日本全体のウェルビーイングを高める4つの方法
を考えるための、論文をご紹介。
これは、2023年にハーバード公衆衛生大学院が行った、
"心理的ウェルビーイングを高める介入:何が効き、何が効かず、今後の研究課題は何か"という会議の講義録的な論文です😊ウェルビーイング界の巨匠達が集まって議論頂いています。
ここでは、主に4つの論点について話し合いがなされており、
そこから応用して、どういう取組が考えられるか、を考えてみました。(というか考え中です。)
■ 柱1:ちょっとした効果が、社会全体で福利として働く
■ 柱2:効果を永続させるための、大事な瞬間
■ 柱3:デジタル介入に、ヒューマンタッチを
■ 柱4:文化的な適合性を確保する
■ 柱1:ちょっとした効果が、社会全体で福利として働く
▼ 説明
論点1は「意味のある効果量とは何か」を扱っています。ウェルビーイング介入の効果は、一つひとつを見れば小さいことが多いです。しかし論文は、小さくても展開・拡張・採用が容易なら集団レベルでは価値がある、と主張します。アスピリンと心臓発作予防の関連(r=0.03)のように、医学的に重要な介入でも効果量は小さく見えるのです(Götz et al., 2022)。多くの小さな効果が積み重なれば、社会全体では意味のある変化になります。また効果は「異質(heterogeneous)」、つまり誰に効くかが大きくばらつくため、対象を見極めることが重要です。
▼ 応用
完璧な単発プログラムよりも、低コストで誰でもできる、ちょっとした仕掛け(ライトタッチ)を、職場や学校、自治体などに薄く広げて行く。
学校の朝礼にちょっとしたウェルビーイングワークを取り入れる、
職場のラジオ体操の様に職場でちょっとしたワークを行う、
毎朝、主要駅で幸せについての簡単なレクチャーを街頭演説、
とか。
- あと、やっぱり何が効くかは人それぞれなので、対象を見極めたり、多様な取組を行っていく。
■ 柱2:効果を永続させるための、大事な瞬間
▼ 説明
論点2は「効果はどれくらい持続するか」です。ウェルビーイングが健康に効くのは、その状態が持続して繰り返し作用するからと考えられます。しかし持続性の研究は乏しく、最大級のメタ分析でも追跡は多くが6か月未満、12か月超はゼロでした(Carr et al., 2021)。論文は、人生には介入が特に効きやすい「節目(signature moments)」があると指摘します。アイデンティティ形成期・中年の危機・退職など、生活が大きく変わる不安定な移行期です。こうしたタイミングで目的意識を育む介入は、特に効きやすいかもしれません。
▼ 応用
入学、卒業、就職、結婚、出産、退職などの様々な節目に、ウェルビーイングを振り返り、計画する時間を作る。
これも単発で終わらせず、色んなタイミングで、定期的な活動として行っていく。
赤ちゃんができると、母子健康手帳という色々書き込む日記帳をもらうんですが、これのウェルビーイング版みたいなのを節目節目で配れないかな。加えて動画リンクで学んだり、とか。AIさんによれば一冊150-200円くらいで作れそうとのこと。100万部作ると、2億円か。。。あと、あれはお医者さんも確認するから書きこんでくれるというのはありそう。
■ 柱3:デジタル介入に、ヒューマンタッチを
▼ 説明
論点3は「送達と拡張可能性」です。強い効果を示す介入は複雑・対面・時間集約的なことが多く、大規模展開にはデジタル化が有力です。コロナ禍がアプリ等の普及を後押ししました。しかしデジタルには大きな落とし穴があります。やめるハードルが低く脱落率が高いのです。93のメンタルヘルスアプリで15日後の継続率の中央値はわずか3.9%でした(Baumel et al., 2019)。しかも脱落するのは最も介入を必要とする人で、効果を過大評価する偏りを生みます。そこで論文は、対人的なつながり=「人の手(human touch)」が継続には不可欠で、既存の人間関係に介入を埋め込むべきだと提案します。
▼ 応用
アプリ単体ではなく、そこに人の手を介す。アプリと人手を上手く融合させる。
実際にマイクロ介入というちょっとしたワークが送られてくるアプリで幸福度向上!などの研究もあります。というかうちのアプリも結構幸福度向上します😊
みんちゃれ、みたいなアプリ内で人と人が一緒に取り組むとかも良いのかなぁ。
■ 柱4:文化的な適合性を確保する
▼ 説明
論点4は「多様な集団・環境で機能するか」です。同じ介入でも文化や背景によって効き方が変わり、「適合(fit)」が悪いと逆効果にもなります。論文が挙げる象徴的な例が感謝介入です。感謝が「負い目」や「罪悪感」として経験される文化では問題を起こしうる、というものです(Fritz & Lyubomirsky, 2018)。欧米で開発された介入をそのまま持ち込むと、機能しないどころか害になる場合があるわけです。だからこそ実施前のフォーカスグループで対象集団との適合を確認することが推奨されています。
▼ 応用
文化の違いを取組に組み込む。日本人は結構、独特なので、独自の取組が大事。
ikigaiとか、日本にあったものを、上記の3つの柱に組み込んでいく必要があるなぁ。でも海外のをそのままやっても効果的なのも結構ある。
沖縄の模合みたいなのも、面白いんだけどなぁ。
要は、
小さな効果を全体で活かし(柱1)
効きやすい節目で何度も行い(柱2)
デジタルと人のつながりで続けてもらい(柱3)
日本の文化に合わせて形を変える。(柱4)
どう展開していくかは、まだまだ考え中なのもありますが、ウェルビーイングが流行ってきて、ここからはいかに高めていくか。が大事です。
是非是非、みんなで考えていきましょう😊
心理的ウェルビーイングを改善するための介入:進展、展望、および今後の研究課題
Interventions to Modify Psychological Well‑Being: Progress, Promises, and an Agenda for Future Research
