幸せの名言集

デヴィッド・ボームの名言3選

英国で活動した理論物理学者(1917-1992)。量子論の大家にして対話論の祖。クリシュナムルティとの対話でも知られる

「対話(ダイアローグ)の語源は、ギリシャ語のディアロゴス ──「意味(ロゴス)が、人々の間を(ディア)流れ通うこと」である」

Dialogue comes from the Greek word dialogos. Logos means 'the word'... and dia means 'through' — a stream of meaning flowing among and through us.

— デヴィッド・ボーム 『ダイアローグ』(On Dialogue, 1996)

勝敗を決めるために意見を打ち合う議論(discussion ── 語源は「打ち砕く」でパーカッションと同根)と、意味が川のように参加者の間を流れ、誰のものでもない新しい理解が立ち上がる対話は、根本的に別の営みである ── 量子物理学者が晩年に取り組んだ、対話の理論の出発点

心理学では
ボームのいう対話は、心理学でいえば「共有現実」(他者と世界の見方を分かち合っている感覚)を、勝ち負けではなく協働で築く営みである。Woolleyら(2010)は小集団にさまざまな課題を解かせる研究で、発言の機会が一部の人に偏らず均等に回るグループほど、集団全体の問題解決力(集団知性)が高いことを見いだした。Itzchakovら(2017)の実験では、評価をはさまず深く聴いてもらった話し手は、自分の考えの両面を認め、より極端でない見方をするようになった。結論を急ぐ前に一人ずつ話す番を回し、まず聴き切ることが、誰のものでもない新しい理解を生む土台になる。 参考:Woolleyら(2010)「Evidence for a Collective Intellig…」 ↗/Itzchakovら(2017)「I Am Aware of My Inconsistencies b…」 ↗
「自分の想定(アサンプション)を、抑え込むのでも、即座に実行するのでもなく、目の前に「吊るして」眺めてみる ── これが保留(サスペンション)である」

Suspension involves attention, listening and looking... you neither suppress them nor insist upon them.

— デヴィッド・ボーム 『ダイアローグ』(1996)(要旨)

「あの人は間違っている」という確信が湧いたとき、それを飲み込む(抑圧)のでも、ぶつける(反応)のでもなく、「いま自分はそう想定しているな」と宙吊りにして観察する ── 対話を可能にする最も重要で、最も難しい心の技法

心理学では
ボームの「保留」は、心理学でいう脱中心化(考えを事実ではなく、心に浮かんだ一つの出来事として距離を置いて眺める構え)にあたる。まず「抑え込む」が逆効果になりやすいことは、Wegnerら(1987)の実験が示している。シロクマのことを考えないよう求められた人は、その後かえってその考えが多く浮かぶ傾向を示した。一方、Frescoら(2007)は脱中心化を測る質問紙を開発し、自分の考えから距離を取れる人ほど抑うつ症状が低いという関連を報告している。確信が湧いたら「いま自分はこう想定している」と心の中で言葉にしてみる。その一呼吸が相手の話を最後まで聴く余地を生み、対話を深めることにつながる。 参考:Wegnerら(1987)「Paradoxical effects of thought sup…」 ↗/Frescoら(2007)「Initial Psychometric Properties of…」 ↗
「対話では、誰も勝とうとしない。誰かが勝つなら、そのとき全員が勝っている」

In a dialogue, nobody is trying to win. Everybody wins if anybody wins.

— デヴィッド・ボーム 『ダイアローグ』(1996)

議論はゼロサム(私が正しければ、あなたは間違い)だが、対話はプラスサム ── 新しい理解の獲得は全員の利得になる。「勝とうとしない」というルールの共有だけで、人は防衛をやめ、本当に考え始める

心理学では
ボームの言う対話は、心理学でいう「固定パイ認識」(相手の得は自分の損だという思い込み)を手放し、協調的動機(双方の利益を大切にする構え)で話し合う状態にあたる。Thompson & Hastie(1990)の交渉実験では、多くの人が利害の対立を実際より大きく見積もっており、その思い込みが強い人ほど双方に得な合意を逃しやすかった。De Dreuら(2000)のメタ分析でも、協調的動機をもちつつ自分の関心も安易には譲らない交渉者ほど、全員が得をする合意に至りやすかった。意見がぶつかる場面では、最初に「勝ち負けではなく共に理解する場だ」と言葉にして確かめることが助けになる。 参考:Thompson & Hastie(1990)「Social perception in negotiation」 ↗/De Dreuら(2000)「Influence of social motives on int…」 ↗

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