2026.08.16

「発達段階が高い人ほど幸せ」は本当か?

最近発達段階の論文を紹介していますが、発達段階が高いと幸せなのか。についてのロシアの研究。18〜85歳の364人のデータから調べて頂きました。

成人発達理論では、大人の器(発達段階)は段階を経て育っていくとされます。
アンバー:みんなに合わせる
→オレンジ:自分の内面に気づき、自分の基準で考える(人生の主人公は自分)
→グリーン:他者のもつシステムの理解(みんなが、それぞれ人生の主人公は自分)
→さらにその先へ。

で、素朴な疑問。
「段階が上の人ほど、幸せなのか?」
実はこれが難しく。
例えば、人生に満足しているか、で幸福度を測ろうとしたときに、
段階によってどのような人生が満足いくものかが大きく変わるんですね。
周りから浮いていないことが満足という人もいれば、自分の基準での達成があると満足という人もいる。
ちなみに、既存の研究では若干関係があるくらいと言われています。

今回の結果としては、
・直接の関係は、あるけどめっちゃ弱い。(相関0.1程度)
・ただし中身を分解すると、
 発達段階が高い
 →成長や意味を求める気持ちが強まる
 →幸福度が高い
 という経路がきれいに出た。
つまり、段階そのものではなく、
段階とともに育つ「意味への関心」が幸せの通り道。

さらに面白いのが、人生の意味の捉え方が4タイプに分かれたこと。
①無関心:「意味とか考えるだけ無駄」
②アンビバレンス:「気になるけど、あるのか分からない」
③受容:「意味はある。でも自分の行動とは別物」
④探求:「意味は自分の選択で実現していくもの」
①→④の順に、発達段階も幸福度も上がっていく。

発達段階が上がると、人生の意味が
「他人事の抽象論」から「自分の選択で作る現実」に
変わっていく。そう、人生の意味は作っていくんですね。

・「発達すれば幸せになる」わけではない。でも発達とともに、意味を自分事として引き受けるようになり、それが幸せにつながる。
・意味は一度見つけて終わりではなく、探し続けながら持っている状態がいちばん良さそう。(フランクルの言う通り)
・ちなみに快楽的な幸せ(リラックス、気楽に)は発達段階と無関係。こっちはこっちで大事ではありますが。
という感じでしょうか。
いずれにせよ、大人の発達と幸せをつなぐ鍵は「意味」。
成人発達理論とウェルビーイング研究の橋渡しになる研究です😊

※ただし論文での発達段階は、ローヴィンジャー先生の発達段階です。ティール組織もあってキーガン先生のが著名ですが、ローヴィンジャー先生のが測りやすいので研究で使われやすい。
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A growing concern for meaning: Exploring the links between ego development and eudaimonia
意味への関心の高まり:自我発達とユーダイモニアの関連の探索
Evgeny N. Osin(HSE大学、ロシア/パリ・ナンテール大学、フランス), Elena Yu. Voevodina & Vasily Yu. Kostenko
Frontiers in Psychology, 2023/3/22
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.958721

