多数派の人の文化変容と、創造性・幸福度についての、英国の最新研究
英国の学生323人、中国の学生174人、英国の一般市民219人(3回追跡)を調査頂きました。
「文化になじむ」というと、
移民や留学生など、少数派の人の話だと思いがち。
でもこの研究は逆で、
「多数派(その国の人)が、少数派の文化をどう受け止めているか」に注目。
受け止め方は大きく4タイプ。
①統合:自国の文化を大事にしつつ、他の文化も取り入れる
②分離:自国の文化だけ大事にする
③未分化:どっちもそんなに意識してない
④周辺化:どっちも興味なし
結果としては、
英国の学生では、6割が③未分化。
なんとなく、文化とか意識せず過ごしている人が多数派。
でも幸福度(人生の意味、人間関係の質)が一番高かったのは①統合の人。
人生の意味は、他のタイプとの差がかなり大きい。
頭の柔らかさ(認知的柔軟性)も①が高い。
中国の学生では、半分が②分離。
自国の文化を大事にするタイプが多数。
ここでも、幸福度が一番高いのは①統合の人。
そして英国の一般市民を追いかけた研究では、
「他の文化を取り入れよう」としている時期のあとに、
頭の柔らかさ、好奇心、幸福度が上がっていた。
という、
「自分の文化を手放さずに、他の文化にも開いている人が、一番幸せで、一番頭が柔らかい」
という結果。
どっちかを選ぶ話じゃなくて、両方持つのが良い、というのがポイントですね。
幸せの観点で言えば、
- 外国の人や違う文化の人が身近にいたら、「ちょっと真似してみる」くらいの関わり方が幸福度につながる
- 自分の文化を大事にすることと、他の文化を受け入れることは、両立できる。というか両立した方が良い
- 「文化とか別に意識してない」が、実は一番もったいない状態かも
- 会社視点で言えば、多様なメンバーがいる職場は、「受け入れる側」の幸福度や柔軟性を上げるチャンスでもある
という感じでしょうか。
いずれにせよ、違いに開いていることが幸せにつながる。というのが、「受け入れる側」の観点からも示された感じです😊
Harnessing Diversity: Majority-Group Acculturation Predicts Creativity and Flourishing Over Time
多様性を活かす:マジョリティ集団の文化変容は、創造性とフラリッシングを時間を通じて予測する
David Colledge(ヘリオット・ワット大学、英国)ほか
European Journal of Social Psychology, 2026/7/29(受理)
https://doi.org/10.1002/ejsp.70106
異文化適応は「迎える側」の武器になる 最新の心理学研究が明かす、マジョリティ(多数派)のための創造性と幸福のサイエンス Based on: Harnessing Diversity: Majority-Group Acculturation Predicts Creativity and Flourishing Over Time (CC @GuestNotebook) 「異文化適応」と聞いて、誰を思い浮かべますか? 従来の常識(The Old Way) 私たちは無意識に、文化に適応するのは「移住者」や「マイノリティ(少数派)」の課題であると考えてきました。迎える側である「マジョリティ(多数派)」は、変化を求められない静かな存在だと見なされがちです。 しかし、この前提には重大な見落としがあります。 Genius Notebook 迎える側(マジョリティ)もまた、適応し、変化する。 自文化の維持 他文化への接触 相互作用による進化 グローバル化が進む現代では、マジョリティ自身が異文化とどう向き合うか(多数派の文化適応)が、社会の調和だけでなく、個人の能力や幸福度に直結することがわかってきました。 Cornish Notebook マジョリティがとる4つの「文化適応スタイル」 High ↑ 自文化の維持 (High to Low) 分離 (Separation) 自文化のみを重視し、 他文化を避ける。 統合 (Integration) 自文化を大切にしながら、 他文化も積極的に取り入れる。 周辺化/無関心 (Marginalization/Undifferentiation) どちらの文化にも弱い 関心を持たない。 同化 (Assimilation) 自文化を捨て、他文化に染まる。 (※非常に稀) Low Low ← High 他文化の受容 (Low to High) Corneal Notebook では、どのスタイルが「最も幸せ」なのか? イギリスと中国の大学生、そして英国の社会人を対象とした3つの実証研究から、 「多様性の受け入れ」が単なる道徳論ではなく、個人のクリエイティビティと ウェルビーイングにどう影響するかが明らかになりました。 