「モモに話を聞いてもらうと、どうしていいかわからなかった人にも、急に自分の意志が、はっきりしてくる」
— ミヒャエル・エンデ 『モモ』(1973)(要旨)
主人公モモの特技は、助言でも励ましでもなく「ただ、聞くこと」。全身で聞いてもらううちに、話し手の中から答えが立ち上がってくる ── 傾聴の力の、文学史上もっとも美しい描写
- 心理学では
- この一節は、Rogers(1957)が説いた傾聴(評価や助言をはさまず、相手の言葉と気持ちをそのまま受けとめる聴き方)の力を描いている。無条件に受けとめられる安心感の中で、人は自分の考えを自分の力で整理し直せるのである。Itzchakovら(2017)は、聞き手のふるまいを操作した実験で、質の高い傾聴を受けた話し手ほど不安が下がり、自分の考えの多面性に気づいて、偏りの少ない見方をもつようになることを示した。答えを与えるよりも、相手の中から答えが出てくるまで待つ聴き方が助けになる。身近な人が迷っているときは、口をはさみたくなる気持ちをいったんおさえ、うなずきながら最後まで聞くことから始める。 参考:Rogers(1957)「The necessary and sufficient condi…」 ↗/Itzchakovら(2017)「I Am Aware of My Inconsistencies b…」 ↗