2026.10.29

はぴテク相談室:感謝ノートって、ひとりの自己満足?

相談者

はぴテクさん、こんにちは。最近「寝る前に感謝したことを3つ書く」っていうのを始めたんです。書いているときはほっこりするんですけど、ふと「これって自分の中で完結してる自己満足なんじゃないかな?」と思って。ひとり暮らしで、人とのつながりも薄めなので、なんだか自分にだけ向いた習慣な気がしちゃって……。

はぴテクさん
はぴテクさん

こんにちは!まず、始めてみて続いていること自体がすてきです。それに「自己満足かも?」という問いは、実はとても良いところを突いています。というのも、最近の研究で「感謝がウェルビーイングと結びつく理由の一つは、人とのつながりの感じ方にあるらしい」ということが報告されているんです。感謝は、意外と「自分の中だけ」で終わらないみたいなんですよ。

相談者

えっ、そうなんですか?感謝するって、こう、ひとりで心の中で「ありがたいなあ」って思うことだと思ってました。

はぴテクさん
はぴテクさん

もちろんその側面もあります。ご紹介したいのは、2026年に Journal of Happiness Studies に載った研究で、57か国・14万8千人以上のデータを使ったものです。そこでは「感謝を感じている人ほど、体の健康感や生活満足度が高い」という関連が、いろいろな国で共通して見られました。そして、その結びつきの一部を統計的に説明していたのが「周りからの支えを感じていること(困ったときに頼れる人がいる、支えてもらったという感覚)」と「自分が誰かを支えること」だったんです。

相談者

「支えを感じる」と「支える」の2つ、ですか。感謝とどう関係するんだろう。

はぴテクさん
はぴテクさん

研究では、こう考えられています。感謝しやすい人は、人からしてもらったことに気づきやすく、「あれはありがたいことだった」と受け取りやすい。つまり感謝は、周りの支えに対する"感度"を上げるレンズみたいなもの、という見方です。実際、1年目に感謝の気持ちが強かった人は、翌年に「困ったとき頼れる人がいる」と感じている度合いも、「大切な人に愛情や思いやりを示す頻度」も高い傾向がありました。前の年の値を考慮しても、その傾向は残っていたそうです。

相談者

へえ……。でも私、感謝ノートに書くのって「今日のコーヒーがおいしかった」とか「天気がよかった」とか、人が出てこないことも多いんですよね。

はぴテクさん
はぴテクさん

それも立派な感謝ですよ。ただ、この研究のヒントを借りるなら、ときどき「人」が登場する項目を入れてみるのはどうでしょう。「同僚が資料を見てくれた」「友だちがスタンプを送ってくれた」みたいな小さなことで十分です。研究で特に一貫して効いていたのは、「支えてもらった感覚」のほうでした。2つの研究の両方で、感謝→支えを感じる→健康感や満足感、という道筋が確認されています。

相談者

「自分が誰かを支える」ほうはどうなんですか?私、人の役に立てている気がしなくて。

はぴテクさん
はぴテクさん

正直にお伝えすると、こちらは少し結果が揺れています。1つ目の研究(コロナ禍の1週間の行動を聞いたもの)では、感謝と「手助けの回数」は結びついていましたが、手助けの回数と健康感は直接つながっていませんでした。一方、2つ目の研究(1年をまたいだもの)では、「身近な人に愛情や思いやりを示す頻度」が健康感や生活満足度と関連していました。質問の中身が「作業的な手助け」なのか「気持ちを示すこと」なのかで違ったのかもしれない、と著者たちも述べています。だから「役に立たなきゃ」と気負うより、「ありがとう」と伝える、気にかけていると示す、くらいがちょうどいいのかもしれません。

相談者

それなら私にもできそう。あ、でも文化によって違う、みたいな話も聞いたことがあります。日本だとどうなんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

いいところに気づかれました。この研究では、国ごとに結びつきの強さがかなり違っていて、特に「感謝と支えのやりとり」の部分が国によってバラつきが大きかったんです。集団主義的(まわりの人や集団とのつながりを重んじる傾向が強い)とされる国ほど、「感謝→誰かを支える」の結びつきは弱めでした。「支え合いが当たり前の規範になっている社会では、感謝の気持ちがあるかどうかにあまり左右されないのでは」というのが著者たちの解釈です。ちなみに日本については、「感謝」と「頼れる人がいるという感覚」の結びつきが、アメリカやイギリスと並んで大きかった、と報告されていますよ。

相談者

なんだかうれしいですね。じゃあ、私の感謝ノートは無駄じゃなかった、ってことでいいですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

「無駄じゃない」と言っていいと思います。ただ、研究者としての注意も添えさせてください。この研究は「関連」を調べたもので、「感謝ノートを書けば健康になる」と断定できるものではありません。逆に、健康で満足している人のほうが感謝を感じやすい、という向きも十分ありうると著者たちも書いています。それに、支えのやりとりで説明できたのは感謝と幸せの結びつきの一部だけで、効果の大きさもささやかでした。

相談者

なるほど。大げさに期待しすぎず、でも「人とのつながりに目を向けるきっかけ」として続けてみる、くらいの気持ちでいいんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そのとおりです。感謝ノートは、自分の内側を見つめるだけでなく、「あ、あの人に支えてもらってたな」と気づく窓にもなりうる。そして気づいたら、ひとこと「ありがとう」を伝えてみる。それでじゅうぶん、ひとりの習慣が少しだけ外に開いていきますよ。今夜のノート、楽しみですね。

■ 今日のまとめ

  • 感謝を感じている人ほど健康感や生活満足度が高い傾向は、57か国・約14万8千人のデータで共通して見られた。
  • その結びつきの一部は「周りからの支えを感じていること」で統計的に説明された。感謝は、受けている支えに気づく"レンズ"として働くのかもしれない。
  • 国によって結びつきの強さは異なり、支え合いが当たり前の社会では「感謝→支える行動」のつながりは弱めだった。ただし関連の研究であり、効果の大きさもささやか。

■ 出典・注意事項

  • Vornlocher, C., & Wormley, A. S. (2026). Social support processes link gratitude and well-being across cultures and over time. Journal of Happiness Studies, 27, 140. https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z

  • 本研究は自己申告のアンケートにもとづく相関研究(一部は2時点の縦断データ)であり、「感謝が幸せや健康を生む」という因果関係を断定するものではありません。著者自身も、生活満足や健康が感謝を高める逆向きの可能性や、単一項目の測定・2時点のみという限界を指摘しています。

  • 支えのやりとりで説明できたのは感謝とウェルビーイングの結びつきの一部で、間接的な効果の大きさは小さいものでした。

  • この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。

投稿者による補足(1件)
補足 1

研究自体の紹介はこちら😊
ありがとうの気持ちは「支えられてる感」を通じて幸せにつながる
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-29-1793213160/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 ありがとうなんとかなる 感謝・親切・向社会性主観的幸福・幸福測定文化と幸福・日本的幸福

📮 毎週土曜の朝、メールで届きます

その週にご紹介したウェルビーイング研究のダイジェストを無料でお届けします。

確認メールのリンクで登録完了。いつでも配信停止できます。 📧 サンプルを見る

← 検索にもどる