仕事の動機と人生の充実(フローリッシング)についての、スペイン・アメリカの最新研究
世界各地の働く人536人(会社員437人+自営業99人)のデータから調査頂きました。
「あなたは何のために働いていますか?」
この研究では、仕事の捉え方を4タイプに分けています。
①単なる職(ジョブ):お金や生活のため
②キャリア:スキルアップ、承認、昇進のため
③天職:誰かの役に立つため、世の中を良くするため
④大いなる天職:自分より大きな何か(世界から呼ばれる、みたいな。)とのつながりの中で働く
そして、それぞれのタイプが、
幸福・健康・人生の意味・人格・人間関係を合わせた「人生全体の充実度」と
どう関係するかを調べました。
結果としては、
①単なる職(ジョブ)
は、人生の充実と関係なし。
②キャリア
も、意外なことに関係なし。(成長とか昇進とか、頑張ってるのに。。。)
③天職
は、めっちゃ関係あり。4つの中で一番強い。幸せに効く。
④大いなる天職
も、③ほどじゃないけど、しっかり関係あり。
ポイントは、
「自分のため」(お金、スキル、承認)にとどまっているうちは、仕事は人生の幸せに届かない。
「誰かのため」に踏み出した瞬間から、仕事が人生の幸せと結びつき始める。
ということ。
これ、天職の人はお金や成長を気にしない、という話ではないんです。
お金も成長も含んだうえで、さらに「誰かの役に立っている」感覚があるかどうか、が違いを生む。
- 個人視点で言えば、今の仕事を「誰の役に立っているか」で捉え直してみるだけで、幸せの入口が開くかも。
- 会社視点で言えば、給料や昇進制度だけ整えても、社員の人生は豊かにならない。「うちの仕事は誰を幸せにしているか」を語れることの方が大事。
という感じ😊
ただし、回答者はヨーロッパと南北アメリカがほとんどで、アジアは2%だけ。日本でも同じ結果になるかは、これからの研究待ちですね。
Motivations and Meaningful Work: A Core Foundation of Virtuous Fulfillment in Life, or Flourishing
動機と意味ある仕事:人生の徳ある充実(フローリッシング)の中核基盤
Rita Jácome(IECO研究所、スペイン), Joaquin Aldas-Manzano(バレンシア大学、スペイン) & Matthew T. Lee(ハーバード大学、アメリカ)
Humanistic Management Journal, 2026/8/29
https://doi.org/10.1007/s41463-026-00230-9
仕事と人生の「新しい地図」 科学が証明した、働くことの本当の意味と『豊かな人生』へのコンパス 現代のパラドックス:私たちはかつてなく働き、かつてなく疲弊している 5.3/10 世界中の人々の「人生の評価」の平均スコア。 10%未満 現在の仕事が「幸福いい(熱意を持って取り組んでいる)」と答える人の割合。 仕事は人生の大部分を占めるのに、なぜそれなら多くの人が「働きがい」を見失っているのでしょうか? An Gallup Notebook 目的地は「お金」ではなく、人生の開花(Flourishing) 幸福と生活の満足 意味と目的 心身の健康 人格と美徳 豊かな人間関係 個人の幸せを追い求めるだけではなく、この5つの要素が満たされた状態(ウェルビーイングの北極星)こそが、人間の真のゴールです。 私たちが迷子になる理由:不完全な地図 ルートA:仕事=単なる 「お金の交換ツール」(Job) ルートB:仕事=「ステータスと 承認の獲得」(Career) ほとんどの人は、この2つのルートしか書かれていない地図を使って毎日の仕事をナビゲートしています。しかし、この地図には「重要な高地」が欠落しています。 働く意味の4つの次元(The 4 Levels of Work) Level 4: 大いなる天職(Spiritual Calling) 精神的・宇宙的な目的との繋がり Level 3: 天職(Calling) 他者への貢献と道徳的価値 Level 2: キャリア(Career) 自己成長とステータス Level 1: ライスワーク(Job) 物理的な報酬と安全 心理学と哲学の融合から生まれた新しいモチベーションの地図。 私たちは、働き方をこの4つの標高のどこに設定するかを選ぶことができます。 Gemma Notebook Base Camp Level 1: ライスワーク(Job)—取引としての仕事 Diagnostic Details 動機のベクトル:「受け取る」(Receiving) 求める価値:物理的な有用性(お金、安全性、生活の維持) 仕事を「生活を維持するための手段」としてのみ捉える状態。