Affect Sci.,2023/5
Laura D. Kubzansky , Sonja Lyubomirsky , Tyler J. VanderWeeleら
[https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9982781/](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9982781/)
心理的幸福は、快楽的幸福や自己実現的幸福を含む、肯定的な機能に関連する感情、認知、戦略によって特徴づけられ、身体的健康の向上や長寿と関連付けられています。重要なことに、心理的幸福は介入によって強化することができ、集団の健康を改善するための戦略となります。しかし、幸福介入の効果は、集団レベルで健康を改善するのに十分なほど有意義で、持続的で、拡張性のあるものなのでしょうか?この可能性を評価するために、学際的な研究者グループが集まり、現在の知見をレビューし、研究課題を策定しました。本稿では、今回の会合で得られた重要な知見を要約し、さらに発展させる。その知見とは、(1)既存の介入策は、心理機能と健康の長期的な改善につながる十分な効果が得られるよう、引き続き適応させていくべきである、(2)集団レベルでの持続的な変化を促すために必要な介入策の有効性を研究によって明らかにすべきである、(3)個人レベルのケアと治療から、集団レベルの予防を目的とした公衆衛生モデルへの移行が必要であり、大規模な介入策を実施できる新たなインフラが必要となる、(4)介入策は、人種、民族、地理的に多様なサンプルにおいて、アクセスしやすく効果的であるべきである、という点である。続いて、今後の研究課題に関する議論を行う。
【背景】
■ 出発点となった社会的背景
論文の冒頭は「絶望死(deaths of despair)」の増加から始まります。
■ 「欠陥」から「資産」への視点転換
従来の研究は「リスク要因」や「欠陥(deficits)」、つまり何が悪いのかに注目してきました。これに対し、近年の研究は「ポジティブな健康資産(positive health assets)」、つまり何が良い状態を支えるのかにも目を向けるべきだと主張しています(Kubzansky et al., 2018; VanderWeele et al., 2020)。
■ 中心的な前提:心理的ウェルビーイングは健康と寿命に寄与する
論文全体の土台となるのが「心理的ウェルビーイングが身体の健康と長寿に独自に貢献する」という知見です。
この前提を支える代表的なエビデンス:
■ なぜ健康につながるのか:メカニズムの研究
心理的ウェルビーイングが健康に至る経路についても、既存研究が蓄積されつつあります。
■ 「修正可能か」という前提
健康への貢献に加え、もう一つ重要な前提が「心理的ウェルビーイングは介入によって変えられる(modifiable)」という点です(Carr et al., 2021)。
ただし論文は、介入が有効であるためには「修正可能」なだけでなく、次の4つの条件を満たす必要があると整理しています。
(van Agteren et al., 2021)
■ 方法論的な土台:行動変容の科学(SOBC)
このワークショップは、先行する「行動変容の科学(Science of Behavior Change: SOBC)」の枠組みを基盤にしています(Nielsen et al., 2018)。
本論文は、このアプローチを「心理的ウェルビーイングそのものを変える」ことに応用しています。
■ 紹介された具体的な介入研究
ワークショップでは、効果が実証されている介入が紹介されました。
▼ マインドフルネス系
▼ ポジティブ心理学的介入(PPI)
▼ アート系介入
▼ 赦し(forgiveness)介入
■ 効果量をめぐる前提:小さな効果も意味がある
「効果量が小さいから無意味」とはならない、という議論も重要な前提です。
■ 文脈依存性:「調整変数の媒介(moderation as mediation)」
介入効果は文脈によって変わるという知見も土台になっています(Bryan et al., 2021)。
■ どの次元を標的にすべきか
ウェルビーイングのどの側面が健康に効くのか、についての先行研究も整理されています。
■ 補足:用語の変遷について
論文の脚注では、「心理的ウェルビーイング(psychological well-being)」という用語が、その後「感情的ウェルビーイング(emotional well-being)」へと提案され直していることに触れています(Park et al., 2023)。本論文はワークショップ当時の用語を踏襲しています。
この論文の中身を、研究の性質を踏まえて整理します。
■ そもそもこの論文は何か
まず押さえておきたいのは、この論文が「新しい実験データを報告する研究」ではない、という点です。
したがって「方法・結果」は通常の実験論文とは異なり、この論文の「方法」は専門家を集めて議論したこと、「結果」はそこから導かれた研究アジェンダ(今後取り組むべき課題の一覧)になります。
■ 目的
論文の中心的な問いは次の通りです。
■ ワークショップの基本的な認識(議論の前提整理)
議論に入る前に、参加者は次の点を共有しました。
■ 主要な4つの論点(この論文の「結果」の核)
論文は議論を4つの問いに整理しています。
▼ 論点1:意味のある効果量とは何か
ここで重要な考察:
そして効果量についての主張:
▼ 論点2:効果はどれくらい持続するか(durability)
考察された論点:
▼ 論点3:送達と拡張可能性(delivery and scalability)
技術とコロナ禍の影響:
デジタル化の落とし穴(ここが重要な考察):
そこで提案されるのが:
▼ 論点4:多様な集団・環境で機能するか
重要な具体例(効かない・逆効果の例):
対策として: