2026.09.24

楽しいことと、人生に意味のあることはセットにする

意味のある活動・楽しい活動と気分についての、オランダの最新研究

189人に14日間、1日5回スマホで「今なにしてる?どんな気分?」を聞いて調査頂きました。


今やっている活動が、
①どれくらい楽しいか
②どれくらい意味があるか
と、その時の気分、そして約2.5時間後の気分の関係を調査。
事前の予想は、
楽しいことはその場限り、
意味のあることは後からじわじわ効く、

というものでした。


まず、その瞬間の結果。
①楽しい活動
良い気分が上がり、嫌な気分とストレスが下がる。しかも、どれもしっかり効く。
②意味のある活動
良い気分は上がるけど、楽しい活動ほどではない。

嫌な気分はちょっとだけ下がり、ストレスとはほぼ無関係。


活動ごとに見ると面白くて、

  • 勉強は、意味はあるけど楽しくない
  • テレビやゲームは、楽しいけど意味は低め
  • 運動、友達と会う、外食、美術館や映画などは、意味も楽しさも両方高い
    という結果でした。

そして2.5時間後。
一見、まだ効果が残っているように見えたのですが、
「さっき機嫌がよかったから、まだ機嫌がいい」
という気分の持ち越し分を差し引くと、追加の効果はほぼゼロに。

意味のあることは後からじわじわ効く、という予想はハズレでした。(なんと。。。)


という、ちょっと意外な結果。

  • ちょっとした楽しいことは、ちゃんと効く。罪悪感なく楽しんでOK。
  • 意味のある仕事や勉強をしているだけで気分が上がるわけではないので、楽しさも一緒にあるとベスト。(運動や友達との食事のように、両方満たせるものは強い)
  • 気分は持ち越されるので、「今ごきげんでいること」が次のごきげんにつながる。こまめに楽しいことを挟むのが良さそう。
  • ただ、今回は数時間単位の話。意味のある活動が、数か月・数年単位で人生の充実感を育てる、という話とは別物です。
    という感じ。
    人生に意味のあることを楽しむのが最強ですね😊

The Temporal Effects of Meaningful and Pleasurable Activities on Affective Wellbeing and Stress: Insights from an Experience Sampling Study
意味のある活動と楽しい活動が感情的ウェルビーイングとストレスに与える時間的効果:経験サンプリング研究からの知見
Tess Röder(ラドバウド大学、オランダ), Gabriel Olaru, Manon van Scheppingen & Eeske van Roekel(ティルブルフ大学、オランダ)
Journal of Happiness Studies ,2026/9/23
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-026-01108-1