適正な給与であっても、この動機だけで働くと、仕事は「自由な時間を買い取るために支払う対価」に過ぎなくなります。 Level 2: キャリア(Career)— 自己成長としての仕事 Diagnostic Details 動機のベクトル:「達成する」(Achieving) 求める価値:心理的な満足感(スキル向上、 承認、昇進、自尊心) お金のためだけでなく、自身の能力を試 し、評価を得るために働く状態。素晴らし い動機力ですが、焦点は依然として「自分自 身の成長と利益」に向いています。 Steep Ascent Gemesis Notebook Level 3: 天職(Calling)— 他者への奉仕としての仕事 Diagnostic Details 動機のベクトル:「与える」(Giving) 求める価値:道徳的・倫理的な善(思いやり、理解、社会への貢献) 自分の才能を使って、他者の人生を良くし、 世界に意味のある足跡を残そうとする状態。 日々の業務が「誰かのためになっている」と いう実感に満ちています。 High Plateau Genius Notebook Level 4: 大いなる天職(Spiritual Calling)―崇高な目的への応答 Diagnostic Details 動機のベクトル: 「応答する・返す」(Returning) 求める価値: 精神的・超越的なつながり(大いなるもの、自然、神、宇宙への畏敬と感謝) 自分の仕事が、個人の枠を超えた「大いなる目的」や「宇宙の調和」の一部であると深く信じる状態。生命の贈り物に対する感謝として仕事に取り組みます。 The Summit どの地図が「最高の人生」に辿り着くのか? Level 1 (Job) Level 2 (Career) Level 3 (Calling) Level 4 (Spiritual Calling) 動機の焦点 自分 (自己保存) 自分 (自己実現) 他者 (社会への貢献) 超越 (大いなる目的) 求めるもの お金・安全 地位・スキル 意味・道徳 調和・感謝 世界中のビジネスパーソンと起業家500名以上を対象にした大規模な調査により、 「どの働き方が、人生の開花(Flourishing)に直結するのか」が統計的に 明らかになりました。 © Genius Notebook 衝撃の事実:「キャリア」の追求だけでは、人生は豊かにならない Work Level 1 & 2: 相関なし (No Impact) Flourishing (北極星) Level 3 & 4: 強い正の相関 (Massive Positive Impact) データが示す真実は残酷かつ希望に満ちています。「ライスワーク」はもちろん、「キャリア(自己成長・出世)」をいくら追い求めても、人生の幸福度や充実感には統計的影響を与えませんでした。 人生を開花させる唯一の架け橋は、仕事を「他者への奉仕(天職)」へ昇華させることだったのです。 なぜ「キャリア(自己実現)」は頭打ちになるのか? Career の限界(閉じたループ) ステータス 獲得 Closed Loop さらなる ステータス 燃え尽き (Burnout) Calling の無限性(開かれた螺旋) 無限の開花 (Flourishing) さらに与える 能力の拡大 他者へ 与える 意味の発見 「心地よさ」や「個人の成長」を求める動機(Career)は素晴らしいものですが、最終的には自分の中だけで完結するため、限界(燃え尽き)が求まります。 一方、「他者へ与える」道徳的な動機(Calling)は、無限のエネルギー源となります。 転職ではなく「天職」への視点シフト(ジョブクラフティング) 「天職」とは、特定の特別な職業(医者やボランティアなど)を指すのではありません。 今の自分の仕事が「誰の痛みを和らげ、誰の喜びに騎がっているのか」というレンズを通して仕事の目的を再定義すること。これが、どんな仕事も「天職」に変える魔法です。 意味と豊かさのエコシステム 高次の動機 他者へ与え、貢献 しようとする意志。 意味のある 仕事 毎日のタスクに貢 献と喜びを見出す。 人生の開花 心身の健康、幸福、 豊かな人間関係の 実現。 他者への 愛と実践 深くされた個人が、 さらに良い職場と仕 事を生み出す。 働く動機が変われば、仕事の意味が変わる。仕事の意味が変われば、人生が開花する。開花した人生は、さらに良い仕事を生み出します。 次の一歩を踏み出すために 科学が示す通り、私たちが何のために働くか(動機)が、 私たちがどう生きるか(人生の開花)を決定づけます。 あなたは明日、どの「地図とコンパス」を使って、 自分の仕事に向き合いますか?
