幸せの名言集

お金・モノと幸福の名言24選

「満足は貧しい者を富ませ、不満は富める者を貧しくする」

Content makes poor men rich; discontent makes rich men poor.

— ベンジャミン・フランクリン 『貧しいリチャードの暦』

豊かさの実感は所有量ではなく満足度で決まる

心理学では
この名言は、豊かさの実感が所得の多さそのものよりも、いまの暮らしと「欲求水準(これくらいは欲しいという心の中の基準)」との差によって左右されるという考え方に重なる。Stutzer(2004)はスイスの大規模な住民調査を分析し、実際の所得が同じでも、必要だと考える所得水準が高い人ほど生活満足度が低いことを示した。またLarsen & McKibban(2008)は大学生を対象とした調査で、欲しいものを持っていることに加えて、すでに持っているものを大切に思える人ほど幸福感が高いことを見いだした。収入を増やす努力と並行して、手元にあるものの価値をときどき数え直す習慣が、暮らしの豊かさの実感を支える。 参考:Stutzer(2004)「The role of income aspirations in …」 ↗/Larsen & McKibban(2008)「Is Happiness Having What You Want,…」 ↗
人物
米国の政治家・科学者・著述家(1706-1790)
出典に諸説あり
「満足は天然の富であり、贅沢は人工の貧困である」

Contentment is natural wealth, luxury is artificial poverty.

— ソクラテス(とされる) 伝承による帰属

※伝承による帰属

贅沢は新たな欠乏を作り出す

心理学では
この名言は、心理学でいう快楽適応(よい変化にもやがて慣れて喜びが薄れること)と、それに伴う願望水準(「これくらいは必要」と感じる基準)の上昇を言い当てている。スイスの調査データを分析したStutzer(2004)は、所得が高い人ほど「必要だと感じる所得」も高く、その水準が高い人ほど生活満足度が低いことを示した。またQuoidbachら(2010)は、裕福な人ほど日常のささやかな喜びを味わう力(セイバリング)が低いことを調査で見いだした。さらに、お金を思い起こさせるだけでチョコレートを味わう時間が短くなることを実験で示した。贅沢に慣れきる前に、いまある物事をゆっくり味わう習慣を持つことが、心の豊かさを保つ助けになる。 参考:Stutzer(2004)「The Role of Income Aspirations in …」/Quoidbachら(2010)「Money Giveth, Money Taketh Away」 ↗
人物
古代ギリシャの哲学者(BC470頃-399)
出典に諸説あり
「お金で家は買えるが、家庭は買えない。時計は買えるが、時間は買えない」

Money can buy a house, but not a home.

— 格言(とされる) 出典不詳

※出典不詳(中国のことわざとして流通)

買えるものと買えないものの区別

心理学では
この名言は、モノとしての「家」や「時計」と、それが本来もたらすはずの家族とのつながりや生きた時間とを区別している。幸福研究では、所得で手に入る物質的な豊かさよりも、人間関係や時間の使い方といった市場では売買しにくい資源(非地位財:他人との比較に左右されにくい価値)のほうが、幸福感と強く結びつくとされる。Diener & Seligman(2002)は大学生を対象にした相関研究で、とりわけ幸福度の高い人ほど家族や友人との関係が豊かであることを示した。またMogilner(2010)の実験では、「お金」より「時間」を意識させられた人は、人と過ごす計画を立てやすくなり、幸福感も高まった。日々の予定に大切な人と過ごす時間をまず書き込むことが、お金では買えない豊かさにつながる。 参考:Diener & Seligman(2002)「Very Happy People」/Mogilner(2010)「The pursuit of happiness: Time, mo…」 ↗
「みんなが一度、金持ちで有名になって夢をすべて叶えてみればいいと思う。それが答えではないと分かるから」

I think everybody should get rich and famous and do everything they ever dreamed of so they can see that it's not the answer.

