〜ノルウェー海軍でのプレイフルワークデザイン〜
裁量のない仕事での遊び心と幸福度についての、オランダ・ノルウェーの最新研究
帆船で大西洋を渡るノルウェー海軍の士官候補生57人に、20日間毎日アンケートに答えてもらったデータから調査頂きました。
舞台は帆船。
帆を張る、マストに登る、甲板を磨く、夜の見張り。
何を・いつ・誰とやるかは完全に決まっていて、自分で選べることはほぼない。
そんな環境でも「どうやるか」だけは自由なので、
①楽しさを混ぜる(作業にユーモアを探す、みんなが楽しくなる工夫をする)
②競争を混ぜる(作業を挑戦と捉える、自分と勝負する)
をした日に、ワクワク度・疲れ・仕事の出来がどう変わるかを調べました。
結果としては、
①楽しさを混ぜた日は、
ワクワクが増えて、疲れも減って、仕事の出来も良かった。
②競争を混ぜた日は、
ワクワクは増えたけど、疲れは減らなかった。
(自分にハードルを課すわけなので、それはそう。)
そして一番面白かったのが、両方やった日。
ワクワクが増えて、疲れもかなり減って、仕事の成果も良かった。
つまり、楽しさと競争は別々の効果じゃなくて、
掛け算で効く。
ただし、効くのはその日限り。
翌日には持ち越されないので、毎日ちょっとずつやる必要がある。
あと、上から「遊べ!」と押しつけられた遊びは逆効果、
というのも著者が強調していました。自分で始めるから遊びになる。
物語(楽しさ)とステージ(挑戦)が両方あるから、人はハマる。
- やらされ仕事でも「どうやるか」は自分のもの。そこに小さな遊びを足すだけで、その日の幸せは変わる。
- ただし「競争」は自分との勝負に限定。人と比べ始めると、たぶん話が変わってくる。
- 会社視点で言えば、ゲーム化を制度にするより、「やり方の自由や裁量」を渡す方が効きそう。
という感じ。
いずれにせよ、幸せは状況が変わるのを待つものじゃなくて、
目の前の作業の捉え方を少し変えるだけで動く😊
ジョブクラフティング+プレイフルワークデザインの合わせ技とか、さらに効きそうな気がしました😊今度やってみようかな。
The duality of playful work design: A diary study of designing fun and competition
遊び心のある仕事デザインの二重性:楽しさと競争をデザインすることについての日記研究
Arnold B. Bakker(エラスムス大学ロッテルダム、オランダ), Jørn Hetland, Yuri S. Scharp, Olav Kjellevold Olsen & Roar Espevik(ベルゲン大学、ノルウェー ほか)
Journal of Business Research, 2026/9/30
https://doi.org/10.1016/j.jbusres.2026.116566
載量が少ない仕事でも成果が出る!「プレイフル・ワーク・デザイン」のカ BEFORE 疲弊する毎日 (The Daily Grind) APPROACH 1 楽しさの設計 (Designing for Fun) APPROACH 2 競争の設計 (Designing for Competition) AFTER シナジー効果とパフォーマンス向上 (Synergy & Improved Performance) 「楽しさの設計」で リソースを増やし疲弊を防ぐ 「競争の設計」で 自発的な挑戦と意欲を生み出す 「楽しさ」×「競争」の 掛け合わせで効果が最大化 「楽しさの設計」で リソースを増やし疲弊を防ぐ 「競争の設計」で 自発的な挑戦と意欲を生み出す 「楽しさ」×「競争」の 掛け合わせで効果が最大化 Personal best GOALS time 自分たりの目標やタイムアタックを設定 し、ポジティブな感情を高めます。 心理的活力 の向上 毎日の高い 成果に直結 ルールや手順が厳しく決まっている仕事。 タスクへのアプローチが受動的で、 疲労が蓄積します。 コーチやエキスパートからアドバイス 仕事の楽しさと活力を作り出します。 START 競争を通じて疲労経過を気活動が高まります。 加速された挑戦を繰り返すだけが、 タスクハフォーマンスが向上するもとに。 ©Cornerstone Notebook The Duality of Playful Work Design 「変えられないルーティンワーク」をゲーム化する。 制約の中で生産性と心の活力を生み出す科学。 