【背景】
■ 1. 出発点:人類の多くは「thriving(生き生きと栄えている)」状態にない
▼ 人間中心経営(Humanistic Management)という立場
▼ ESH(Ecosystem of Sacred Hospitality:聖なるもてなしの生態系)
■ 2. 「フローリッシング」とは何か:幸福より広い概念
▼ 幸福・ウェルビーイングの限界
▼ VanderWeeleによるフローリッシングの定義
▼ なぜ「一緒にしか」フローリッシュできないのか
■ 3. 職場とフローリッシングの関係:これまでの実証研究
▼ 人生のウェルビーイングと職場のウェルビーイングは互いに影響する
▼ 職場の「思いやりの風土」がフローリッシングを高める
▼ 「フローリッシングのビジネスケース」は強い
▼ 著者たちの問い
■ 4. 理論の核:Guillénの「動機の地図」
この論文の理論的土台は、2023年に急逝したバレンシア大学のManuel Guillén教授の著書(Guillén, 2021)にある動機づけの類型論です。論文はGuillén教授に捧げられています。
▼ 従来の動機理論の限界
▼ 追加すべき2つの善:道徳的善と霊的善
▼ 追加すべき2つの動機:「与える」と「返す」
▼ 4×4=16の動機マップ
■ 5. 仕事の4つの意味:job・career・calling・spiritual calling
▼ 「意味ある仕事」研究の背景
▼ 古典的な3分類:job・career・calling
▼ 4つの意味の定義(Guillén, 2021)
▼ 測定方法の先行研究
■ 6. 天職(calling)研究の先行知見
▼ 天職と良い結果の関連
▼ この論文に最も近い先行研究(スペインの教員調査)
▼ その他の関連研究
▼ 研究ギャップ(この論文が埋めようとする空白)
■ 7. 以上から導かれる4つの仮説
▼ 結果の予告
【研究内容】
■ 1. 研究の狙いと4つの仮説(おさらい)
■ 2. 調査対象とデータ収集
▼ 誰を調べたか
▼ 回答者の内訳(Table 1)
■ 3. 何をどう測ったか
▼ 仕事の4つの意味(動機)の測定
▼ フローリッシングの測定
■ 4. 分析方法
▼ PLS-SEM(部分最小二乗法による構造方程式モデリング)
▼ 分析の前に確認した「モデルの健全性」
■ 5. 結果
▼ 説明力と予測力
▼ 仮説検定の結果(Table 5)
(βは標準化係数。−1〜+1の値で、絶対値が大きいほど関係が強い)
▼ 結果の要約
■ 6. 考察
▼ この研究の貢献
▼ 組織レベルの示唆:フローリッシングを促す組織構造
先行研究が示してきた「組織として整えるべきこと」が改めて整理される
▼ 個人レベルの示唆:今の仕事を「天職」として捉え直す
▼ 宗教・霊性の役割
▼ 限界(著者自身が挙げているもの)
▼ 結論
■ 読み解きのポイント(日本の文脈で考えるための補足)
■16の動機と4つの仕事観
この論文の理論的骨格を一枚にまとめます。縦軸に「求める善の種類」(4段階)、横軸に「動機の向き」(4種類)をとり、その掛け合わせで16の動機ができます。
そして、その16のうちどれが強いかで、仕事観が4つに分かれます。
■ 1. 軸の説明
▼ 縦軸:求める善の4段階(下から上へ高次になる)
▼ 横軸:動機の4つの向き
■ 2. 16の動機(4×4マトリクス)
▼ 有用な善(物質的領域)
▼ 快い善(心理的領域)
▼ 道徳的善(倫理的領域)
▼ 霊的善(高次の霊的領域)
■ 3. 16の動機から導かれる4つの仕事観
論文では、16のうち以下の動機の強さを測り、それぞれの仕事観の得点にまとめています(Guillén, Ferrero & Hoffman, 2015に基づく対応)。
▼ job(単なる職):「生活のため」の仕事
▼ career(キャリア):「成長・承認・昇進のため」の仕事
▼ calling(天職):「他者や社会のため」の仕事
▼ spiritual calling(精神的な天職):「高次の存在とのつながりの中で」の仕事
■ 4. 4つの仕事観の「入れ子」構造
■ 5. 結果との対応
動画解説はこちら😊
https://youtu.be/2vfoxQF3rVI
会話形式での紹介はこちら😊
はぴテク相談室:「給料も上がって昇進もしたのに、なんか空しい」の話
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-02-1788327120/