2026.09.11

笑いのレパートリーが多い日ほど、幸せ

日常の幸福と「誰と何をするか」「笑いの幅」についての、日本の最新研究
大学生約50人に、スマホで1日3回×60日間、その場の幸福度を報告してもらう調査を2回実施頂きました。

調べたのは2つ。
①「何をしているか×誰といるか」の組み合わせで、幸福度はどう変わる?
②笑う、冗談を言う、日常に面白さを見つける…など、ユーモアの「種類の多さ」は幸福度と関係する?

結果①としては、
・一人でいるとき、勉強中、睡眠中は幸福度が低め。
・友達といるとき、体を動かす余暇は幸福度が高め。
ただ、面白いのが組み合わせ。
・友達といると幸せなのに、「友達と勉強」だと逆に下がる。
・家族といるだけだと幸福度低めなのに、「家族と外出」だと上がる。
・食事は幸せだけど、「一人で食事」だと効果が弱まる。
何をするかと誰といるか、セットで見ないと分からないんですね。
さらに、一緒にいる相手との「親密さ」も大事で、
親しい人と過ごす人ほど、そして、いつもより親しい相手といる瞬間ほど、幸せ。

結果②としては、
その日(またはその15分間)にやったユーモア行動の「種類」が多いほど、幸福度が高い。
大笑いした、冗談を言った、面白い動画を見た、自分の失敗をネタにした…
1種類増えるごとに、幸福度がぐっと上がる関連が、2つの研究の両方で確認されました。
笑いや笑えるバリエーションを持つのは大事ですね。研究では↓など。
・面白い動画・テレビ番組・漫画などを見た(読んだ)
・自分から冗談や面白い話をした
・日常生活の中に面白さを見つけた
・自分の失敗を笑ったり、ネタにしたりした

・誰かと何かをするなら、組み合わせを意識する。(仕事は仕事仲間と、遊びは友達と、外出は家族と)
・笑いは「量」より「レパートリー」。見て笑う、自分から笑わせる、日常に面白さを見つける、失敗を笑い飛ばす…と、いろんな笑い方をしてみる。
という感じでしょうか。
ーーー
Daily Happiness in Contexts: Associations of Activities, Social Companions, and Humor Use across Two 2-Month Experience Sampling Studies
文脈の中の日常的幸福:活動、同伴者、ユーモア使用の関連——2つの2ヶ月間経験サンプリング研究より
Nanako Kumasaki, Naoya Todo & Soichiro Matsuda(筑波大学・東京都立大学、日本)
Journal of Happiness Studies, 2026/8/29
https://doi.org/10.1007/s10902-026-01095-3

日常の幸福の設計図: 状況、他者、そして ユーモアの交差点 2つの60日間「経験サンプリング法」研究 から紐解く、幸福度の動的メカニズム [Research Insight] Kumasaki, Todo & Matsuda (2026) Gemini Notebook 幸福度の構成要素(Components of Happiness) 状況的コンテキスト (Situational Context) 能動的関与 (Active Engagement) 瞬間的な幸福 ~75% 幸福度の変動要因 個人の「内側」で変動する幸福度 (Within-person variance) データの分散分析(ICC: 0.20~0.27)によると、幸福度の違いの約75は「誰でもか(個人差)」ではなく、「その闘間、何をして、誰といて、どう関わっているか」によって生じています。 幸福は固定された性質ではなく、文脈依存のステート(状態)です。 Genius Notebook 記憶のバイアスを排除する「経験サンプリング法(ESM)」 Day in the Life 10:30 AM [Ping] 直近15分間、誰と何をしていましたか? 10:30 AM [Ping] 今の幸福度はどのくらいですか? 2:00 PM 2:00 PM Random PM [Ping] どんなユーモアを使いましたか? Random PM 回顧的なアンケート(1日の終わりに振り返る手法)は記憶の歪み(想起バイアス)を生みます。 