ちょっとズバりウェルビーイングの論文ではないのですが、
人がいかにして本物のリーダーになっていくのか、についてのオランダの最新研究😊
22人のベテラン経営者/管理職に、「リーダーになっていった人生の物語」をじっくり聞き取った、丁寧な研究です。
まず大前提として、
「役職に就くこと」と「自分はリーダーだと実感できること」は、別物。
むしろ正式なリーダーほど、
「リーダーのフリをしてるだけ」
「いつか実力不足がバレそう」
という感覚(=リーダー・インポスター現象)に悩みやすい、と分かっています。
つまり、課長になったのにモヤモヤする、は超あるある。
あなたが特別ダメなわけじゃないんです。
で、研究で分かったのは、
多くの人がそのモヤモヤからスタートして、
何年もかけて「これが自分のリーダーシップだ(オリジナルである感覚)」へ移っていった、ということ。
ポイントは、頭の中の3つの変化。
①リーダー観が広がる
「決断して命令する強い人」だけじゃなく、「傾聴する」「相手の視点に立つ」もリーダーシップだ、と見方が広がる。すると「あれ、自分のこの強み、もうリーダーじゃん」って自分も枠に入れる。
②その広げた像と、自分を噛み合わせる
いろんな人を観察して(最悪な上司も「ああはなるまい」の良い教材)、試して、周りの反応で調整。最初は真似(コピー)から入って、最後は「これは私のやり方だ」になる。
③振り返りで、自分の価値観をはっきりさせる
帰りの車で5分振り返る、散歩する、日記を書く。「自分は何を大事にするリーダーか」が見えると、軸ができてブレなくなる。
そしてもう一つ、地味だけど大事な発見。
リーダーになるって「新しく学ぶ(足し算)」だけじゃなくて、
「古い思い込みを手放す(引き算=アンラーニング)」でもある。
たとえば「リーダーは全部の答えを持ってなきゃ」を手放して、
「より良い問いを立てればいい」に書き換える、みたいな。
という、結果でした😍
リーダーなりたてのモヤモヤの正体は、たぶん「狭い・古いリーダー像」を握りしめたまま、そこに無理やり自分を合わせようとしてる状態。だから「リーダーのフリ」に感じる。
ゴールは、役割に自分を押し込むことじゃなくて、
自分の価値観に合うようにリーダー像のほうを描き直すこと。
そうすれば、フリじゃなく本物になっていく。
ちなみにこの研究、
発達にかかった期間は3〜28年、平均で約15年でした。
半年や1年でモヤモヤしてるのは、むしろ超スタート地点。順調すぎるくらい。
「ちゃんとしたリーダーにならなきゃ」ではなく、
「自分なりのリーダーを、時間をかけて見つけていけばいい」。
そう思えるだけで、ちょっと肩の力が抜けますね😊
そして、そんな本物のリーダーのいる職場は、ウェルビーイングなんだろうなぁ😍
偽物から本物へ:組織のリーダーは経験の意味づけを通してどのようにリーダーとしてのアイデンティティを形成し、発展させるのか
From Imposter to Original: How Organizational Leaders Shape and Develop a Leader Identity Through Meaning-Making of Experiences
Sonja Zaar(マーストリヒト大学), Piet Van den Bossche, Wim Gijselaers
Journal of Organizational Behavior,2026/6/1
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/job.70098?af=R
本稿では、正式なリーダーシップの役割を担う人々が、時間と状況を超えた経験の意味づけを通して、どのようにリーダーとしてのアイデンティティを形成し、発展させていくかを論じる。22名の組織リーダーへの詳細な人生物語インタビューから得られた質的データに基づき、写真や物品を用いた情報収集手法、タイムラインマッピングによってデータを補強することで、意味づけられた内容と意味づけの様式がリーダーとしてのアイデンティティの発達にどのように影響するかについての理解を提供する。調査対象となった組織リーダーのほとんどが、キャリアを通じてリーダーとしての自己認識が変化していく様子を描写しており、アイデンティティの不確実性やインポスター症候群から、アイデンティティの一貫性や独自性への感覚へと移行していることがわかった。この変化は、意味づけにおける3つの重要な変化と関連していた。(1)認知的複雑性の発達、(2)スキーマの整合性の発達、(3)自己スキーマの明確化の発達。これらの変化は、リーダーが特定の意味づけの様式(すなわち、認知的アイデンティティ作業)に継続的かつ意図的に取り組むことによって促進された。これらの研究結果は、リーダーのアイデンティティの形成と維持において、スキーマの成長、整合性、統合が重要であることを強調するとともに、深い思考と目的意識を持った行動がアイデンティティ構築の補完的な様式として価値を持つことを示しており、リーダーのアイデンティティ研究に新たな側面をもたらすものである。
