大石先生らによる感謝についての最新研究😍メガスタディー(大規模調査)です。
感謝のワークについて、
その効果や、ワークごとの効果、文化や国によってどう効果が違うのか、これまで議論になっていた事も含めて、対規模に調査頂きました。
以下、4ポイントだけ抜き出し😊
ポイント1:感謝は、幸せにつながる
世界各地で感謝のワークを行った所、
幸せの各要素を向上させた😍
効果の大きさ順位は、
1位:ポジティブ感情(Positive Affect)
→34カ国全てで向上!かつ最も効果が出た。
2位:楽観性(Optimism)
→30カ国/34カ国で効果有!
3位:ネガティブ感情(Negative Affect)
→29/34カ国で効果有(ネガティブ感情が減った)!国によるバラつきが大きい。
4位:妬み(Envy)
→27/34カ国で効果有(妬みが減った)。
5位:恩義感(Indebtedness)
→29/34カ国で効果有。だが効果はそこまで大きく無い。
→心理的負債感のこと。感謝と同時に、相手に借りがある、何かを返さなきゃ、という思い。
→日本だと大きそうですが、他の国でも恩義感を感じるところ多いんですね。
6位:人生満足度(Life Satisfaction、SWLS)
→27/34カ国で効果有。
→手法に寄らず国によって効いたり効かなかったり。
⇒ということで、瞬間的なハッピーには効く!
が、人生全体の満足度(主観的ウェルビーイング)に効くかは、一部の国で効かなかった。
ポイント2:感謝を伝えるのは最強。
感謝のワークを6種類実施頂いた所、
最も幸福度が高まったのは、感謝のテキスト。
感謝したい相手にスマホで実際にテキストメッセージを送ってもらうワークです😍
2位:感謝の手紙
感謝したい相手への手紙を書く(ただし相手には渡さなくてもOK)
3位:内観リフレクション
過去1週間で感謝することを3つ書き、「何を受け取ったか」「何を返したか」「さらに何ができるか」を内省
4位:神への感謝
神・高次の存在・スピリチュアルな存在への感謝の手紙を書く
5位:メンタル・サブトラクション
感謝することを5つ書き、そのうち1つについて「もしそれがなかったら自分の人生はどうなっていたか」を描写
6位:感謝リスト
過去1週間で感謝することを5つ書き出す(最もシンプルで古典的な方法)
⇒やはり、伝える、深掘りが大事ですね😊
ポイント3:日本は、感謝の効果が小さい国
これは他の研究でも言われる所ですが、
日本では感謝の効果は小さかった。
ただ、幸せに効かない訳ではないです。
ちなみに順位は↓。北欧も結構効果が小さいですね。
マレーシア > ポルトガル > トルコ > 韓国 > オーストラリア > オランダ > スウェーデン > イギリス > コロンビア > ハンガリー > イタリア > アメリカ > ギリシャ > インド > カザフスタン > ナイジェリア > フランス > ブラジル > ガーナ > デンマーク > 日本 > ポーランド > タイ > マケドニア > ノルウェー > 中国
ただ、一方でうちで測っている幸福度診断Well-Being Circleなどでも、
さまざまなことに感謝する人は、人生満足度含めて幸福度が高いです。
さらに感謝のワークやると幸福度高まるので、ワークのやり方が大事なんじゃなかろうか。
ポイント4:感謝の効果は文化にもよる
文化による感謝の効果への影響もあって、大きな効果は↓でした。
日本は、
タイトネス(社会規範の強さ)がめちゃ高く、
快楽傾向が低く、
権力格差は中程度、
宗教性がめちゃ低く、
GDPは高い。
なので、人生満足度や楽観性は上がりづらく、恩義感は感じやすい。
感謝の実践が主観的な幸福感に及ぼす影響に関する多国籍大規模研究
A multinational megastudy of the effects of gratitude practices on subjective well-being
Nicholas A. Coles , Annabel V. Dang, Shigehiro Oishi et al.
