2026.10.27

職場の孤独、実は2種類ある。そして片方は仕事の成果を下げない

職場の孤独、実は2種類ある。そして片方は仕事の成果を下げない
〜信頼出来る人がいない孤独と、職場の輪に入れない孤独〜

職場の孤独感と仕事のパフォーマンスについての、トルコの最新研究

経理・財務職756人のデータから調査されました。


「孤独」とひとくちに言っても、実は2種類あって、
①感情的孤独:心を許せる、深い信頼関係がない寂しさ
②社会的孤独:広いつながりや輪に入れていない寂しさ

この2つが、仕事のパフォーマンスにどう影響するかを調査。


結果としては、
①感情的孤独(信頼できる人がいない)
は、パフォーマンスをしっかり下げる。
しかもその理由は、幸福度が下がり、仕事を自分なりに工夫する意欲(ジョブ・クラフティング)も失われるから。
②社会的孤独(輪に入れていない)

は、むしろパフォーマンスと正の関係。


②の理由としては、
経理・財務のような集中力勝負の仕事では、
人付き合いが少ない分、邪魔が入らず没頭できるから、では。とのこと。

ただし研究者も「社会的孤独が良いという話ではなく、職種によります」と念押ししています。


という、ちょっと意外な結果。
職場の幸せで本当に大事なのは、つながりの「数」より「質」。
飲み会やイベントをたくさんやるより、
「困った時に頼れる人が一人いる」方がずっと効く。

  • 会社視点で言えば、交流施策より、心理的に安心できる関係づくりが大事。
  • 個人視点で言えば、輪に入れていなくても焦らなくていい。深い関係が一人でもあれば大丈夫。
    という感じ😊
    まぁ職場のみんなとつながっているのも、良いものですけどね😊

Not all workplace loneliness is harmful: the mediating roles of wellbeing and job crafting in the relationship with employee performance
すべての職場の孤独が有害なわけではない:従業員パフォーマンスとの関係におけるウェルビーイングとジョブ・クラフティングの媒介的役割
Orhan Balıkçı(キリス7アラルク大学、トルコ)ほか
Frontiers in Organizational Psychology, 2026/10/19
https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048