人々の日常にリアルタイムで入り込み、瞬間的なスナップショットを集合させることで、ウェルビーイングの真の動態が明らかになります。 Generalist Notebook マクロとミクロの視点:2つの60日間調査 Macro Micro Study 1: 1日のマクロ視点 ⏰ タイミング: 固定時間(1日3回) 😊 幸福のスケール: 1日の全体的な幸福度(Daily Happiness) 🔗 他者との関わり: 大まかな関係性カテゴリー(家族、友人など) 😊 ユーモア指標: 1日を通じたユーモアの種類 Study 2: 15分のミクロ視点 ⏰ タイミング: ランダムな時間帯 😊 幸福のスケール: その瞬間の幸福度(Momentary Happiness) 🔗 他者との関わり: 関係性に加え、その瞬間の「親密さ(Intimacy)」を測定 😊 ユーモア指標: 直近15分間のユーモアの種類 📋 日単位(マクロ)でも分単位(ミクロ)でも、状況とユーモアが幸福を駆動する普遍的な要因であることが証明されました。 The Life Dashboard 幸福のベースライン:行動と他者のメインエフェクト 食事 (Eating) 友人との時間 (Friends) 能動的レジャー (Active Leisure) 外出 (Outings) 一人の時間 (Alone) 睡眠 (Sleep) 勉強 (Study) 単純な「メインエフェクト(主効果)」だけを見ると、友人と過ごすことやレジャーは幸福度を高め、一人でいることや仕事は幸福度を下げる傾向にあります。しかし、これだけでは物語の半分に過ぎません。 Gemma Notebook 文脈が結果を左右する:「行動×他者」の相互作用 一人 (Alone) 家族 (Family) 友人 (Friends) 仕事 (Work) 期待値以下 外出 (Outing) 期待値以上 食事 (Eating) 家族との外出は、それぞれ単独の効果を上回るシナジーを生む。 友人の存在は通常プラスだが、仕事・作業中に友人かいると幸福度は著しく低下する。 食事自体はプラスだが、一人での食事はそのポジティブな効果を減少させる。 誰といるか(Who)と何をしているか(What)を切り離して考えることはできません。友人の存在はレジャーには最適ですが、集中すべき仕事においては逆に幸福度を削ぐ「ノイズ」となり得ます。 Genius Notebook The Life Dashboard 「誰か」ではなく「どれだけ心が近いか」:親密さの乗数効果 相手との一般的な親密さ (Between-Person Intimacy) 日頃から親しいと感じている相手(強い結びつき)と過ごす時間は、一貫して幸福度を高上させる。 その瞬間の親密さ (Within-Person Intimacy) 普段の親しさに関係なく、「直近154分で相手と特に心が通じ合った」と感じる瞬間的な親密さも、幸福度を強力に増幅させる。 関係性の「ラベル(家族/友人)」以上に、その間間に知覚される心的な距離感が幸福を左右する重要なコンテキストとなります。 AI Gemini Notebooks 第2の柱:能動的な関与としての「ユーモアの幅」 ストレスや不快な感情を減らすために笑う 面白いメディア (動画・テレビ) を見る 自分の失敗を笑い飛ばす (自己受容) 心から大声で笑う ユーモアの幅 (Repertoire Breadth) 自分から冗談や 面白い話をする 何気ない日常の中に ユーモアを見つける 状況(与えられた場面)に対する「反応 (Engagement)」の質を測る指標。研究では、特定のユーモアが使われているわけではなく、いくつのユーモアを活用できるか (レパートリーの幅) に着目しました。 Gumma Notebook The Life Dashboard 「種類」ではなく「幅」が幸福をスケールさせる Study 1 (1日単位): 1日の中でより多くの種類のユーモアを使った日ほど、1日の幸福度が高い。 Study 2 (15分単位): 直近15分間に複数のユーモア行動(例:失敗を笑い飛ばし、冗談を言う)を組み合わせた時間ほど、幸福度が急上昇する。 [ Repertoire Breadth ] 状況にどう対応するか。 「笑う」だけでなく「日常から面白さを見つける」「ストレス緩和に使う」など、ユーモアの引き出し(幅)が多ほど、メンタルヘルスの強力なバッファーとなります。 