— ジム・キャリー インタビュー・スピーチでの発言

外的成功の到達点に幸福の答えはなかった

心理学では
この名言は、富や名声といった外発的目標(他者からの評価や報酬を求める目標)を叶えても、快楽順応(良い変化にもやがて慣れてしまう心の働き)によって満足が長続きしないことを言い当てている。Brickmanら(1978)は宝くじの高額当選者を調べ、その幸福感が当選していない人と大差ないことを示した。Niemiecら(2009)は大学卒業生を追跡した縦断研究で、富や名声の目標を達成した人ほど幸福なわけではなく、人間関係や成長といった内発的目標(自分の内側の欲求に根ざした目標)の達成が幸福感の高さと関連することを見いだした。目標を立てるときは、つながりや成長に通じる目標を一つ添えることが助けになる。 参考:Brickmanら(1978)「Lottery winners and accident victi…」/Niemiecら(2009)「The path taken: Consequences of at…」 ↗
人物
カナダ出身の俳優・コメディアン(1962-)
出典に諸説あり
「「いくらあれば十分ですか」と問われて――「もう少し」」

Just a little bit more.

— ジョン・D・ロックフェラー(と伝わる) 逸話として流通

※逸話であり文言・真偽には諸説あり

欲望には自然な上限がない

心理学では
この言葉は、心理学でいう「快楽順応」(よい変化にもやがて慣れ、喜びが元の水準に戻ること)と、「参照点」(満足かどうかを判断する基準)が上へずれていく現象をよく言い当てている。Brickmanら(1978)は宝くじの高額当選者を調べ、当選者は対照群と比べて特に幸福なわけではなく、日常のささやかな楽しみからは喜びを得にくくなっていたことを報告した。またStutzer(2004)はスイスの調査データを分析し、所得が高い人ほど「必要だと思う所得」も高く、実際の所得に比べて願望水準が高い人ほど生活満足度が低いことを見いだした。稼ぐほど「十分」の線が先へ逃げるのである。お金を増やす努力と並行して、自分にとっての「十分」を具体的に書き出しておくことが、満たされた感覚を守る助けになる。 参考:Brickmanら(1978)「Lottery winners and accident victi…」/Stutzer(2004)「The role of income aspirations in …」 ↗
人物
米国の実業家(1839-1937)。スタンダード・オイル創業者
「貧しい者とは、少ししか持たない者ではなく、より多くを渇望する者である」

It is not the man who has too little, but the man who craves more, that is poor.

— セネカ 『ルキリウスへの手紙』2

貧しさは所有量ではなく渇望の関数である

心理学では
セネカの言葉は、心理学でいう「欲求と所有のギャップ」(望む水準と、実際に持っているものとの差)の考え方と重なる。Solbergら(2002)は大学生などを対象とした複数の相関研究で、収入やモノへの満足は、持っている量の多さよりも、欲しいものと持っているものの差が小さいことと強く関連すると示した。またDittmarら(2014)のメタ分析では、物質主義(お金やモノを人生の中心に置く価値観)が強い人ほど、幸福感が低い傾向が確かめられている。欲しいものを増やす前に、すでに手元にあるものを数え直す習慣が、豊かさの実感につながる。 参考:Solbergら(2002)「Wanting, having, and satisfaction:…」 ↗/Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」
人物
古代ローマのストア派哲学者(BC4頃-AD65)
出典に諸説あり
「富は、多くを所有することではなく、わずかな欲求しか持たないことにある」

Wealth consists not in having great possessions, but in having few wants.

— エピクテトス(とされる) 語録の趣旨に基づく定型化

※定型文としては後世の要約

欲求の少なさこそ本当の豊かさ

心理学では
この名言は、心理学でいう「欲求の不一致」(望んでいるものと実際に持っているものとの差)の考え方に重なる。満足を左右するのは、持ち物の量そのものよりも、それが自分の欲求をどれだけ満たしているかである。Solbergら(2002)は複数の調査をもとにした相関研究で、収入への満足は実際の収入額以上に「欲しいものと持っているものの差」と強く関連し、物質的な欲求が大きい人ほど満足が低いことを示した。またBrown & Kasser(2005)は、消費を意識して控える「自発的簡素」(シンプルな暮らしを自ら選ぶ生き方)を実践する人ほど、主観的幸福感(自分は幸せだという実感)が高いことを報告している。何かを買い足したくなったときに「本当に必要か」と一度立ち止まる習慣が、すでに手元にある豊かさに気づく助けになる。 参考:Solbergら(2002)「Wanting, having, and satisfaction:…」 ↗/Brown & Kasser(2005)「Are Psychological and Ecological W…」 ↗
人物
古代ギリシャのストア派哲学者(55頃-135頃)
「起きて半畳、寝て一畳、天下取っても二合半」