PNAS,2026/5/11
https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2537789123
意義
大規模な共同研究において、文化的に多様な34か国から集まった10,696人の参加者を対象に、6種類の短い感謝介入の効果を検証しました。対照課題と比較すると、感謝介入は、気分、主観的な人生観、向社会的な感情のわずかな改善など、理論的に予測されたいくつかの効果をもたらしました。しかし、これらの効果は、感謝の実践方法や国によって異なりました。例えば、既存の証拠に基づくと、新たに無作為に選ばれた国で実施された感謝介入は、ポジティブな感情を改善すると関係者は予想できますが、他の測定結果には影響しない可能性があります。感謝介入が成功する場合と失敗する場合、その理由を説明するために、本研究では12の文化的な違いの役割を詳細に分析しています。
要旨
研究者たちは、さまざまな文化圏の人々が、感謝に関連するさまざまな実践を用いて、感情、人生観、社会関係を変えていることを観察してきた。幅広い異文化間の違いを網羅するように意図的にサンプリングされた34か国(合計N = 10,696)で、6つの短い感謝介入が主観的な気分、人生観、社会的評価に及ぼす影響を実験的に検証した。3つの対照課題と比較すると、感謝の実践は、肯定的感情(d = 0.37)、否定的感情(d = −0.22)、楽観主義(d = 0.24)、生活満足度(d = 0.12)、負債感(d = 0.15)、および羨望(d = −0.16)において、理論通りの改善を即座にもたらした。注目すべきは、これらの効果は、さまざまな感謝の実践(0.00 < τ実践< 0.08)と国(0.10 < τ国< 0.19)によって異なっていたことである。例えば、既存の証拠に基づくと、関係者は、無作為に選ばれた国で実施された感謝の介入がポジティブな感情を改善すると期待できるが、その他の測定された結果には影響しないと期待できる。なぜこのようなことが起こるのかを今後調査するための指針として、12の異文化間の違いの重要性に関する探索的なベイズ推定値を提供する。
感謝のグローバル・プリズム 34ヵ国・1万人規模のメガスタディが解き明かす、文化と心理的介入の複雑な関係 Based on "A multinational megastudy of the effects of gratitude practices on subjective well-being" (Coles et al., 2026) NotebookLM 感謝の研究における「西洋中心主義」の打破 過去の偏り(The WEIRD Bias) 過去のメタ分析が示す事実:感謝の介入研究の約50%が米国で行われ、約49%が単一の手法(感謝のリスト化)に偏っていた。 本研究のスケール 文化的特異性を最大化するために意図的にサンプリングされた34ヵ国、10,696人の参加者。世界規模のデータが、感謝の「普遍性」と「特異性」を分離する。 Notebook LM メガスタディの構造設計 Level 1 10,696名の参加者 (15言語のブラウザベース実験) Level 2 34の対象国 (文化的な距離・多様性を網羅) Level 3 6つの実験+3つの対照タスク (無作為割り当て) Level 4 6つの心理的指標への 即時効果を測定 NotebookLM 6つの「感謝の実践」アプローチ The Gratitude Arsenal Matrix 【実践手法】 【対象】 【特徴】 1 文字メッセージ 👥 他者 感謝している人にテキストを書いて送信する 2 手紙(Letter) 📧 他者 感謝している人に手紙を書く 3 内観(Naikan Reflection) 👥 自己・他者 日本の「内観」に似た、感謝の対象への深い熟考 4 神への感謝(Divine Gratitude) ⊕ 神・超越者 神や神聖な存在に向けて感謝の手紙を書く 5 メンタル・サブトラクション(Mental Subtraction) 🧠 自己 感謝している物事や人が「もし存在しなかったら」を想像する 6 リスト化(List) 🧠 自己 感謝している物事や状況をリストアップする(最も伝統的な手法) 🔔 NoteBook LM 感謝の普遍的効果(全体平均) 対照群と比較して、6つの実践は世界平均で確実な心理的改善をもたらした。 ポジティブ感情(Positive Affect) d = 0.37 (最大の上昇) ネガティブ感情(Negative Affect) d = -0.22 (低下) 楽観性(Optimism) d = 0.24 (上昇) 人生への満足度(Life Satisfaction) d = 0.12 (小幅な上昇) 嫉妬(Envy) d = -0.16 (低下) 恩義・借りの感覚(Indebtedness) d = 0.15 (上昇・互恵性の促進) パラダイムの転換:「何を実践するか」よりも「どこにいるか」 介入による効果の違いは、実践手法の違いによるものよりも、対象国の違いによるもの[1.5倍から54.5倍]も大きい。 国家間の異質性 (Country Variance: τ_country = 0.10 - 0.19) 実践間の異質性 (Practice Variance: τ_practice = 0.00 - 0.08) 未知の感知の実践手法よりも、未知の国の結果を予測することの方がはるかに困難である。 Notebook 手法の違い:直接的な社会的行動の優位性 実践間の差異は比較的小さいものの、明確な傾向が存在する。 Mental Subtraction Divine Gratitude Naikan Reflection Gratitude Letter リスト化(List) 単に感謝を列挙する行為は、測定された変化が最も少なかった(95% CI [0.09, 0.22])。皮肉にここれが過去最も研究されてきた手法である。 文字メッセージ(Text) 全指標・全国家で最も仮説に一致する変化をもたらした(95% CI [0.21, 0.34])。他者への直接的な送信が高い効果を生む。 国家間の劇的な差異:メキシコとノルウェーの比較 対象国を変えるだけで、介入の総合的効果は最大化も無効化もされる。 最も高い反応性 (Mexico) 最も低い反応性 (Norway) ・全指標と実装において、最も仮説通りに強く反応した国家。 ・Effect Size: 95% CI [0.56, 1.11] ・感謝の介入が、ほぼゼロまたは最もわずかな変化しか生み出さなかった国家。 ・Effect Size: 95% CI [-0.26, 0.37] 感謝そのものは普遍的だが、介入パッケージとしての「効きやすさ」は国境によって劇的に変わる。 普遍的効果と文化的依存性 普遍的な真理 (Positive Affect) - 対象国の98%以上で、感謝の介入は「ポジティブ感情」を確実に向上させる。気分を良くする効果は文化を問わない。 文化に依存する変数 (Envy & Life Satisfaction) - 人生への満足度の向上や、嫉妬心の低下に関しては、調査した国の14%で効果が見られない、あるいは逆効果であった。 文化に依存する変数 (Envy & Life Satisfaction) - 対象国の98%以上で、感謝の介入は「ポジティブ感情」を確実に向上させる。気分を良くする効果は文化を問わない。 差異を生み出す「見えない文化の力」 成果のばらつきを説明するため、研究チームは12の文化的なモデレーター(調整変数)と各国の介入効果との相関を分析した。 個人主義 (Individualism) 寛容さ/放縦 (Indulgence) 権力格差 (Power Distance) 宗教性 (Religiosity) 文化の厳格さ (Tightness) GDP 🔗 NotebookLM 感謝の効果を抑制する「文化の壁」 社会的・階層的な抑制約が強い文化圏では、感謝による人生の満足度の向上が制限される。 The Cultural Moderator Web: Dampeners 文化の厳格さ (Cultural Tightness: r = -0.40) - 社会的規範が厳格な国では、感謝による感情、楽観性、人生の満足度の向上が小さい。 権力格差 (Power Distance: r = -0.45) - 階層的な権力格差が大きい国でも同様に、人生の満足度の向上が小さくなる傾向がある。 人生への満足度 (Life Satisfaction) Takeaway: 欲望や感謝を社会的抑制の中でどのように管理するかが、介入効果にブレーキをかける 感謝の効果を増幅・変質させる要因 特定の文化的価値観は、感謝がもたらす個別の心理的アウトカムを強く増幅させる。 The Cultural Moderator Web: Amplifiers 寛容さ (Indulgence) 楽観性 (Optimism) 寛容さと楽観性(Indulgence & Optimism) - 欲求を満たすことに寛容な文化圏(Indulgence)では、感謝による「楽観性」の向上が顕
■背景
■ Coles et al.(2026)感謝介入メガスタディ ― 研究の前提となる既存研究
このPNAS論文は、34カ国・10,696人を対象とした感謝介入の大規模実験ですが、その背景には長年の研究蓄積があります。著者たちが「なぜ今この研究が必要か」を組み立てた論理の流れに沿って、引用文献を整理します。
▼ 1. 感謝は文化を超えて見られる行為である
論文の出発点は「感謝という行為は人類に普遍的に存在する」という観察です。
つまり「感謝は普遍的だが、その表れ方は文化によって違う」という前提が、まず固まっています。
▼ 2. 感謝が幸福を高める「3つの理論的説明」
