はぴテク相談室:子どもの「幸せの土台」って、何で育つの?
はぴテクさん、こんにちは。2歳の娘がいるんですが、最近「この子が大人になったときに幸せでいられるように、親として何をしてあげたらいいんだろう」って考えるんです。習い事とか、いい教材とか、いろいろ気になっちゃって。深刻な悩みじゃないんですけど、なんだかそわそわして(笑)。
素敵なそわそわですね(笑)。娘さんの未来を思っているからこその気持ちです。実はちょうどぴったりの研究があるんですよ。2026年にJournal of Happiness Studiesに載った論文で、アメリカ・イギリス・日本の18〜34歳、合計1,401人に「子どもの頃(0〜18歳)にどんな経験をしたか」を思い出してもらい、今の幸せや人とのつながりとの関係を調べたものです。
日本の人も入ってるんですね! で、どんな経験を聞いたんですか?
「進化した巣(evolved nest)」と呼ばれる考え方がベースになっています。人間が長い歴史の中で子育てに使ってきた「基本セット」のことで、この研究では7つの要素を聞いています。たとえば、親にハグやキスなど愛情をもって触れてもらったか、泣いたり困ったりしたときにちゃんと応えてもらったか、家族で一緒にごはんを食べたり出かけたりしたか、ほかの子と自由に遊んだか(大人が組んだ習い事ではなく、子ども同士で勝手に始める遊び)、家の中で喜びや安心を感じることが多かったか。逆に、叩かれたりつねられたりする体罰や、怖さや屈辱感を感じる家庭の雰囲気もたずねています。
ハグとか、家族でごはんとか、自由な遊びとか…すごく普通のことですね。
そう、そこがポイントなんです。特別な道具もお金もいらない、「普通のこと」ばかり。そして結果ですが、こうした経験を多く思い出せた人ほど、3か国すべてで、人生の満足度、幸福感、健康の自己評価、「世界はおおむね良いところだ」という感覚などが高い、という関連が見られました。年齢や収入、学歴などの影響を取り除いても、です。
へえ! 人間関係のほうはどうでした?
こちらも3か国で共通して、人間関係への満足度、「困ったときに頼れる人がいる」という感覚、ご近所への所属感が高いことと関連していました。信頼感については、日本でも「一般的に人を信頼できる」という気持ちと関連が見られています。ただ、寄付の意欲や助け合いの姿勢など「人に対して親切にする傾向」の細かい項目では、日本はアメリカやイギリスより関連が少なかったんです。論文では、日本では社会全体で助け合いの価値が広く共有されているので、家庭ごとの違いが出にくいのかもしれない、と考察していました。
なるほど、国の文化によって少し違うところもあるんですね。でも幸せや人間関係の部分は共通なんだ。ところで、やっぱり「叩かない」とか「怖がらせない」ってところが一番大事なんでしょうか?
いい質問です。この研究では7つの要素を分析したところ、「ポジティブな経験」(愛情のあるふれあい、応えてもらうこと、家族で一緒に過ごす、自由な遊び、安心できる雰囲気)と「ネガティブな経験」(体罰、怖さや屈辱感のある雰囲気)の2つのまとまりに分かれました。そして両方がそれぞれ独立して幸せや人間関係と関連していたんですが、特に幸福感や人間関係では、ポジティブな経験のほうが、ネガティブな経験よりも強く関連していたんです。
つまり「悪いことをしない」だけじゃなくて、「良いことがたくさんある」ほうが、より効いてるかもしれないってこと?
その通りです。論文でも「つらい経験を防ぐだけでなく、良い経験を増やすことにも目を向けるべき」と書かれています。それともうひとつ面白い結果があって、子どもの頃の家庭の経済的な豊かさとこうした経験の関係は「右肩上がり」ではなかったんです。中くらいからやや上あたりで最も高く、それ以上豊かでも増えていなかった。論文は「多ければ多いほど良い、とは限らない」とまとめています。
じゃあ、高い教材を買わなきゃ…って焦らなくてもいいのかも(笑)。
ふふ、そう受け取っていいと思います。ただ、はぴテクとして正直にお伝えしておくと、これは大人になってから子ども時代を「思い出して」答えた調査なので、今の気分が記憶に影響している可能性はあります。それに「関連がある」ことがわかっただけで、「ハグをしたから幸せになる」と原因・結果を断定できる研究ではありません。経済ゲームという、実際にお金を使って親切さを測る実験では関連が見られなかった、という結果もあります。
それでも、「ハグして、一緒にごはんを食べて、自由に遊ばせて、安心できる家にする」っていう普通のことを大事にすればいいんだ、って思えたら、なんだか気持ちが軽くなりました。
その「気持ちが軽くなる」ことこそ、家の中の安心できる雰囲気につながるんじゃないかなと思いますよ。娘さんと一緒の毎日を、ぜひ楽しんでくださいね。
■ 今日のまとめ
- 子どもの頃の「愛情のあるふれあい・応えてもらう・家族で一緒に過ごす・自由な遊び・安心できる雰囲気」の記憶は、米英日の3か国すべてで、大人になってからの幸福感や人間関係の良さと関連していた。
- 幸福感や人間関係では、体罰や怖い雰囲気といった「ネガティブな経験の少なさ」よりも、「ポジティブな経験の多さ」のほうが強く関連していた。家庭の経済的豊かさは「多いほど良い」というわけではなかった。
- ただしこれは大人が子ども時代を思い出して答えた関連の研究。原因と結果を断定するものではなく、国によって関連の出方が異なる部分もある。
■ 出典・注意事項
- Malthouse, E., Hanaki, N., & Brown, G. D. A. (2026). The Evolved Nest in Childhood: Relation to Adult Well-being and Social Capital Across Cultures. Journal of Happiness Studies, 27:130. https://doi.org/10.1007/s10902-026-01109-0
- 本研究は観察研究(相関研究)であり、子ども時代の経験が大人の幸せの「原因」であると断定することはできません。また、子ども時代の経験は大人になってからの回想に基づく自己申告で、記憶や現在の気分の影響を受けている可能性があります。対象は18〜34歳に限られ、経済ゲームで測った親切さとは関連が見られませんでした。
- この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。
研究自体の紹介はこちら😊
子ども時代に暖かく育てられた経験が、大人になってからの幸せを底上げする
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-06-1791221220/