— 日本の俚諺

人が実際に使う空間は、起きていれば半畳、寝ても一畳分。天下を取ったところで、食べられる米は一日二合半 ── 所有をどれだけ増やしても、身体が使える分は増えないという、痛快な相対化

心理学では
この俚諺は、経済学でいう限界効用逓減(量が増えるほど、一単位あたりの満足が小さくなること)を、身体の尺度で言い当てている。Kahneman & Deaton(2010)は米国の大規模調査データを分析した。その結果、所得が高い人ほど人生全体の評価は高い一方、日々の喜びや安らぎといった感情面の幸福は、ある所得水準を超えると所得との関連が頭打ちになっていた。また、Dittmarら(2014)のメタ分析(多数の研究を統合した分析)では、富や所有を重視する物質主義的な価値観が強い人ほど、幸福感が低いことが報告されている。自分にとって足りる量を知り、それを超えた分を人とのつながりや経験に振り向けることが、満ち足りた暮らしにつながる。 参考:Kahneman & Deaton(2010)「High income improves evaluation of…」/Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」
「金持ちのまま死ぬ者は、不名誉のうちに死ぬ」

The man who dies thus rich dies disgraced.

— アンドリュー・カーネギー 「富の福音」(1889)

富は生前に社会へ還元されるべきである

心理学では
カーネギーの言葉は、富を自分のためにため込むより、向社会的支出(他者や社会のためにお金を使うこと)に回すことの価値を説いている。Dunnら(2008)は、米国の成人を対象とした調査で、他者への支出が多い人ほど幸福感が高いことを示した。さらに実験では、渡されたお金を他人のために使うよう指示された人は、自分のために使った人よりもその日の夕方の幸福感が高まった。Akninら(2013)も、世界各国のデータで同じ向きの関連を見いだし、豊かな国と貧しい国の双方で行った実験でも同様の効果を確かめている。財産の多寡にかかわらず、収入の一部を誰かのために使う習慣を持つことが、お金を幸福と生きる意味に変える道になる。 参考:Dunnら(2008)「From wealth to well-being: Spendin…」 ↗/Akninら(2013)「Prosocial spending and well-being:…」
人物
スコットランド出身の米国実業家(1835-1919)。鉄鋼王。晩年に財産の大半を寄付
「感情的な幸福は年収約7万5千ドルまでは所得とともに高まるが、それ以上では頭打ちになる」

— ダニエル・カーネマン Kahneman & Deaton (2010) PNAS

要旨。最新の知見では単純な頭打ち説は修正されている

お金が幸福を買えるのは一定水準まで

心理学では
この名言は、幸福を「人生評価」(人生全体への満足度)と「感情的幸福」(日々の喜びやストレスの経験)に分けて考える視点に立つ。Kahneman & Deaton(2010)は米国の大規模調査を分析し、所得が高い人ほど人生評価は高い一方で、感情的幸福は一定の所得を超えると所得との関連が弱まることを示した。その後、Killingsworthら(2023)は異なる立場の研究者による共同分析(敵対的協働)を行い、この頭打ちは主に、日々の気分が特につらい人々で見られることを明らかにした。収入を増やす努力と並行して、人間関係や休息など、お金以外で日々の気分を支える手立てを持っておくことが助けになる。 参考:Kahneman & Deaton(2010)「High income improves evaluation of…」/Killingsworthら(2023)「Income and emotional well-being: A…」
人物
イスラエル出身の心理学者(1934-2024)。ノーベル経済学賞
「衣食足りて礼節を知る」

— 『管子』牧民篇 「倉廩実つれば則ち礼節を知る」

倉が満ち、衣食が足りて、人ははじめて礼儀や節度に心を向けられる。「心の豊かさ」を説く前に、まず生活の物質的な土台を整えよ ── 為政者の責任を説いた、2600年前の政治の要諦

心理学では
この名言は、心理学でいう欠乏の心理(お金や時間が足りないと、心の容量が奪われること)と重なる。Maniら(2013)は実験で、低所得の人にお金の心配を思い浮かべさせると、認知課題の成績が下がることを示した。インドのサトウキビ農家の調査でも、同じ人が収穫前の困窮期より収穫後のほうが高い成績を示した。またKahneman & Deaton(2010)の大規模調査では、所得の低い人ほど、病気や離婚などの不運に伴う心のつらさが大きかった。礼節や思いやりに向ける余裕は、意志の強さだけでなく生活の土台からも生まれる。余裕を失っていると感じたら、まず睡眠や家計、仕事量といった足元を整えることが、穏やかな振る舞いを取り戻す助けになる。 参考:Maniら(2013)「Poverty Impedes Cognitive Function」 ↗/Kahneman & Deaton(2010)「High income improves evaluation of…」
人物
春秋時代の斉の宰相・管仲(?-BC645)に帰される書
出典に諸説あり
「お金は良い召使いだが、悪い主人である」

Money is a good servant but a bad master.