科学が明かす「良い一日」のレシピ 心理学データが教える、気分の波と時間の使い方 朝 起床後に陽光 7:00 AM 昼 最高にリラックス 12:00 PM 午中 集中作業 2:00 PM 夕方 リフレッシュ 6:00 PM 夜 睡眠と休息 10:00 PM 私たちは毎日、2つの選択を迫られている 今すぐ楽しめる「快楽」を求めるか? 大変でも価値がある「意義」を選ぶか? どちらの行動が、私たちの「良い気分」を長持ちさせてくれるのでしょうか? 心を満たす、2つのエネルギー 😊快楽 定義 リラックスや楽しさのため 満たされる欲求 即効性のあるストレス解消 例 テレビ、ゲーム、音楽 🎯意義 定義 成長や目的のため 満たされる欲求 自己決定、能力の発揮、他者との繋がり 例 勉強、仕事、家事 Gemini Notebook リアルタイムで心をハッキングする 一日の終わりに振り返る記憶は曖昧です。 だからこそ、心理学者はスマートフォンを 使いました。 被験者: 193人 期間: 14日間 頻度: 1日5回のランダム通知 Day 14 Day 7 Day 1 Gemara Notebook あなたの日常はどこにある? 意義 最高のバランス 勉強 価値ある努力 仕事 友人との交流 スポーツ セックス 快楽 手軽なリセット インターネット閲覧 テレビ ゲーム 「快楽」の即効性:最高のストレスキャンセラー テレビを見たり、ゲームをしている「まさにその瞬間」、私たちの心は急激に回復します。 Time: 0 (活動中) ポジティブな感情:急上昇 ネガティブな感情:低下 ストレス:大幅に減少 「意義」の複雑さ:充実感と引き換えの負荷 仕事や勉強、人の世話など「意味のあること」をしている時、気分は良くなります。しかし、ストレスは減りません。意義ある行動は、エネルギーを消費するからです。 Time: 0 (活動中) ポジティブな感情: 上昇 ネガティブな感情: 微減 ストレス: 変化なし では、その「良い気分」はいつまで続くのか? +2.5時間後 もし朝に「意義のある仕事」を頑張ったら、お昼になっても幸せな気分は続いているのでしょうか?データは、意外な真実を突きつけます。 「感情の慣性」という錯覚 2.5時間後も気分が良いのは、その活動が魔法の「残り香」を放っているからではありません。 自転車を漕ぐのをやめても、しばらく情性で進むのと同じ。 最初の気分の高まりが、ただゆっくりと冷めているだけなのです。 +2.5時間後 活動 (Push) 感情の慣性 (Inertia) Phase 1 Phase 2 Genius Notebook 唯一の例外:「現実への引き戻し」現象 データが示す唯一の例外があります。テレビやゲームなどの「快楽」だけで満たされた時間の後、2.5時間経つと、ネガティブな感情がリバウンドして戻ってくる傾向があるのです。 縦軸:ネガティブさ/ポジティブさ Time 0 +2.5時間後 リバウンド (Rebound) 科学に基づいた「良い一日」のデザイン Morning Evening 意義 快楽 意義 快楽 意義 快楽 意義 快楽 1. 幸せはこまめに チャージする どんな活動も2.5時間後には 魔法が解けます。小さな喜 びを1日の中に散りばめましょう。 2.「意義」と「快楽」 をセットにする 意義ある仕事ではストレス は消えません。頑張った後 は、純粋な快楽で意識的に ストレスをオフに。 3. 最強の活動を選ぶ スポーツや友人との会話は、 快楽と意義を同時に満たす最 もコストパフォーマンスの高 い時間の使い方です。 Summary 快楽は即効性のあるストレス軽減剤である 意義ある活動は気分を高めるが、休息の代わりにはならない 気分の良さは「慣性」でしか続かない。一日の終わりにまとめて休むのではなく、合ごの瞬間のメンテナンスを。 Source: Röder, T., et al. (2026). The Temporal Effects of Meaningful and Pleasurable Activities. Journal of Happiness Studies.
投稿者による補足(4件)
補足 1

【背景】

■はじめに:この研究が立てた問い

▼これまでに分かっていたこと
  • 意味のある活動に取り組むと、ウェルビーイングが高まり(Hooker et al., 2020; Steger et al., 2008)、健康状態も良くなる(Eakman et al., 2010)
  • 楽しい経験も、ウェルビーイング(Schueller & Seligman, 2010)や身体の健康(Pressman et al., 2009)と結びついている
▼まだ分かっていなかったこと
  • 意味のある活動や楽しい活動が、時間の経過とともに感情的ウェルビーイングにどう影響するのかは、ほとんど調べられていなかった
  • 感情的ウェルビーイング=主観的ウェルビーイング(本人が感じる幸福)のうち感情の部分。ポジティブ感情とネガティブ感情のバランスで表される
▼著者たちの仮説的なアイデア
  • 楽しい活動は、気分を一時的に良くするだけかもしれない
  • 意味のある活動は、もっと長続きする効果を持つかもしれない

■1. 「意味」と「楽しさ」を対比する伝統

▼古代ギリシャから続く二分法
  • アリストテレスは、ヘドニズム(快楽主義=楽しさや快を重視する考え方)とエウダイモニズム(自分の可能性を実現することによって得られる充足を重視する考え方)を対比し、後者こそが良い人生の証だと主張した(Aristotle, 350 BCE/1998 CE)
  • この区別は現代の研究でもしばしば使われている(Ryff & Singer, 2008)
▼ただし、両者はきれいには分けられない
  • 楽しさと意味は、実際には手を取り合って現れることが多い(James, 1900; Baumeister et al., 2013)
  • 意味のある活動には、楽しさが伴うことが多い(Hooker et al., 2020)
  • 人とのつながり、社会的な活動、生産的だという感覚、退屈しないことなどは、楽しさと意味の両方に寄与する(Baumeister et al., 2013)
▼だから両方を同時に調べる必要がある
  • 両者が重なっている以上、「楽しさを差し引いても、意味が上乗せで感情に効くのか」を確かめるには、2つを一緒に分析する必要がある