役職は人をリーダーにしない 「インポスター(偽物)」から「オリジナル」へと至る、リーダー・アイデンティティ発達の科学 Leadership Research Institute リーダーたちが密かに抱える 「役割との不協和」 目に見える外側の世界: 高い期待、重い責任、意思決定、 社会的地位 隠された内面の世界: 「自分はこの役割にふさわしく ないのではないか」という 不安、インポスター症候群 多くのリーダーは、外見上の成功とは裏腹に「リーダーとしての自己概念」と「与えられた役割」の ギャップに苦しんでいる。外側から行動やスキルを身につけるだけでは、この内なる葛藤は防げない。 「行動」から「認知」へのパラダイムシフト 従来の育成手法 対人関係(Interpersonal)のプロセス スキル、カリスマ性、他者からの承認に焦点を当てる。 他者の期待に合わせるソーシャル・プロセス。 本質的な発達アプローチ 内面(Intrapersonal)のプロセス 意味づけ、認知スキーマの進化、自己の再定義。 自身の「内なる世界」を構築する自己啓発的なプロセス。 3年から28年をかけた「意味づけ」の軌跡 Phase 1: アイデンティティの不確実性 認知の揺直、スキーマの不一致(インドスタート期) Phase 2: アイデンティティの探索 認知の再構築、初期の整合性 Phase 3: アイデンティティのコミットメント 認知の文断化、部分的な統合 Phase 4: アイデンティティの首尾一貫性 認知的機械性、スキーマの完全な整合と明確化(オリジナル状態) 発達には平均15年(3~28年)という長期的な期間を要し、一過性の研修では完結しない。 アイデンティティを駆動する「意味づけ」のエンジン 経験 (Experiences) 個人的な 変化 職業的な 変化 組織的な 変化 意味づけのモード (Modes of meaning-making) アンテナの リフレーミング 調査・実験・ フィードバック の統合 内省的実践 形成された意味 (Meanings made) ユーザーの 古い姿の転換 日日スキーマの 構築きの実施 認識的機構性 の推進 経験(成功や失敗)そのものが人を成長させるのではなく。 経験に対する「意図的な意味づけ(Meaning-making)」のプロセスこそが、リーダーシップの根を深くする 01. 認知的複雑性の発達(Cognitive Complexity) Before / Imposter After / Original 初期の認知:ヒエラルキーと権力 リーダーシップを「絶対的な権限」「唯一の正解を示す こと」と狭く定義する。この硬直した理解と現実の ギャップが、インポスター症候群を生み出す。 進化した認知:関係性とプロセス 経験と学習を経て、リーダーシップを「状況に応じた 系統な関係性のプロセス」として捉え直す。共感や文 脈の理解が重視されるパラダイムへの拡張。 02. スキーマの整合性(Schema Alignment) 外部の理想像(プロトタイプ)への同調から離れ、自身の強みや特性に合わせてリーダー像をカスタマイズし、内面的なフィット感を獲得するプロセス。 完全な模倣(Imitation) 他者のスタイルや、組織の「あるべきリーダー像」に自らを無理やり当てはめている状態。継続と不一致が生じる。 選択的模倣(Selective Imitation) 複数のロールモデルから、自分に合いそうな要素(行動やスキル)だけを選別的に借りてきて組み合わせる段階。 カスタマイズ(Customization) 信頼できる要素が自身の特性(根幹)と完全に融合し、アイデンティティの中に「シップ」と昇華された状態。 NotebookM 03. 自己スキーマの明確さ(Self-Schema Clarity) 期待 評価 正解 義務 他者の目 自己効力感の獲得 オリジナルな声の発見 コアバリューの特定 周囲からの承認と深い内省を通じて、「自分は何を大切にするリーダーなのか」というコアバリューが明確になる。この自己知識の深まりがあらゆる状況下でぶれない基盤を作る。 統合:インポスターから「オリジナル」への昇華 リーダーシップの柔軟な理解 (複雑性の発達) 自分らしさとの融合 (整合性の発達) ORIGINAL 確固たる自己の価値観 (自己スキーマの明確さ) これら3つの認知シフトが連動し統合されたとき、リーダーシップは「演じる役割(Role)」から「自分自身の一部(Identity)」へと変わる。