猫と飼い主は「幸せホルモン」でつながっている
猫と飼い主のホルモンの関係についての、日本の最新研究
京都大学・麻布大学のチームが、飼い主19人と猫29匹を1か月追いかけて調査。
調べたのは、
- 飼い主と猫それぞれのオキシトシン(愛着や安心に関わる、いわゆる幸せホルモン)
- 飼い主と猫それぞれのコルチゾール(ストレスホルモン)
- 飼い主の気分(イライラ、落ち込み、不安、活気など)
- 猫と飼い主の物理的な距離(猫の首輪にBluetoothビーコンをつけて、スマホで24時間計測!)
を、1か月分まとめて分析。
結果としては、
①飼い主のオキシトシンが高いと、猫のオキシトシンも高い。
②猫のオキシトシンが高いと、飼い主のストレスホルモンは低く、イライラ・落ち込み・不安も少ない。
③一方で、ストレスホルモン同士は、飼い主と猫でほぼ連動していない。
(犬は飼い主とストレスが連動することが知られているので、猫は違うタイプ。)
さらに面白いのが、
④猫と「物理的に近くにいる時間が長い」飼い主ほど、活気がある。
⑤「一緒に住んでいる年数が長い」だけだと、むしろ僅かにネガティブな気分と関連。
(ただしこちらは解析方法を変えると消えるので、話半分で。)
つまり、何年飼っているかより、日々どれだけそばにいるか、が効いてそう。
おまけで、
オキシトシンが高い猫は、飼い主だけでなく知らない人にも寄っていきやすい。
ストレスホルモンが高い猫は、知らない人には近づかない。
猫の性格って、ホルモンにも出ているんですね。
という、猫好きにはたまらない結果。
注意点としては、
- 人数がかなり少ない
- 同じ家に住んでいるので「家の環境が似ているだけ」の可能性もある
- どっちが原因かは分からない(幸せな飼い主がよく撫でるから猫のオキシトシンが上がるのか、猫がよく寄ってくるから飼い主が幸せになるのか)
ので、まだ「かもしれない」段階です。
幸せの4つの因子のひとつに「つながりと感謝」がありますが、
そのつながりの相手は、人間じゃなくてもいい。というのがこの研究のポイントかなと思います。
猫は「そこにいるだけの同居人」ではなく、お互いのホルモンに影響し合う、れっきとした社会的パートナー。
そして、長く一緒にいること自体より、今日どれだけ近くで過ごしたか、が大事。
これは人間同士の関係にも、そのまま当てはまるかもしれませんね。
猫と暮らしている方は、今日ちょっと多めにそばにいてあげると、お互いに良いことがあるかも。という感じでしょうか。
Cats and humans show correlated affiliative physiological states
猫と人は、親和的な生理状態が相関している
Saho Takagi(京都大学、日本), Taisuke Tsubomura, Miho Nagasawa, Takefumi Kikusui(麻布大学、日本)
iScience, 2026(2026/9/30受理)
https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117934
日本の研究での日本語での解説
https://research-er.jp/articles/view/160932
飼い主とネコのホルモンの関連は オキシトシンが中心 ホルモンの関連 飼い主のオキシトシン → 正の関連 → ネコのオキシトシン 飼い主のコルチゾール ← 双方向 ← ネコのコルチゾール ↑ 卵児効果なし ネコのオキシトシンが高い → 飼い主のオキシトシンが高い ネコの鳴き声 → 飼い主のオキシトシンを高める 飼い主のオキシトシンが高い → ネコの順応力が高い ネコの順応力が高い → 飼い主の活躍が高い 猫と飼い主を繋ぐ「オキシトシン」の共鳴:ホルモンと同調する心と行動 イヌと飼い主の関係ではストレスホルモン(コルチゾール)の同調が知られていますが、 猫と飼い主の間でも「オキシトシン」を中心とした 日常的な物理的距離の近さが、飼い主の連力や気分改善に大きく寄与しています。 ホルモンの相関:オキシトシンが刻む絆 猫のオキシトシンは飼い主 の側にいることで高まる傾向が あります 飼い主のオキシトシンが高いほど 猫のオキシトシンも高くなります。 飼い主:ストレス低下 (コルチゾール↓) 飼い主のストレス低下が 猫のオキシトシンを高める 飼い主のコルチゾールが 低いと猫とのコルチゾール 溶度が上昇します。 心理的効果と行動:日常の「近さ」がもたらす益 不安 猫する まい 猫のオキシトシンは飼い主の ネガティブ気分を軽減 不安、怖う、悲しみ、落ち込みなどの 気分低下に関連しています。 同居年数 ? 活力(Vigor) UP! (長い) 単なる同居年数より 「日常の物理的近さ」が 活力を与える BLEビーコンで測定された距離が 飼い主の力 (Vigor) 向上を予測します。 社会的アプローチ↑ 高いオキシトシンは猫の 自発的接近行動をする 社会的アプローチを高め、相互の 絆のタイプの関係性を強化します。 猫と飼い主の間では コルチゾール(ストレス)の 同調は見られません。 Ⓟ Clemens Notebook 猫と人の見えない絆 最新科学が解き明かす「つながり」の正体 「犬は人につき、猫は家につく」とよく言われます。猫はマイペースで、人間には関心ない同居人だと思っていませんか? しかし最新の研究により、猫と飼い主の間には、目に見えない「愛情ホルモン」の過いシグロオキシトージン(同間)が起きていることが証明されました。 科学が証明した、猫が私たちにもたらす本当の癒しの力とは? これまでの常識 犬と人間は強い絆で結ばれており、ホルモンレベルでも感情が同期する(生理的同調)ことが証明されている。 