心の成長と「生きる意味」 本当の幸せへの科学的アプローチ 心理学が解き明かす、私たちの視座(レンズ)と幸福(エンジン)のメカニズム。 Gemini Notebook 2つの「幸せ」のカタチ 快楽的幸福(Hedonia) 特徴(Focus):心地よさ、欲求の充足、苦痛の回避 プロセス(Process):比較的容易。現状維持と安定(ホメオスタシス)をもたらす。 状態(State):リラックス、満足感、快楽 自己実現的幸福(Eudaimonia) 特徴(Focus):成長、本来の自分の追求、卓越性の追求 プロセス(Process):困難を伴う。課題を乗り越え、自己を変化させるプロセス。 状態(State):渋頭、崇敬の念、深い充実感と「生きる意味」 「自我の発達」とは何か? 心の成長(成熟)とは、単に年齢を重ねることではありません。それは、自分と世界を認識するための「意味づけのレンズ」が、より複雑で洗練されたもの(へと進化していくプロセスです。 発達段階が進むにつれ、人は社会のルールを盲信することから抜け出し、予盾を受け入れ自らが「意味の創造者」であることに気づき始めます。 Genius Notebook 心が登る3つの階段 Step 3: 自律と統合の段階 (Post-conventional / 個別・自律・統合) 自分自身の基準で生きる。社会の慣践さや正解のない葛藤を受け入れ、自己実現と深い意味を探求する。(約38.4%) Step 2: 同調と自覚の段階 (Conventional / 順応・自己認識) 集団のルールや常識に従い、他者からの評価や帰属意識を重視し、徐々に自分の内面にも気づき始める。(多くの人がこの段階にいる:約53.8%) Step 1: 自己中心の段階 (Pre-conventional / 衝動・自己防衛) 自分の欲求と安全が最優先。世界を「快・不快」や「勝ち・負け」の単純な基準で評価する。(諸説では約7.7%) Genius Notebook 成熟すれば、自動的に幸せになれるのか? 直感(The Myth): 心が成長し、視座が高くなればなるほど、人は幸福になるはずだ。 科学の答え(The Reality): 驚くべきことに、自我の発達と幸福感の直接的な相関関係は「非常に弱い」ことが分かっています。 なぜじゃろうか?視座が高くなる(レンズが複雑になる)と、社会とのプレッシャーを感じたり、より深い葛藤を抱えたりするため、単なる「心地よさ」だけでは満足できなくなるからです。 Connell Notebook 幸せを動かす真の「エンジン」 心の成長 (Ego Development) 成長への意欲 (Eudaimonic Motives - 成長や本物を求める動機) 深い幸福感 (Eudaimonic Well-being) 意味の発見 (Presence of Meaning - 人生の目的や意義を持っている実感) 心の成長そのものが幸福を作るのではありません。成長することによって「人生の意味を発見し」「より深く成長したいと願う」ようになり、その2つのエンジンが結果として、私たちに深い幸福感(Eudaimonia)をもたらすのです。 Cornelll Notebook 「意味を探すこと」と「持つこと」のパラドックス 一般的な傾向: 通常、人生の意味を「探している」人は、現在意味を「持っていない(満たされていない)」状態にあります。 (両者はマイナスの相関) 意味を探すこと (Search for Meaning) 意味を持っていること (Presence of Meaning) 成熟した心に起こる変化: しかし、自分の発達段階が高まり、意味を持ちながら、同時に「探し続ける」という特徴を持ちます。 精神科医V.フランクルが指摘したように、意味は一度見つけ出して終わるものではありません。 成熟した人は、状況が変わるたびに「新たな意味」を能動的に再発見しているのです。 Cornell Notebook 「生きる意味」に対する4つのスタンス 調査から、人々が「生きる意味」をどのように捉えているか、4つの明確なタイプが存在することが明らかになりました。あなたはどのレンズを通じて世界を見ていますか? 2.葛藤 (Ambivalence) 4.探求 (Seeking) 1.無関心 (Indifference) 3.受容 (Acceptance) 学びの重要性の高さ (Importance of learning & well-being) 心の成長レベル (Ego Development Level) Connéct Notebook スタンス1&2:意味への「無関心」と「葛藤」 タイプ1「無関心」(Indifference) 思考:「人生の意味なんて幻想だと、考えるだけ無駄。」 特徴:意味は自分には関係ないと考えます。快楽(心地よさ)を求める動機が最も高く、自我の発達レベルは最も低い傾向にあります。 タイプ2「葛藤」(Ambivalence) 思考:「意味は自分で創るべきだと思うが、どうしても見つからない。」 特徴:意味の存在や重要性に確信が持てず、迷っています。「意味を持っている感覚」と「辛悩感」が最も低い。苦悩の段階です。 Coronet Notebook スタンス3&4:意味の「受容」と「探求」 タイプ3「受容」(Acceptance) 思考:「意味は人生に不可欠であり、誰にでも初めから与えられている。」 特徴:意味をポジティブに捉え、すでに持っている実感しています。幸福感は高く、人生を肯定的に受け入れています。 タイプ4「探求」(Seeking) 思考:「意味は、自分自身の意識的な選択によって『創り出す』現実だ。」 特徴:自我の発達レベルと幸福感が最も高いループ。