これこそが、インポスター症候群を完全に克服した状態である。 ツール1:アンラーニングとリフレーミング アンラーニング(Unlearning) 「弱みを見てはいけない」「全てを知っていなければならない」といった、古く機能しなくなった固定概念や理想のリーダー像を意図的に手放す。新しい認知を受け入れたためのスペース(土壌)を空ける第一歩。 リフレーミング(Reframing) ネガティブな経験や失敗を、単なる挫折ではなく「自身のリーダー像を洗練させるための成長データ」として再定義する。事象の意味付けを変える視点の転換。 Notebook1M ツール2: 観察・実験・フィードバックのループ Step 1: 観察(Observation) ロールモデルや他者の行動を観察し、 有効な要素を抽出する。 Step 2: 実験(Experimentation) 完璧を求めず、「仮の自分 (Provisional Self)」として新しい 行動を現実世界でテストする。 Step 3: フィードバック (Feedback) 他者からの反応を素直に受け入れ、 自分にフィットする行動様式を選別・ 統合する。 リーダーシップ過頭の中だけで完成しない。試行錯誤を通した現実世界でのテストと、他者からの フィードバックの統合(Selective Imitation)を繰り返すことで、徐々に自分らしさが形成される。 ツール3: 意図的な内省(Reflective Practice)の確保 外部ノイズ ジャーナリング コーチング/ スパーリングパートナー 立ち止まる空間の設計 日々の経験をただ消費するのではなく、外部ノイズを遮断し、自分と向き合い「意味を問い直す」時間を意図的に確保する。 スパーリング・パートナーの重要性 特にマイノリティや女性リーダーの場合、同じジェンダーや境遇を共有できる「スパーリング・パートナー」の存在が重要。特有の葛藤(アンコンシャス・バイアスなど)を言語化し、壁打ち相手となることでアイデンティティ発達を劇的に加速させる。 診断表:進化が「停滞する」リーダーの共通点 リーダーシップの定義 役割と自己の適合感 価値観の提え方 経験の受け止め方 停滞するリーダー (Stalled) 権力・ヒエラルキー重視 (指示と正解を求める) 役割と自己が不一致のまま (演じている感覚が消えない) 組織の価値観と葛藤に苦む 経験を「受動的」に処理 (外発的要因のせいにする) 進化するオリジナルなリーダー 関係性・プロセス重視 (共感と文脈を捉える)
【背景】
■ この研究が立っている土台 ― リーダーアイデンティティ研究の流れ
この論文(Zaar, Van den Bossche & Gijselaers, 2026)は、組織のリーダーが「自分はリーダーだ」という感覚をどう育てていくのかを、本人の内面の意味づけ(meaning-making)に注目して調べたものです。その前提となっている既存研究を、話の流れに沿って整理します。
■ そもそも「リーダーアイデンティティ」とは何か
▼ 定義
▼ なぜ重要なのか
■ ところが「肩書き」と「自己像」は一致しない
▼ 役割を持つこと ≠ リーダーだと思えること
▼ むしろ正式なリーダーほど苦しむ
■ アイデンティティはどう作られるのか ― 2つの視点
▼ これまでの研究の主流は「対人的(社会的)」な視点
▼ この論文が選んだのは「個人内(内面)」の視点
■ 鍵となる概念「意味づけ(meaning-making)」
▼ 意味づけとは
■ 意味づけの「結果(meanings made)」 ― スキーマの話
▼ 意味づけが生み出すもの
▼ スキーマとは
■ 先行する実証研究 ― 見方が「広がる」ことが土台
▼ リーダー観の変化が発達の基礎になる
▼ 具体的な研究例
▼ 「広げる」だけでなく「揃える」ことも重要
▼ なぜ整合が大事なのか(具体例)
■ 意味づけの「モード(進め方)」 ― 自動か、意識的か
▼ 2つのモード
▼ それが「アイデンティティワーク」
▼ この論文が絞り込むのは「認知的」アイデンティティワーク
■ 残された「空白」 ― だからこの研究をする
▼ そこで立てられた問い
■ まとめ ― 前提研究の3つの柱
【研究内容】
■ 方法(Method)
▼ なぜ「質的研究」なのか
▼ ナラティブ(語り)理論の視点
▼ 調査対象者(Participants)
▼ サンプル数の経緯(ここが興味深い点)
▼ サンプルの内訳
▼ データ収集(Data Collection)
▼ データ分析(Data Analysis)
▼ 信頼性を高める追加手続き(Tracy, 2010)
■ 結果(Findings)
▼ 全体像:リーダーアイデンティティは「ゆっくり・動的に」育つ