職場の「孤独」はすべて悪なのか?パフォーマンスを左右する2つの孤独 成果を下げる「感情的孤独」 (Emotional Loneliness) 集中を生む「社会的孤独」 (Social Loneliness) 最新研究:孤独には「感情的孤独」と「社会的孤独」が有り、成果やメンタルへの影響が異なる。 信頼できる味方の欠如が、 仕事の成果を大きく下げる 本音を話せる同僚がいないと、心理的安全性が失われパフォーマンスが低下します。 幸福感と「仕事の工夫 (ジョブ・クラフティング)」を奪う 心理的エネルギーが減少し、自発的に業務を改善する意欲が失われます。 孤独の種類を見極め、 適切な対処を。 孤独の種類を見極め、適切な対処を。 まずは一呼吸置いて孤独感を感じる信頼関係の欠如マイナスだけ、適度な距離感は集中力を高めるプラスの側面も。 集団との適度な距離は、 業務への集中力を高める 社交の機会が少ないことで割り込みや雑談が減り、個人作業の効率が上がります。 集中力が分析力が求められる 職種で特に効果的 経理や科学など、1人で深く思考を要するタスクにおいて肯定的に作用します。 Focus P5 Carrots Notebook 「職場の孤独」の常識を覆す なぜ特定の「孤独」は、パフォーマンスと集中力を高めるのか? つながり過多な時代の、孤独というパラドックス 現代の職場は、デジタルツールでかつてないほど接続されています。 しかし、多くのビジネスパーソンが 「心理的距離」や「孤立感」を抱え ています。 ▲世間の思い込み(Myth): ・孤独は常に悪である ・孤独な従業員はモチベーションが低く、パフォーマンスも落ちる 最新の組織心理学(756名のプロフェッショナルを対象とした 調査)は、この常識が「半分だけ正確で、半分は間違い」である ことを証明しました。 孤独には「2つの顔」がある 感情的孤独(Emotional Loneliness) 「深く、信頼できる関係」の欠如。 心理的安全性の土台となる、 太く温かい絆が不足している状態。 社会的孤独(Social Loniness) 「広範なネットワークへの統合」の欠如。 職場の広いコミュニティへの所属感や、 浅く広い繋がりが不足している状態。 孤独は単一の感情ではありません。「誰にも本音を話さない」ことと、「大勢の輪に入っていない」ことは、全く異なる現象なのです。 2つの孤独:診断マトリクス 比較項目 感情的孤独 社会的孤独 定義 信頼できる相談相手や、 職場の広いグループや 精神的な支えがない コミュニティへの所属感がない 心の声 「プレッシャーの中で、自分は 「雑談の輪や、社内の広いネット 一人で見捨てられている」 ワークに自分は入っていない」 心のバッテリー 激しく消耗する 状況によって変わる (不安とストレス) (必ずしも消耗しない) パフォーマンス 常に低下する 特定の仕事では向上する (集中力の向上) Gemnas Notebook 感情的孤独の破壊力:深い絆の欠如 心理的エネルギーの枯渇: 信頼できる同僚がいない環境では、ストレスや不確実性に対する防波堤がありません。 防衛本能の作動: 心理的距離が低いため、従業員は新しい挑戦や周囲への支援要請に対して消極的になります。 結果: 帰属欲求(Need to Belong)という人間の根源的なニーズが喚かされ、持続的なパフォーマンスの低下を招きます。 Mental Battery 結論:感情的孤独は、いかなる職場環境においても有害である。 社会的孤独の意外な効能:ノイズの遮断と集中 財務・経理などの「高度な集中」と「分析的思考」を要するタスク主導型の職務において、社会的孤独はパフォーマンスの向上と関連していることがデータで実証されました。 Step 1 浅い繋がりの欠如:雑談や不必要に広いネットワークからら距離を置く。 Step 2 ノイズの遮断:対人関係の摩擦や、業務の妨げになる割り込み(Interruption)が減少する。 Step 3 ディープ・ワーク:タスクへの没入度が高まり、個人の生産性と集中力が最大化される。 ※これは独独を推奨するものではなく、仕事の性質によっては「良好的な社会距離」がプラスに働くという事実です。 Gemnas Notebooks 孤独と成果を繋ぐ「2つの見えない歯車」 ウェルビーイング(Wellbeing) Cognitive Battery 心理的な健康、活力、ポジティブな感情。 複雑な仕事をやり抜くための 「心のバッテリー」として機能します。 ジョブ・クラフティング(Job Crafting) 仕事を自分らしく、やりがいのあるものに 「自ら再設計」する主体的な行動。 (例:タスクの進め方を工夫する、周りの人と意義を共有する、仕事の意義を捉え直す) 孤独は直接パフォーマンスを下げるのではありません。 この「バッテリー」と「歯車」を組わせることで成果に影響を与えるのです。 負の連鎖:感情的孤独のメカニズム(完全媒介) 感情的孤独(深い絆がない) 心のバッテリーが著しく枯渇し、自発性(ショブ・クラフティング)が完全に停止する。仕事への工夫を行う気力を失う。 パフォーマンスの低下 完全なる因果関係: 感情的孤独がパフォーマンスを下げる理由は、「心のバッテリーを奪い、主体性を喪失させてしまうから」。 直接的な低下要因は存在しません。 集中力のエンジン:社会的孤独のメカニズム(部分媒介) 人間関係のノイズが減り、直接的にタスクへの集中力が高まる 社会的孤独 (広い繋がりから距離を置く) DIRECT PATH 煩わしい付き合いを抑え、心のバッテリーを保つ INDIRECT PATH 1 一人の誌量空間が広がり、仕事の進め方を自分専用に 最適化しやすくなる INDIRECT PATH 2 ハイ・ パフォーマンス 一定の社会的距離は、自律性と自己調整の余白を生み出し、 タスク主導型の仕事においてパフォーマンスを押し上げる原動力となります。 孤独とパフォーマンスの全体像(マスターモデル) シンテティック スライドしにては、従業の前に孤独とパフォーマンスを分解することできます。 INPUTS MEDIATORS OUTPUT (激しいマイナス) (低下) 感情的孤独 ――→ ウェルビーイング ――→ パフォーマンス & (向上) (プラスの影響) ジョブ・クラフティング 社会的孤独 ――→ ――→ (直接的なプラス) ――――――――――――――――→ 組織は「孤独=悪」という単純な見方を捨て、従業員が直面している孤独が「感情的な欠乏」なのか「社会的な距離」なのかを見極める必要があります。 組織への提言:表面的な「仲良し」から「心理的安全性」へ 時代遅れのアプローチ(Old Approach) 「とにかく交流させる」 飲み会、強制的な社内イベント、過度なオープンスペース。 問題点: これらは「社会的孤独」を埋めるだけで、「感情的な孤独」の解決にはならず、かえって内向的な従業員のバッテリーを奪います。 これからのアプローチ(New Approach) 「心理的安全性の構築」 1on1
投稿者による補足(4件)
補足 1

本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:「職場でちょっとぼっち」は悪いこと?
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-27-1793042281/

補足 2

【研究背景】

■ この研究の背景:職場の孤独は「ひとまとめ」でよいのか

この論文(Balıkçı et al., 2026)は、職場の孤独感を「感情的孤独」と「社会的孤独」に分けて、それぞれが従業員のパフォーマンスとどう関係するかを調べたものです。その前提となる既存研究を、論文の記述に沿って順に整理します。


