2026.10.29

ありがとうの気持ちは「支えられてる感」を通じて幸せにつながる

感謝と幸福度のメカニズムについての、アメリカの最新研究

2つの調査、合計14万8千人以上(57カ国)のデータから分析されました。


「感謝すると幸せになる」は研究的にはかなり確立された話なのですが、
じゃあ"なぜ"幸せになるのか?はよくわかっていませんでした。
今回の仮説は2つ。
①感謝すると、周りからの支えに気づきやすくなる(支えられてる感アップ)
②感謝すると、自分も人を支えたくなる(恩返し的な)

この2つが、感謝→幸せの橋渡しをしているのでは?という検証です。


結果としては、
①の「支えられてる感」ルートは、しっかり確認されました。
感謝が強い人ほど、支えられていると感じていて、
それが心身の健康や人生満足度の高さにつながっている。
②の「人を支える」ルートも、1年後のデータを使った縦断分析では確認。

感謝→支える→幸せ、という流れもある。


ただし面白いのが文化差で、
集団主義的な国(日本もこちら寄り)では、
「感謝→人を支える(②のルート)」のつながりが弱い。
支え合いがそもそも"当たり前"や"義務"として文化に組み込まれているので、
感謝の気持ちがあるかどうかに左右されにくい、という解釈です。
一方で、集団主義的な国では
「支え合い→身体の健康」のつながりはむしろ強い。
支え合い自体の効果は、ちゃんとある。
ちなみに「感謝→支えられてる感(①のルート)」のつながりは、

日本はアメリカ・イギリスと並んでかなり大きい国でした。


感謝のワークは日本では、あまり効かないという話もありますが、

感謝を通じて、色んな人やコトに支えられているんだなぁ、と実感できるようにすると、世界トップクラスに効くのかも😊


ありがとうは、人とのつながりを見える化するメガネなのかもしれません😍


Social support processes link gratitude and well-being across cultures and over time
社会的サポートのプロセスが、文化を越えて・時間を越えて、感謝とウェルビーイングをつなぐ
Carley Vornlocher(アリゾナ州立大学、アメリカ) & Alexandra S. Wormley(ミシガン大学、アメリカ)
Journal of Happiness Studies, 2026/10/20
https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z