Study 1 英国の大学生 323名 Study 2 中国の大学生 174名 Study 3 英国の社会人 219名(追跡調査) Genius Notebook 英国の大学生:無関心派が多数を占める中、 勝者は「統合(Integration)」派 58% 無関心 26% 周辺化 12% 統合 4% 分離 全体のわずか12%である「統合派」の学生だけが、認知的柔軟性(アダムの柔らかさ)、人生の意味(充実感)、対人関係の質において、他のグループを圧倒的に上回るスコアを記録しました。 Cornelius Notebooks 中国の大学生:自文化保守派が多い環境でも、 やはり「統合」派が幸福度を率引 22% 周辺化 26% 統合 52% 分離 イギリスとは対照的に、中国では自文化を重視する「分離派」が数数を占めました。しかし、ここでも最高の結果を出したのは「統合派」です。 彼らは分離派や周辺化派に比べ、人生の意義と対人関係の質が有意に高いことが実証されました。 Cornelius Notebook 「自文化を保ちつつ、他文化を取り入れる」ことがもたらす3つの果実 01. 認知的柔軟性 異なる価値観の枠ぶみ(認知的 枠組み)を複数もつことで、状況に 応じて思考を切り替え、複数の選 択肢を同時に検討する脳の回路が 鍛えられます。 02. 人生の意義 異文化という「鏡」を通して自己の アイデンティティを相対化すること で、「自分は何か」「何を 大切に生きるか」という輪郭が鮮 明になります。 03. 対人関係の質 異なる背景を持つ人々と摩擦を恐 れずに関わる時間が、結果として 深く満足度の高い人間関係を構築 するスキルと直結します。 Gendai Notebook 【追跡調査】他文化への接触は「好奇心」と「幸福感」と「幸福感」を即座に引き上げる Time 1(現在) 他文化を積極的に受容するアクション Time 2(未来) ✓ 認知の柔軟性 ✓ 好奇心と探究心 ✓ 全体的なウェルビーイング 長期的な移住者でなくても、社会人が日常生活の中で意図的に異文化に触れるだけで、短期間のうちに好奇心や幸福度がブースト される(ポジティブな変が起こる)ことが確認されました。 イノベーションと自己肯定の「フィードバック・ループ」 1. 異文化への接触 新しい視点を歩り入れる 2. 認知的摩擦 予測不可能性が脳を刺激し、柔軟性が上がる 3. 日常の創造性 柔軟思考で、その問題解決能力が向上する 4. 自文化の再評価 問題解決の成功体験が、自身のルーツへの自信と愛着を深める 他文化を取り入れることは、自文化を捨てることではありません。 むしろ、異文化による刺激があるため創造性を高め、その創造性が「自分らしさ(自文化)」をより強固なものにするという美しい循環が存在するのです。 Overlapping Canvas Global style 違いを受け入れるために、自分を捨てる必要はない。 自文化への誇り 創造性と 豊かな人生 未知への探求心 真のダイバーシティ(多様性)の認識は、「自分を無色透明にして相手に合わせる」ことからは生まれません。 深く根をもった自文化への誇りと、未知の文化へのオープンな探求心。 この2つが重なり合い、時に摩擦を生じる場所にこそ、最高レベルのアイデアの素が生まれかど、豊かな人生が宿るのです。 🏔️ Gemini Notebook Overlapping Canvas Global style 日常のキャンバスを、どう重ね合わせるか? For Individuals(個人として) 未知のカルチャーに触れる際、「同化」しようと焦る必要はありません。 「自分の軸」を持ったまま、単なる「好奇心」として異文化を楽しむだけで、脳は十分に柔軟になります。 For Organizations(組織として) 「多様性=マイノリティ支援」という固定概念を捨てましょう。マジョリティ(多数派)社員自身が 異文化と交わることが、組織全体の「イノベーション(日常の創造)」の源泉になります。 For Education(教育において) グローバル人材の育成は、自国の文化を尊視することではありません。「ローカルな アイデンティティ」を深めることが、結果として「グローバルな適応力」を支える磐盤な土台となります。 迎える側が変わる時、社会全体が創造的なキャンバスへと進化します。 Cosmos Notebook
【背景】
論文の問いは「マジョリティ集団(その国の多数派)の人が、少数派の文化を取り入れたり、自国文化を保ったりすること(=マジョリティ集団の文化変容)は、その人の創造性やフラリッシングと関係するのか」というものです。この問いに至るまでに、著者たちは大きく4つの研究の流れを踏まえています。
以下、順に見ていきます。