■ 1. 職場の孤独感とは何か

▼ つながっているのに孤独、という矛盾
  • 現代の組織では、デジタルなコミュニケーションツールや協働プラットフォームによって従業員同士はかつてないほどつながっています。
  • それにもかかわらず、多くの従業員が心理的な疎外感、関係の距離、社会的孤立を訴えています。この矛盾が、職場の孤独感を組織研究の重要なテーマにしてきました(Ozcelik & Barsade (2018);Sullivan & Bendell (2023))。
▼ 定義
  • 職場の孤独感(workplace loneliness)とは、「職場で望む社会的関係」と「実際に経験している関係」とのあいだにギャップがあると従業員が感じたときに生じる、苦痛を伴う感情と定義されています(Sullivan & Bendell (2023))。
  • 物理的な孤立とは異なり、主観的な心理状態です。周囲に何人いるかではなく、意味のあるつながり、信頼、所属感を感じているかどうかが問題になります(Wright (2005);Perlman & Peplau (1981))。
▼ これまでに示されてきた関連
  • 先行研究では、職場の孤独感は、エンゲージメント(仕事への熱意や没頭)の低下、情緒的消耗、低い職務満足、弱い組織コミットメント、パフォーマンス低下と関連することが示されてきました(Ozcelik & Barsade (2018);Lam & Lau (2012))。

■ 2. 既存研究の第一の限界:孤独を「一様に悪いもの」として扱ってきた

  • 学術的関心は高まっているものの、職場の孤独感は「一様にネガティブで、概念的に均質な経験」として見られがちだと指摘されています(Mccarthy et al. (2025))。
  • この前提のもとでは、孤独という概念の内部にある重要な区別が見えなくなる可能性があります。
▼ 古典的な孤独研究における二つの次元
  • 伝統的な孤独研究では、以下の二つが区別されてきました(Weiss (1973);Gierveld & van Tilburg (2006))。
  • 感情的孤独(emotional loneliness):親密で、意味があり、情緒的に支えてくれる関係が欠けている状態。職場では、信頼できる同僚がいない、心理的安全性(安心して発言・失敗できる感覚)が弱い、誠実で支持的な関係がない、といった形で現れます(Liu & Rook (2013))。
  • 社会的孤独(social loneliness):より広い集団への統合、グループへの所属、ネットワークへの埋め込みが不足している状態。職場では、集団構造の一員だと感じられない、社会的ネットワークに十分統合されていない、職業環境内でのつながりが限られている、といった形で現れます(Gierveld & van Tilburg (2006);Appadurai (2024))。
▼ 組織研究ではほとんど分けて検討されてこなかった
  • この二つは理論的には区別されているにもかかわらず、組織研究において両者が職場で異なる結果をもたらすかどうかは、ほとんど検討されてきませんでした(Wright & Silard (2021);Wright (2005))。
  • 感情的孤独は心理的ウェルビーイングやモチベーションに悪影響を及ぼしうる一方、特定の職場環境では社会的な関与が少ないことが、気が散ることを減らし、自律性を高め、課題への集中を改善する可能性があると論じられています(Wright et al. (2006))。
  • 感情的孤独は、親密なつながり、情緒的安心、意味ある関係といったニーズを脅かすため、より衰弱させる可能性があるとされます(Dhir et al. (2023))。社会的孤独は所属感を下げうるものの、必ずしも同程度の心理的ストレスを生むわけではなく、文脈、仕事の構造、個人の好みによって変わりうるとされています(Sullivan & Bendell (2023))。
▼ 集中が求められる仕事での示唆
  • 高度に集中を要する、認知的に要求が高い、あるいは個人単位で構造化された仕事では、社会的交流の減少が必ずしも有効性を下げるとは限らず、課題パフォーマンスの向上と同時に生じることもありうると指摘されています(Bryan et al. (2025))。
  • 注意と生産性に関する先行研究は、中断が少なく課題の連続性が高いことが、一定の条件下で集中と成果を支えうることを示唆しています(Benach et al. (2002);Amabile et al. (2002))。
  • 一方、感情的孤独はウェルビーイングを損ない、エネルギーを奪い、仕事の成果を減らす傾向があるとされています(Wright et al. (2006))。

■ 3. 二つの理論的枠組み

▼ 所属欲求理論(Need to Belong Theory)
  • 人間には、意味があり、安定し、満足できる対人関係を築きたいという根本的な欲求がある、という理論です(Baumeister & Leary (1995))。
  • この視点から見ると、感情的孤独は「関係の質」のより根本的な欠如を反映し、社会的孤独は主に「より広いネットワークへの統合の程度」に関わるものと整理されます(Weiss (1973);Wright (2005))。
  • 職場は、この所属欲求を満たす最も重要な社会的場の一つであり、組織内の関係の欠如は、モチベーション、心理的エネルギー、持続的な課題遂行を損ないうるとされています。
▼ 資源保存理論(COR理論)
  • 人は、感情的エネルギー、対人的サポート、社会的所属といった価値ある資源を獲得し維持しようとする、という理論です(Hobfoll (1989))。これらの資源が不足すると、ストレス、バーンアウト、パフォーマンス低下が起こりうるとされます。
  • この枠組みでは、感情的孤独は、ストレスや不確実性に対処するのを助ける高品質な関係資源の喪失を意味するため、より深刻な帰結をもたらしうると説明されます(Dhir et al. (2023))。
  • 対照的に、社会的孤独はネットワーク統合の弱さを示すものの、課題志向の仕事によっては、中断の少なさ、高い自律性、高い集中と結びつく可能性があるとされます(Amabile et al. (2002))。
  • 論文はまた、仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)も参照しています。これは、社会的サポート、心理的エネルギー、所属感、自己制御といった資源が、従業員のウェルビーイングとパフォーマンスの維持に重要な役割を果たすとする枠組みです(Bakker & Demerouti (2017);Basit & Nauman (2023))。

■ 4. 既存研究の第二の限界:「どうやって」影響するかのメカニズムが未解明

  • 既存研究は主に直接的な関連を強調しており、孤独が従業員の成果にどのように影響するのかという心理的・行動的プロセスについての知見は限られていると指摘されています(Ibrahim & Farha (2025))。
  • 論文は、特に関連する二つのメカニズムとして、ウェルビーイングとジョブ・クラフティングを取り上げています。
▼ ウェルビーイング
  • ウェルビーイングとは、従業員の肯定的な心理的機能、活力、全体的なメンタルヘルスを指します(Aryanti et al. (2020))。組織内では、肯定的な感情を感じ、ストレスを管理し、精神的な鋭さを保ち、仕事に意味を見出す能力と結びついています。
  • 先行研究は、ウェルビーイングと従業員パフォーマンスの強い関連を示しています。ウェルビーイングが高い従業員は概してより意欲的で、回復力があり、効率的である一方、低い従業員はバーンアウト、集中の問題、エネルギーの枯渇、パフォーマンス低下に直面しやすいとされます(Gomes (2026))。
  • 職場の孤独感がウェルビーイングを低下させることと関連するという先行研究もあります(Basit & Nauman (2023);Ozcelik & Barsade (2018))。
  • 感情的孤独は、情緒的サポート、安心感、仕事上の困難への対処機会を減らすことで心理的ウェルビーイングを損ないうるとされます(Artar & Erdil (2024);van den Bosch et al. (2019))。
  • 社会的に孤立していると感じる従業員は、社会的サポートが限られ、所属感が弱く、職場での可視性が低い可能性があり、これも心理的ウェルビーイングを損ないうるとされています(Wright & Silard (2021);Kim & Kim (2021))。
▼ ジョブ・クラフティング
  • ジョブ・クラフティング(job crafting)とは、従業員が自分の課題、職場の人間関係、仕事に対する認知的な捉え方を主体的に再編成し、仕事をより意味があり、やりがいがあり、自分の能力に合ったものにする行動を指します(Tims et al. (2013);van den Bosch et al. (2019))。
  • この考え方は、従業員を「自らの仕事経験を形づくる能動的な主体」と見なします(Wrzesniewski & Dutton (2001))。課題の境界を再定義する、新しい関係を築く、既存の関係を強化する、仕事に新しい意味を付与する、といった方法で職場経験を変えることができるとされます(Böhnlein (2021);Huyen & Barber (2022))。
  • そのため、ジョブ・クラフティングは従業員パフォーマンスを支える重要な行動メカニズムと位置づけられています(Wrzesniewski & Dutton (2001))。
  • 感情的孤独は、心理的エネルギーを減らし、自信を弱め、他者と関わる意欲を下げる可能性があり(Basit & Nauman (2023))、仕事を能動的に再編成できない従業員は仕事の要求に対して脆弱になり、パフォーマンスが低下しうるとされます(Bakker & Demerouti (2017);Kibaroglu & Tosun (2023))。
  • 社会的に排除されている、あるいは組織ネットワークに周辺的にしか関わっていない従業員は、チームの情報共有から外れる、新しい課題の機会を知らされない、関係的サポートを得られないなど、仕事を再設計する能力が制限される可能性があるとされています(Decker-Tonnesen et al. (2025);Scott & Thau (2013))。
  • 一方で、孤独を感じる従業員が、新しい仕事上の関係を築く、課題をより独立したものにする、仕事により大きな意味を見出すといった形で対処しようとする可能性も指摘されています(Chen et al. (2023))。ただし孤独が強まるほど、主体的な行動をとる可能性は低下しうるとされます。

■ 5. 従業員パフォーマンスの位置づけ

  • 従業員パフォーマンスとは、個人が期待される職務を効果的・効率的に、質を保って遂行する程度を指し、事業目標への貢献、期限内の責任遂行、仕事の質の維持などを含みます(Rubio-Andrés et al. (2022b))。
  • パフォーマンスは個人のスキル、経験、技術的能力によって説明されることが多いものの、近年の研究は、職場環境の社会的・心理的性質にも強く影響されることを示しています(Ozcelik & Barsade (2018))。
  • 感情的孤独に関しては、信頼できる同僚がいない、困難な状況で情緒的サポートを感じられないといった状態が、従業員をより脆弱で無防備に感じさせうるとされます(Lazuras et al. (2024);Tylova et al. (2013))。特にストレス、不確実性、強い仕事要求がある環境では、支持的な関係の欠如が心理的レジリエンス(回復力)を弱めうるとされています(Rees et al. (2015))。
  • 社会的孤独に関しては、社会的に孤立していると感じる従業員は、チーム内の非公式な情報の流れから恩恵を受けにくく、協働の機会へのアクセスが限られ、組織の社会的サポートから得るものが少ない可能性があるとされます(Dhir et al. (2023);Artar & Erdil (2024))。また、同僚からのフィードバックが減る、可視性が下がるといったリスクも指摘されています(Wright et al. (2006);Artar & Erdil (2024))。