感謝が幸せを引き寄せるしくみ:世界14,8万人規模の研究が解き明かす「つながり」と「健康」の科学 世界57ヶ国・148,000人以上のデータを分析した最新研究により、感謝の気持ちが身の健康を高めるプロセスが解明されました。 感謝は「周囲からのサポートを実感する」「他者をサポートする」という2つの行動を促し、それが幸福感や健康へとつながっていきます。 ① 助けや援いやりに気づきやすくなる(サポートの実感) 感謝の心 (Gratitude) 感謝のひとめを持つと、他者からの助けを小切面で認識して感じられます。 集団主義の国では (Life Satisfaction) ② 自分から他者を助ける行動が増える(サポートの提供) 感謝の気持ちが、周囲に受や配慮を示したり 手助けしたりして、その頻度を高めます。 ③ 結果として、心と体の健康・ 人生の満足度がアップする 支え合い福祉が生まれることで、 精神的・身体的なウェルビーイングが向上します。 Life Satisfaction 文化(集団主義)による「感謝に助け合い」の違い どんな文化でも人のの支え」は体の健康の強い味方 助け合いが身たり前の文化 (東アジア等)では、個人の 感謝の感じ方と「手助け行動」 のつながりが弱くなります。 特に集団主義の地域において、 社会的のサポートのわり取りは身体の健康に 大きなプラス効果を与えます。 集団主義の国では 「助け合い」は日常の 規範・義務 PR Connects Notebook 「ありがとう」が心と体を 健康にする本当の理由 世界57ヵ国・14万人以上のデータが解き明かす、 感謝と幸福のメカニズム Genius Notebook 感謝がもたらす効果は、 すでに科学的に証明されています。 身体的健康の向上 メンタルヘルスの改善 生活満足度の上昇 感謝が幸福をもたらすことは、 誰もが知っている。 でも「なぜ」? 感謝 幸福 感謝という単なる「感情」が、 どうやって具体的な「健康」に変わるのか。 そのメカニズムには長く謎に包まれていました。 世界最大級の心理学データが導き出した答え 148,000+ 参加者数 57 対象国 2つの大規模調査 COVID-19下での多文化横断調査& 縦断的調査「Global Flourishing Study」 世界最大級理学データのフェアシリーズで追続40-D% 欧米圏(WEIRD)に偏りがらない心理学研究の枠を超え、世界中の人々の長期間のデータから「普遍的な真実」を抽出しました。 感謝と幸福をつなぐ見えない架け橋:「ソーシャル・サポート」 受け取るサポート 困ったときに周囲から助けを得られるという「感覚」や、実際に受け取る支援。 与えるサポート 他者への愛情や思いやりを示し、 積極的に支援を「与える」行動。 感謝の心は、この「受け取る」「与える」という2つのサポートプロセスを活性化させます。 Genesis Notebook 架け橋その1:サポートへの「感度」が上がる 心理学における「認知的枠組みの仮説(Schematic Hypothesis)」。 感謝の傾向が強い人は、他者の行動をより「価値が高く、利他的なもの」として解釈します。 感謝は、日常に隠れている周囲からのサポートに気づくための「特別なレンズ」として機能し、安心感(=受け取るサポート)を増幅させます。 架け橋その2:他者へ「与える」原動力になる 感謝は単に自分が満たされるだけでなく、「恩返しをしたい」「関係をもっと深めたい」という強い動機づけ(向社会性)を生み出します。 感謝 お返しをしたい欲求 他者への投資・支援 関係性の強化 感謝を感じる人は、周囲にサポートを提供する側へ回り、自らコミュニティの絆を強くします。 感謝が健康に変わる全体メカニズム 感謝 受け取る サポート 与える サポート 身体的健康 メンタルヘルス /生活満足度 感謝を起点とした「サポートの送受信」が、最終的に私たちの心と体を内側から健康にするエンジンとして機能します。 Genius Notebook しかし、この仕組みは「文化」によって形を変える 受け取る サポート 身体的健康 感謝 与える サポート メンタルヘルス /生活満足度 このメカニズムは世界共通です。しかし、国ごとの「文化的背景」というフィルターを通すと、見えない糸(リンク)の太さや役割が劇的に変化することが分かりました。 「個人主義」と「集団主義」の世界 データは国の「集団主義スコア(Collectivism Index)」によって大きく2つの傾向に分かれました。 個人主義 サポートは個人の感情や選択に基づくもの。 集団主義 サポートは社会的な義務や構造として最初から組み込まれているもの。 Gemma's Notebook 集団主義の国では、感謝しなくても人は助け合う 社会的規範 感謝 与えるサポート 日本やアジアなどの集団主義的な文化圏では、「恩恵→与えるサポート」のつながりが基因的に弱くなります。 なぜ? 集団主義の文化では、他者をサポートすることは個人の「感情(感謝)」に依存せず、コミュニティの「視聴」や「義務」として日常的に行われているからです。 その代わり、「与えること」が 身体の健康に直結する 感情的な動機がなくても、他者を助け ける行為そのものが大きな意味を持ち ます。集団主義の国において、サポー トを与えることは「社会的な調和」と 「自分の居場所」を強烈に再確認する 行為です。 その結果、メンタルだけでなく、血圧低下や免疫力向上といった 「身体的健康(生理学的メカニズム)」に直接的な恩恵を強くもたらします。 与える サポート 身体的健康 Genesia Notebook 文化別:ソーシャル・サポートの働き方の違い 個人主義 集団主義 サポートを提供する主な動機 個人の感情(感謝)から生まれる 社会的規範や役割から生まれる 健康への影響の強さ メンタルへの影響が顕著 身体的健康への恩恵が特に強い サポートが意味するもの 個人の優しさの表現 コミュニティとの調和の証 Geminis Notebook 感謝とは、周囲との「見えない糸」を太くする行為 欧米のように個人の感謝が起点であっても、日本のように社会の構造が起点であっても、最終的な結論は同じです。 「感謝とサポートのループを回すことは、自分と他者を結ぶ糸を強化し、それがそのまま自分を守る健康の盾になる」 Self 日常生活にどう活かすか? 気づく 感謝のレンズをかける。 当たり前だと思っている 家族や同僚の「小さなサポート」を再評価し、言葉に出す。 頼る 助けを求めることを恐れない。サポートを受け取ることは、あなたの心身を癒やす第一歩。 還す 義務感であっても大丈夫。 他者のために行動することは、結果的にあたた自身の「身体」を健康にしてくれる。 感謝は、あなたと社会を治癒する具体的なシステムである。 Gratitude is not just an emotion; it is a concrete system that makes you and society healthier. 世界14万人のデータ
投稿者による補足(4件)
補足 1