意味は与えられるものではなく、行動によって実現する「可能性」だと考え、日々探求を続けています。 🏔 Cairnlist Notebook 心の成長と「意味」の進化メカニズム 心の階段を上るについて、私たちは「意味」に対する見方(レンズ)を根本的に変えていきます。 意味は自らの選択で創り出すもの (Created) 意味は与えられている (Given) 意味を探すが難しい (Struggle) 意味は存在しない (Illusion) スタンスの進化(Type 1→2→3→4) 心の成長 (Ego Development & Well-being) Cornellia Notebook 今日から生かせる3つのヒント 1. 問いや葛藤を恐れない 人生の意味に悩み、葛藤するのは「心が成長している証拠」です。複雑なレンズを手に入れたからこそ、難しい問いが生まれるのです。 2.「快適さ」の先を求める 一時的な快楽(Hedonia)だけでは、深い充足感は得られません。困難があっても「成長(Eudaimonia)」に意識を向けることが、真の幸福のエンジンになります。 3. 意味は「見つける」のではなく「創る」 意味はどこかに落ちている正解ではありません。日々の小さな選択と行動を通して、あなた自身が主体的に「創り出し、更新していく
投稿者によるコメント・補足(5件)
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【研究背景】
■1. 出発点:ヘドニアとユーダイモニアという2つの幸せ
・幸福研究には大きく2つの伝統があります
・ヘドニア(快楽主義的幸福:快や満足を感じている状態としての幸せ)
・ユーダイモニア(エウダイモニア的幸福:自分の可能性を発揮し、意味ある生き方をすることとしての幸せ。アリストテレスに由来する概念)
▼当初の論点
・研究の初期には「この2つは異なる種類の幸福なのか、それとも幸福に至る異なる経路なのか」が議論されました (Ryan & Deci, 2001; Kashdan et al., 2008)
・近年の理論と実証研究では、両者は「2つの異なるポジティブな機能のプロセス」として捉えられるようになっています。どちらも安定的な幸福感と正の関連を持ちますが、結びつく活動・動機づけ・感情状態が異なるのです (Huta, 2016; Vittersø, 2016, 2018)
▼定義の混乱と交通整理
・ただし、ユーダイモニアの正確な定義については研究者間で合意がありませんでした
・Huta & Waterman (2014) は既存の11のユーダイモニア理論を系統的にレビューし、すべての定義に共通する2要素を発見しました
・成長(自己実現、潜在能力の開発、成熟など)
・意味(目的、長期的視点、より広い文脈への貢献など)
・さらに彼らは、ユーダイモニアを「志向・行動」(生き方のレベル)と「経験・機能」(幸福感のレベル)に区別して扱うことを提案しました。この区別が本論文の分析枠組みの土台になっています
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■2. 本論文が依拠する2つの理論モデル
▼機能的ウェルビーイング・アプローチ (Vittersø, 2016, 2018)
・ヘドニック・ウェルビーイング=欲求が満たされ、心身の安定(ホメオスタシス:体内環境を一定に保とうとする働き)が達成されたときに感じる快や満足の主観的経験
・ユーダイモニック・ウェルビーイング=興味、没頭、好奇心、畏敬(おそれうやまうような感動)といった経験。困難を乗り越えることに伴う変化・成長のプロセスを反映する
・Vittersø (2018) によれば、ユーダイモニック・ウェルビーイングの特性的な要素は「個人的成長」であり、これは主観的基準と客観的基準の両方で定義する必要があり、自己報告(アンケートで自分について答える方式)だけでは完全には捉えられないとされます (Vittersø & Straume, 2017)
▼動機づけレベルでの区別 (Huta, 2016)
・ヘドニック動機=快と安楽の追求、苦痛やネガティブ感情の回避
・ユーダイモニック動機=個人的成長、意味、本来性(自分らしくあること)、卓越性の追求
・状態(いま感じている幸せ)のレベルはVittersøモデル、特性(ふだんの志向性)のレベルはHutaモデルが担当し、2つは補完関係にあります
▼ここから導かれる本論文の着想
・この2モデルを合わせると、ユーダイモニアは「意味や徳の追求に基づく、努力を要する行為に根ざした、より複雑で資源を必要とするタイプのポジティブな機能」として浮かび上がります。一方ヘドニアは比較的努力を要さず、多くの生活場面で手に入りやすい
・ならばユーダイモニアは、より複雑な認知処理と、生涯を通じて発達する成熟した人格構造を基盤としているのではないか——これが本研究の出発点です
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■3. ユーダイモニアの発達的基盤
▼「ユーダイモニアは成熟と関係する」という理論的提案
・この考えは複数の研究者によって提案されてきました (Bauer, 2016; Law & Staudinger, 2016; Ryff, 2016)
・Bauer & McAdams (2010) と Bauer (2016) は「ユーダイモニック成長」を、主観的ウェルビーイング(SWB:人生への満足感や感情面での幸福)と心理社会的成熟(自分の人生についての考え方の複雑さと統合の度合い)が並行して高まるプロセスと定義しました
・Bauer et al. (2015) はユーダイモニック成長の動機を2つに分けています