■ 6. なぜ会計・財務職を対象にしたか

  • この研究は、会計・財務の専門職を対象にデータを収集しました。これらの職務は集中力、分析能力、個人課題への持続的な注意を頻繁に必要とするため、特定の種類の社会的距離が従来の見方とは異なる働きをするかどうかを検証するのに適しているとされています(Rubio-Andrés et al. (2022a);Giang et al. (2024))。

■ 7. 背景のまとめ

  • 職場の孤独感は、パフォーマンス低下などの望ましくない結果と関連することが、繰り返し示されてきました。
  • しかし、古典的な孤独研究で区別されてきた「感情的孤独」と「社会的孤独」が、職場で異なる結果をもたらすかどうかは、組織研究ではほとんど検討されてきませんでした。
  • また、孤独がパフォーマンスにどのような心理的・行動的経路を通じて結びつくのかについても、知見が限られていました。
  • この研究は、これら二つのギャップに対して、所属欲求理論と資源保存理論を枠組みとしつつ、ウェルビーイングとジョブ・クラフティングを媒介メカニズムとして検討する、という位置づけになっています。
補足 3

【研究内容】

■ この研究が扱う問い:職場の孤独は本当に「すべて悪い」のか

▼ 背景
  • 職場の孤独とは、「職場で望んでいる人間関係」と「実際に経験している人間関係」の間にギャップを感じたときに生じる、つらい感覚のことです(Sullivan & Bendell, 2023)。
  • 先行研究では、職場の孤独はエンゲージメントの低下、情緒的消耗、職務満足の低下、パフォーマンスの低下などと関連することが示されてきました(Ozcelik & Barsade, 2018; Lam & Lau, 2012)。
  • しかし著者らは、既存研究に2つの見落としがあると指摘します。
     1つ目は、孤独が「一様にネガティブで、中身が一種類の経験」として扱われがちなこと(Mccarthy et al., 2025)。
     2つ目は、孤独がどのような心理的・行動的プロセスを経てパフォーマンスに結びつくのか、その「仕組み」があまり検討されていないこと(Ibrahim & Farha, 2025)。
▼ 2種類の孤独

古典的な孤独研究(Weiss, 1973; Gierveld & van Tilburg, 2006)では、孤独を2つに分けます。

  • 情緒的孤独:親密で、意味のある、情緒的に支えてくれる関係が欠けている状態。職場では「信頼できる同僚がいない」「心理的に安全だと感じられない」といった形で現れます。
  • 社会的孤独:広い集団への所属や、社会的ネットワークへの組み込まれ方が不足している状態。職場では「仲間の輪に十分入れていない」「気軽に雑談できる相手が少ない」といった形です。
    この区別は理論的には明確ですが、職場研究で両者が異なる結果をもたらすかはほとんど検討されてこなかった、と著者らは述べています(Wright & Silard, 2021; Wright, 2005)。
▼ 研究の問い
  • RQ1:情緒的孤独と社会的孤独は、従業員のパフォーマンスと関連するか?
  • RQ2:ウェルビーイングとジョブ・クラフティングは、孤独とパフォーマンスの関係を媒介するか?
  • RQ3:ある種の職場の孤独は、予想外にポジティブなパフォーマンスと結びつくことがあるか?

■ 理論的な枠組み

▼ 2つの理論
  • 所属欲求理論(Baumeister & Leary, 1995):人には、意味があり安定した満足できる対人関係を築きたいという根本的な欲求がある、という考え方。この視点では、情緒的孤独は「関係の質」の深刻な欠如、社会的孤独は「ネットワークへの組み込まれ方」の問題として位置づけられます。
  • 資源保存理論(COR理論;Hobfoll, 1989):人は情緒的エネルギー、対人的支援、所属感といった「資源」を獲得・維持しようとする、という考え方。資源が欠けるとストレスやバーンアウト、パフォーマンス低下が起こりうるとされます。著者らは、情緒的孤独は質の高い関係資源の喪失にあたるため影響が大きい一方、社会的孤独は課題志向の仕事では「中断の少なさ」「自律性」「集中」と結びつく可能性もある、と論じています(Amabile et al., 2002)。
▼ 2つの媒介変数(仕組みの候補)
  • ウェルビーイング:従業員の心理的健康、活力、バランスの感覚。先行研究では、ウェルビーイングが高い人ほど意欲的で回復力があり、低い人はバーンアウトや集中力の問題を抱えやすいとされます。
  • ジョブ・クラフティング:従業員が自分の仕事をより意味があり、自分に合ったものにするために、課題・人間関係・仕事の捉え方を主体的に作り変える行動(Wrzesniewski & Dutton, 2001; Tims et al., 2013)。孤独を感じている人は、新しい関係を作る・助けを求める・課題を組み替えるといった主体的行動に消極的になる可能性がある、と著者らは考えました。
▼ 仮説
  • H1a:情緒的孤独はパフォーマンスと負の関連を持つ。
  • H1b:社会的孤独は、課題志向の職場環境ではパフォーマンスと正の関連を持つ。
  • H2a/H2b:ウェルビーイングが、情緒的孤独/社会的孤独とパフォーマンスの関係を媒介する。
  • H3a/H3b:ジョブ・クラフティングが、情緒的孤独/社会的孤独とパフォーマンスの関係を媒介する。