動画解説はこちら😊
https://youtu.be/WeFKuW2H1QI

補足 2

本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:感謝ノートって、ひとりの自己満足?
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-29-1793213161/

補足 3

【研究背景】

■ この研究の前提:感謝とウェルビーイングのつながり

▼ 感謝は幸福感や健康に寄与するという蓄積された知見
  • 感謝(gratitude)とは、他者の親切に対して「ありがたい」と感じたり、それを示したりすることです。この感謝がウェルビーイング(心身の健康や生活満足など、広い意味での「良い状態」)を高めることは、多くの研究で示されてきました(Emmons & Mishra (2011)、Jans-Beken et al. (2020)、Wood et al. (2010))。
  • 感謝には二つのとらえ方があります。ひとつは「特性としての感謝(dispositional gratitude)」で、その人が日ごろから物事に気づいて感謝しやすい傾向のこと。もうひとつは「その瞬間の感謝(momentary gratitude)」で、ある場面で実際に感じる感謝の体験です。
  • このどちらも、身体的健康、精神的健康、生活満足度の向上と関連することが報告されています(Boggiss et al. (2020)、Choi et al. (2025)、Hill et al. (2013)、Kerry et al. (2023)、Wood et al. (2008, 2009, 2010))。
  • ただし、感謝が「なぜ」これらの効果をもたらすのか、そのメカニズム(仕組み)の解明は途上であり、とくにそのメカニズムが文化によってどう異なるのかはよくわかっていませんでした。

■ もうひとつの前提:ソーシャルサポートと健康

▼ 「受け取る側」のサポート
  • ソーシャルサポートとは、他者から得られる援助や支えのことです。
  • そのうち「知覚されたソーシャルサポート(perceived social support)」とは、「困ったときに誰かが助けてくれる・慰めてくれるはずだ」という信念を指します。これは身体的・精神的健康の良さと関連することが示されています(Holt-Lunstad et al. (2010)、Uchino (2009))。
  • なお、Uchino (2009) やUchino et al. (2012) は、「実際に受け取ったサポート(received support)」と「利用可能だと感じているサポート(perceived support)」は区別すべきものであり、ウェルビーイングとより強く一貫して関連するのは後者だと論じています。
▼ 「与える側」のサポート
  • 他者にサポートを提供すること(support provision)も、人間関係や本人のウェルビーイングを高めることが示されています(Curry et al. (2018)、Deci et al. (2006))。
  • また、サポートの提供は身体的健康や健康行動の良さとも関連づけられています(Berli et al. (2021)、Brown & Brown (2015)、Byrne et al. (2023))。
  • つまり、受け取るサポートも与えるサポートも、健康やウェルビーイングを説明し、場合によっては高めるための重要な経路だと考えられてきました。

■ 感謝とソーシャルサポートはどう結びつくのか

▼ 感謝が「受け取るサポート」の体験を変えるという考え
  • 人はサポートを受けたときに感謝を感じますが、逆に、感謝を経験することがその後のサポートの受け取り方を形づくる可能性も指摘されています(Algoe (2012)、Algoe et al. (2008))。
  • 「感謝のスキーマ仮説(schematic hypothesis)」は、感謝が人を周囲からの支援に対して敏感にさせる、という考え方です(Wood et al. (2010))。感謝しやすい人は、他者の行為を「より手間がかかっていて、価値があり、利他的なものだ」と解釈する傾向があるとされます(Wood et al. (2008))。
  • 「感謝のコーピング仮説(coping hypothesis)」は、感謝しやすい人は困難に対処するとき、他者に積極的にサポートを求めやすい、という考え方です(Wood et al. (2007, 2008))。サポートを求める試みがうまくいけば、知覚されたサポートが高まるはずです。
  • こうして感謝によって高まったサポート知覚が、健康面の良い結果につながると予想されますが、論文によれば、この点はまだ直接検証されていませんでした。
▼ 感謝が「与えるサポート」を促すという考え
  • 感謝は向社会的行動(他者のためになる行動)を予測する要因として確立されており、サポートの提供もその一つです(Ma et al. (2017))。
  • 感謝の理論では、こうした行動は「お返しをしたい」という欲求の結果だと考えられており、感謝は恩人(benefactor)に向けた向社会的行動と最も強く関連します(Ma et al. (2017))。
  • 感謝が人間関係への投資意欲を高めるなら、支援行動が増え、それがウェルビーイングの向上につながるはずだと考えられます(Brown & Brown (2015)、Curry et al. (2018))。