・省察的動機(自分・他者・人生についての新しい視点を得ようとする)→ 心理社会的成熟との関連が強い
・経験的動機(意味ある活動や関係を育もうとする)→ 幸福感との関連が強い
▼しかし実証研究は乏しかった:測定の難しさ
・「成熟」の実証が進まなかった最大の理由は、測定の難しさです
・Bauer et al. (2015) によれば、成熟とは知恵、自己実現、道徳的推論、自我発達など、認知と人格の発達に関わる複数の構成概念を覆う「傘概念」です
・こうした概念を自己報告で測ることの問題は古くから指摘されてきました (Nisbett & Wilson, 1977; Kunzmann, 2019)
・King (2011) は、研究者が「成長した実感」(主観)と「客観的な人格発達」を混同しがちであり、両者は必ずしも関係しないと指摘しています。「自分は成長した」と感じることと、実際に発達段階が上がることは別物なのです
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■4. 成熟の測定手段:ローヴィンジャーの自我発達理論
▼理論の概要 (Loevinger, 1976)
・本論文は成熟の操作化(測定可能な形にすること)に、ローヴィンジャーの自我発達(Ego Development, ED)理論を採用しました
・この理論では「自我」を、人格の組織化の構造的まとまりを表す全体論的な構成概念と捉えます。人生経験を処理する統合プロセスと、経験に意味を与えるために主観的に当てはめる準拠枠(ものごとを解釈する枠組み)の両方を統一するものです
・認知発達と人格発達を統一し、しかもパフォーマンスに基づく(自己申告ではなく実際の反応から測る)精緻な測定法を持つ点が強みです
▼9つの発達段階(E1〜E9)
・自我発達は、自己の漸進的な再組織化を反映する9段階として記述されます。各段階は衝動制御・道徳性、認知スタイル、対人スタイル、意識的な関心事によって特徴づけられます
・E1 共生的段階:前意識的で測定不可能
・E2 衝動的段階・E3 自己防衛的段階:自己中心的で、身体感覚や、満足を得るための環境コントロールに関心が向く
・E4 順応的段階:集団に同一化し、規則や慣習に従って行動する。外見と所属が関心事
・E5 自己意識的段階:例外の存在や、自分の個性・内面への限定的な気づきが生まれる
・E6 良心的段階:自分で評価した基準や理想に依拠し、個人的関心を超えて考え始める
・E7 個人主義的段階:全体としての自分の人格(と他者のそれ)への感覚が生まれ、欲求・願望・義務のバランスに関心が向く
・E8 自律的段階:社会的相互作用の複雑さに気づき、解決不能な葛藤を受容できる。関心の範囲が広がり自己充足の探求に焦点が当たる
・E9 統合的段階:マズローの自己実現的人間像に対応し、アイデンティティの探求を伴う
▼測定法:文章完成テスト
・測定にはWUSCT(ワシントン大学文章完成テスト:「人が無力なとき…」のような書きかけの文36項目を自由に完成させ、その回答を訓練された評定者が発達段階に分類する投影法的検査)が用いられます (Hy & Loevinger, 1996)
・信頼性と妥当性の証拠が豊富に蓄積されています (Gilmore & Durkin, 2001)
▼自我発達とユーダイモニアの理論的親和性
・ユーダイモニア研究の分野では、EDは心理社会的成熟あるいは実践知の測度として提案されてきました (Bauer, 2016; Huta, 2016)
・実際、各種ユーダイモニア・モデルが記述する行動や動機(卓越性の追求、本来性、自律、個人的成長、現実の受容など)は、ED理論の慣習的段階から脱慣習的段階(E5〜E9)への進行につれて顕著になっていきます
・しかし理論的親和性の強さに比べ、実証的証拠は限られたままでした。このギャップを埋めるのが本論文の狙いです
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■5. 自我発達と「意味への関心」の高まり
▼自我=意味生成の原理
・ローヴィンジャーのアプローチでは、「経験の中に一貫した意味を探すことこそが自我の本質である」とされます (Hy & Loevinger, 1996)
・EDの各段階は、意味生成(メンタルモデルを使って経験に意味を与える働き)の異なる形式を反映しています
・段階が上がるにつれ、硬直した単純な世界理解(善悪二分法など)から、自他についての複雑で統合された思考へと進みます
・そして文化的にプログラムされた既成の意味を受け入れるのではなく、自分自身が「意味の作り手」であることへの自覚が高まっていきます (Loevinger, 1976; Hauser, 1993; Cook-Greuter, 1999)
▼理論間の対立:意味の欲求は普遍的か、発達的か
・ここに興味深い理論的対立があります
・普遍説:Frankl (1969) は意味の探求を人間の基本的・一次的な動機とみなし、意味の問いはすべての人間が不可避的に直面するものと考えました。Baumeister (1991)、Längle (2005)、Fromm (2011) も、意味への欲求を普遍的な人間の欲求とみなしています
・発達説:一方、Jung (1954) や Maslow (1971) は、意味や目的への欲求は人格発達の高い水準で初めて出現すると示唆しました
・実証的には発達説に有利な知見があります。Schnell (2010) は「実存的無関心」——意味の不在を報告し、かつそれを探す欲求もない人々——の存在を明らかにしました。もし意味の欲求が普遍的なら、こうした人々は存在しないはずです