Happiness score Number of humor types used 0 1 2 3 4 5 6 補完的モデル:日常の幸福を設計する3つのレイヤー Layer 3: ユーモアの幅 (Humor Breadth) - 状況にどう周ち、反応するか (アクティブなエンゲージメント) Layer 2: 他者と親密さ (Companions & Intimacy) - 誰といて、どう繋がっているか (コンテキストの最適化) Layer 1: 行動 (Activity) - 何をしているか(ベースライン) Synthesis Insight これらは重複するものではなく「補完的 (Complementary)」です。 「退屈な作業(マイナス)」も、 「親密な同伴(プラス)」と 「日常のユーモア(プラス)」を 重ね合わせることで、瞬間の 幸福度を能動的に書き換える ことが可能です。 Genesis Notebook 職場と人生に応用するアクション・ダッシュボード 状況のキュレーション (Curate
投稿者によるコメント・補足(5件)
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【背景】
▼ 1. なぜ「日常の幸福」を研究するのか
・幸福(happiness)は、心理学において中心的な研究テーマとされてきました。その理由は、幸福が心の健康だけでなく身体の健康とも関連することが示されているからです(Howell et al., 2007)。
・さらに、幸福な人は長生きする傾向があるなど、主観的ウェルビーイング(subjective well-being:本人が感じる人生や日々の良好さのこと)は健康や長寿に寄与することが指摘されています(Diener & Chan, 2011)。
・したがって、幸福が日常生活の中でどのように変動するのかを理解することは、幸福感のダイナミクス(時間的な揺れ動き)の解明だけでなく、健康とウェルビーイングを支える施策づくりにも重要だ、というのが本研究の出発点です。
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▼ 2. 幸福はどうやって測られてきたか——測定方法の系譜
幸福の測定には、これまでさまざまな方法が使われてきました。
・回顧式の質問紙(過去を思い出して答えるアンケート)(Demir & Weitekamp, 2007)
・インタビュー(Lam et al., 2012)
・日誌法(デイリーダイアリー:毎日の終わりにその日を記録する方法)(Fuligni & Hardway, 2006)
・経験サンプリング法(ESM: Experience Sampling Method:スマホなどで1日数回通知を送り、「今この瞬間」の気分や状況をリアルタイムで報告してもらう方法)(Csikszentmihalyi & Hunter, 2003)
・自己報告式のウェルビーイング尺度は大きく発展しており、99種類もの尺度をレビューした研究もあります(Linton et al., 2016)。
・しかし、回顧式の報告には「思い出しバイアス」(recall bias:記憶の歪みにより、実際の体験と報告がずれてしまうこと)の問題があり、日々の体験の細かな変動を捉えきれない可能性があります。
・その点、ESMはその場で(あるいは直後に)体験・活動・社会的状況を報告してもらうため、人々が日常を過ごす中で幸福がどう変動するかを調べるのに適した方法とされています(Shiffman et al., 2008; Hektner et al., 2007)。
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▼ 3. 幸福は「文脈」によって系統的に変わる
・ESMや関連手法を用いた研究の蓄積から、幸福は日常生活の文脈(コンテクスト)に応じて系統的に変動することが分かってきました。
・具体的には、時刻や曜日といった時間的要因、行っている活動の種類、その活動が生じる社会的状況などと幸福が結びつくことが示されています(Csikszentmihalyi & Hunter, 2003; Lathia et al., 2017; Quoidbach et al., 2019)。
