職場の孤独、実は2種類ある。そして片方は仕事の成果を下げない
〜信頼出来る人がいない孤独と、職場の輪に入れない孤独〜
職場の孤独感と仕事のパフォーマンスについての、トルコの最新研究
経理・財務職756人のデータから調査されました。
「孤独」とひとくちに言っても、実は2種類あって、
①感情的孤独:心を許せる、深い信頼関係がない寂しさ
②社会的孤独:広いつながりや輪に入れていない寂しさ
この2つが、仕事のパフォーマンスにどう影響するかを調査。
結果としては、
①感情的孤独(信頼できる人がいない)
は、パフォーマンスをしっかり下げる。
しかもその理由は、幸福度が下がり、仕事を自分なりに工夫する意欲(ジョブ・クラフティング)も失われるから。
②社会的孤独(輪に入れていない)
は、むしろパフォーマンスと正の関係。
②の理由としては、
経理・財務のような集中力勝負の仕事では、
人付き合いが少ない分、邪魔が入らず没頭できるから、では。とのこと。
ただし研究者も「社会的孤独が良いという話ではなく、職種によります」と念押ししています。
という、ちょっと意外な結果。
職場の幸せで本当に大事なのは、つながりの「数」より「質」。
飲み会やイベントをたくさんやるより、
「困った時に頼れる人が一人いる」方がずっと効く。
- 会社視点で言えば、交流施策より、心理的に安心できる関係づくりが大事。
- 個人視点で言えば、輪に入れていなくても焦らなくていい。深い関係が一人でもあれば大丈夫。
という感じ😊
まぁ職場のみんなとつながっているのも、良いものですけどね😊
Not all workplace loneliness is harmful: the mediating roles of wellbeing and job crafting in the relationship with employee performance
すべての職場の孤独が有害なわけではない:従業員パフォーマンスとの関係におけるウェルビーイングとジョブ・クラフティングの媒介的役割
Orhan Balıkçı(キリス7アラルク大学、トルコ)ほか
Frontiers in Organizational Psychology, 2026/10/19
https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048
職場の「孤独」はすべて悪なのか?パフォーマンスを左右する2つの孤独 成果を下げる「感情的孤独」 (Emotional Loneliness) 集中を生む「社会的孤独」 (Social Loneliness) 最新研究:孤独には「感情的孤独」と「社会的孤独」が有り、成果やメンタルへの影響が異なる。 信頼できる味方の欠如が、 仕事の成果を大きく下げる 本音を話せる同僚がいないと、心理的安全性が失われパフォーマンスが低下します。 幸福感と「仕事の工夫 (ジョブ・クラフティング)」を奪う 心理的エネルギーが減少し、自発的に業務を改善する意欲が失われます。 孤独の種類を見極め、 適切な対処を。 孤独の種類を見極め、適切な対処を。 まずは一呼吸置いて孤独感を感じる信頼関係の欠如マイナスだけ、適度な距離感は集中力を高めるプラスの側面も。 集団との適度な距離は、 業務への集中力を高める 社交の機会が少ないことで割り込みや雑談が減り、個人作業の効率が上がります。 集中力が分析力が求められる 職種で特に効果的 経理や科学など、1人で深く思考を要するタスクにおいて肯定的に作用します。 Focus P5 Carrots Notebook 「職場の孤独」の常識を覆す なぜ特定の「孤独」は、パフォーマンスと集中力を高めるのか? つながり過多な時代の、孤独というパラドックス 現代の職場は、デジタルツールでかつてないほど接続されています。 しかし、多くのビジネスパーソンが 「心理的距離」や「孤立感」を抱え ています。 ▲世間の思い込み(Myth): ・孤独は常に悪である ・孤独な従業員はモチベーションが低く、パフォーマンスも落ちる 最新の組織心理学(756名のプロフェッショナルを対象とした 調査)は、この常識が「半分だけ正確で、半分は間違い」である ことを証明しました。 孤独には「2つの顔」がある 感情的孤独(Emotional Loneliness) 「深く、信頼できる関係」の欠如。 心理的安全性の土台となる、 太く温かい絆が不足している状態。 社会的孤独(Social Loniness) 「広範なネットワークへの統合」の欠如。 職場の広いコミュニティへの所属感や、 浅く広い繋がりが不足している状態。 孤独は単一の感情ではありません。「誰にも本音を話さない」ことと、「大勢の輪に入っていない」ことは、全く異なる現象なのです。 