・さらに別の立場として、実存主義・精神力動的アプローチには、意味は行為と決断の積み重ねから方向性として立ち現れ、回顧的にのみ意識化されるとする見方もあります (Adler, 1958; Maddi, 2012)
▼「素朴理論」という切り口
・この多様な見解は「自我発達は、意味の問題に個人的・意識的な問題として直面することを含むのか」という問いを生みます
・問題を複雑にしているのが「意味」概念そのものの多義性です。意味は感情的経験(有意味感)、認知的構成(人生の目的についての見解)、動機づけ過程(目標)、行動(行為の創発的方向性)のいずれにも現れうるからです (Leontiev, 2013; Martela & Steger, 2016)
・既存の自己報告尺度はこれらの一部だけを扱ったり、「意味」の主観的理解に依存したりして、混乱を助長してきました (Brandstätter et al., 2012)
・そこで本論文は、意味の存在・探求の量的測定に加えて、意味についての素朴理論(lay theory / implicit theory:専門家ではない一般の人が日常的に抱いている、ものごとについての暗黙の考え方)の質的な違いを捉える独自の測定を導入します
・先行研究として Osin et al. (2014) は、意味を「目標・方向」とみなす人、「主観的経験」とみなす人、「曖昧だが有用かもしれないもの」とみなす人、「不条理な問い」とみなす人という4グループを見出していました。本論文はこれをより頑健な手法(潜在プロファイル分析:回答パターンから隠れたタイプを統計的に抽出する方法)で再検討します
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■6. 自我発達とウェルビーイングの関係:弱い関連の謎
▼ローヴィンジャー自身の見解
・「発達段階が高いほど幸せなのか」という問いには、長い議論の歴史があります
・意外にも、ローヴィンジャー自身は自我発達を健康-病理の次元とは「概念的に別物」と考えていました (Loevinger, 1968)
・EDの低い端でのみ、発達と精神的健康・適応の直接的関係が見られる
・病理の種類や症状は発達段階ごとに異なり、したがって精神的健康の基準も段階ごとに異なるべきだ、というのが彼女の立場でした (Loevinger, 1968, 1976)
▼実証データ:一貫して弱い相関
・実証データはこの見解とおおむね一致しています
・高いEDは、苦悩の内在化(問題を外に向けるのでなく自分の内面の問題として抱えること)や心理療法へのレディネスと関連します (Noam, 1998; Duffy et al., 2017)
・しかしEDと幸福感の相関は非常に控えめで、r = 0.20(相関係数:2つの変数の関連の強さを-1〜+1で表す指標。0.20は「弱い」水準)に達することは稀か、関連が見られないこともあります (Noam, 1998; King & Hicks, 2007; Bauer & McAdams, 2010; Bauger et al., 2021)
▼なぜ関連が弱いのか:3つの説明
・複雑さと成熟が自己制御や対処を促進するはずなら、なぜ幸福との関連はこれほど弱いのか。先行研究は複数の説明を示しています
・(1) 最高段階限定説:幸福感の顕著な変化は、一般人口には稀にしか存在しない最高次のED段階(E8〜E9)でのみ生じるのかもしれない (Bauer, 2011; Bauer et al., 2011)
・(2) 成長と適応の乖離説:高段階に伴う複雑さは葛藤への気づきを高め、自己実現への欲求は社会システムへの適合をむしろ難しくしうる。成長のプロセスと適応のプロセスは別物で、常に同じ方向を向くとは限らない (Maslow, 1971; Pals & John, 1998; Law & Staudinger, 2016)
・(3) 質的変化説:成熟に伴う幸福の変化は量的というより質的であり、主観的な認識よりも、ポジティブな機能の客観的(活動的)側面に関わるのかもしれない (Fossas, 2019)
・(3)に関連して、既存の主観的幸福感尺度 (Diener, 2009) にはヘドニック状態とユーダイモニック状態の指標が混在しており (Vittersø, 2016)、畏敬・高揚・充足といった複雑な感情を捉えられないという測定上の限界も指摘されています (Huta, 2013)。同じ「自律性が高い」という自己評価でも、発達段階が違えばその中身の複雑さや評価基準が異なる可能性があり、自己報告ではその差が隠れてしまうのです
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■7. 以上を踏まえた本研究の目的
・目的1:EDとウェルビーイング・人生の意味・ヘドニック/ユーダイモニック動機の関連を検討する。Bauer (2011) に基づき、「EDはユーダイモニック・ウェルビーイングと正の関連を持ち、その共有分散は成熟とともに顕著になるユーダイモニック志向(意味とユーダイモニック動機)によって完全に媒介される」と仮説を立てた
・媒介(mediation)とは:AとBの関係が、間に挟まるCを経由して成立していること。「完全媒介」はA→Bの直接の関係がCを考慮すると消えることを指します
・目的2:EDと意味の素朴理論・意味の重要性についての見解との関連を探索する。既存理論 (Loevinger, 1976; Cook-Greuter, 1999) に基づき、高いED水準は意味の性質についての多様な見解、および意味へのより高い重要性の付与と関連すると予測した

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【研究内容】
■1. 方法
▼研究デザインと参加者
・横断研究(1時点でまとめてデータを取る調査。時間の前後関係や因果は特定できない)
・ロシア語話者の成人364名(男性133名、女性231名)、18〜85歳(平均30.1歳)
・オンラインで募集された匿名ボランティアで、報酬なし
・88.5%が高等教育を受けているか現役学生という、学歴の高いサンプル
・当初は典型的効果量(r = 0.20)を80%の検出力(本当に効果があるときに、それを統計的に見つけられる確率)で捉えられる最低193名を目標としたが、より弱い効果(r = 0.15)も検出できるよう可能な限り大きなサンプルを集めた
▼測定用具1:自我発達
・WUSCT(ワシントン大学文章完成テスト)の短縮版18項目を使用 (Holt, 1980; Loevinger, 1985)
・「人が無力なとき…」のような書きかけの文を自由に完成させ、各回答を訓練された評定者がE2(衝動的)〜E9(統合的)の段階に分類する
・訓練を受けた評定者が全プロトコル(回答一式)を採点し、経験数年の別の評定者がチェックする二重体制
・得点化は3方式を併用:項目合計スコア(TPR)、合計規則による離散的な段階分類、全体印象評定。3方式の相関はρ = 0.88〜0.89と高く、結果は収束した
▼測定用具2:動機づけ
・HEMA-R(活動へのヘドニック動機とユーダイモニック動機を測る11項目の尺度)(Huta, 2015)
・ヘドニック動機6項目(例:「気楽にやろうとする」)
・ユーダイモニック動機5項目(例:「自分が信じることをしようとする」)
▼測定用具3:ウェルビーイング
・MHC-SF(メンタルヘルス・コンティニュアム短縮版:過去1か月の幸福経験の頻度を尋ねる14項目)(Keyes et al., 2011)
・感情的ウェルビーイング(幸福感、興味、満足)
・社会的ウェルビーイング(社会への貢献感、社会とのつながりの感覚など)
・心理的ウェルビーイング(自己受容、人生の目的、個人的成長など)
▼測定用具4:人生の意味
・MLQ(人生の意味質問紙)(Steger et al., 2006)
・意味の存在5項目(例:「私の人生には明確な目的意識がある」)
・意味の探求5項目(例:「私は人生の目的や使命を探している」)
▼測定用具5:意味の素朴理論
・ITLM(人生の意味の暗黙理論尺度:意味の性質・起源・必要性についての個人の見方を捉える20項目)(Osin et al., 2014)
・「人生の意味とは…幻想である/現実である」のような項目群
・この尺度は合計点を出さず、回答パターンから人のタイプを抽出する人間中心アプローチ(変数間の関係でなく、似た人同士のまとまりに注目する分析方針)で扱う
▼分析方針
・(1) EDと各変数の相関分析と、ED段階間の平均比較
・(2) 構造方程式モデリング(SEM:複数の変数間の関係を同時にモデル化する統計手法)による媒介分析
・(3) ITLMの20項目に潜在プロファイル分析(LPA:回答パターンの類似性から、隠れたグループを統計的に見つける手法)を適用し、2〜5クラスのモデルを比較。統計指標・モデルの安定性・解釈可能性を総合して4クラスのモデルを採択
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■2. 結果
▼結果1:サンプルの発達段階分布
・最頻値はE5「自己意識的」段階(38.1%)、次いでE6「良心的」(27.1%)、E4「順応的」(15.7%)
・脱慣習的段階(E7〜E9)は11.3%、前慣習的段階(E2〜E3)は7.7%と少数
・慣習的段階が大多数を占めるという、既存研究と一致する分布
▼結果2:EDと各変数の相関
・EDはユーダイモニック動機(r = 0.21)、意味の存在(r = 0.13)、意味の探求(r = 0.11)、感情的ウェルビーイング(r = 0.11)、MHC-SF総合得点(r = 0.11)と弱い正の相関
・ユーダイモニック動機がEDの最も強い相関変数だった
・一方、ヘドニック動機とEDはほぼ無相関(r = 0.01)
・興味深い点:意味の存在と意味の探求は互いに負の相関(r = -0.12。意味を持っている人ほど探していない傾向)なのに、EDは両方と正の相関を持つ
・段階間比較で有意だったのはユーダイモニック動機のみで、E5「自己意識的」からE6「良心的」への移行あたりで高まる(効果量 d = 0.45。dは2群の平均差の大きさを表す指標で、0.5前後は「中程度」)
・EDとウェルビーイングの関連の弱さ(r = 0.11〜0.12)は、過去の研究(r = 0.00〜0.22)の範囲内 (Bauer & McAdams, 2010; Bauger et al., 2021)
▼結果3:媒介分析——「なぜ・どのように」を検証
・モデル1(動機による媒介):ED→ウェルビーイングの関係は、ユーダイモニック動機によって完全に媒介された。ヘドニック動機は媒介しなかった
・モデル2(意味による媒介):EDは意味の存在と意味の探求の両方を予測したが、ウェルビーイングを予測したのは意味の存在のみ。ED→ウェルビーイングは意味の存在によって完全に媒介された
・モデル3(並行媒介):意味の存在とユーダイモニック動機を同時に投入すると、両方が独立に、同程度の大きさで媒介効果を示した(それぞれ間接効果 = 0.076と0.061)
・つまり「発達段階が高い→ユーダイモニック動機が強く、意味を持っている→幸福感が高い」という経路で説明が尽き、EDから幸福への直接の道はほぼゼロだった
・性別・年齢・学歴を統制しても(それらの影響を統計的に取り除いても)結果は実質的に変わらなかった
・補足:ED→ユーダイモニック動機→意味の存在→ウェルビーイングという直列媒介モデルも数学的に同等の当てはまりを示した。並行と直列のどちらを採るかは、「意味の存在」を志向とみなすか経験とみなすかという理論的判断による
▼結果4:意味の素朴理論の4タイプ
・LPAの結果、意味についての見方が異なる4グループが見出された
・グループ1「意味への無関心」(41名)
 意味を幻想・考えても無駄な問いとみなし、「自分には関係ない」「今の自分を悩ませていない」と最も強く意味を突き放すタイプ。Schnell (2010) の実存的無関心に対応
・グループ2「意味へのアンビバレンス」(84名)
 (アンビバレンス=相反する気持ちが同居する両価的な状態)意味の問いを無意味とまでは切り捨てず、気にはなっている。しかし意味は理性で理解できるものではなく感じるしかない、見つけるものではなく作るしかない、と考え、その存在や重要性には確信が持てないタイプ
・グループ3「意味の受容」(132名)
 意味は幻想ではなく現実であり、人生の目標や方向として実在し、誰にでも理解可能と考える。ただし意味を「自分の選択に依存しない、普遍的な所与(あらかじめ与えられているもの)」とみなす傾向があり、実在は認めるが自分の行動と強くは結びつけないタイプ
・グループ4「意味の探求」(105名)
 意味の問いを合理的で答えられる、自分の人生に直結した問いと捉え、意味を「所与」ではなく「自分の選択の結果として立ち現れる、実現可能な可能性」とみなす実存的なタイプ
▼結果5:4タイプと発達段階・幸福の関係
・グループ1→4へ進むにつれ、前慣習的・順応的段階(E2〜E4)の割合が単調に減り、高い段階(E5〜E9)の割合が単調に増えた
・ED得点は「無関心」グループで最低、「受容」「探求」グループで最高
・「受容」「探求」グループは意味の存在・探求、ウェルビーイングも高かった
・意味への関心の強さの順(グループ番号)と各変数のスピアマン相関:意味の存在 ρ = 0.28、探求 ρ = 0.24、ユーダイモニック動機 ρ = 0.24、ED ρ = 0.18、総合ウェルビーイング ρ = 0.21、ヘドニック動機 ρ = -0.12
・つまり、意味への関心が強いタイプほど、発達段階も幸福も高い傾向
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■3. 考察
▼発見1:弱い相関の意味を捉え直す
・EDとウェルビーイングの相関(r = 0.11〜0.12)は過去の研究と整合的に弱かった
・著者らの解釈:成熟の測度と幸福の測度は「人生がうまくいっていること」の関連するが異なる側面を映す相補的な指標であり、そもそも強く相関するはずのものではない
・幸福感は「今進んでいる方向が自分の深い優先事項と合っているか」の主観的評価を与えるが、「自己実現の道をどこまで進んだか」は教えてくれない。しかも進むにつれて欲求も優先事項も変わり続ける (Maslow, 1971)
・なお、脱慣習的段階(E7〜E9)の人は、それ以前の段階の人より幸福が有意に高かった(d = 0.33)。ただし最高段階(E8〜E9)は7名しかおらず、「最高段階でのみ幸福が高まる」という Bauer et al. (2011) の知見の完全な再検証はできなかった
▼発見2:完全媒介——発達と幸福をつなぐのは「ユーダイモニック志向」
・仮説どおり、EDと幸福が共有する分散はすべて、ユーダイモニック動機と意味の存在という2つの媒介変数で説明された
・これは「発達段階が高いこと自体が直接幸せをもたらすのではなく、発達に伴って強まる成長・意味への志向が幸せにつながる」という理論像 (Bauer, 2011) を支持する
・ただし因果の向きは不明。唯一の縦断研究 (Bauer & McAdams, 2010) は「知的成長動機が後のEDを予測する」という逆向きの経路しか検証していない
▼発見3:意味の「存在」と「探求」の両立
・全体では負の相関を持つ意味の存在と探求に、EDは両方とも正の関連を示した
・素朴理論の分析でも、発達段階と幸福が高い2グループ(受容・探求)は、意味の存在と探求の両方が高かった
・これは Frankl (1969) の「意味は一度見つけて終わりではなく、人生の状況ごとに新たに探し続けるものだ」という考えを想起させる
・ただし幸福を媒介したのは意味の存在のみ。探求のプロセスではなく、その成果——人生の目標と優先順位についてのビジョン——が幸福の恩恵をもたらすらしい
▼発見4:発達に伴う意味の問いの変質
・素朴理論の結果は、ED理論の「意味生成」概念に新しい実証的裏づけを与えた
・発達段階が上がるにつれ、意味は「抽象的な問い」や「普遍的な所与」から、「手触りのある、個人的に経験される可能性」——日常生活の不可欠な一部——へと変わっていく
・これは、脱慣習的段階の人が高い自己省察を示し (Pfaffenberger et al., 2011; Kostenko & Leontiev, 2018)、孤独を自己理解の資源として肯定的に経験する (Ishanov et al., 2018) という過去の知見とも響き合う
・普遍説(Frankl)対発達説(Jung, Maslow)の対立でいえば、意味の問いを「自分事」として意識的に抱えるのは高い発達段階の特徴という、発達説寄りの構図が示された形
▼発見5:ヘドニアは敵ではない
・ヘドニック動機はEDや意味関連変数とほぼ無関連で、負の関連も示さなかった
・快楽的な生と意味ある生は、互いに排他的な道ではなく、比較的独立した幸福への経路である (Huta & Ryan, 2010; Schueller & Seligman, 2010) という知見と一致する
▼限界
・横断デザインのため、因果の方向も時間的順序も特定できない
・脱慣習的段階の人数が少なく(E8〜E9は7名)、最高段階についての確かな結論は出せない
・意味生成のパターンは文化によって異なる可能性があり、ロシア語話者サンプルの結果がそのまま一般化できるとは限らない
・MLQやHEMAという尺度自体、意味やユーダイモニアという多面的な構成概念を捉えるには限界がある
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■4. まとめ:この研究が示したこと
・発達段階が高い人ほど幸せ、という直接の関係はごく弱い
・しかしその弱い関係の中身を分解すると、「発達→成長と意味への志向の強まり→幸福」という一貫した経路が見えてくる
・そして発達段階が上がるにつれ、人生の意味は「他人事の抽象論」から「自分の選択で実現していく現実」へと、問いそのものの性格が変わっていく
・著者らの言葉を借りれば、ユーダイモニアという概念は「幸福と人格発達のあいだのとらえどころのない関連」を説明する鍵になりうる——これが本研究の中心的な主張です