■2. 活動と感情の関係:これまでの知見

▼楽しい活動と感情
  • 常識どおり、楽しい活動は感情と結びついている(Berenbaum, 2002)
  • 参加者自身が活動の楽しさを評価した研究は少ないが、余暇の研究では、余暇活動が気分を改善し、ストレスを減らすことが示されている(Han & Patterson, 2007)
  • 楽しい余暇活動を頻繁に行う人ほど、血圧やコルチゾール(ストレスで分泌されるホルモン)が低く、うつも少ない。普段のストレスが低く、感情的ウェルビーイングが高いことを示唆している(Pressman et al., 2009)
▼「意味」には3つのレベルがある
  • 特性(トレイト)レベル:その人が人生全体をどう評価しているか(例:「私の人生には意味がある」)
  • 状態レベル:日々の中で揺れ動く意味の感覚
  • 特定の活動の意味:今やっているこの活動に、どれだけ意味を感じるか
  • 人生全体の意味も、状態レベルの意味も、ポジティブな感情と結びついている(King et al., 2006; Hicks & King, 2009)
▼意味のある活動と感情についての研究は少ない
  • 数少ない研究の一つでは、参加者が最初にさまざまな活動の意味を評価し、その後8日間、行った活動とその日の感情を記録した。意味のある活動を多く行った日は、ポジティブ感情は高まったが、ネガティブ感情は減らなかった(Hooker et al., 2020)
  • 人生全体の意味と感情の関係も、ネガティブ感情よりポジティブ感情との方が強かった(Scannell et al., 2002)
▼ここでのポイント
  • 意味は「良い気分を増やす」方向には効くが、「嫌な気分を減らす」方向の効果は弱いらしい

■3. 意味のある活動は「後から」効くのではないか

▼理論的な根拠
  • 楽しい活動は「その場で」気分を良くするものと一般に考えられているが、意味のある活動は、その場を超えて気分を高める理由がある
  • 意味のある活動のあとのポジティブ感情は、目標に向かって前進しているというフィードバック(合図)として働く(Carver & Scheier, 1990)
  • あるいは、適応的な行動(生き延びたり、うまく暮らしたりするのに役立つ行動)へのご褒美として働く(de Waal, 1992)
▼価値観とのつながり
  • 意味のある活動は、内発的な目標(お金や評価のためではなく、自分がやりたいからこその目標)を追求したり、自分の価値観に沿ったりすることで、「よく生きる」プロセスに貢献する
  • そのため、重要感・満足感・充実感といった持続的な感覚を生みやすい
  • 一方、純粋に楽しいだけの活動は、価値観や目標とはあまり関係がなく、目先の報酬や楽しさのために行われることが多い
▼自己決定理論による説明
  • 自己決定理論(人の意欲や幸福は3つの基本的な心理的欲求が満たされるかどうかで決まる、という理論)(Ryan & Deci, 2017)によると、意味のある活動は次の3つを満たしやすい
  • 自律性:自分で選んだ、自分の価値観に沿った行動だと感じること
  • 有能感:うまくやれている、成長していると感じること
  • 関係性:他者や自分を超えた何かとつながっていると感じること
  • この理論の提唱者たちは、エウダイモニックな生き方(意味や自己実現を重視する生き方)は、まさにこの3つを満たすからこそ、その場の良い気分を超えてウェルビーイングを高めると主張している(Ryan et al., 2008)
▼実証研究による裏付け
  • ある日記研究では、夜に報告した「その日の人生の意味」が、翌日のポジティブ感情を高め、ネガティブ感情を下げていた。逆方向(感情→翌日の意味)の効果は見られなかったため、「意味が後から感情を高める」方向が示唆された。ただし、この研究は活動の意味ではなく、人生の意味を扱っていた(Newman et al., 2018)
  • 別の日記研究では、同じ日の感情的ウェルビーイングには、楽しい活動より意味のある活動の方が強く関係していた。さらに、意味のある活動は翌日のウェルビーイングの高さとも関係していたが、楽しい活動にはそれが見られなかった(Steger et al., 2008)
▼ただし先行研究には弱点がある
  • Steger et al.(2008)では、どの活動が「意味がある」か「楽しい」かを、参加者本人ではなく専門家があらかじめ決めていた
  • しかし、何を意味のある活動と感じるかは人によって違うことが知られている(Kubina et al., 2013)
▼本研究のねらい
  • これらの研究を土台に、「翌日」ではなく「数時間後」という、より短い時間スケールで関係を調べる