・なお、Lathia et al.(2017)はスマホを使って幸福と身体活動の関連を調べた研究、Quoidbach et al.(2019)は幸福と社会的行動の関連を大規模に検討した研究です。
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▼ 4. 特に重要な文脈——「誰といるか」(社会的関係)
・文脈要因の中でも、社会的関係は重要な位置を占めます。
・先行研究では、一人でいるときよりも他者と交流しているときの方が幸福感が高いこと、また社会的つながりの質や親密さもウェルビーイングと関連することが示されています。
・出典としては、
 ・非常に幸福な人々は例外なく豊かな対人関係を持っていたことを示した研究(Diener & Seligman, 2002)
 ・社会的交流の「量」と「質」の両方がウェルビーイングと関連するかを検討した研究(Sun et al., 2020)
 ・高齢の夫婦において社会的機能と日々の幸福の関連を示した研究(Waldinger & Schulz, 2010)
などが挙げられています。
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▼ 5. 本研究の視点①——「活動×同伴者」の組み合わせで見る
・ここで著者らが注目するのは、活動の感情的な意味は社会的状況によって一様ではない、という点です。
・つまり、同じ活動でも「一人で行うか」「親しい人と行うか」「それほど親密でない相手と行うか」によって、体験のされ方が異なる可能性があります。
・このことから、日常の幸福は、活動単独・同伴者単独ではなく、「活動と同伴者の組み合わせ(activity–companion configuration)」との関係で記述する方が、より多くの情報を持つのではないか、というのが本研究の第一の視点です。
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▼ 6. 本研究の視点②——状況だけでは足りない:「ユーモア使用」という関わり方
・ただし、状況の情報だけでは、幸福報告に関連しうる日常体験のすべてを特徴づけることはできません。
・補完的な情報源として著者らが注目するのが、「人が日常体験にどう関わり、どう応答しているか」であり、その一領域がユーモア使用(humor use)です。
・日常のユーモア関連行動には、笑うこと、冗談を言うこと、ありふれた出来事に面白さを見出すこと、困難への対処にユーモアを使うことなど、複数の形があります。
・先行研究では、こうしたユーモア関連行動が、ポジティブ感情、社会的絆、ウェルビーイングと結びつくことが示されています。
 ・笑いを共有することが対人関係の親密化につながることを示した研究(Kurtz & Algoe, 2017)
 ・リーダーのユーモアが職場の対人資源として機能することを論じた研究(Cooper et al., 2018)
 ・ユーモアに基づくポジティブ心理学的介入(幸福感を高めるための意図的なトレーニング)の効果と、その効果が性格特性によって異なることを示した研究(Wellenzohn et al., 2018)
・本研究では、こうしたユーモア関連の関わり方を「その評価期間中にどれだけ幅広く行ったか」という観点から捉え、これをユーモア・レパートリーの幅(humor repertoire breadth)と呼びます。なお、測定項目の開発にあたっては、ユーモアを7つの習慣として訓練するプログラムを提唱したMcGhee(2010)が参照されています。
・また、日々のユーモア行動と主観的ウェルビーイングの関連を日誌法で示した先行研究(Heintz, 2017)も、この視点の裏付けとなっています。
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▼ 7. 二つの視点の関係——「相補的」であるという枠組み
・以上を整理すると、先行研究は大きく二つの流れに分かれます。
 ・幸福は日常の活動や社会的状況によって系統的に変動する(Csikszentmihalyi & Hunter, 2003; Quoidbach et al., 2019)
 ・ユーモア関連行動は対人的・ウェルビーイング的なポジティブな結果と関連する(Kurtz & Algoe, 2017; Cooper et al., 2018; Wellenzohn et al., 2018)
・「活動×同伴者」の文脈は、幸福報告を取り巻く状況(何をしていて、誰がいたか)の情報を加えます。一方、ユーモア・レパートリーの幅は、その期間に本人が体験へどう関わったかの情報を加えます。
・この二つは、幸福の評点そのものには含まれない、異なる種類の情報を提供するため「相補的」だと位置づけられます。これが本研究の枠組みです。
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▼ 8. 補足:Study 2の背景となる「親密さ」研究
・研究2では、社会的文脈の記述をさらに精緻化するため、同伴者との知覚された親密さ(perceived intimacy:相手をどれくらい近しく感じているか)の評定が追加されます。
・その背景として、親密さを日常生活における社会的関係の質の指標として用いた先行研究が挙げられています。
 ・親密さを対人プロセスとして理論化した古典的研究(Reis & Shaver, 1988)
 ・コミュニケーション手段ごとに、会話の長さや笑いが主観的幸福に及ぼす効果を検討した研究(Vlahovic et al., 2012)
・「家族」「友人」といった関係タイプの分類だけでは、同じカテゴリ内の関係の質の違い(仲の良い友人か、そうでもない友人か)を捉えられない——これが親密さ評定を導入する理由です。
ーー
▼ 9. まとめ:先行研究から本研究への流れ
・幸福は健康にも関わる重要な構成概念である(Howell et al., 2007; Diener & Chan, 2011)
 ↓
・リアルタイム測定(ESM)により、日常の中での幸福の変動を捉えられるようになった(Csikszentmihalyi & Hunter, 2003; Shiffman et al., 2008)
 ↓
・幸福は活動や社会的状況といった文脈によって系統的に変わる(Quoidbach et al., 2019 ほか)
 ↓
・特に「誰といるか」とその関係の質が重要(Diener & Seligman, 2002; Sun et al., 2020)
 ↓
・ただし状況情報だけでは不十分で、「体験への関わり方」としてのユーモア使用も幸福と関連する(Kurtz & Algoe, 2017; Heintz, 2017 ほか)
 ↓
・そこで本研究は、「活動×同伴者の文脈」と「ユーモア・レパートリーの幅」という二つの相補的な情報が、日単位・瞬間単位の両方の時間スケールで幸福と結びつくかを、2つの60日間ESM研究で検証する

コメント 2

【研究内容】
▼ 1. 研究全体の構成
・本研究は、2つの60日間の経験サンプリング法(ESM:スマホ通知で1日数回、その場の気分や状況を報告してもらう方法)研究から成ります。
・検証したい仮説は次の2つです。
 ・幸福は「活動×同伴者」の文脈によって変動する
 ・「ユーモア・レパートリーの幅」(その期間に行ったユーモア関連行動の種類の多さ)が広いほど幸福が高い
・研究1は「日単位」、研究2は「瞬間単位」と、異なる時間スケールで検証している点が特徴です。
ーー
▼ 2. 研究1の方法
・参加者
 ・日本の大学の学部生・大学院生27名をスノーボールサンプリング(知人の紹介で参加者を広げていく募集方法)で募集し、26名(男性10名、女性16名、19〜25歳)が完了。
 ・報酬は回答数に応じて最大2,700円。
・手続き
 ・スマホにESMアプリ「PACO」をインストールし、2020年9月6日〜12月6日の期間内で60日間連続で回答。
 ・通知は1日3回(10:30、14:00、23:00)。1回の回答は約30秒。
・測定内容
 ・昼の調査:直前10分間の幸福(瞬間的幸福)を8件法(1=不幸のどん底、8=幸福の絶頂)で評定し、あわせてその間の活動と一緒にいた人を自由記述で回答。
 ・夜の調査(23:00):その日1日全体の幸福(日次幸福)と、その日に行ったユーモア関連行動を回答。