— フランシス・ベーコン(とされる) 典拠不詳(仏語圏の格言が先行)

※帰属に諸説あり

お金は道具である限り有益、目的になると有害

心理学では
この名言は、お金を目的ではなく手段として扱う大切さを説いている。心理学では、経済的成功を人生の中心に置く態度を外発的目標(報酬や他者の評価を求める目標)の重視と呼ぶ。Kasser & Ryan(1993)は若者を対象とした相関研究で、経済的成功を他の目標より強く望む人ほど、活力や自己実現の感覚が低く、不安や抑うつが高いことを示した。一方、Whillansら(2017)の実験では、働く成人に家事代行など時間を生み出す買い物にお金を使ってもらうと、モノを買った場合より前向きな気分が高まった。お金を時間や人とのつながりを支える道具と位置づけることが、日々の満足につながる。 参考:Kasser & Ryan(1993)「A dark side of the American dream:…」/Whillansら(2017)「Buying time promotes happiness」 ↗
人物
英国の哲学者・政治家(1561-1626)
「貧乏な人とは、少ししか持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

— ホセ・ムヒカ リオ+20会議演説(2012)

「世界一貧しい大統領」が語った貧しさの定義

心理学では
ムヒカの言う貧しさは、心理学では「物質主義」(お金や所有物を人生の中心に置く価値観)と「欲求のずれ」(欲しい量と持っている量の差)の問題として捉えられる。Solbergら(2002)は複数の調査で、収入への満足度は実際の額よりも、望む水準とのずれの大きさと強く関連することを示した。またDittmarら(2014)のメタ分析(多数の研究を統合する分析)では、物質主義的な価値観が強い人ほど人生満足度が低く、不安や抑うつが高い傾向が一貫して見られた。何かを買い足したくなったときは、すでに持っているものを数えてみることが、心の豊かさを取り戻す助けになる。 参考:Solbergら(2002)「Wanting, having, and satisfaction:…」 ↗/Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」
人物
ウルグアイ第40代大統領(1935-2025)。給与の大半を寄付し質素な生活を貫いた
「少ないもので生きるすべを知るほど、生活は豊かになる」

— アン・モロー・リンドバーグ 『海からの贈物』(1955)

削ぎ落とすことが豊かさへの道になる

心理学では
この名言は、心理学でいう「自発的簡素」(自ら選んで消費や所有を控え、内面の充実を重んじる生き方)の知恵を言い表している。Brown & Kasser(2005)は、自発的簡素を実践する人々と一般の人々を比べる相関研究を行い、簡素な暮らしを選んだ人ほど生活満足度が高く、環境に配慮した行動も多いことを示した。また、Dittmarら(2014)のメタ分析(多数の研究を統合する分析)は、物質主義(モノや富の獲得を重視する価値観)が強い人ほど幸福感が低いという関連を、幅広い研究にわたって確認している。持ち物や予定を見直してひとつ手放すたびに、時間と注意を人とのつながりや心から好きな活動へ向け直す余地が生まれる。 参考:Brown & Kasser(2005)「Are Psychological and Ecological W…」 ↗/Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」
人物
米国の作家・飛行家(1906-2001)
出典に諸説あり
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」

— 二宮尊徳(とされる) 典拠不詳(報徳思想の後世の要約とされる)

※尊徳の直接の言葉としては確認されていない

経済と倫理は片方だけでは成り立たない

心理学では
この名言は、幸福には経済的基盤(暮らしを支える収入)と公正さ(社会的信頼)の両方が欠かせないことを言い表している。Oishiら(2011)は米国の数十年分の全国調査を分析し、所得格差が大きい年ほど人々の幸福感が低く、その背景に「社会は公正だ」「他人は信頼できる」という感覚の低下があることを見いだした。一方、Dunnら(2008)の実験では、お金を他人のために使うよう指示された人のほうが、自分のために使った人より幸福感が高まった。お金は善い使い道と結びつくとき、本人と周囲の幸せを同時に育てる。稼ぐ工夫と使い道の誠実さを一組で考えることが、仕事と暮らしの充実につながる。 参考:Oishiら(2011)「Income Inequality and Happiness」/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」
人物
江戸後期の農政家・思想家(1787-1856)
出典に諸説あり
「もったいない ── 物が本来持っている価値が、生かされずに失われることを惜しむ」

Mottainai.

