘆くんじゃなくて、「近くで過ごす時間」をもう一度意識してみます。今夜はソファで隣に座ってもらえるか、試してみますね!

■ 今日のまとめ

  • 飼い主と猫のあいだでは、ストレスの目印(コルチゾール)よりも「絆ホルモン」(オキシトシン)の側で結びつきが見られた。猫のオキシトシンが高い家庭ほど、飼い主のネガティブな気分が低い傾向があった(ただし原因と結果の向きは不明)。
  • 飼い主の「活気」と関係していたのは、同居年数ではなく、日々の「猫との物理的な近さ」だった。「何年一緒か」より「今日どれだけそばで過ごしたか」。
  • 無理に構うのではなく、猫が自分から寄ってきやすい状況をつくる。同じ部屋で過ごす時間を少し増やすくらいの穏やかな工夫から。

■ 出典・注意事項

  • Takagi, S., Tsubomura, T., Nagasawa, M., & Kikusui, T. (2026). Cats and humans show correlated affiliative physiological states. iScience, 117934. https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117934

  • 本研究は横断的な相関研究であり、「猫のオキシトシンが飼い主の気分を良くする」「近くにいることが活気を高める」といった因果関係は示されていません。参加者は飼い主19人・猫29匹と小規模で、飼い主の大半が女性であること、同じ家庭環境を共有していることなど、著者自身も結果の一般化には注意が必要だと述べています。事前登録のない探索的研究です。

  • この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。

投稿者による補足(1件)
補足 1

研究自体の紹介はこちら😊
猫と飼い主は「幸せホルモン」でつながっている
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-17-1792179720/

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