2つの孤独:診断マトリクス 比較項目 感情的孤独 社会的孤独 定義 信頼できる相談相手や、 職場の広いグループや 精神的な支えがない コミュニティへの所属感がない 心の声 「プレッシャーの中で、自分は 「雑談の輪や、社内の広いネット 一人で見捨てられている」 ワークに自分は入っていない」 心のバッテリー 激しく消耗する 状況によって変わる (不安とストレス) (必ずしも消耗しない) パフォーマンス 常に低下する 特定の仕事では向上する (集中力の向上) Gemnas Notebook 感情的孤独の破壊力:深い絆の欠如 心理的エネルギーの枯渇: 信頼できる同僚がいない環境では、ストレスや不確実性に対する防波堤がありません。 防衛本能の作動: 心理的距離が低いため、従業員は新しい挑戦や周囲への支援要請に対して消極的になります。 結果: 帰属欲求(Need to Belong)という人間の根源的なニーズが喚かされ、持続的なパフォーマンスの低下を招きます。 Mental Battery 結論:感情的孤独は、いかなる職場環境においても有害である。 社会的孤独の意外な効能:ノイズの遮断と集中 財務・経理などの「高度な集中」と「分析的思考」を要するタスク主導型の職務において、社会的孤独はパフォーマンスの向上と関連していることがデータで実証されました。 Step 1 浅い繋がりの欠如:雑談や不必要に広いネットワークからら距離を置く。 Step 2 ノイズの遮断:対人関係の摩擦や、業務の妨げになる割り込み(Interruption)が減少する。 Step 3 ディープ・ワーク:タスクへの没入度が高まり、個人の生産性と集中力が最大化される。 ※これは独独を推奨するものではなく、仕事の性質によっては「良好的な社会距離」がプラスに働くという事実です。 Gemnas Notebooks 孤独と成果を繋ぐ「2つの見えない歯車」 ウェルビーイング(Wellbeing) Cognitive Battery 心理的な健康、活力、ポジティブな感情。 複雑な仕事をやり抜くための 「心のバッテリー」として機能します。 ジョブ・クラフティング(Job Crafting) 仕事を自分らしく、やりがいのあるものに 「自ら再設計」する主体的な行動。 (例:タスクの進め方を工夫する、周りの人と意義を共有する、仕事の意義を捉え直す) 孤独は直接パフォーマンスを下げるのではありません。 この「バッテリー」と「歯車」を組わせることで成果に影響を与えるのです。 負の連鎖:感情的孤独のメカニズム(完全媒介) 感情的孤独(深い絆がない) 心のバッテリーが著しく枯渇し、自発性(ショブ・クラフティング)が完全に停止する。仕事への工夫を行う気力を失う。 パフォーマンスの低下 完全なる因果関係: 感情的孤独がパフォーマンスを下げる理由は、「心のバッテリーを奪い、主体性を喪失させてしまうから」。 直接的な低下要因は存在しません。 集中力のエンジン:社会的孤独のメカニズム(部分媒介) 人間関係のノイズが減り、直接的にタスクへの集中力が高まる 社会的孤独 (広い繋がりから距離を置く) DIRECT PATH 煩わしい付き合いを抑え、心のバッテリーを保つ INDIRECT PATH 1 一人の誌量空間が広がり、仕事の進め方を自分専用に 最適化しやすくなる INDIRECT PATH 2 ハイ・ パフォーマンス 一定の社会的距離は、自律性と自己調整の余白を生み出し、 タスク主導型の仕事においてパフォーマンスを押し上げる原動力となります。 孤独とパフォーマンスの全体像(マスターモデル) シンテティック スライドしにては、従業の前に孤独とパフォーマンスを分解することできます。 INPUTS MEDIATORS OUTPUT (激しいマイナス) (低下) 感情的孤独 ――→ ウェルビーイング ――→ パフォーマンス & (向上) (プラスの影響) ジョブ・クラフティング 社会的孤独 ――→ ――→ (直接的なプラス) ――――――――――――――――→ 組織は「孤独=悪」という単純な見方を捨て、従業員が直面している孤独が「感情的な欠乏」なのか「社会的な距離」なのかを見極める必要があります。 組織への提言:表面的な「仲良し」から「心理的安全性」へ 時代遅れのアプローチ(Old Approach) 「とにかく交流させる」 飲み会、強制的な社内イベント、過度なオープンスペース。 問題点: これらは「社会的孤独」を埋めるだけで、「感情的な孤独」の解決にはならず、かえって内向的な従業員のバッテリーを奪います。 これからのアプローチ(New Approach) 「心理的安全性の構築」 1on1
本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:「職場でちょっとぼっち」は悪いこと?