最新の組織心理学(Job Demands-Resources理論)に基づく、実践的ワークデザイン・ガイド 私たちは「仕事の内容」を変える自由を、そこまで持っていない。 「ジョブ・クラフティング」の時代。 自ら仕事の内容、関わる人、スケジュールを 再設計し、やりがいを見出す。 しかし、現実の多くの仕事(警備員、レジ打ち、 医療現場、コールセンター等)は「タスク」 「時間」「相手」が厳密にマニュアル化されており、 裁量権(自由度)がほぼゼロである。 STRICT MANUAL PROCEDURES ✕「遊び」は「仕事」の対極であり、効率と集中を落とす不真面目目なものである。 ◎「遊び」は、厳しい制約の中で脳の情報処理を変え、没入感を生み出す最強の戦略である。仕事の内容は変えられなくても、「取り組み方」はハックできる。 Designing Fun (「楽しさ」の設計) ユーモア、創造性、自発性 単調な作業中に、同僚と オリジナルの合い言葉や リズムを作る。 Designing Competition (「競争」の設計) ルール、挑戦、マイクロ目標 前回よりも早く正確に処 理できるか、自分自身と タイムアタックをする。 Playful Work Design (PWD) 日常業務に自ら「楽しさ」と「競争」を意図的に 組み込むプロアクティブな行動。 Fun(楽しさ) Competition(競争) 目的 • 喜び・つながりの創出 • 達成感・熟達の創出 注目する情報 • リソース(笑い、サポート)の発見 • パフォーマンスの指標(速度、質) 心理的効果 (JD-R理論) • 「心の資源(リソース)」を増やす • 「適度な挑戦(チャレンジ)」を生み出す 現場での具体例 • 患者との会話にユーモアを交え、笑顔を引き出すミッションを持つ看護師 • 担当病棟の患者の顔と名前、カルテを完璧に記憶する自己ゲームを行う看護師 1. 行動の再定義 タスクを自ら「ゲーム」 だと設定する。 2. 認知フィルターの発動 脳がポジティブな情報(達成感・楽しさ)に極度に敏感になり、 ネガティブな情報(疲労感・退屈) から注意をそらす。 3. 結果 やりがいが向上し、 疲労感がブロックされる。 やりがい 疲労感 The Proof: 極限のルーチンワークにおける実証実験 被験者: ノルウェー海軍士官候補生 57名 環境: 北欧から北米への大型帆船での過酷な航海、極寒の中、わたる単調で反復的、かつ段階に複雑化された作業(昇帆り、帆の操作、掃除など)。裁量権は皆無。 調査手法(Diary Study): 毎日午後5時に「今日、どれくらい遊び心で仕事に入れたか?」とその日の気分・パフォーマンスを記録(計1,046件のデータポイント)。 Finding 1:「楽しさ」は、疲労を防ぐ盾になる Fun 楽しさ ↑ワクワク感・インスピレーション (活性化されたポジティブ感情) が上昇。 楽しさを意識して仕掛けた日は、 明らかに活力がみなぎった。 ↓燃え尽き・疲労感が有 意に低下。(仮説1の実証) 楽しさは、過酷なタスクからくる 精神的摩耗をブロックした。 Finding 2:「自己競争」は、モチベーションのアクセル Competition 自己競争 ↑ワクワク感・やりがいが上昇。 マイクロ目標やタイムアタックを設定した 日は、達成感と集中力が高まった。 → 疲労感は変化なし。 (仮説2b棄却) インサイト: 競争は達成感を生む(アクセル) か、疲労を防ぐ効果(ブレーキ)は持たない。 The "Aha" Moment: 究極のシナジー(掛け算の魔法) 「楽しさ」と「競争」を掛け合わせた日、人は最高のパフォーマンスを発揮する。 Low to High Low to High 楽しさ(Fun) 競争(Competition) 「圧倒的なポジティブ 感情の増加」 & 「頭着な疲労感の低下」 結果として、その日のタスク パフォーマンス(生産性) が最大化された。 (仮説5の実証) メタファー:「楽しさ(リリース)」 という燃料を、「競争(チャレ ンジ)」というエンジンに注ぎ込 むことで最大の出力が出る。 © Gemini Notebook The Engine of Performance (全体像) Playful Work Design Fun × Competition 引き起こす Well-being ポジティブ感情 (Activated Positive Affect) 疲労感 (Exhaustion) つながる Task Performance 持続的な集中力と 質の高い業務遂行 遊びは単なる「息抜き」ではない。 