▼ 発達を支える3つの「意味づけられた内容の変化」
▼ 結果(1):認知的複雑さの発達(Development of Cognitive Complexity)
▼ 結果(2):スキーマ整合の発達(Development of Schema Alignment)
▼ 結果(3):自己スキーマの明確さの発達(Development of Self-Schema Clarity)
▼ 結果(4):リーダーアイデンティティ発達の「不在」
■ 考察(Discussion)
▼ 全体のまとめと2つの図
▼ 時間と引き金(Time and Triggers)
▼ 意味づけのモード(Modes of Meaning-Making)
▼ 意味づけられた内容(Meanings Made)
■ 理論的貢献(3点)
■ 実践的示唆(3つのレバー)
■ 限界と今後の研究
■ 結論
対話形式での紹介はこちら
はぴテク相談室:「リーダーのフリ」がしんどいあなたへ
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-07-01-1782881340/
■付録_インタビュー手順
この度は、本調査にご参加いただき、誠にありがとうございます。このインタビューの目的は、あなたのリーダーシップ育成の軌跡を形作った、人生における重要な出来事についてより深く理解することです。インタビューは録音され、後日文字起こしと分析を行います。文字起こしされたインタビュー内容は、ご確認・承認いただくためにメールにてお送りいたします。本調査で収集した情報は匿名化され、結果が個人や組織に結び付けられることはありません。それでは、インタビューを開始する前に、何かご質問はございますか?
①お持ちいただいた品物を、時系列順にテーブルの上に並べてください。そして、それぞれの品物について、いつ(例:時期と年齢)どこで(例:職場、家庭環境)その出来事が起こったのかを簡潔に記してください。
②それでは、あなたの思い出を時系列で並べた最初の項目に移りましょう。この瞬間について、あなたの物語をお聞かせください。
③それでは、時系列順に並べた2つ目の出来事についてお伺いします。この出来事についても、ぜひお話をお聞かせください。
(この一連の質問は、その後、持参された他の品物についても繰り返された。)
④これらの出来事を振り返ってみて、それらの出来事をきっかけに、あなたが始めた仕事のやり方やパターンの変化にはどのようなものがありますか?
⑤なぜこれらの瞬間を選んだのですか?
⑥かつてあなたをよく知っていたけれど、何年も会っていなかった人に、偶然ばったり会ったと想像してみてください。その人はあなたにどんな変化を見るでしょうか?
⑦ご自身のリーダーシップ育成の過程から得た重要な教訓として、他者に伝えたいことは何ですか?
⑧リーダーシップ育成という観点から、あなたの将来像はどのようなものですか?
これでインタビューは終了です。このインタビューに関して、何か追加でお伝えしたいことはありますか?ご協力ありがとうございました。
■インタビューにおける発言集
■ 3.1 認知的複雑さの発達(①リーダー観が広がる)
▼ N7
▼ N10
▼ N5
▼ N2(認識の変化)
▼ N8(認識の変化)
▼ N1(アンラーニング)
▼ N11(リフレーミング)
▼ N2(認知的柔軟性)
■ 3.2 スキーマ整合の発達(②その広げた像と、自分を噛み合わせる)
▼ N5(観察・ネガティブなロールモデル)
▼ N7(実験)
▼ N8(実験)
▼ N5(フィードバック)
▼ N11(自己認識)
▼ N1(自己認識)
▼ N7(自分のやり方へ)
■ 3.3 自己スキーマの明確さの発達(③振り返りで、自分の価値観をはっきりさせる)
▼ N2(同僚から上司へ)
▼ N7(アイデンティティの不確かさ)
▼ N12(役割期待からの解放)
▼ N2(社会的承認)
▼ N7(自己効力感)
▼ N8(自己効力感)
▼ N10(個人的な省察)
▼ N8(内省)
▼ N12(影響の見極め)
▼ N6(「なぜ」を解きほぐす)
▼ N18(継続的な省察)
▼ N2(省察の勧め)
▼ N9(導かれた省察・コーチング)
▼ N11(コーチング)
▼ N10(女性の省察パートナー)
▼ N11(自己知識・価値観)
▼ N8(真正性)
▼ N14(統合された自己)
▼ N11(オリジナルである感覚)
■ 3.4 リーダーアイデンティティ発達の不在(※本物のリーダーにまだなれていない人の発言)
▼ N13(リーダーは生まれつき、という信念)
▼ N13(スキーマの不整合)
▼ N13(自己疑念)
▼ N4(価値観の葛藤)
▼ N13(役割への両義性・動機の欠如)
▼ N13(外的統制・偶然)