■ 媒介研究:感謝→サポート→ウェルビーイングという経路

▼ 近年の実証研究
  • 媒介(mediation)とは、AがCに影響する際に、その間にBが介在して効果を伝える、という関係の検討方法です。
  • 最近の研究では、知覚されたサポートとサポート提供の両方が、感謝とウェルビーイングの関係を媒介するという仮説が支持されています(Kong et al. (2021)、Yang et al. (2024)、Zhang et al. (2025)、Zhang & Tsai (2023))。
  • なお、感謝の効果を説明しうる他の経路として、ポジティブ感情の増加、ストレスの減少、社会的つながり感の増加なども提案されています(Alkozei et al. (2018))。

■ 文化差という未解決の問題

▼ 感謝の効果は文化によって異なる
  • あるメタ分析(複数の研究結果を統合する手法)では、感謝介入のウェルビーイングへの効果が文化によって異なり、一般に西洋の参加者のほうが東洋の参加者よりも感謝から大きな恩恵を受けることが示されています(Choi et al. (2025))。同様の傾向は、Boehm et al. (2011) やLayous et al. (2013) でも報告されています。
  • しかし、なぜそうした文化差が生じるのかを説明する証拠は乏しいままでした。論文の著者らが挙げる一つの可能性は、「感謝とウェルビーイングをつなぐソーシャルサポートの仕組みそのものが、文化によって形づくられている」というものです。
▼ ソーシャルサポートの文化差に関する知見
  • 好まれるサポートの種類や、より頻繁に提供されるサポートの種類、さらにサポートがウェルビーイングに与える影響の大きさには文化差があることが、多くの研究で示されてきました(Kim et al. (2006, 2008)、Wu et al. (2021))。
  • たとえば、東アジアやアジア系アメリカ人の参加者は、頼まれていないサポートを提供する頻度が少なく(Morling et al. (2015))、明示的にサポートを求めることから得られる恩恵が少なかったり、むしろコストを被ったりすることが報告されています(Taylor et al. (2007)、Wang & Lau (2015)、Wong & Lu (2017))。
▼ 文化の次元による説明
  • こうした違いは、特定の文化的次元で説明できる可能性があります。中国系アメリカ人の乳がんサバイバーを対象とした研究では、より文化的に適応している(より個人主義的な)人には感情的サポート(励ましや共感など)が、適応度が低い(より集団主義的な)人には道具的サポート(実際的な手助け)が、健康やウェルビーイングにより有益でした(Wong & Lu (2017))。
  • より広くは、集団主義的文化の人々は、個人主義的文化の人々と比べて、道具的サポートを同程度かそれ以上に支持する一方、感情的サポートの支持は低いとされています(Burleson (2003)、Chen et al. (2012)、Taylor et al. (2004))。
  • これらの知見は、文化的文脈が、人々が与えたり受け取ったりしたいサポートの形だけでなく、サポートがどの程度ウェルビーイングの向上に結びつくかも左右しうることを示唆しています。

■ 先行研究の限界と、本研究が埋めようとしたギャップ

▼ 別々の研究領域に分かれていた
  • 感謝・ソーシャルサポート・ウェルビーイングの関係に文化が与える影響についての証拠は、それぞれ別個の研究群から得られたものでした。感謝の恩恵を説明するこれらのメカニズムの相対的な重要性に文化がどう影響するかを、単一の研究内で体系的に検証した例は、これまでありませんでした。
▼ 比較対象が限られていた
  • 文化差を扱った研究の多くは、ヨーロッパ系アメリカ人と東アジア人またはアジア系アメリカ人の比較が中心でした。サポートの経験や、サポートと感謝・ウェルビーイングの関係が世界的にどう異なるのか、そしてその違いが特定の文化次元で体系的に説明できるのかについては、知見が限られていました(Chen et al. (2012)、Floyd et al. (2018)、Vishkin et al. (2025))。
▼ 集団主義への着目
  • ソーシャルサポートの文化差研究の多くが個人主義―集団主義の次元を扱ってきたことから、本研究は国レベルの集団主義に着目します。集団主義の指標には、WEIRD(西洋・高学歴・工業化・豊か・民主的)でない国々も幅広く含めたGlobal Collectivism Index(Pelham et al. (2022))が用いられています。
  • 著者らの推論はこうです。集団主義的な文脈では、ソーシャルサポートは対人的な義務や関係性の規範に深く埋め込まれている可能性があります(Kim et al. (2006)、Taylor et al. (2007))。そのため、サポートは感謝のような個人の感情体験に左右されにくいかもしれません。逆に、サポートがそれほど規範的でない文脈では、感謝の個人差がサポートの知覚や行動により大きく影響する可能性があります。
  • 一方、サポートとウェルビーイングの関係については、著者らは事前の予測を立てていません。集団主義的文脈では、サポートが日常的・義務的なものとみなされてウェルビーイングを予測しにくくなる可能性もあれば、社会的調和やつながりの指標として特に強い効果をもつ可能性もある、という両方向の見方が示されています。
▼ 測定上の前提
  • 本研究では二つのデータセットで感謝とサポートの測り方が異なりますが、これは先行知見に基づいて正当化されています。特性としての感謝と状態としての感謝は関連しており(McCullough et al. (2004))、受け取ったサポートは知覚されたサポートを形づくることでウェルビーイングに影響する可能性があるとされます(Uchino et al. (2012))。
  • また、二時点のデータによる媒介分析は推定に偏りを生じうること(Maxwell & Cole (2007))、自己報告は望ましさへの圧力や項目解釈の文化差によって偏る可能性があること(de Oliveira Maraldi (2020))も、先行研究から指摘されている留意点です。
補足 4

【研究内容】

■ この研究のねらい

「感謝の気持ちは幸福感(ウェルビーイング)を高める」という知見は多くの研究で支持されています。しかし「なぜ感謝が幸福感につながるのか」という仕組み(メカニズム)と、その仕組みが文化によって異なるのかは、はっきりしていませんでした。

Vornlocher & Wormley (2026) は、2つの大規模データ(合計14万8000人以上、57カ国)を用いて、次の3点を調べました。

  • 感謝が幸福感につながる経路として、「ソーシャルサポート(周囲からの支え)」が働いているか
  • その経路は「受け取る側(知覚されたサポート)」と「与える側(サポートの提供)」の両方で成り立つか
  • これらの関係の強さが国によって異なり、その違いを「集団主義」という文化次元で説明できるか

■ 背景となる考え方

▼ 感謝とソーシャルサポートをつなぐ2つの仮説

論文は先行研究の理論を踏まえ、感謝がサポートの受け取り方を変える可能性を整理しています。

  • スキーマ仮説:感謝しやすい人は、他者の行為を「より手間がかかり、価値があり、利他的なもの」と解釈しやすい(Wood et al., 2008; Wood et al., 2010)。つまり、感謝は人を「受け取っている支え」に敏感にさせる。
  • コーピング仮説:感謝しやすい人は、困ったときに積極的に他者へ支えを求めやすい(Wood et al., 2007, 2008)。それがうまくいけば、知覚されるサポートが増える。

また、感謝は「お返しをしたい」という動機を通じて向社会的行動(他者を助ける行動)を促すことが、メタ分析でも示されています(Ma et al., 2017)。

▼ 文化による違いの可能性

感謝介入の効果は、西洋の参加者のほうが東洋の参加者より大きい傾向があることがメタ分析で報告されています(Choi et al., 2025)。著者らは、その理由の一つとして「感謝と幸福感をつなぐソーシャルサポートの仕組み自体が文化に影響される」可能性を考えました。

集団主義的な文化(個人よりも集団や人間関係のつながりを重視する文化)では、サポートは対人的な義務や関係の規範に深く組み込まれていると考えられます(Kim et al., 2006; Taylor et al., 2007)。そのため、サポートが個人の感情(感謝など)に左右されにくいかもしれない、という理屈です。

著者らの事前の仮説は次のとおりです。

  • 集団主義が強い国ほど、「感謝→知覚されたサポート」「感謝→サポート提供」の関連は弱くなる。
  • 「サポート→幸福感」の関連が集団主義でどう変わるかについては、事前の予測を立てていない(義務的だから弱まる、あるいは社会的つながりの証だから強まる、両方の可能性を挙げている)。

■ 研究1:51カ国・横断データ

▼ データと測定

Sun et al. (2024) が収集した、COVID-19パンデミック中の感情体験に関する51カ国・24,221人の調査データを再分析しました(平均年齢37.2歳、男性34.4%)。

  • 感謝:「過去1週間にどの程度感謝を経験したか」(0〜6)
  • 知覚されたサポート:「過去1週間に他者からどれくらい支えを得たか」(0〜6)。これは実際に「受け取った」サポートを尋ねている点に注意が必要です。
  • サポート提供:その週に行った助け合い行動(6種類、例:寄付など)の数の合計
  • 結果変数:「今、身体的に健康だと感じる」「今、精神的に健康だと感じる」(0〜100、分析前に標準化)
  • 集団主義:Pelham et al. (2022) のGlobal Collectivism Index(国レベルの指標)
▼ 分析方法

