2026.09.25

はぴテク相談室:推し活って、現実逃避なんでしょうか?

相談者

はぴテクさん、ちょっと照れちゃう相談なんですが…。私、40代なんですけど、数年前からK-POPのグループにハマってまして。

はぴテクさん
はぴテクさん

おお、いいですね。何か困りごとが?

相談者

先日、そのグループが活動休止を発表して、2日くらい本気で落ち込んだんです。仕事も手につかなくて。それで我に返って、「いい歳して、私、現実逃避してるだけなんじゃないか」って不安になってしまって。

はぴテクさん
はぴテクさん

なるほど。「推し活は逃避なのでは」という不安ですね。実はその問いにかなり真正面から答えている研究があるんです。韓国で、30〜60代のBTSファン14人に1〜2時間ずつインタビューした調査(Kang et al., 2026)。

相談者

大人のファンの研究なんてあるんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

あるんです。で、結論から言うと、その研究に出てくる人たちは「逃避」とは真逆の使い方をしていました。抗がん治療中に音楽を聴いて耐えた人、大きな災害のトラウマを抱えて「聴くともっと悲しくなるけど、同時に大きな慰めになった」と語った人。現実から目をそらすためじゃなくて、現実を受け止めるために聴いているんです。

相談者

現実を受け止めるため、ですか。

はぴテクさん
はぴテクさん

研究では「感情を整理して、日常に戻るための資源」と表現されていました。ある参加者は「つらいことがあると自然に音楽を探す。聴き終わると心を整理できる」と。○○さんも、推しの音楽を聴いたあと、仕事に戻れなくなりますか? それとも戻れますか?

相談者

…戻れますね。むしろ、聴いてから仕事に行くと踏ん張れる日が多いです。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは逃避じゃなくて、回復ですね。研究ではそれを「レジリエンス」、へこんでも立ち直る力、と呼んでいます。

相談者

でも、活動休止で2日落ち込んだのは、やっぱり依存っぽくないですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

面白いことに、その研究にも全く同じ人が出てくるんですよ。活動休止のニュースで2日間落ち込んで、「のめり込みすぎたのでは」と自分に問いかけた参加者。チケット落選で「否定的な感情に飲み込まれないようマインドコントロール中」と語った人もいました。

相談者

私と一緒だ…。

はぴテクさん
はぴテクさん

研究者はそれを「問題」ではなく「大事なプロセス」として書いているんです。落ち込む→自分の状態に気づく→距離を調整して戻ってくる。この往復そのものが立ち直る力を育てている、と。○○さんが今日ここに来て「これって大丈夫かな」と考えていること自体が、その調整機能が働いている証拠です。

相談者

そう言われると、ちょっと救われます。

はぴテクさん
はぴテクさん

もうひとつ聞かせてください。推し活を通じて、人とのつながりは増えましたか?

相談者

それは、めちゃくちゃ増えました。コンサートで知り合った人と今は普通に飲みに行きますし、年齢も職業もバラバラで。この前病気した時、一番最初に心配の連絡をくれたのはその友達でした。

はぴテクさん
はぴテクさん

その研究でもほぼ同じ言葉が出てきます。「病気の時、家族より先に連絡をくれたのはファン仲間だった」「20代も60代もいるけど年齢は意識しない」。幸せの研究では、つながりは幸福度を最も安定して支える要因のひとつです。推しが「きっかけ」で、幸せの本体はそのつながりの中にある。

相談者

推しがいなくなったら全部なくなる、と思ってたんですけど、そうじゃないんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

その研究で描かれた流れは、①音楽に慰められる→②仲間とつながる→③立ち直る力がつく→④人生の見方が変わる、という4段階でした。②から先は、推しが活動休止しても○○さんの中に残っています。実際、参加者の中には「以前はただ生きるのが目標だったけど、今はどんな人間として生きるかを考えるようになった」という人もいました。

相談者

私も、推しを好きになってから「自分ももう少し優しい人でいたい」と思うようになった気がします。

はぴテクさん
はぴテクさん

それ、研究の中で一番深い段階の変化です。幸せの4つの因子で言えば、「ありのままに」「つながりと感謝」「なんとかなる」「やってみよう」が、○○さんの推し活の中に全部そろっている。

相談者

恥ずかしいと思ってたことが、なんだかちゃんとした営みに思えてきました。

はぴテクさん
はぴテクさん

ひとつだけ目安を。研究の参加者は「推し活が自分の日常に良い影響を与える範囲で続けたい」と言っていました。仕事、体、お金、人間関係を削ってまでではなく、日常を支える範囲で。そこを時々点検していれば、心配いりません。

相談者

点検はもう今日しましたね(笑)。ありがとうございます。落ち込んだ自分も含めて、ちゃんと回復してるんだって思えました。

■ 今日のまとめ

  • 大人の推し活は「現実逃避」ではなく「現実を受け止めて日常に戻るための回復の資源」として機能しうる。聴いたあとに日常へ戻れるなら、それは逃避ではなく回復。
  • 落ち込む→気づく→距離を調整して戻る、この往復そのものが「立ち直る力」を育てる。落ち込んだ自分を責める必要はない。
  • 推しはきっかけで、幸せの本体は「仲間とのつながり」と「自分の生き方の変化」にある。それは推しが休んでも自分の中に残る。

■ 出典・注意事項

  • Kang, J.-K., Kim, R., & Seo, H.-J.(2026). Exploring the process of Psychological Well-Being Formation Among Adult Fans Through BTS Fandom Activities. Journal of the Edutainment(에듀테인먼트연구), 8(4), 293-317. https://doi.org/10.36237/koedus.8.4.295

  • 本研究は韓国の成人BTSファン14人(全員女性・30〜60代・5〜14年の長期ファン)への質的インタビュー研究です。統計的に因果関係を検証したものではなく、「こういう流れがありうる」ことを描いた研究であり、すべての人に当てはまるものではありません

  • 「幸せの4つの因子」は前野隆司の枠組み(前野, 2013)に基づく、はぴテクさんの解釈です

  • 推し活が生活や健康、経済状況に深刻な支障をきたしていると感じる場合は、専門家への相談をおすすめします

  • 対話中の相談者は架空の人物です

投稿者による補足(1件)
補足 1

論文の紹介はこちら😊
推しがいると、幸せは「4段階」で育っていく 〜BTSファンの心理的ウェルビーイング研究〜
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-25-1790306280/

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