■ 1. 出発点:創造性とフラリッシングは「社会の目標」になっている
▼ 創造性
▼ フラリッシング
▼ ただし、実装と測定は遅れている
■ 2. 文化的多様性との関係:結果は一貫していない
▼ 大学における多様性と創造性
▼ 多様性とウェルビーイング:ここは食い違う
つまり「多様な環境にいること」自体の効果は、プラスにもマイナスにも出うる。ここで著者たちは、「環境に多様性があるか」ではなく「本人がその多様性にどう向き合っているか(文化変容の仕方)」に注目します。
■ 3. 文化変容研究の偏り:マジョリティ側が抜け落ちていた
▼ 文化変容(acculturation)とは
▼ しかし研究は移民・マイノリティ側に集中
▼ 新しい研究領域:マジョリティ集団の文化変容
■ 4. なぜこの穴を埋めることが重要か
▼ 大学と政府が掲げる2つの目標
▼ 「文化変容 → 創造性・ウェルビーイング」の先行知見(ただしマイノリティ側)
▼ 本研究の位置づけ
■ 5. 創造性をどう捉えるか:3つの構成要素
創造性は教育プログラムの重要な要素であり(Partnership for 21st Century Skills, 2009)、組織のリーダーが将来の従業員に求める資質でもあります(Snyder et al., 2019)。120研究のメタ分析では学業成績と r = 0.22 の相関があり(Gajda et al., 2017)、問題解決力や職業的能力の向上とも関係します(Liu & Chang, 2017)。創造性にはさまざまな理論があるので(Glăveanu et al., 2020)、この研究では3つに絞ります。
▼ 5-1. 日常的創造性(everyday creativity)
▼ 5-2. 認知的柔軟性(cognitive flexibility)
▼ 5-3. 好奇心–探索(curiosity-exploration)
■ 6. フラリッシングをどう捉えるか
▼ PERMAモデル
▼ 6-1. 人生の意味(meaning-in-life)
▼ 6-2. 対人関係の質
■ 7. マジョリティ集団の文化変容:二次元モデル
▼ 2つの軸
▼ この2軸から生まれる5つの戦略
■ 8. 研究の舞台:英国・中国の大学とイングランド社会
▼ 英国の大学
▼ 中国の大学
▼ イングランド社会
■ 9. 理論的なつなぎ:なぜ文化変容が創造性・フラリッシングを高めると考えられるのか
▼ 9-1. 日常的創造性との関係
▼ 9-2. 認知的柔軟性との関係
▼ 9-3. 好奇心–探索との関係
▼ 9-4. フラリッシング(人生の意味・対人関係の質)との関係
▼ 9-5. ポリカルチュラリズムという交絡要因
▼ 9-6. 縦断デザインの必要性
■ 10. 以上から導かれた4つの仮説
【研究内容】
■ この研究で何をしたのか(全体像)
Colledge et al.(2026)は、「マジョリティ集団(その国の多数派)の人が他文化を取り入れたり自国文化を維持したりすること(マジョリティ集団の文化変容)が、創造性やフラリッシングと関係するか」を、3つの研究で検証しました。
横断調査とは「ある一時点で測定して関係を見る」もの、縦断調査とは「同じ人を複数回測定して、時間的な変化や先行関係を見る」ものです。
研究1・2は「人を分類して比べる」やり方、研究3は「変数どうしの時間的な関係を追う」やり方をとっており、この違いが後で考察の論点になります。
■ 研究1:英国のマジョリティ学生(N = 323)
▼ 背景
▼ 参加者
▼ 測定尺度
▼ 分析の手順
▼ 結果1:4つのグループが見つかった
▼ 結果2:統合グループがもっとも良好
▼ 研究1の考察
■ 研究2:中国のマジョリティ学生(N = 174)
▼ 背景
▼ 参加者
▼ 測定と分析
▼ 結果1:3つのグループが見つかった
▼ 結果2:フラリッシングでは統合が高い、認知的柔軟性は差なし
▼ 研究2の考察
■ 研究3:イングランド一般市民の縦断調査(N = 219)
▼ 背景と狙い
▼ 参加者
▼ 測定尺度(すべて6件法)
▼ 欠測データの扱い
▼ 分析手法:ランダム切片交差遅延パネルモデル(RI-CLPM)
▼ 結果1:安定した個人差のレベル(個人間)
▼ 結果2:時間的な予測(個人内の変化)
▼ 研究3の考察
■ 総合考察
▼ 3つの研究を通して分かったこと
▼ 英国の学生について
▼ 中国の学生について
▼ イングランドの市民について
■ 限界
■ 結論
動画解説はこちら😊
https://youtu.be/ly9mRu9RAjs
会話形式での紹介はこちら😊
はぴテク相談室:外国人の同僚と、自分らしさと、ごきげんの話
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-08-27-1787802060/