科学の疑問 19人の飼い主と29匹の猫を対象にした1ヶ月の追跡調査がスタート。 単独行動を好む祖先を持つ猫も、人間と同じように深い生理的な絆を築くことができるのか? オキシトシン 「愛情と絆のホルモン」 スキンシップや信頼関係によって分泌される。 ストレスを和らげ、幸福感をもたらす。 コルチゾール 「ストレスホルモン」 緊張や不安を感じたときに分泌される。身体を 戦闘モードにするが、多すぎると心身に悪影響。 この2つのホルモンの波が、猫と人でどう連動するのかを測定しました。 1. 尿検査でホルモン測定 飼い主と猫の尿を1ヶ月に 3回採取。オキシトシンと コルチゾールの平均値を分析。 2. Bluetoothで距離を測定 猫の首輪にビーコンを装着。 家の中で飼い主どれくらい 近くにいたか(物理的距離) を24時間記録。 3. 心理テストで感情を評価 POMS2(気分状態評価尺度) を使用し、飼い主の怒り、疲労、活気などの心理状態をス コア化。 Genomics Notebook 発見1:猫と人は「愛情」だけで繋がる 飼い主のオキシトシンが高いと、猫のオキシトシンも高くなることが判明しました。興味深いことに、犬に見られるような「ストレス(コルチゾール)の伝染」は猫には見られませんでした。 オキシトシン (愛情) 強いシンクロ オキシトシン (愛情) 飼い主 猫 コルチゾール (ストレス) × 関連性なし コルチゾール (ストレス) つまりどういうこと?🐱 猫はあなたのストレスには巻き込まれず、愛情だけを共有してくれます。 Genius Notebook 発見2:愛情深い猫は、飼い主の「心の盾」になる 猫のオキシトシン値が高い家庭では、飼い主のネガティブな感情(怒りや不安など)が顕著に低いことがデータで実証されました。猫の愛情ホルモンは、飼い主の心の健康状態を映し出す鏡でもあります。 怒り・敵意↓ 抑うつ・落ち込み↓ 緊張・不安↓ つまりどういうこと?💛リラックスして愛情に満ちた猫と一緒にいることは、人間のメンタルヘルスを劇的に改善します。 科学が描く「猫と人の癒しのサイクル」 あなたが猫を愛せば猫のオキシトシンが高まり、その猫の存在があなたのストレスを和らげます。しかし逆に、飼い主のストレス(コルチゾール)が高いと、猫の愛情ホルモンを下げてしまうこともわかりました。 飼い主のオキシトシン 猫のオキシトシン ポジティブループ 飼い主のネガティブな気分が低下 飼い主のコルチゾールが高い 猫のオキシトシンが高い 猫のオキシトシンが低下 Gonmei Notebooks 「一緒に生きた長さ」より「物理的な近さ」 一緒に暮らした期間 YEARS MONTHS DAYS 飼育期間が長いだけでは、気分の改善には繋がらず、むしろ「混乱」や「不安」と相関するケースもありました(高齢猫の介護などが要因の可能性)。 物理的な距離の近さ ビーコンで測定された「近づいている時間」が長い飼い主ほど、明確に「活気・活力」が高いことが証明されました。 つまりどういうこと? 「家に猫がいる」ことではなく、「猫のそばで過ごす時間」が人間に活力を与えます。 ホルモンが変える、猫の「性格」と「行動」 見知らぬ人が部屋に入ってきたときの猫の反応をテストしました。 オキシトシンが高い猫 飼い主にも、見知らぬ人にも積極的に近づく(高い社会的モチベーション)。 コルチゾールが高い猫 見知らぬ人を避け、距離を置こうとする(警戒心と不安)。 猫の「人懐っこさ」は、生まれつきの性格だけでなく、日々のホルモン状態が大きく影響しています。 なぜ猫と犬で「絆の形」が違うのか? 犬 群れで狩りをする動物。 他者の感情を読み取り、協力する必要 があった。 猫 単独で狩りをする動物。 自立しており、群れの空気を読む必 要がなかった。 進化の背景 ホルモンの同調 愛情(オキシトシン)だけでなく、 ストレス(コルチゾール)も伝染する。 飼い主が緊張するとともも緊張する。 ストレスは伝染しない。 愛情(オキシトシン)のネットワーク だけで人間と繋がることができる。 猫は、人間のストレスに巻き込まれず、適度な距離感で愛情だけを共有できる特別なパートナーです。 科学が教える、猫との「見えない絆」の深め方 物理的な距離を縮める 同じ空間にいるだけでなく、そばに座ったり、撫でたりする時間を増やしましょう。あなたの「活気」の源になります。 猫からのアプローチに応じる 猫が自分から近づいてきたときのスキンシップは、双方の幸情ホルモン(オキシトシン)を最も高めます。 まず、あなたがリラックスする あなた
動画解説はこちら😊
https://youtu.be/9gS0p9c2tdU
本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:長く一緒にいる猫と、「そばにいる時間」をもう一度
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-17-1792179721/
【研究背景】
■ この研究の前提となる研究背景(既存研究のまとめ)
▼ 1. ネコは身近な存在だが、飼うことの効果は一定しない
▼ 2. 候補となる仕組み:ストレスホルモンと「絆ホルモン」
▼ 3. ヒトとイヌの間では「生理的同調」がよく確立されている
▼ 4. ネコについて分かっていること:まだ「片側」しか測られていない
▼ 5. ネコ側の社会性・コミュニケーションに関する知見
▼ 6. 既存研究の限界と、本研究が埋めようとしたギャップ
【研究内容】
■ この研究の背景と目的
▼ 猫と人の関係は犬とは違う?