図1 研究の仮説をまとめた概念図です。左側の情緒的孤独・社会的孤独

図1 研究の仮説をまとめた概念図です。左側の情緒的孤独・社会的孤独から、中央のウェルビーイングとジョブ・クラフティング(媒介変数)を経て、右側の従業員パフォーマンスへ矢印が伸びています。矢印は仮説として想定した直接・間接の関係を示し、この時点では結果ではなく検証前の枠組みです。
出典:論文のFigure 1。Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048


■ 方法

▼ 対象と手続き
  • トルコのマルマラ地方の組織で、財務・会計部門に勤める従業員を対象に、電子アンケートを実施しました。
  • アクセスしやすさと時間の制約から、便宜的サンプリング(手の届く範囲で協力者を集める方法)を用いています。
  • 参加は任意で、匿名性と秘密保持が保証されました。不完全・無効な回答を除いた最終サンプルは756名です。
  • 内訳:男性51.9%、女性48.1%。年齢は25〜34歳が51.2%と最多。学歴は短大・学士が78.04%、大学院修了が18.12%。勤続は1〜5年が33.9%。
▼ 会計・財務職を選んだ理由
  • この職種は集中力、分析力、個人作業への持続的な注意が求められるため、「ある種の社会的距離が従来の想定と違う働きをするか」を検証するのに適している、と著者らは説明しています(Giang et al., 2024)。
▼ 測定尺度(いずれも5件法、1=全くそう思わない〜5=強くそう思う)
  • 職場の孤独:Wright (2005) の16項目尺度。情緒的孤独(9項目、例「仕事でプレッシャーを受けているとき、同僚に見捨てられたと感じることが多い」)と社会的孤独(7項目、例「職場に日々の問題について話せる人がいる」の逆転項目)の2次元。本研究での信頼性は情緒的孤独α=0.88、社会的孤独α=0.81。
  • ウェルビーイング:Tennant et al. (2007) の14項目尺度(WEMWBS)。
  • ジョブ・クラフティング:Slemp & Vella-Brodrick (2013) の19項目尺度(課題・認知・関係の3次元)。
  • 従業員パフォーマンス:Goodman & Svyantek (1999) の尺度から9項目。
▼ 分析
  • SPSSで記述統計と信頼性分析(クロンバックα)を実施。
  • 確認的因子分析(CFA)で測定モデルの妥当性を確認。
  • 媒介分析はHayes (2018) のPROCESSマクロ Model 4(単純媒介モデル)を使用。情緒的孤独と社会的孤独について別々のモデルを推定し、媒介変数もウェルビーイングとジョブ・クラフティングを別々に投入しています。
  • 間接効果の検定には5,000回のブートストラップ(データを繰り返し再抽出して推定の安定性を確かめる方法)を用い、95%信頼区間に0が含まれなければ媒介効果ありと判断しました。

■ 結果

▼ 記述統計と相関
  • 平均値:ジョブ・クラフティング3.89、ウェルビーイング3.86、パフォーマンス4.05と比較的高め。情緒的孤独は2.28と低め、社会的孤独は3.57と中程度。
  • 情緒的孤独は、ジョブ・クラフティング(r=−0.345)、ウェルビーイング(r=−0.417)、パフォーマンス(r=−0.198)と負の相関。
  • 社会的孤独は、ジョブ・クラフティング(r=0.137)、ウェルビーイング(r=0.130)、パフォーマンス(r=0.347)と正の相関。
  • ジョブ・クラフティングとウェルビーイングは強い正の相関(r=0.687)。ウェルビーイングとパフォーマンスも正の相関(r=0.524)。
  • すべてp<0.01。

表1 2種類の孤独と各変数の平均・相関

変数 平均 標準偏差 信頼性(α) 情緒的孤独との相関(r) 社会的孤独との相関(r)
情緒的孤独 2.28 0.76 0.88 — 0.117
社会的孤独 3.57 1.05 0.81 0.117 —
ジョブ・クラフティング 3.89 0.57 0.91 −0.345 0.137
ウェルビーイング 3.86 0.65 0.93 −0.417 0.130
従業員パフォーマンス 4.05 0.65 0.87 −0.198 0.347

情緒的孤独は他の変数と負の相関、社会的孤独は正の相関を示しており、同じ「孤独」でも方向が逆になっています。
注:N=756。各尺度は5件法(1〜5)。相関はいずれもp<0.01。αはクロンバックのα(信頼性係数)。
Balıkçıら(2026)のTable 2の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4. https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048