生産性をドライブする論理的なメカニズムである。 Playbook for Employees: 明日からの実践ガイド 単調な仕事に「ゲーム」を仕掛ける方法 Fun の仕掛け方(リソースを増やす) ルーチン業務に「BGM」や「目分量のリズム」を中心につける。 顧客対応で、1日3回「自然な笑い」を引き出すという裏ミッションを立てる。 Competition の仕掛け方(適度なハードルを作る) タイムアタック:昨日より5分早く終わらせるための独自の手順を考える。 マイクロ目標(狭りプレイ):今日はタイピングのミスをゼロにする。定型業務を説明する等の制約を設ける。 🎮 Gamified Notebook Playbook for Managers: マネージャーのための環境作り 遊び心は
■ 論文に登場するプレイフルワークデザインの具体例
● 楽しみ(Fun)=ルディックな遊び
自発性・ユーモア・空想によって、楽しさや喜びを作る。社会的で創造的。
▼ 海軍士官候補生の例
▼ 病院の看護師の例
▼ 空港の保安検査員の例
▼ 尺度の項目(毎日の質問文)
▼ 理論の説明として挙げられている行動
▼ 背景研究(Roy, 1959「バナナタイム」)
● ゲーム化(競争)=アゴニスティックな遊び
ルール・競争・挑戦によって、意欲・達成感を作る。基本は「自分との勝負」。
▼ 海軍士官候補生の例
▼ 病院の看護師の例
▼ 空港の保安検査員の例
▼ 尺度の項目(毎日の質問文)
▼ 理論の説明として挙げられている行動
● 両方を組み合わせた例(論文が「一番効く」としている形)
▼ レジ係の例
→ 楽しさ(笑顔・会話)と競争(毎回の挑戦)が同時に入っている
▼ ゲームの構造(論文の比喩)
● 組織側が仕掛ける場合の例(論文の実践的含意)
※ ただし押しつけは逆効果。本人の自由があってこそ遊びになる、と論文は強調
本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:決まりきった仕事に「遊び心」をひとつまみ
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-03-1790969521/
【研究背景】
■ はじめに:この論文が立っている土台
Bakker, Hetland, Scharp, Olsen & Espevik による本論文は、ノルウェー海軍の士官候補生57名を対象に20日間の日誌調査を行い、「遊び心ある仕事デザイン(playful work design)」が日々の感情・疲労・パフォーマンスとどう関連するかを調べたものです。ここでは、その研究がどのような先行研究の積み重ねの上に成り立っているのかを、順を追って説明します。
■ 研究背景1:従業員は「受け身」から「能動的な主体」へ
▼ 仕事デザイン研究の転換
▼ 見落とされてきた問題:裁量の少ない仕事
■ 研究背景2:「遊び」と「仕事」は本当に対立するのか
▼ 歴史的な見方
▼ 構造化された仕事の中にも遊びはある
▼ 遊びの「情報処理」アプローチ
■ 研究背景3:Playful work design(遊び心ある仕事デザイン)という概念
▼ 概念の定義
▼ 2つの次元
■ 研究背景4:JD-R理論(仕事の要求度-資源理論)
▼ 理論の概要
▼ 主要な用語
▼ 本論文の理論的統合
■ 研究背景5:ウェルビーイングに関する先行知見
▼ 感情の整理
▼ 現場研究
▼ 実験研究
■ 研究背景6:パフォーマンスへの経路に関する先行知見
■ 研究背景7:2つの次元を組み合わせる相乗効果
▼ JD-R理論からの予測
▼ ゲームデザインとの共通点
▼ 組み合わせの効果を示す実験・現場研究
■ 研究背景8:先行研究に残されていた課題と、本研究が目指したこと
【研究内容】
■ この研究のねらい
▼ 問題意識:「何を・いつ・誰と」は選べなくても「どうやるか」は選べる
▼ 中心概念:プレイフル・ワーク・デザイン(playful work design, PWD)
▼ 理論的な枠組み:情報処理の視点 × JD-R理論
■ 仮説
■ 方法
▼ 調査対象と場面
▼ 測定(すべて1〜5点の5件法)
▼ 分析
■ 結果
▼ モデル全体
▼ 仮説1・2:PWDと、その日の感情・疲弊
▼ 仮説3・4:課題遂行への間接的関連
▼ 仮説5:2つの次元の相乗効果
▼ 補足分析
■ 考察
▼ 理論的な貢献
▼ 実践的な示唆
▼ 限界と今後の課題
■ 結論
動画解説はこちら😊
https://youtu.be/rcy7nOC7MCk