はぴテク相談室:ときめきが落ち着いてきた…これって普通?
結婚して3年目なんです。夫とは仲良しだし、ケンカもほとんどないんですけど、最近「付き合いたての頃のドキドキがないなあ」って、ふと思うことがあって。幸せなのに、ちょっと不安になるんです。これって、うちだけでしょうか?
うふふ、素敵な「幸せの中の小さな不安」ですね。結論から言うと、「うちだけ」ではまったくありません。むしろ、研究の世界では「関係への満足度は時間とともに少しずつ下がっていく」ことが、かなり安定して観察されているんですよ。今日はそれを数式で描いてみた、ちょっと変わった研究を紹介しますね。
数式で?恋愛を?
そうなんです。マドリード・コンプルテンセ大学などの研究者が、「恋の重力(gravity of love)」と名づけた考え方を提案しました。33か国・約7,000組の夫婦に「結婚にどれくらい満足していますか」と聞いたデータ(7点満点)を使って、結婚年数ごとの平均を線でつないでみたんです。すると、最初は6.12とかなり高く、最初の10年くらいで目立って下がり、そのあとはゆるやかになって、横ばいに近づいていく形になりました。
やっぱり下がるんですね…。ちょっとショックかも。
ところが、ここからが面白いところ。長く続いているご夫婦のデータでは、30年たっても最初の満足度の9割以上が保たれていたんです。研究者たちはこう考えました。「満足度が自然に下がろうとする力(恋の重力)」と「それに逆らって二人が関係を保とうとする努力」が、同時に働いていて、私たちが見ているのはその合計の結果なんじゃないか、と。
重力と、それに逆らう力…。なんだか宇宙みたい。
いい表現ですね。でも、この二つの力は直接は測れません。そこで研究者は、「二人がそれぞれ、今の満足度を見ながら、先のことも考えて努力の量を決める」という行動モデルをつくり、データの曲線にいちばん近くなるように調整しました。その結果、モデルの上では、もし努力をまったくしなかったら、満足度は約4年で半分になる計算になったんです。
4年で半分!?それは怖い…。
あくまで「努力ゼロの場合の、モデル上の試算」ですからね。実際のデータでは、長く続いている夫婦は9割以上を保っていたわけです。つまり、この差は「二人の努力で埋められている」というのが研究の解釈です。相談者さんが「ドキドキが減ったかも」と感じるのは、重力が働いている証拠かもしれないけれど、同時に、今も仲良しでいられているのは、お二人がちゃんと関係を保つ力を出している結果、とも言えるんですよ。
そう言われると、ちょっと誇らしいです。でも、どれくらい頑張ればいいんでしょう?頑張りすぎて疲れるのもイヤで。
そこもこの研究の見どころです。モデルでは「本人が一番ラクだと感じる努力の量」というものを想定していて、データに合うように計算すると、長く続く関係では、その「ラクな量」より約16%多い努力が、30年間ずっと続いていると推定されました。つまり「ものすごく無理をする」のではなく、「ちょっとだけ余分に」が続いているイメージですね。しかも、その量は年数とともにじわじわ増えていく傾向も示されています。
ちょっとだけ余分に、を続ける。それなら続けられそうです。
もうひとつ、ウェルビーイングの観点で大事な点があります。研究者は努力の「量」と、それを「どれくらい重荷に感じるか」を分けて考えています。同じくらい頑張っていても、重荷に感じる人とそうでない人がいる。これが、似た状況の夫婦でも幸福感に差が出る理由の一つかもしれない、と書かれています。「努力を楽しめる形にする」ことは、幸せの面でも意味がありそうですね。
うちは私のほうが気を回すタイプで、夫はのんびりなんです。それでも大丈夫なんでしょうか?
これも面白い結果があるんです。研究者が「二人の努力が関係に効く度合い」を別々にして計算し直したところ、片方が少し効きにくくても、もう片方が補えば、二人の合計がある水準に達していれば同じ曲線が再現できたんです。データが示しているのは「カップル全体の合計」であって、「二人がまったく同じでなければいけない」ということではない、と。だから、役割が違っていても、チームとして足りていれば大丈夫、という見方ができますよ。
チームとして、ですね。なんだか気持ちが軽くなりました。ドキドキが減ったのは、二人の努力でちゃんと支えられているサインだったんだ。
そのとおり。ただ、この研究は「ある時点の多くの夫婦のデータ」を「平均の曲線」にしたものを、数学モデルで説明したものです。個々の夫婦を追いかけたわけではないし、4年や16%という数字も、モデルの前提のもとでの推定値。それでも「長続きする関係は、放っておいて安定するものではなく、小さな努力で支えられ続けているもの」という考え方は、お二人の今の形をやさしく肯定してくれると思いますよ。
■ 今日のまとめ
- 結婚への満足度は、特に最初の10年ほどで下がりやすく、その後ゆるやかになるパターンが、33か国・約7,000組のデータで見られた。
- モデル上の試算では、何の努力もしなければ満足度は約4年で半分になるが、実際に長く続く夫婦は30年後も9割以上を保っていた。その差を埋めているのが、「ラクな量」より約16%多い、継続的な努力だと推定された。
- 二人がまったく同じである必要はなく、モデル上はカップル全体の合計が足りていれば同じ軌道が再現できた。努力の「量」と「重荷感」は別物なので、無理なく続けられる形を見つけることが幸せにつながる。
■ 出典・注意事項
- Herrera de la Cruz, J., & Rey, J.-M. (2026). The Gravity of Love: Intrinsic Decay and Counteracting Effort in Romantic Relationships. Research Square プレプリント. https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-11046337/v1(使用データは Sorokowski et al., 2017, Frontiers in Psychology, 8:1199)
- この研究はプレプリント(査読前)です。使われたデータは、ある時点での多数の夫婦を結婚年数ごとに並べたもの(横断データ)で、同じ夫婦を長期間追跡したものではありません。「4年で半分」「16%多い努力」などの数値は、数学モデルの前提に基づく推定値であり、直接観測された事実ではありません。また、満足度の変化と努力の関係は相関・モデル上の説明であり、因果関係が証明されたわけではありません。
- この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。
研究自体の紹介はこちら😊
愛の重力理論:幸せな夫婦関係は「努力ゼロなら4年で半減」
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-12-1791766200/