■4. 意味のある活動は、ストレスにもなりうる

▼ストレスを高める方向の議論
  • 人生に意味を感じている人ほど、ストレスを多く経験したと振り返る傾向がある(Baumeister et al., 2013)
  • 目的のある取り組みは、「望ましいけれど結果が不確かな未来」に向かうものなので、悪い結果を予期してストレスが生じやすい
  • また、意味のある活動は価値観や他者の幸せへの貢献を含むことが多く、負担が大きい。仕事、勉強、子育てなどがその例(Baumeister et al., 2013)
▼ストレスを和らげる方向の議論
  • 一方で、特性レベルの意味(人生の目的意識)は、ストレスへの弱さを下げるという説もある(Burrow et al., 2024)
  • 長期的な目標に注意が向くことで、目の前のストレス要因を受け流しやすくなり、その影響が小さくなる(Burrow et al., 2024)
▼まだ分かっていないこと
  • 意味のある「活動」が、その場のストレスを減らすのか、あるいは後の時点でストレスからの回復を助けるのかは、はっきりしていない

■5. 既存研究の空白と、本研究の位置づけ

▼先行研究をまとめると
  • 楽しい活動も意味のある活動も、感情的ウェルビーイングとポジティブに関係していることが多い
  • さらに、意味のある活動はその場を超えて感情を高めたが、楽しい活動はそうではなかった(Hooker et al., 2020; Steger et al., 2008)
  • 意味のある活動は、大変だったり難しかったりしてストレスを増やす可能性もあれば、その場や後でストレスを減らす可能性もある。両方の効果が打ち消し合っている可能性さえある
▼残されていた2つの空白
  • 空白1:意味や楽しさの「時間差の効果」を調べた研究は、感情の自己回帰効果を統制していなかった
  • 自己回帰効果=前の時点の感情が、次の時点の感情にそのまま持ち越される効果。「感情の慣性(emotional inertia)」とも呼ばれる。たとえば、さっき機嫌が良かった人は、2時間後もある程度機嫌が良いままでいやすい
  • これを統制しないと、「活動が後から気分を良くした」のか、「単にその時の良い気分が続いていただけ」なのかを区別できない
  • 空白2:これらの効果を「数時間単位」で調べた研究はなかった
▼本研究のアプローチ
  • 経験サンプリング法(ESM:スマホアプリで1日に何度か通知を受け、その瞬間の活動や気分を回答してもらう方法)を用いる
  • 同じ時点の関係と、次の時点(約2.5時間後)への影響を調べる
▼本研究の仮説
  • 仮説1:楽しい活動は、同じ時点のポジティブ感情の上昇、ネガティブ感情とストレスの低下と関係する
  • 仮説2:意味のある活動は、同じ時点のポジティブ感情の上昇とネガティブ感情の低下と関係する。ストレスとの関係はどちらの方向もありうるため、プラス・マイナス・関係なしのいずれにも開かれた立場をとる
  • 仮説3:仮説1・2が成り立つ場合、意味のある活動の効果は次の時点にも持続するが、楽しい活動の効果は持続しない
  • これらの問い・仮説・分析計画は、データ収集前にOpen Science Frameworkで事前登録されている(事前登録=後から都合よく仮説を変えないよう、研究前に計画を公開しておくこと)

■全体の話の流れ

  • 意味のある活動も楽しい活動も、ウェルビーイングを高めることは分かっている
  • 古くから「快楽」と「意味」は区別されてきたが、実際には重なりが大きいので、両方を同時に調べる必要がある
  • 楽しい活動は気分と結びつき、意味のある活動は主にポジティブ感情と結びつく
  • 理論的にも(目標へのフィードバック、自己決定理論)、実証的にも(日記研究)、意味のある活動は「後から」効くと考えられてきた
  • ただし、意味のある活動はストレス源にもなりうるし、ストレスを和らげる可能性もあり、はっきりしていない
  • 先行研究は「感情の持ち越し」を統制しておらず、数時間単位でも調べられていなかった
  • そこで本研究は、経験サンプリング法で「その場」と「約2.5時間後」の効果を検証した
補足 2

【研究内容】

■この研究の全体像(先に結論)

  • 意味のある活動も楽しい活動も、その瞬間のポジティブ感情を高めていた
  • ネガティブ感情とストレスをしっかり下げていたのは、楽しい活動の方だった
  • 約2.5時間後にも効果が残っているように見えたが、「さっきの気分がそのまま続いているだけ」という分を差し引くと、追加の効果はほぼ消えた
  • つまり、どちらの活動も、効果は主に「その場」で、時間差で上乗せされる効果はほとんど見られなかった
  • 「意味のある活動は後から効く」という事前の予想は、支持されなかった