▼ モデル適合
  • χ2/df=2.567、CFI=0.907、TLI=0.988、IFI=0.997、NFI=0.962、RMSEA=0.050、SRMR=0.049で、モデルはデータによく適合していると報告されています。
▼ 媒介分析1:情緒的孤独 → ウェルビーイング → パフォーマンス
  • 情緒的孤独単独ではパフォーマンスに有意な負の係数(β=−0.3569, p<0.001)。R²=0.1739。
  • ウェルビーイングを投入すると、ウェルビーイングは正の係数(β=0.5277)を示し、情緒的孤独の直接パスは非有意に(β=0.0207, p=0.4733)。R²は0.2746に上昇。
  • 間接効果は−0.1883、95%CI[−0.2314, −0.1469]で0を含まない。
  • 著者らはこれを「完全媒介」と解釈し、H1a・H2aを支持。
▼ 媒介分析2:社会的孤独 → ウェルビーイング → パフォーマンス
  • 社会的孤独単独では正の係数(β=0.0817, p<0.001)。ただしR²=0.0170と説明力はごく小さい。
  • ウェルビーイングを投入すると、社会的孤独(β=0.1752)とウェルビーイング(β=0.4811)がともに有意な正の係数。R²は0.3529に上昇。
  • 直接パスが残ったため「部分媒介」。間接効果は0.0393、95%CI[0.0110, 0.0730]。
  • H1b・H2bを支持。
▼ 媒介分析3:情緒的孤独 → ジョブ・クラフティング → パフォーマンス
  • 情緒的孤独単独では負の係数(β=−0.2582, p<0.001)。R²=0.1191。
  • ジョブ・クラフティングを投入すると、ジョブ・クラフティングは正の係数(β=0.6047)、情緒的孤独の直接パスは非有意(β=−0.0115, p=0.6788)。R²は0.2912。
  • 間接効果は−0.1562、95%CI[−0.2043, −0.1134]。
  • 「完全媒介」と解釈され、H3aを支持。
▼ 媒介分析4:社会的孤独 → ジョブ・クラフティング → パフォーマンス
  • 社会的孤独単独では正の係数(β=0.0749, p<0.001)。R²=0.0187。
  • ジョブ・クラフティングを投入すると、社会的孤独(β=0.1720)とジョブ・クラフティング(β=0.5670)がともに有意な正の係数。R²は0.3669。
  • 直接パスが残り「部分媒介」。間接効果は0.0425、95%CI[0.0108, 0.0785]。
  • H3bを支持。
▼ まとめると
  • 情緒的孤独:パフォーマンスとの負の関連は、ウェルビーイングとジョブ・クラフティングを介した経路で説明され、直接パスは消えた(完全媒介)。
  • 社会的孤独:パフォーマンスとの正の関連は、直接パスも残りつつ、ウェルビーイングとジョブ・クラフティングを介した経路も有意だった(部分媒介)。

表2 4つの媒介分析の結果

経路(独立変数→媒介変数→パフォーマンス) 孤独単独の効果(β) 媒介投入後の直接効果(β) 間接効果 間接効果の95%CI 判定
情緒的孤独→ウェルビーイング −0.3569 0.0207(p=0.4733) −0.1883 [−0.2314, −0.1469] 完全媒介
社会的孤独→ウェルビーイング 0.0817 0.1752 0.0393 [0.0110, 0.0730] 部分媒介
情緒的孤独→ジョブ・クラフティング −0.2582 −0.0115(p=0.6788) −0.1562 [−0.2043, −0.1134] 完全媒介
社会的孤独→ジョブ・クラフティング 0.0749 0.1720 0.0425 [0.0108, 0.0785] 部分媒介

情緒的孤独の負の効果は媒介変数を入れると消え(完全媒介)、社会的孤独の正の効果は媒介変数を入れても残りました(部分媒介)。
注:PROCESS Model 4、ブートストラップ5,000回。p値の記載がない係数はすべてp<0.001。CIが0を含まなければ媒介効果ありと判断。
Balıkçıら(2026)のTable 4〜7(本文の結果の節)の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4. https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048

図2 分析結果を反映した最終モデルです。図1と同じ構成で、支持され

図2 分析結果を反映した最終モデルです。図1と同じ構成で、支持された経路だけが矢印で示されています。情緒的孤独は媒介変数を通る経路のみ残り(完全媒介)、社会的孤独はパフォーマンスへの直接の矢印と媒介変数を通る矢印の両方が残っています(部分媒介)。矢印の符号や有無を図1と比べて読むと違いが分かります。
出典:論文のFigure 2。Balıkçı et al. (2026). Frontiers in Organizational Psychology, 4.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.3389/forgp.2026.1876048