— 日本の伝統的な言葉 仏教の「勿体(物の本体)」に由来するとされる

2005年、マータイの提唱で国際語化した

単なる「節約」ではなく、物にはそれ本来の値打ちと役目があり、それを全うさせずに捨てることへの畏れと惜しみを含む言葉。ノーベル平和賞のワンガリ・マータイが「Reduce, Reuse, Recycleと尊敬(Respect)を一語で表す」として世界に紹介した

心理学では
「もったいない」は、心理学でいえば物質主義(物の所有を幸福や成功の中心に置く価値観)から距離を置き、手元の物を大切に使い切る態度である。Dittmarら(2014)は多数の研究を統合したメタ分析で、物質主義的な価値観が強い人ほど生活満足度が低く、不安や抑うつが高い傾向を示した。Brown & Kasser(2005)は青年と成人を対象とした相関研究で、環境に配慮した行動をとる人ほど幸福感が高く、その背景に内発的価値(成長やつながりなど、それ自体に意味がある目標)とマインドフルネス(今への気づき)があることを見いだした。買う前に手持ちの物を見直し、修理や使い回しを楽しむ習慣が、心の豊かさにもつながる。 参考:Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」/Brown & Kasser(2005)「Are Psychological and Ecological W…」 ↗
「より少なく、しかしより良く(Less, but better)」

Weniger, aber besser.

— ディーター・ラムス デザイン哲学「良いデザインの10か条」とともに知られる標語

良いデザインとは、可能な限りデザインを少なくすることである ── 装飾や機能を足すのではなく、本質だけを残して削ぎ落とす。ブラウン社の製品群でこの思想を体現し、アップルのデザインにも決定的な影響を与えた

心理学では
「より少なく、しかしより良く」は、心理学でいう自発的簡素(自ら進んで所有や消費を絞り込む生き方)や選択過剰(選択肢が多すぎると迷いや後悔が増える現象)の知恵と重なる。Iyengar & Lepper(2000)の実験では、少ない種類のチョコレートから選んだ人のほうが、多くの種類から選んだ人よりも、選んだ品への満足度が高かった。またBrown & Kasser(2005)の調査では、簡素な暮らしを実践する人ほど主観的幸福感(自分の生活に対する満足や心地よさ)が高く、環境に配慮した行動も多いという関連が見られた。物を買う前に「本当に必要か、長く大切に使えるか」と問い、数より質で選ぶ習慣が、満ち足りた暮らしにつながる。 参考:Iyengar & Lepper(2000)「When choice is demotivating: Can o…」 ↗/Brown & Kasser(2005)「Are Psychological and Ecological W…」 ↗
人物
ドイツのインダストリアルデザイナー(1932-)。ブラウン社の design責任者を長く務めた
出典に諸説あり
「単純さは、究極の洗練である」

Simplicity is the ultimate sophistication.

— レオナルド・ダ・ヴィンチ(とされる) 典拠不詳

※ダ・ヴィンチの真筆には確認されていない(アップル広告等で流布)

複雑にすることは誰にでもできるが、本質だけを残して単純にすることは最も難しく、最も洗練されている ── デザイン・文章・暮らしの整理まで、あらゆる分野で引用される警句。アップルの初期広告でも使われた