「並列媒介モデル」という統計モデルを使いました。これは「感謝→(知覚されたサポート/サポート提供)→(身体的健康/精神的健康)」という流れを同時に推定し、感謝が健康に及ぼす影響のうち、サポートを経由する部分(間接効果)がどれくらいかを調べるものです。国ごとのまとまりを考慮した頑健な標準誤差を用い、年齢・性別・主観的社会経済的地位を統制しました。

さらに、51カ国それぞれで同じモデルを推定し、各経路の係数をランダム効果メタ分析で統合して、国ごとのばらつき(τ)と、集団主義による調整効果を検討しました。なお、集団主義を含む分析は事前登録されていません。

▼ 結果
  • 感謝は、知覚されたサポート(β = 0.275)およびサポート提供(β = 0.183)と正の関連がありました。
  • 知覚されたサポートは、身体的健康(β = 0.087)および精神的健康(β = 0.131)と正の関連がありました。
  • 一方、サポート提供は、身体的健康とも精神的健康とも有意な関連がありませんでした。
  • 感謝から健康への間接効果は小さいものの有意でした(身体的健康 β = 0.024、精神的健康 β = 0.038)。

図1 研究1のモデル図。左の「感謝」から中央の「知覚されたサポート

図1 研究1のモデル図。左の「感謝」から中央の「知覚されたサポート」「サポート提供」を経て、右の「身体的健康」「精神的健康」へ矢印が伸びています。矢印上の数値は標準化係数で、正の値は一方が高いほど他方も高い関連を示します。
出典:論文のFigure 1。Vornlocher & Wormley (2026). Journal of Happiness Studies, 27.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z

つまり研究1では、感謝と幸福感の関連を部分的に説明していたのは「知覚されたサポート」であり、「サポート提供」は感謝とは関連するものの、健康とは関連しませんでした。

▼ 国による違い

8つの経路のうち5つで、国による有意なばらつきが見られました。ばらつきが特に大きかったのは「感謝→サポート」の経路で、例えば感謝とサポート提供の関連はベトナムでは強く(β = 0.34)、ギリシャでは関連なし(β = 0.08、信頼区間が0をまたぐ)でした。対照的に「サポート提供→幸福感」の経路は国を問わず安定していました。

図2 研究1の国別フォレストプロット。各段が経路ごとに、縦に並んだ

図2 研究1の国別フォレストプロット。各段が経路ごとに、縦に並んだ点が国別の係数、横線がその信頼区間を表します。横線が0の縦線をまたぐ国は関連が有意でないことを意味し、下部のひし形は全国を統合した平均値です。
出典:論文のFigure 2。Vornlocher & Wormley (2026). Journal of Happiness Studies, 27.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z

集団主義が調整していたのは「感謝→サポート提供」の1経路のみで、集団主義が強い国ほどこの関連は弱くなっていました(β = -0.02, p = .04)。


■ 研究2:22カ国・縦断データ

▼ データと測定

Global Flourishing Study(GFS)という、22カ国を対象とした5年間の縦断研究のデータを用いました。第1波(2023年)と第2波(2024年)の両方に回答した124,324人が対象です(平均年齢50.3歳、男性49.0%)。

  • 感謝(第1波):「感謝していることをすべて挙げるとしたら、とても長いリストになる」への同意(0〜10)。こちらは一時的な感情ではなく、感謝しやすい傾向(特性的感謝)を測っています。
  • 知覚されたサポート(第2波):「困ったとき、親族や友人など周囲の人をどれくらい頼りにできるか」(0〜10)。こちらは「必要なときに使えるサポート」という、仮想的な利用可能性を尋ねています。
  • サポート提供(第2波):「周囲の人に愛情や気遣いをどれくらいの頻度で示しているか」(0〜10)
  • 結果変数(第2波):自己評価の身体的健康(0〜10)、人生満足度(0〜10)
  • 集団主義:研究1と同じ指標
▼ 分析方法

研究1と同様の並列媒介モデルを、第1波の感謝→第2波のサポート→第2波の健康・満足度という時間順で構成しました。データの非代表性を補正する重みづけを行い、年齢・性別・収入への満足度を統制しました。

さらに、事前登録にはなかった追加として、第2波の各変数をその第1波の値でも予測する「自己回帰モデル」を本文では報告しています。これは、前年からの持ち越し(例:去年サポートを感じていた人は今年も感じやすい)を差し引いたうえで、感謝が追加的にどれだけ説明するかを見るためです。