■ 考察

▼ 情緒的孤独について
  • 信頼でき、意味のある、支えとなる関係が職場に欠けている人は、心理的エネルギーや動機づけ、集中が低下しやすい、と著者らは解釈しています。
  • 「職場に物理的にいるだけでは不十分で、情緒的安全と所属感をもたらす質の高い関係が必要」という含意です。
  • 職場の孤独とパフォーマンス低下の関連を示した先行研究(Ozcelik & Barsade, 2018; Lam & Lau, 2012)と整合しつつ、本研究ではその負の関連が主に「情緒的孤独」に帰着する点を示した、と位置づけています。
▼ 社会的孤独について
  • 社会的孤独とパフォーマンスの正の関連は直感に反しますが、会計・財務のように持続的注意や分析的思考が重要な職種では、社会的交流が少ないことが「気が散る要因の減少」「中核業務への集中」と結びついている可能性がある、と著者らは述べています(Giang et al., 2024; Amabile et al., 2002)。
  • ただし著者ら自身が強く注意を促しています。「社会的孤独が本来的に有益だ」という意味ではなく、その帰結は職務設計、課題特性、組織文脈に依存しうる、ということです。
  • この結果は、職場の人間関係の弱さを一貫してネガティブに扱う多くの先行研究(Lam & Lau, 2012; Wright & Silard, 2021)とは対照的です。
▼ 媒介メカニズムについて
  • 情緒的孤独は、ウェルビーイングの低下と主体的なジョブ・クラフティングの減少という経路を通じてパフォーマンスと結びついていました。
  • 社会的孤独は、直接経路と間接経路の両方を持つ、より複雑な構造を示しました。
  • 著者らは、孤独の帰結を直接の関連だけで捉えるのではなく、背後にある心理的・行動的プロセスを検討することの重要性を強調しています。

■ 理論的・実践的含意

▼ 理論面
  • 職場の孤独を「一次元で、どの状況でも同じ結果をもたらす経験」として扱うのは不十分で、Weiss (1973) の情緒的/社会的の区別が組織文脈でも理論的・実証的に意味を持つ、と主張しています。
  • 所属欲求理論(Baumeister & Leary, 1995)の観点から、孤独は関係の「量」より「質」に深く結びつく、という点を補強するものだとしています。
  • JD-Rモデル(Bakker & Demerouti, 2017)やCOR理論の観点では、ウェルビーイングとジョブ・クラフティングが重要な心理的・行動的資源として位置づけられます。なお著者らは、孤独そのものが資源喪失プロセスだと主張するのではなく、孤独がウェルビーイングやジョブ・クラフティングの変化と関連し、それがパフォーマンスと関連する、という慎重な表現にとどめています。
▼ 実践面
  • 管理者は職場の孤独を「全員に同じように作用する均一な問題」とみなすべきではない。情緒的孤独の方がパフォーマンスとの負の関連が大きい。
  • 従業員エンゲージメント施策を、表面的な社交イベントやチーム活動だけに限定しない。メンタリング、心理的安全性のある風土、包摂的リーダーシップ、意味のあるフィードバックの仕組みが、情緒的孤独の緩和により有効でありうる。
  • 高い集中や個人作業が必要な業務では、社会的交流が限られた環境の方が生産的な従業員もいる。全員に常時の交流を強いる画一的な運用ではなく、課題構造や個人の働き方の好みを考慮した柔軟な管理が望ましい。
  • ウェルビーイング支援(従業員支援プログラム、ストレスマネジメント、メンタルヘルス政策)は、福祉だけでなく持続的なパフォーマンスの観点からも重要。
  • ジョブ・クラフティングを支える環境づくり(課題の再設計の余地、裁量、意思決定への参加、個人の主体性の奨励)が推奨される。

■ 限界と今後の課題

  • 横断データであるため、変数間の因果関係の解釈には慎重であるべきだと著者らは明記しています。縦断研究や実験的デザインが今後必要です。
  • サンプルが会計・財務職に限定され、便宜的サンプリングで集められています。特に「社会的孤独とパフォーマンスの正の関連」は、この職種の課題志向的・個人作業中心という性質に影響されている可能性があり、他の職種に一般化すべきではないとされています。対人調整やチームワークが中心の職種で同じパターンが出るかは未検証です。
  • 従業員が「現在の社会的交流の量に満足しているか」を測定していません。社会的交流が少ない状態は、ある人にとっては望まない孤立であり、別の人にとっては自分の好みに近い状態かもしれません(Baumeister & Leary, 1995; Wright, 2005)。今後は、望む交流量や社会的参加への満足度を測ることで、社会的孤独がいつポジティブ/ネガティブな結果と結びつくかをより細かく理解できる、と提案しています。

■ ひとことで

職場の孤独を一括りにせず「情緒的孤独」と「社会的孤独」に分けて調べたところ、会計・財務職756名のデータでは、情緒的孤独はウェルビーイングとジョブ・クラフティングの低下を介してパフォーマンスの低さと関連し、社会的孤独はむしろパフォーマンスの高さと関連していました。著者らはこれを「すべての孤独が有害とは限らない」という示唆として提示しつつ、横断データであること、職種の特殊性、交流量への満足度を測っていないことから、慎重な解釈を求めています。

補足 4

動画解説はこちら😊
https://youtu.be/SN1LH_V8M1Y

論文紹介 ありがとうなんとかなる 人間関係・恋愛職場・働く幸せ

📮 毎週土曜の朝、メールで届きます

その週にご紹介したウェルビーイング研究のダイジェストを無料でお届けします。

確認メールのリンクで登録完了。いつでも配信停止できます。 📧 サンプルを見る

← 検索にもどる