なぜ感謝はウェルビーイングを高めるのか。先行研究には主に3つの理論的立場があり、本研究はそのすべてを検証対象にしています。
※ 用語補足:
indebtedness(恩義感/借りがある感覚)= 「お返しをしなければ」という社会的互恵性の動機づけ
▼ 3. 現状の感謝研究には大きな偏りがある
ところが、現状の感謝研究は決定的にバランスを欠いています。
▽ Choi, Cha, McCullough, Coles, & Oishi(2025)のメタ分析(本研究の直接的な土台)
※ 用語補足:
メタ分析 = 過去の複数の研究結果を統計的に統合する手法
▽ 主流メディアで推奨される幸福法の根拠は実は弱い
▼ 4. 「比較できない」というメタ的問題
著者は、なぜ文化や手法の違いを切り分けにくいのかを、2つの研究の対比で説明しています。
▽ Emmons & McCullough(2003)
▽ Chan(2010)
→ 2つの研究は「手法」「測定指標」「対象文化」すべてが違うため、何が結果の違いを生んだのかを後から切り分けることが不可能。メタ分析でも限界がある(Coles et al., 2025)。
この「交絡(confounding)問題」を解くには、同じ手法を複数文化で、同じ指標で測る大規模実験が必要 ― これがメガスタディの動機です。
▼ 5. WEIRD批判と文化的多様性への要請
近年の心理学では、研究対象の偏りに対する批判が強まっています。
※ 用語補足:
WEIRD = Western, Educated, Industrialized, Rich, Democratic の頭文字。心理学サンプルの偏りを指摘する用語
文化的距離(Cultural Distance)= 2つの国がどれだけ文化的に異なるかを、遺伝学の「固定指数(fixation index)」の手法を価値観調査データに応用して数値化した指標(Muthukrishna et al., 2020 ; 元手法は Nei & Chester, 1983)
▼ 6. 解決策としての「ビッグチーム・サイエンス」
著者たちは、こうした問題に対する答えとして、多国籍の研究者が同じプロトコルで実験を行う体制を提唱してきました。
本研究の「Global Gratitude Collaboration」はこの流れの実践であり、34カ国の研究者が同一プロトコルで実験を行うことで、これまで切り分けられなかった「手法の違い」と「文化の違い」を分離して推定できるよう設計されています。
▼ 7. 検証対象となった6つの感謝実践 ― それぞれの出典
本研究で比較された6種類の感謝実践は、過去の代表的な研究から選ばれています。
※ 用語補足:
内観(Naikan)= 吉本伊信が体系化した日本発の自己観察法。「お世話になったこと」「お返ししたこと」「迷惑をかけたこと」を振り返る
■研究内容
■ 1. 研究方法
▼ 1-1. 全体デザイン
※ 用語補足:
メガスタディ = 通常の研究より圧倒的に大規模(参加者数・国数・条件数)で、複数の介入を一度に比較する研究形式
▼ 1-2. 国のサンプリング ― 34カ国の選定方法
※ 用語補足:
文化的距離 = 遺伝学の「固定指数(集団間の遺伝的隔たりを示す指標)」を、世界価値観調査のデータに応用して算出された、国同士の文化的隔たりの数値
▼ 1-3. 参加者
▼ 1-4. 9つの条件(感謝6条件 vs 統制3条件)
▽ 感謝条件(6種類)
▽ 統制条件(3種類)
注:「日常の悩みを書く」という統制条件は、それ自体がウェルビーイングを下げ、感謝介入の効果を過大評価させるため、意図的に除外している(Dang et al., 2026)
▼ 1-5. 測定したアウトカム(6つ)
20の形容詞について、現在の心理状態にどの程度当てはまるかを7件法で回答。
※ 用語補足:
α(クロンバックのα)= 尺度の内的一貫性(項目同士がどれだけ揃って同じものを測っているか)の指標。0.7以上が望ましいとされる
▼ 1-6. 分析戦略
中核となる分析はランダム効果メタ分析。各国・各実践について、感謝条件と統制3条件平均の差を効果量(Cohen's d)で算出し、合計1,224個の効果量を推定。
モデル式は概念的に以下のような形:
d ~ β0 + μ_practice + μ_country + ε
→ 実践と国を同時にランダム化することで、両者の影響を分離して定量化できるように設計
※ 用語補足:
効果量 Cohen's d = 群間の平均差を標準偏差で割った値。目安として、0.2=小、0.5=中、0.8=大
本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:34カ国、1万人以上を対象とした研究で分かった、感謝の秘訣
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-05-21-1779392496/