▼ 結果

まず、モデル全体の適合度指標(CFI = 0.812、RMSEA = 0.122 など)は多くの基準で不良でした。著者らはモデルの複雑さによる可能性を挙げつつ、このモデルが観測データの共分散構造を完全に表現してはいないと明記しています。

持ち越し効果を考慮したうえで、

  • 第1波の感謝は、第2波の知覚されたサポート(β = 0.104)およびサポート提供(β = 0.178)と正の関連がありました。
  • 知覚されたサポートは、身体的健康(β = 0.110)および人生満足度(β = 0.162)と正の関連がありました。
  • 研究1と異なり、サポート提供も身体的健康(β = 0.111)および人生満足度(β = 0.108)と正の関連がありました。
  • 間接効果は小さいが有意でした(身体的健康 β = 0.031、人生満足度 β = 0.036)。
  • 持ち越し効果(自己回帰)はかなり大きく、β = 0.349(人生満足度)〜0.467(身体的健康)でした。

図3 研究2のモデル図。添え字の1・2は第1波・第2波のデータを示

図3 研究2のモデル図。添え字の1・2は第1波・第2波のデータを示し、第1波の感謝から第2波のサポート、第2波の健康・満足度へと時間順に矢印が並びます。各変数の第1波から第2波への矢印は持ち越し(自己回帰)効果で、数値は標準化係数です。
出典:論文のFigure 3。Vornlocher & Wormley (2026). Journal of Happiness Studies, 27.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z

したがって研究2では、知覚されたサポートとサポート提供の両方が、感謝と幸福感の関連を部分的に説明していました。

表1 感謝→ソーシャルサポート→幸福感の各経路の標準化係数(研究1・研究2)

経路 研究1 β 研究1 p 研究2 β 研究2 p
感謝 → 知覚されたサポート 0.275 < .001 0.104 .001
感謝 → サポート提供 0.183 < .001 0.178 < .001
知覚されたサポート → 身体的健康 0.087 < .001 0.110 < .001
知覚されたサポート → 精神的健康(研究1)/人生満足度(研究2) 0.131 < .001 0.162 < .001
サポート提供 → 身体的健康 0.003 .804 0.111 < .001
サポート提供 → 精神的健康(研究1)/人生満足度(研究2) 0.010 .429 0.108 < .001
間接効果:感謝 → 身体的健康 0.024 < .001 0.031 < .001
間接効果:感謝 → 精神的健康(研究1)/人生満足度(研究2) 0.038 < .001 0.036 < .001

2つの研究で推定された各経路の強さ。感謝はどちらでもサポートと関連し、知覚されたサポートは健康と関連。サポート提供が健康と関連したのは研究2のみでした。
注:β は標準化係数。研究1は横断データ(51カ国、n = 24,221)、研究2は第1波の感謝→第2波の各変数という縦断データ(22カ国、n = 124,324)で、第1波の値を統制した自己回帰モデルの結果。研究1の結果変数は精神的健康、研究2は人生満足度。
Vornlocher & Wormley(2026)の本文 1.2 Results および 2.2 Results(Fig. 1, Fig. 3, Table S2, Table S7)の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Vornlocher & Wormley (2026). Journal of Happiness Studies, 27. https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z

▼ 国による違い

「感謝→身体的健康」の経路を除き、すべての経路で国による有意なばらつきがありました。最もばらつきが大きかったのは「感謝→知覚されたサポート」で、トルコでは関連が有意でない一方、米国・英国・日本ではかなり大きい関連でした。「知覚されたサポート→幸福感」の経路は比較的安定していました。

図4 研究2の国別フォレストプロット。経路ごとに22カ国の係数(点

図4 研究2の国別フォレストプロット。経路ごとに22カ国の係数(点)と信頼区間(横線)が並び、下部のひし形が統合した平均値です。0の縦線をまたぐ横線は有意でない関連を示し、点の横方向のばらつきが国による違いの大きさを表しています。
出典:論文のFigure 4。Vornlocher & Wormley (2026). Journal of Happiness Studies, 27.(CC BY 4.0) https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z

集団主義は4つの経路を調整していました。

  • 感謝→知覚されたサポート:集団主義が強い国ほど弱い(β = -0.05, p < .001, R² = 0.69)
  • 感謝→サポート提供:集団主義が強い国ほど弱い(β = -0.03, p = .004)
  • 知覚されたサポート→身体的健康:集団主義が強い国ほど強い(β = 0.02, p = .01)
  • サポート提供→身体的健康:集団主義が強い国ほど強い(β = 0.02, p = .02)

