はぴテク相談室:「自分のことが好き」はどこから育つ?
はぴテクさん、こんにちは。小4の息子のことでちょっと相談です。明るい子なんですが、最近「ぼくなんて意見言ってもどうせ…」みたいに言うことがあって。深刻ではないんですけど、もっと自分のことを好きになってほしいなあって思うんです。
こんにちは!「もっと自分を好きになってほしい」、素敵な願いですね。実はちょうど、小学4年生のクラスで「自分のことが好き」という気持ち(自己受容)がどう育つかを調べた日本の論文があるんです。その話をしながら一緒に考えてみましょうか。
ぜひ!どんな研究なんですか?
小学4年生の1クラス25人を対象に、6月から12月まで全17回「クラス会議」という活動をした研究です。クラス会議というのは、みんなで輪になって、楽しかったことや「ありがとう」を伝え合ってから、クラスの困りごとやお楽しみ会の内容などを話し合って決める活動。そして最後に先生が「あなたのおかげで助かったよ」「協力してくれてありがとう」といった、貢献や努力の過程に注目した声かけをするんです。論文ではこれを「勇気づけフィードバック」と呼んでいます。
へえ、ほめるのとは違うんですか?
論文で紹介されている先行研究によると、「ほめ」は人との競争や周りの評価を気にさせて失敗を恐れる心配がある一方、「勇気づけ」は自分の成長への意欲を高めやすいとされています。「えらいね」より「あなたが意見をまとめてくれたから、みんなが納得できたね」のように、具体的な貢献や過程に目を向けるイメージですね。
なるほど。それで、子どもたちはどう変わったんですか?
アンケート(共同体感覚という尺度)を6月と12月で比べたところ、「自分のことが好き」という自己受容の平均が5点満点で3.75から4.17に上がり、統計的にも意味のある変化でした。しかも、「役に立てている」という貢献感、「仲間を信頼できる・居場所がある」という所属感・信頼感も一緒に上がっていたんです。
全部上がったんですね!でも、どうして「自分が好き」につながるんでしょう?
そこがこの論文の面白いところで、子どもたちへのインタビューからプロセスを描いています。最初は「反対されるかも」「初めてで不安」という気持ちから始まるんです。息子さんの「どうせ…」に少し似ていますね。それが、ありがとうを伝え合ったり、安心して話せるルールを決めたりするうちに「失敗しても笑われない」という安心感が生まれ、発言が一周する仕組みの中で「前より伝えられるようになった」という自信がついていく、と。
安心感が先なんですね。
そうなんです。そして安心して話せるようになると、「みんなで決めるのが気持ちいい」「役に立ちたい」という貢献したい気持ちが高まり、そこで先生から「○○さんのおかげでクラスがよくなったね」と声をかけられて「嬉しかった」「成長した」と感じる。論文では、この〈貢献する気持ちの高まり〉→〈承認による喜びと成長の実感〉という流れが、自己受容に影響した可能性があると考察しています。
先生の言葉って、やっぱり大きいんですね。
もうひとつ大事な発見があって、先生だけじゃなく、仲間からの言葉も効いていたんです。「意見が言えなくて困っていたら、みんながやさしく言ってくれた」「班で考えた意見を『いいね』と言ってもらえて嬉しかった」という声から、信頼できる仲間からの肯定的な言葉かけも自己受容に影響している可能性が示されました。
じゃあ、家で私にできることってありますか?
正直に言うと、この論文は学校のクラスでの研究なので、家庭でやったらどうなるかまでは調べていません。ただ、論文が描いた材料――安心できる場、具体的な貢献に目を向けた声かけ、そして続けること――はヒントになると思います。たとえば息子さんが何か手伝ってくれたとき、「えらいね」ではなく「あなたが運んでくれたから早く終わったよ、ありがとう」と、どう役に立ったかを言葉にしてみる、とか。
「あなたのおかげで」って、たしかに言われたら嬉しいかも。
ですよね。あと、論文では先輩研究を引いて「自己受容は他の項目より遅れて高まる」「週1回以上を2か月くらい続けてようやく効果が見えてくる」とも述べています。この研究も半年続けた結果なので、すぐに変化がなくても焦らないでいいと思います。「自分が好き」は、役に立てた実感と、それを認めてもらう経験が積み重なって、ゆっくり育つものみたいですよ。
ゆっくりでいいんですね。なんだか私もほっとしました。今日からちょっと言葉を変えてみます!
それ自体が、息子さんにとっての「安心できる場」づくりの一歩ですね。応援しています!
■ 今日のまとめ
- 小4のクラスで半年間クラス会議を続けた結果、「自分のことが好き」という自己受容の平均点が上がり、貢献感・所属感・信頼感も一緒に高まっていた。
- インタビューからは、安心感→自信→貢献したい気持ち→先生や仲間からの「あなたのおかげで」という承認、という流れが自己受容に影響した可能性が示された。
- ほめるより、具体的な貢献や過程に目を向けた「勇気づけ」の言葉を、焦らず続けることが大切(自己受容は遅れて育つとされる)。
■ 出典・注意事項
- 高橋弘樹・赤坂真二(2026)「クラス会議が児童の共同体感覚の自己受容に及ぼす影響」『日本学級経営学会誌』第8巻, pp.37-50.
- 本研究は1学級25名を対象にした介入前後の比較で、比較対照となるクラスは設けられていません。アンケートの変化はクラス会議や勇気づけフィードバックとの関連を示すものであり、それだけが原因と断定することはできません。また、インタビュー分析は「影響した可能性」を示すものです。
- 論文は学校のクラスでの研究であり、家庭での効果は検証されていません。論文中でもフィードバックの頻度や内容の細かな分析は今後の課題とされています。
- この対話はフィクションです(内容を分かりやすく伝えるための創作)。
研究自体の紹介はこちら😊
「あなたのおかげで」の一言が、子どもの「自分が好き」を育てる
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-15-1791997860/