■1. 方法:どうやって調べたか

▼研究デザイン
  • 経験サンプリング法(ESM:スマホアプリで1日に何度か通知を受け、その瞬間の活動や気分を答えてもらう方法)を用いた
  • 記憶に頼って振り返るのではなく、「今この瞬間」を繰り返し記録できるのが強み
▼手順
  • 参加者は、知り合い経由の募集(便宜的サンプリング=集めやすい人から集める方法)と、大学の実験参加者登録システムを通じて集められた
  • まずオンラインで同意し、人口統計(年齢・性別など)やメンタルヘルスの質問票に回答
  • 数日後から14日間のESMを開始
  • 1日5回、Ethicaというアプリで通知が届いた
  • 通知の時間帯は、9:30〜11:59、12:00〜14:29、14:30〜16:59、17:00〜19:29、19:30〜22:00の5枠で、各枠の中でランダムに鳴るようにした
  • ランダムにする理由:通知時刻が予測できると、参加者が行動を合わせてしまう(例:通知前に楽しいことをする)のを防ぎ、ふだんの生活をより自然に切り取るため(Hektner et al., 2007; Conner & Lehman, 2012)
  • 1日5回という頻度は、ESM研究でよく使われる範囲(1日3〜8回)に収まっており、「1日の中の変化をとらえること」と「参加者の負担や回答漏れを抑えること」のバランスをとった(Stone & Shiffman, 1994; Trull & Ebner-Priemer, 2013)
  • 1回の質問は51項目で約3分
  • 通知から30分以内に回答しないと、その回は回答できなくなる
▼回答率を保つ工夫
  • 学生の研究補助者が進捗を確認し、回答率が80%を下回った人にフォローの連絡をした
  • 大学1年生の参加者には授業の単位を付与
  • 一般の参加者は、75%以上回答すれば、30ユーロのギフトカード(10名)の抽選に参加できた
▼回答率(コンプライアンス:予定された回答のうち実際に答えた割合)
  • 全体(243名):平均42.6回回答、回答率56.8%
  • 回答が全体の3分の1未満の人を除外した最終サンプル(189名):平均51.7回回答(25〜74回)、回答率68.9%
  • 最終的に9,762回分の回答データが得られた
  • なお、アプリの不具合で最終日以降も通知が続いたため、70回を超えて回答した人もいた。これらのデータも分析に含めた
  • 研究はティルブルフ大学の倫理審査委員会の承認を受けている
▼参加者
  • 条件はオランダ語が流暢であることのみ(質問がオランダ語のため)
  • 255名が最初の質問票を開始 → 12名がESMを始めず → 54名が回答不足で除外
  • 最終サンプルのうち、119名が心理学部の1年生、69名が便宜的サンプル
  • 年齢は18.3〜61.2歳、平均25.8歳
  • 女性74.9%、男性25.1%
  • 学歴は、大学進学向けの中等教育修了が59.4%で最多、次いで高等職業教育(日本でいう専門職系の大学に近い)が17.1%

■2. 何を測ったか

▼ポジティブ感情とネガティブ感情
  • ポジティブ感情(PA)7項目:満足している、陽気な、穏やかな、熱中している、エネルギッシュな、意欲的な、感謝している
  • ネガティブ感情(NA)6項目:緊張している、イライラしている、怒っている、退屈している、悲しい、落ち込んでいる
  • 回答はVAS(ビジュアル・アナログ・スケール:0〜100の線の上でスライダーを動かして答える方式)で、0=「まったくない」、100=「とてもそう」
  • スライダーは最初、真ん中に置かれていた
  • これらの項目は、ラッセルの円環モデル(感情を「快−不快」と「覚醒度の高−低」の2軸で円状に整理する理論)(Russell, 1980)に対応している
▼活動の「意味」と「楽しさ」
  • 毎回、「今何をしていたか」をリストから当てはまるものすべて選んでもらった
  • リスト:テレビ・映画、音楽を聴く、勉強、読書、買い物、ネット、ゲーム、仕事、セックス、家事、友人を訪ねる、カフェ、外食、劇場・美術館・映画館・コンサート、睡眠、運動、趣味、その他
  • そのうえで、「その活動がどれくらい楽しいか」「どれくらい意味があるか」を、それぞれ0〜100のVASで評価してもらった
  • ポイント:先行研究(Steger et al., 2008)のように専門家が決めるのではなく、本人が評価している
▼ストレス
  • ストレスも分析の対象だが、論文の測定の節には具体的な質問文が書かれていない(項目一覧はOSFで公開)