心理学では
この名言は、心理学でいう処理の流暢性(情報をすんなり理解できる感覚)の働きと重なる。Reberら(2004)は知覚と美に関する研究を総説し、まとまりがよく処理しやすい対象ほど、人は美しく好ましいと感じる傾向を示した。単純さが洗練に見えるのは、受け手の心の負担を軽くするからである。暮らしの面でも、Brown & Kasser(2005)の調査では、消費を控えて簡素な生活を自ら選ぶ人ほど主観的幸福感(自分は幸せだという実感)が高いことが示された。持ち物や予定、文章から「なくても困らないもの」を一つずつ削る習慣が、心の余白と満足につながる。 参考:Reberら(2004)「Processing Fluency and Aesthetic P…」 ↗/Brown & Kasser(2005)「Are Psychological and Ecological W…」 ↗
人物
イタリア・ルネサンスの芸術家・科学者(1452-1519)
「金なんか望むな。倖せだけを見ろ。ここには何もないが、自然だけはある」

— 黒板五郎(ドラマ『北の国から 2002遺言』) 倉本聰脚本(フジテレビ)

北海道の原野で子を育てた父・五郎の遺言。何もないことは欠乏ではなく、自然という「金で買えないもの」の別名である ── 都会と消費社会への対抗として、お金と幸せを切り離した日本のドラマ史に残る言葉

心理学では
五郎の言葉は、物質主義(お金や所有物を人生の中心に置く価値観)から離れ、自然とのつながり(自然を自分の一部と感じる感覚)に幸福の土台を置く生き方を示している。Dittmarら(2014)は多数の研究を統合したメタ分析で、物質主義的な価値観が強い人ほど人生満足度が低く、不安や抑うつが高いことを示した。またCapaldiら(2014)のメタ分析では、自然とのつながりを強く感じる人ほど幸福感が高いことが分かった。ただし暮らしの基盤が揺らぐ場面では、最低限のお金の備えと両立させるとよい。日々、空や木々に目を向ける時間を意識してもつことが、金では買えない豊かさを育てる助けになる。 参考:Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」/Capaldiら(2014)「The relationship between nature co…」
人物
倉本聰(1935-)は日本の脚本家。『北の国から』は21年続いた国民的ドラマ
「足るを知る者は富み、強(つと)めて行う者は志有り」

— 老子 『老子』第33章

どれだけ持っているかではなく、「足りている」と知れるかどうかが豊かさを決める ── 富の定義を所有量から認識へ移した道家の中心命題。同じ章の「自らを知る者は明」「自ら勝つ者は強し」と並ぶ、内向きの充足の三点セット

心理学では
「足るを知る」は、心理学でいう欲求と所有のずれ(「欲しいもの」と「持っているもの」の差)を小さくする構えにあたる。Larsen & McKinley(2009)は質問紙調査で、欲しいものを持っている度合いとは別に、いま持っているものを望む度合いが高い人ほど幸福感が高いことを示した。またSchwartzら(2002)の相関研究では、常に最善の選択肢を求める「最大化志向」が強い人ほど幸福感や満足感が低く、後悔が多い傾向が見られた。「これで十分」と感じられる基準をもつことが、豊かさの実感を支えるのである。日々の買い物や仕事の選択でも、自分なりの「足りる線」を先に決めておくことが心の余裕につながる。 参考:Larsen & McKinley(2009)「Is Happiness Having What You Want,…」 ↗/Schwartzら(2002)「Maximizing versus satisficing: Hap…」
人物
古代中国の思想家。道家の祖
「疏食(そし)を飯(くら)い水を飲み、肱(ひじ)を曲げて之を枕とす。楽しみ亦た其の中に在り」

— 孔子 『論語』述而第七

粗末な飯を食べ、水を飲み、肘を枕に眠る ── そんな暮らしの中にも楽しみはある。「不義にして富み且つ貴きは、我に於いて浮雲の如し」と続き、道に外れた富貴は浮雲にすぎないと言い切る、孔子自身の幸福の証言

心理学では
この言葉は、基本的な必要が満たされれば、幸福は物の多さに左右されにくいという見方(限界効用逓減:豊かになるほど満足の伸びが小さくなること)と重なる。Biswas-Diener & Diener(2001)はインド・コルカタのスラムの住民を調査し、厳しい生活の中でも、家族関係などに多くの人が満足を示すことを見いだした。またKasser & Ryan(1993)の相関研究では、金銭的成功を人生の中心目標に置く人ほど幸福感が低かった。ただし困窮そのものは苦しみを生むため、生活の安定と組み合わせて考えるとよい。日々のささやかな楽しみを味わい、富より筋の通った生き方を選ぶことが、揺るがない満足につながる。 参考:Biswas-Diener & Diener(2001)「Making the Best of a Bad Situation…」 ↗/Kasser & Ryan(1993)「A dark side of the American dream:…」
人物
春秋時代の思想家(BC551-479)
「貧乏はするもんじゃありません。味わうもんですな」