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■ローヴィンジャーの自我発達段階とキーガンの発達段階の対応
前提として、両理論は出自が異なるため、対応はあくまで「近似」です。ローヴィンジャーは文章完成テストの回答内容から帰納的に段階を作った実証派、キーガンは「何を主体(自分そのもの)とし、何を客体(眺められる対象)とするか」という構造の変化で段階を定義する理論派。とはいえ両者の対応は比較研究で繰り返し整理されており(Cook-Greuter, 1999; McCauley et al., 2006)、おおむね以下のように重なります。
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▼対応表
・E1 共生的段階
 → キーガン第0段階(抱合的段階)。自他未分化の乳児期。両理論とも測定対象外
・E2 衝動的段階
 → キーガン第1段階(衝動的段階)。衝動が主体であり、まだ衝動を「持つ」ことができない
・E3 自己防衛的段階
 → キーガン第2段階(道具主義的段階/利己的段階)。自分の欲求・利害が主体。他者は欲求充足の道具として現れる。「バレなければいい」の世界
・E4 順応的段階
 → キーガン第3段階(環境順応型知性)の中核。所属集団の期待や規範が主体になっており、「みんなと同じ」であることから自分を切り離せない
・E5 自己意識的段階
 → キーガン第3段階の後半〜第3-4段階の移行期。順応の枠内にいながら「例外もあるかも」「自分は自分かも」という気づきが芽生え始める。環境順応型から抜け出しかけの状態
・E6 良心的段階
 → キーガン第4段階(自己主導型知性)。他者の期待を客体化し、自分で作った基準・価値体系が羅針盤になる。両理論の対応の中で最も一致度が高いとされる部分です
・E7 個人主義的段階
 → キーガン第4段階の完成〜第4-5段階の移行期。自分のシステムを持ちつつ、「自分のシステムも複数ある視点の1つにすぎない」という相対化が始まる
・E8 自律的段階
 → キーガン第5段階(自己変容型知性)。自分の価値体系そのものを客体化し、矛盾や解決不能な葛藤を抱えたまま生きられる
・E9 統合的段階
 → キーガン第5段階の十全な形。ただしここまで来ると両理論とも該当者が稀すぎて、実証的な対応づけはほぼ不可能です
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▼構造的に見たときの目安
ざっくり束ねると、
・E2〜E3 ≒ キーガン第1〜2段階(欲求の世界)
・E4〜E5 ≒ 第3段階(他者基準の世界)
・E6〜E7 ≒ 第4段階(自分基準の世界)
・E8〜E9 ≒ 第5段階(基準そのものを相対化する世界)
という4ブロックの対応で捉えるのが実用的です。
注意点として、E5をどちらに寄せるかは研究者間で揺れがあります。第3段階の内側と見る立場と、3-4移行の入口と見る立場があり、境界線の引き方は資料によって半段階ほどずれます。
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▼Osin論文をキーガンの言葉で読み直すと
この対応を使うと、先ほどの論文の結果がキーガン理論の物語としてきれいに読めます。
・サンプルの最頻値E5(38.1%)=環境順応型〜移行期が最多。「大人の多くは第4段階に達していない」というキーガン自身の主張と分布が整合します
・ユーダイモニック動機が跳ね上がるE5→E6の移行は、キーガンでいう第3→第4段階、つまり環境順応型から自己主導型への移行そのもの
・素朴理論の4タイプも対応します。「受容タイプ」(意味は実在するが、自分の選択とは無関係な普遍的所与)は、意味を外部の権威・所与から受け取る環境順応型の意味づけ構造。「探求タイプ」(意味は自分の選択の結果として立ち現れる可能性)は、意味を自分で編む自己主導型の構造です
・つまりこの論文は、「意味のオーサーシップ(作者性)が外部から自分へ移る」というキーガンの中心テーマを、別の測定系(WUSCT+素朴理論)で実証的に描き出したものと読めます

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動画での解説はこちら😊
https://youtu.be/zu35pWu6e0U

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会話形式の紹介はこちら😊
はぴテク相談室:「人生の意味とか、考えたほうがいいんですか?」の話
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-08-16-1786853220/

論文紹介 やってみようありのままに 主観的幸福・幸福測定意味・目的・スピリチュアリティ

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