■3. 分析方法

▼使った分析手法
  • 動的構造方程式モデリング(DSEM)を、Mplus 8.7という統計ソフトで実施
  • DSEM=何度も繰り返し測ったデータで、「ある時点の状態が次の時点にどう影響するか」を、個人差も考慮しながら分析できる手法。時系列分析、マルチレベル分析、構造方程式モデリングを組み合わせたもの
▼効果の大きさの基準
  • 標準化効果量(単位をそろえて比較できるようにした影響の強さ。βで表す)0.05を、「意味のある最小の効果」とした(これは事前登録されていない)
  • 0.10=弱い、0.20=中程度、0.30=強い、とみなした(Funder & Ozer, 2019; Gignac & Szodorai, 2016)
▼分析の組み立て
  • まず、意味と楽しさを別々に分析し、次に両方を同時に入れて分析した
  • 同時に入れることで、「楽しさの分を差し引いても、意味が独自に効くか」(独自の効果)が分かる
  • 仮説1・2の検証:同じ時点の活動の評価と、PA・NA・ストレスの関係(同時点の効果)
  • 仮説3の検証:前の時点(t−1)の活動の評価が、次の時点(t)のPA・NA・ストレスに与える影響(時間差の効果)
▼時間差の効果は2通りで分析
  • 自己回帰なしのモデル:単純に「前の活動」と「後の気分」の関係を見る。ただし、「前の時点の気分がそのまま続いただけ」の分も含まれてしまう
  • 自己回帰ありのモデル:前の時点の気分(自己回帰効果=前の状態が次の状態に持ち越される効果)を統制したうえで、活動の評価が気分の「変化」を予測するかを見る。より厳しいテスト
  • 著者たちは、主に自己回帰ありのモデルで結論を解釈するとしている
  • 補足:事前登録では自己回帰なしのモデルだけを予定していたが、それでは「感情の慣性(emotional inertia:気分が時間をまたいで持続する傾向)で説明できる分」を超えた効果を調べられないと気づき、両方を分析した
▼モデルの細かい設定
  • レベル1=個人内(同じ人の中での時点ごとの変化)、レベル2=個人間(人による違い)という2層構造
  • ランダム切片とランダム傾きを設定
  • ランダム切片=人ごとに、ふだんの気分の平均レベルが違うことを認める
  • ランダム傾き=人ごとに、「活動の評価と気分の結びつきの強さ」が違うことを認める
  • ベイズ推定(データと事前の想定から、確からしい値の分布を推定する統計手法)を用い、欠損データ(答えなかった回)も各人の時間的なつながりを考慮しながら扱った
  • 回答の間隔が不均等なため、平均間隔の150分を1単位として時間を区切った
  • 計算が安定して収束したかの基準(PSR)を1.01に設定し、最低1,000回の反復計算を行った
  • データと分析コードはOpen Science Frameworkで公開されている

■4. 結果:活動と気分の基本的な姿

▼どんな活動が多かったか
  • 最も多かったのはテレビ(約2,100回)、次いで勉強(約1,800回)、仕事(約950回)
  • 続いて、ネット、音楽を聴く、睡眠、友人を訪ねる、ゲーム、外食、趣味、運動、読書、買い物、カフェ、セックス、文化活動の順
▼活動ごとの「意味」と「楽しさ」
  • 活動の意味と楽しさの相関はr=.18(相関係数:2つの値が一緒に動く度合い。−1〜+1で、0に近いほど関係が弱い)。ある程度は重なっているが、別物と言える程度
  • 意味も楽しさも高かった活動:運動、セックス、友人を訪ねる、文化活動、外食
  • 意味と楽しさが大きくずれた活動
  • 勉強:意味は高い(約62)が、楽しさは低い(約32)
  • テレビ:楽しさはそこそこ(約59)だが、意味は低い(約34)
  • ゲーム:楽しさ(約64)に比べて、意味は低い(約38)
▼気分とストレスの平均値
  • PA:平均46.2点
  • NA:平均14.4点
  • ストレス:平均17.2点
  • 意味:平均51.7点
  • 楽しさ:平均51.7点
  • 全体として、参加者のストレスとネガティブ感情は低めだった
▼気分同士の関係(個人内の相関)
  • PAとNA:中程度の負の相関(r=−.48)
  • PAとストレス:弱い負の相関(r=−.24)
  • NAとストレス:正の相関(r=.41)
▼活動の評価と気分の関係(相関)
  • 活動に意味を感じている時ほど、PAが高く(r=.24)、NAが低かった(r=−.12)が、ストレスとは関係がなかった(r=−.02)
  • 活動を楽しいと感じている時ほど、PAが高く(r=.36)、NAが低く(r=−.29)、ストレスも低かった(r=−.23)

■5. 結果:その瞬間の効果(同時点)