— 古今亭志ん生 高座・随筆での言葉

なめくじの湧く長屋に住み、酒と借金にまみれた極貧時代を、後年こう振り返った昭和の大名人。貧乏を「する(耐える)」対象から「味わう(観察し面白がる)」対象へ変える ── 境遇との距離の取り方そのものが芸になった言葉

心理学では
「味わう」とは、心理学でいう自己距離化(自分の体験を外から眺める観察者の視点をとること)と、ユーモアによる再評価(出来事のおかしみに目を向けてとらえ直すこと)に当たる。Krossら(2005)の実験では、つらい出来事を一歩引いた視点で振り返った人は、当事者の視点で振り返った人より、感情の再燃や反すう(同じ考えの堂々巡り)が少なかった。Samson & Gross(2012)の実験でも、不快な場面を温かみのあるユーモアでとらえ直すと、否定的な感情が和らぎ、肯定的な感情が高まった。うまくいかない日は「後で笑い話にするならどう語るか」と考えてみることが、心の余裕を取り戻す助けになる。 参考:Krossら(2005)「When Asking “Why” Does Not Hurt Di…」 ↗/Samson & Gross(2012)「Humour as emotion regulation: The …」 ↗
人物
五代目古今亭志ん生(1890-1973)。昭和落語界の最高峰
「よそう。また、夢になるといけねえ」

— 落語『芝浜』のサゲ 三遊亭圓朝の作と伝わる人情噺の結び

拾った大金を「夢だった」と信じ込まされ、酒を断って働き直した魚屋。三年後の大晦日、真相を明かした女房が勧める一杯を前に、この一言で湯呑みを置く ── 手にした幸福を壊しかねないものを、自分から遠ざける自制の美しさ。日本の話芸が生んだ最高の幸福論の一つ

心理学では
この一言は、心理学でいう状況選択による自己制御(誘惑に意志の力で耐えるのではなく、誘惑のある場面にそもそも近づかない工夫)にあたる。Entら(2015)は質問紙を用いた研究で、自制心の高い人ほど、誘惑にさらされる状況を自分から避ける傾向があることを示した。またHofmannら(2014)は、日常の気持ちを繰り返し記録する経験サンプリング法などを用いた研究で、自制心の高い人ほど欲求と目標がぶつかる葛藤を経験することが少なく、気分がよく人生満足度も高いことを報告している。努力して築いた暮らしを守るには、我慢の強さを鍛えるよりも、それを崩すきっかけを手元に置かない工夫が助けになる。 参考:Entら(2015)「Trait self-control and the avoidan…」 ↗/Hofmannら(2014)「Yes, But Are They Happy? Effects o…」 ↗
人物
『芝浜』は大晦日の定番として愛される人情噺の傑作
「時間を節約すればするほど、生活は、やせ細っていく」

— ミヒャエル・エンデ 『モモ』(1973)の主題(要旨)

「時間貯蓄銀行」の灰色の男たちに時間を節約させられた人々は、豊かになるどころか、余裕と笑いと友情を失っていく ── 効率化の果てに肝心の「生きる時間」が消える逆説を描いた、時間と幸福についての児童文学の最高峰

心理学では
心理学では、この逆説は「時間をお金のように扱う心の構え」の副作用として説明できる。時間を節約すべき資源とみなすほど、時間的豊かさ(ゆとりがあると感じる感覚)が損なわれ、いまの体験を味わう力が弱まる。DeVoe & House(2012)は実験で、自分の時給を計算させた人ほど、余暇に音楽を聴いたときの楽しさが小さくなることを示した。またMogilner(2010)は、お金ではなく「時間」を意識させると、人は友人や家族と過ごす方向に行動を選び、そうした時間の使い方が幸福感の高さと結びつくことを実験で確かめている。浮かせた時間の量よりも、その時間を誰とどう味わうかに目を向けることが、暮らしを豊かにする。 参考:DeVoe & House(2012)「Time, money, and happiness: How do…」 ↗/Mogilner(2010)「The pursuit of happiness: Time, mo…」 ↗
人物
ドイツの作家(1929-1995)。『はてしない物語』

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