表2 国レベルの集団主義による各経路の調整効果(有意だったもの)

研究 経路 β 95%信頼区間 p R²
研究1 感謝 → サポート提供 -0.02 [-0.03, -0.00] .04 0.25
研究2 感謝 → 知覚されたサポート -0.05 [-0.06, -0.03] < .001 0.69
研究2 感謝 → サポート提供 -0.03 [-0.05, -0.01] .004 0.33
研究2 知覚されたサポート → 身体的健康 0.02 [0.00, 0.04] .01 0.36
研究2 サポート提供 → 身体的健康 0.02 [0.00, 0.04] .02 0.21

集団主義が強い国ほど「感謝→サポート」の関連は弱く、研究2では「サポート→身体的健康」の関連は強いという結果。両研究で一貫したのは感謝→サポート提供のみでした。
注:β はランダム効果メタ回帰における集団主義(Global Collectivism Index、標準化)の係数。負の値は集団主義が強い国ほど経路が弱いこと、正の値は強いことを示す。R² は国間のばらつきのうち集団主義で説明される割合。集団主義を含む分析は事前登録されていない。
Vornlocher & Wormley(2026)の本文 1.2 Results, 2.2 Results(Table S4, Table S9)の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Vornlocher & Wormley (2026). Journal of Happiness Studies, 27. https://doi.org/10.1007/s10902-026-01126-z


■ 考察

▼ 2つの研究から言えること
  • 感謝の高い人ほど身体的健康や人生満足度が高いという関連は、横断・縦断の両方、57カ国にわたって確認されました。著者らはこれを、欧米などのいわゆるWEIRDサンプルを超えた一般化可能性の証拠と位置づけています。
  • ソーシャルサポートの経路(特に知覚されたサポート)は、感謝と幸福感の関連を部分的に説明していました。ただし間接効果は小さく、サポートだけで関連のすべてを説明するわけではありません。著者らは他の候補として、ポジティブ感情の増加、ストレスの低下、社会的つながり感の増加などを挙げています(Alkozei et al., 2018)。
▼ 文化による違いについて
  • 2つの研究で一貫していたのは「集団主義が強い国では、感謝とサポート提供の関連が弱い」という点だけでした。著者らは、こうした国では文化的な価値観や規範がサポートの提供を強く促しているため、感謝という感情がさらなるサポート提供を促す余地が小さいのではないか、と解釈しています。
  • 研究2では、集団主義が強い国ほどサポート(受け取る側も与える側も)と身体的健康の関連が強いことも観察されました。著者らは、サポートが規範的で感謝とは結びつきにくい文化でも、サポートそのものは幸福感の向上につながりうる、と述べています。また、身体的健康への効果は生理的経路(心血管反応や免疫反応など)、主観的幸福感への効果は心理的経路(ポジティブ感情や自己効力感など)を通る可能性があり、結果変数によって仕組みが異なるかもしれないと論じています。
  • 研究2のサポート提供項目は「愛情や気遣いを示す」ことを尋ねており、物質的・情報的サポートなど別の形態を尋ねれば異なるパターンが出る可能性があると注記されています。

■ 限界

  • すべて自己報告で、多くが単一項目の測定です。
  • サポートの測定内容が2研究で異なります。研究1は「実際に受け取ったサポート」、研究2は「必要なときに頼れるか」という知覚された利用可能性です。先行研究では、知覚されたサポートのほうが受け取ったサポートより幸福感と強く一貫して関連するとされています(Uchino et al., 2012)。著者らは、異なる測定で結果が一貫したことをむしろ頑健性の証拠と捉えています。感謝についても、研究1は過去1週間の状態、研究2は特性的な傾向を測っており、両者は関連するとされています(McCullough et al., 2004)。
  • 望ましく見せたいという回答傾向や、項目の解釈の文化差がバイアスになった可能性があります。
  • 媒介分析を2時点のデータで行うと推定にバイアスが生じうることが指摘されており(Maxwell & Cole, 2007)、時間的順序をより強く検証するには変数間の時間的分離が必要です。GFSの今後の波で再検証できると述べられています。
  • 逆方向の関係、つまり人生満足度や健康が高いことが感謝の経験を増やし、サポートを知覚・提供する力を高めている可能性も、著者ら自身が指摘しています。本研究で示されたのは関連であり、因果が確定したわけではありません。
論文紹介 ありがとうなんとかなる 人間関係・恋愛文化と幸福・日本的幸福感謝・親切・向社会性

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