▼楽しさの効果(仮説1を支持)
  • 楽しさ→PA:β=0.36(強い)
  • 楽しさ→NA:β=−0.32(強い)
  • 楽しさ→ストレス:β=−0.25(中程度)
  • 楽しい活動をしている時は、良い気分が高く、嫌な気分とストレスが低い
▼意味の効果(仮説2を支持)
  • 意味→PA:β=0.21(中程度)
  • 意味→NA:β=−0.07(非常に弱い)
  • 意味→ストレス:β=0.04(統計的には0ではないが、最小の効果量0.05に届かず、実質的には関係なしと判断)
  • 意味のある活動は良い気分とはっきり結びつくが、嫌な気分を下げる効果は小さく、ストレスとはほぼ無関係
▼補足
  • 意味と楽しさを別々に分析しても、同時に分析しても、結果は大きく変わらなかった
  • つまり、意味と楽しさは、それぞれ独立して気分に効いている

■6. 結果:約2.5時間後への効果(時間差)

▼自己回帰なしのモデル(前の気分を統制しない)
  • 意味→後のPA:β=0.06
  • 楽しさ→後のPA:β=0.09
  • 楽しさ→後のNA:β=−0.06
  • 楽しさ→後のストレス:β=−0.09
  • 意味→後のNA・ストレスは効果なし
  • どれも同時点の効果よりずっと小さく、非常に弱い
▼自己回帰ありのモデル(前の気分を統制する、本研究のメイン)
  • 前の気分が次の気分に持ち越される効果は、PAでβ=0.33、NAでβ=0.31、ストレスでβ=0.28と、かなり大きかった
  • これを考慮すると、意味→後のPAはβ=0.01、楽しさ→後のPAはβ=−0.02となり、効果は消えた
  • NAとストレスへの効果も消えた
  • 唯一の例外として、楽しさ→後のNAがβ=0.04と、わずかにプラスになった
  • 著者たちはこれを、楽しい活動が終わった後にネガティブ感情が「跳ね返って戻る」ことを示すものと解釈している
▼仮説3の検証結果
  • 予想:意味のある活動は後まで効くが、楽しい活動は効かない
  • 結果:どちらの活動も、「気分の持ち越し」を超えた時間差の効果は見られなかった
  • 仮説3は支持されなかった
▼追加の確認分析(感度分析=結果が分析の条件によって変わらないかを確かめる分析)
  • 同じ活動を続けていると、「活動の効果」と「活動が続いている効果」が混ざってしまう(活動の慣性)
  • そこで、同じ日に連続して同じ活動をしていた回(全体の28%)を除いて再分析した
  • 結果はほぼ変わらなかった(効果の差は、時間差で最大0.01、同時点で最大0.02)

■7. 考察:この結果をどう解釈するか

▼その瞬間の関係について
  • 楽しさも意味も、その瞬間のPAを高め、NAを下げていた。楽しさはストレスも下げていた
  • 楽しい活動の効果(Berenbaum, 2002)、意味のある活動の効果(Hooker et al., 2020; Steger et al., 2008)を示した先行研究と一致している
  • 意味がNAよりPAに強く効く点も、先行研究と一致している
▼なぜ楽しさの方が効果が強かったのか
  • 理由1:楽しさは、そもそも感情とほぼ同じ概念。一方、意味は必ずしも感情的な要素を含まない(Steger et al., 2006)
  • 理由2:意味のある活動の中には、不快だったり負担が大きかったりするものがある(Baumeister et al., 2013)。それが、楽しい意味ある活動のプラス効果を打ち消した可能性がある
▼意味のある活動がストレスと無関係だった点
  • これは注目すべき結果。なぜなら、ストレス源として知られる仕事や勉強(Hassard et al., 2018; Robotham, 2008)が、意味のある活動として頻繁に報告され、データの大部分を占めていたから
  • 考えられる説明:意味を感じることで、ストレスからの感情的・身体的な回復が促され(Burrow et al., 2024)、ストレスがある程度相殺された可能性
  • 活動の種類による違いの可能性:仕事や勉強のような「やらなければならない意味ある活動」はストレスが大きいが、人付き合いや趣味のような「自分で選んだ意味ある活動」はストレスが小さいかもしれない
▼時間差の関係について
  • 前の気分を統制しない場合、意味と楽しさの効果は2.5時間後にもわずかに残っていた。しかし、同時点よりずっと弱く、効果の大部分は2.5時間の間に薄れていた
  • 本研究の時間差の効果は、Steger et al.(2008)の日記研究より小さかった。ただし、あちらは「ボランティアをする」「感謝を伝える」(意味)、「大きなパーティーに行く」(楽しさ)のように、あらかじめ決められた特定の行動を扱っており、日常の幅広い活動を扱った本研究とは異なる
  • Newman et al.(2018)と比べても小さかったが、あちらは「活動の意味」ではなく「人生の意味」を扱っていた違いがある
▼気分の持ち越しを統制すると効果が消えた意味
  • 時間差の効果は、感情やストレスが時点から時点へ持ち越される効果(Hamaker et al., 2021)で説明できる
  • 言い換えると、意味のある活動も楽しい活動も、「持ち越し」を超えて後から気分を良くする効果はなかった
  • したがって、「意味のある活動は、目標への前進を知らせるフィードバックとして後から気分を高める」という考え(Carver & Scheier, 1990)は、本研究では支持されなかった