▼ 注目したホルモン
▼ 犬ではすでに知られている「同調」
▼ 本研究の仮説
■ 方法
▼ 参加者
▼ 尿サンプルによるホルモン測定
▼ 日常の近さの測定
▼ 飼い主の気分
▼ 安全基地テスト(SBT)
▼ 統計
■ 結果
▼ 飼い主と猫のホルモンの関連(24ペア)
図1 飼い主と猫のホルモンの関連。Aは回帰係数の推定値で、点が中央値、太線が50%、細線が95%信用区間を示し、点線のゼロをまたがなければ関連が支持されます。BとCは24ペアの実データ(点)と、モデルが推定した関係(線と帯は95%信用区間)です。
出典:論文のFigure 1。Takagi et al. (2026). iScience.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117934
表1 飼い主と猫のホルモン濃度の関連(多変量ベイズモデル、24ペア)
飼い主のオキシトシンが高いほど猫のオキシトシンも高く、飼い主のコルチゾールが高いほど猫のオキシトシンは低い一方、コルチゾール同士の関連ははっきりしませんでした。
注:βは標準化した回帰係数。飼い主のオキシトシンとコルチゾールを同時に説明変数とし、猫の両ホルモンを同時に結果変数とした1つのモデルから得た値。因果の方向を示すものではない。
Takagiら(2026)の本文の結果の節、Figure 1A、Table S2の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Takagi et al. (2026). iScience. https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117934
▼ ホルモンと飼い主の気分
図2 飼い主・猫のオキシトシンとコルチゾールが、飼い主の気分(POMS2の各下位尺度)とどう関連するかの推定値。横軸が標準化した回帰係数で、点が中央値、太い横棒と細い横棒が信用区間を示します。点線のゼロをまたがない尺度が、関連が支持されたものです。
出典:論文のFigure 2。Takagi et al. (2026). iScience.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117934
表2 ホルモン濃度と飼い主の気分(POMS2)の関連:事後推定値 [95%信用区間]
飼い主のコルチゾールが高いほど否定的な気分が強く、猫のオキシトシンが高いほど飼い主の否定的な気分が弱いという関連が複数の尺度で見られました。
注:ペア単位の分析(飼い主ホルモン:29ペア、猫ホルモン:24ペア)。正の値は得点が高い方向、負の値は低い方向の関連。「ゼロを含む」は95%信用区間がゼロをまたぎ明確な支持がなかったもの(本文に数値の記載なし)。「友好」はいずれのホルモンともゼロを含んだため省略。猫コルチゾールはどの尺度とも明確な関連なし。家庭単位の感度分析では一部の関連は支持されなかった(本文参照)。
Takagiら(2026)の本文の結果の節、Figure 2、Table S4の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Takagi et al. (2026). iScience. https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117934
▼ 近さ・同居期間と飼い主の気分(29ペア)
図3 猫との物理的な近さ(オレンジ)と同居期間(緑)が、飼い主の気分の各尺度とどう関連するかを示した図。横軸は標準化した回帰係数で、点が中央値、横線が95%信用区間です。点線のゼロを横線が含まない場合に関連が支持されたと読みます。
出典:論文のFigure 3。Takagi et al. (2026). iScience.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117934
▼ 安全基地テストでの行動
■ 考察
▼ 人と猫の関係は「オキシトシン中心」かもしれない
▼ 犬との違い:コルチゾールの同調は見られなかった
▼ 猫のオキシトシンと飼い主の気分
▼ 「どれだけ長く一緒にいるか」より「どれだけ近くにいるか」
▼ 行動テストが示すオキシトシンとコルチゾールの役割の違い
■ 研究の限界(著者らが挙げているもの)
■ まとめ