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-27-1793042281/
【研究背景】
■ この研究の背景:職場の孤独は「ひとまとめ」でよいのか
この論文(Balıkçı et al., 2026)は、職場の孤独感を「感情的孤独」と「社会的孤独」に分けて、それぞれが従業員のパフォーマンスとどう関係するかを調べたものです。その前提となる既存研究を、論文の記述に沿って順に整理します。
■ 1. 職場の孤独感とは何か
▼ つながっているのに孤独、という矛盾
▼ 定義
▼ これまでに示されてきた関連
■ 2. 既存研究の第一の限界:孤独を「一様に悪いもの」として扱ってきた
▼ 古典的な孤独研究における二つの次元
▼ 組織研究ではほとんど分けて検討されてこなかった
▼ 集中が求められる仕事での示唆
■ 3. 二つの理論的枠組み
▼ 所属欲求理論(Need to Belong Theory)
▼ 資源保存理論(COR理論)
■ 4. 既存研究の第二の限界:「どうやって」影響するかのメカニズムが未解明
▼ ウェルビーイング
▼ ジョブ・クラフティング
■ 5. 従業員パフォーマンスの位置づけ
■ 6. なぜ会計・財務職を対象にしたか
■ 7. 背景のまとめ
【研究内容】
■ この研究が扱う問い:職場の孤独は本当に「すべて悪い」のか
▼ 背景
1つ目は、孤独が「一様にネガティブで、中身が一種類の経験」として扱われがちなこと(Mccarthy et al., 2025)。
2つ目は、孤独がどのような心理的・行動的プロセスを経てパフォーマンスに結びつくのか、その「仕組み」があまり検討されていないこと(Ibrahim & Farha, 2025)。
▼ 2種類の孤独
古典的な孤独研究(Weiss, 1973; Gierveld & van Tilburg, 2006)では、孤独を2つに分けます。
この区別は理論的には明確ですが、職場研究で両者が異なる結果をもたらすかはほとんど検討されてこなかった、と著者らは述べています(Wright & Silard, 2021; Wright, 2005)。
▼ 研究の問い
■ 理論的な枠組み
▼ 2つの理論
▼ 2つの媒介変数(仕組みの候補)
▼ 仮説
図1 研究の仮説をまとめた概念図です。左側の情緒的孤独・社会的孤独から、中央のウェルビーイングとジョブ・クラフティング(媒介変数)を経て、右側の従業員パフォーマンスへ矢印が伸びています。矢印は仮説として想定した直接・間接の関係を示し、この時点では結果ではなく検証前の枠組みです。
出典:論文のFigure 1。Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048
■ 方法
▼ 対象と手続き
▼ 会計・財務職を選んだ理由
▼ 測定尺度(いずれも5件法、1=全くそう思わない〜5=強くそう思う)
▼ 分析
■ 結果
▼ 記述統計と相関
表1 2種類の孤独と各変数の平均・相関
情緒的孤独は他の変数と負の相関、社会的孤独は正の相関を示しており、同じ「孤独」でも方向が逆になっています。
注:N=756。各尺度は5件法(1〜5)。相関はいずれもp<0.01。αはクロンバックのα(信頼性係数)。
Balıkçıら(2026)のTable 2の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4. https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048
▼ モデル適合
▼ 媒介分析1:情緒的孤独 → ウェルビーイング → パフォーマンス
▼ 媒介分析2:社会的孤独 → ウェルビーイング → パフォーマンス
▼ 媒介分析3:情緒的孤独 → ジョブ・クラフティング → パフォーマンス
▼ 媒介分析4:社会的孤独 → ジョブ・クラフティング → パフォーマンス
▼ まとめると
表2 4つの媒介分析の結果
情緒的孤独の負の効果は媒介変数を入れると消え(完全媒介)、社会的孤独の正の効果は媒介変数を入れても残りました(部分媒介)。
注:PROCESS Model 4、ブートストラップ5,000回。p値の記載がない係数はすべてp<0.001。CIが0を含まなければ媒介効果ありと判断。
Balıkçıら(2026)のTable 4〜7(本文の結果の節)の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4. https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048
図2 分析結果を反映した最終モデルです。図1と同じ構成で、支持された経路だけが矢印で示されています。情緒的孤独は媒介変数を通る経路のみ残り(完全媒介)、社会的孤独はパフォーマンスへの直接の矢印と媒介変数を通る矢印の両方が残っています(部分媒介)。矢印の符号や有無を図1と比べて読むと違いが分かります。
出典:論文のFigure 2。Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048
■ 考察
▼ 情緒的孤独について
▼ 社会的孤独について
▼ 媒介メカニズムについて
■ 理論的・実践的含意
▼ 理論面
▼ 実践面
■ 限界と今後の課題
■ ひとことで
職場の孤独を一括りにせず「情緒的孤独」と「社会的孤独」に分けて調べたところ、会計・財務職756名のデータでは、情緒的孤独はウェルビーイングとジョブ・クラフティングの低下を介してパフォーマンスの低さと関連し、社会的孤独はむしろパフォーマンスの高さと関連していました。著者らはこれを「すべての孤独が有害とは限らない」という示唆として提示しつつ、横断データであること、職種の特殊性、交流量への満足度を測っていないことから、慎重な解釈を求めています。
動画解説はこちら😊
https://youtu.be/SN1LH_V8M1Y