■8. 研究の限界と今後の課題

▼限界1:気分が活動の評価をゆがめる可能性
  • 人は、自分の経験を評価する時に、今の気分を手がかりにしがち(感情情報説=「今の気分」を判断材料として使ってしまうという仮説)(Clore et al., 2001)
  • ポジティブ感情が「人生の意味」の評価を押し上げ、関係を実際より強く見せることが示されている(King et al., 2006)
  • 本研究でも同様の偏りがありうる。ただし、抽象的な「人生の意味」ではなく、具体的な「活動の意味」を尋ねたので、影響は小さいかもしれない
  • 楽しさの評価では、この問題はさらに大きい。「楽しい」とは、そもそもPAが高くNAが低い状態のことなので、楽しさと気分の同時点の関係は、ほぼ定義上当然とも言える
  • 今後は、参加者にこの問題を伝えたうえで(King et al., 2006の提案)、気分が活動の評価にどう影響するかを調べる必要がある
  • また、気分が「どんな活動を選ぶか」に影響する可能性も検討すべき
▼限界2:活動の評価自体の持ち越しを考慮していない
  • 時間差のモデルには、次の時点の意味や楽しさの評価が入っていない
  • そのため、同じ活動を続けたり、前の活動の評価が次の活動の選び方に影響したりすることで、効果が現れている可能性は残る
▼限界3:サンプルの偏り
  • 若い成人、特に心理学部1年生が多い
  • 50歳以上の参加者は少なく、年齢の影響を分析できなかった。人生の段階によって感情の経験や活動の選び方は変わりうる(Carstensen, 2021)
  • 女性が多く、学歴も比較的高い
  • オランダ語話者のみのため、他の言語や文化にそのまま当てはまるとは限らない
▼今後の研究の方向性
  • 活動の種類によって、意味や楽しさの効き方が違うかを調べる
  • たとえば、人と関わる(向社会的な)意味ある活動は、一人で行う意味ある活動より、PAを高めたりストレスを和らげたりする効果が強いかもしれない(Raposa et al., 2016; Berry & Hansen, 1996)
  • その活動にどれだけ自律性(自分で選んでいる感覚)を感じているかによって、意味のある活動の効果が変わる可能性もある(Ryan et al., 2008)

■9. 結論

  • 意味も楽しさも、その瞬間のポジティブ感情と結びついていた
  • ネガティブ感情とストレスを実質的に下げていたのは、楽しさの方だった
  • どちらも、その瞬間の気分とは強く結びついていたが、気分の持ち越しを超えた時間差の効果は見られなかった
  • つまり、意味や楽しさが感情的ウェルビーイングに与える影響は、主に「その場」のものであり、時間を超えて持続するものではないと示唆される

■読み解く上での注意点

  • 参加者数は、要旨では193名、本文では189名となっている(本文の内訳119名+69名=188名)。論文内で数字にずれがある
  • 「楽しい活動の後にネガティブ感情が跳ね返る」という例外(β=0.04)は、論文自身が設定した最小の効果量0.05に届いておらず、表でも太字(意味のある効果)になっていない。強調しすぎない方が安全
  • Steger et al.(2008)について、序論では「意味のある活動は翌日にも効果があった」、考察では「時間差の効果は見られなかった」と、説明が食い違っているように読める箇所がある
  • 「効果」と書いているが、観察研究なので因果関係を直接示したものではない
  • ここで扱ったのは約2.5時間という短い時間スケール。数日〜数年単位での意味のある活動の効果(たとえば人生の充実感)を否定するものではない
補足 3

動画解説はこちら😊
https://youtu.be/BBHxgtRkQ54

補足 4

会話形式での紹介はこちら😊
はぴテク相談室:やりがいのある毎日と、ゲームの罪悪感の話
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-24-1790215440/

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