 ・幸福の項目はCsikszentmihalyi & Hunter(2003)に基づき、活動・同伴者の分類はQuoidbach et al.(2019)、Smetschka et al.(2019)、Kahneman et al.(2004)に従ってコーディング(自由記述をカテゴリに分類する作業)されました。
・ユーモア使用の測定
 ・McGhee(2010)に基づき開発された6項目から、その日当てはまるものをすべて選択。
  ・面白い動画・テレビ・漫画などを見た
  ・大笑いした
  ・自分から冗談や面白い話をした
  ・日常の中に面白さを見つけた
  ・自分の失敗を笑ったりネタにしたりした
  ・笑うことでストレスや嫌な気持ちが和らいだ
 ・チェックした項目数(0〜6)を「日次ユーモア・レパートリーの幅」としました。
・コーディングの信頼性
 ・第2のコーダー(分類作業を行う人)が150件を独立に分類し、一致度を確認。活動分類は一致率86.5%(κ=0.53)、同伴者分類は一致率96.4%(κ=0.89)と高い信頼性でした(κ=カッパ係数:偶然の一致を除いた一致度の指標)。
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▼ 3. 研究1の分析方法
・分析にはマルチレベルモデル(多層モデル:「個人の中での繰り返し測定」が「個人」の中に入れ子になったデータ構造を扱う統計手法)を使用。Rのlme4パッケージ(Bates et al., 2015)で推定されました。
・モデルI(瞬間的幸福の予測)
 ・瞬間的幸福を、曜日タイプ(平日/週末)、活動、同伴者、および活動×同伴者の交互作用(組み合わせによる効果)で予測。
 ・変数の選択はAIC(赤池情報量規準:モデルの当てはまりと簡潔さのバランスを評価する指標。小さいほど良い)に基づく前進選択で行い、過剰適合(データに合わせすぎて一般性を失うこと)を防ぐため、十分な観測数と参加者数がある組み合わせのみを検討対象としました。
・モデルII(日次幸福の予測)
 ・日次幸福を、日次ユーモア・レパートリーの幅のみで予測するシンプルなモデル。
ーー
▼ 4. 研究1の結果
・回答状況
 ・26名から計3,924回答、平均回答率83.9%と高水準。
・活動と同伴者の分布
 ・活動は勉強(25%)、外出(15%)、食事(10%)などが多く、同伴者は「一人」が64%と最多。友人21%、家族8%、その他7%。
・モデルI:瞬間的幸福の予測
 ・ICC(級内相関係数:全変動のうち個人差で説明される割合)は0.24。つまり幸福の変動の約24%が個人差、残り約76%はその人の中での変動でした。
 ・幸福が低かったのは、睡眠中(−0.74)、勉強中(−0.47)、一人でいるとき(−0.31)。
 ・幸福が高かったのは、能動的余暇(スポーツなど体を動かす余暇、+0.19)、友人といるとき(+0.27)。
 ・注目すべき交互作用として、「友人と仕事」は主効果から予想されるより幸福が低い(−0.69)という結果が得られました。
 ・モデル全体で、固定効果(活動や同伴者などの説明変数)が瞬間的幸福の分散の10%を説明しました。
・モデルI結果の解釈
 ・友人といることは一般に幸福と結びつくのに、「友人と仕事」では逆に下がる——つまり活動と幸福の関連は社会的文脈に依存することが示されました。
 ・著者らは、「友人」という分類の粗さ(同じ友人でも親密さが違う)が影響している可能性を指摘しています。これが研究2で親密さを測る伏線になります。
・モデルII:日次幸福の予測
 ・日次ユーモア・レパートリーの幅は日次幸福と正の関連(推定値0.38)。つまり、その日に行ったユーモア関連行動の種類が1つ増えるごとに、日次幸福が約0.38ポイント高い傾向でした。
 ・このモデルは何も説明変数を入れないモデルよりはるかに当てはまりが良く(ΔAIC=308.7)、固定効果だけで日次幸福の分散の21%を説明しました。
 ・この結果は、日々のユーモア行動とウェルビーイングの関連を示した先行研究(Heintz, 2017; Wellenzohn et al., 2018)と整合的です。
・研究1の限界
 ・ユーモアは1日の終わりにまとめて測定したため、どの場面でユーモアが使われたかは分かりません。
 ・またアプリの技術的問題で通知が届かない参加者がおり、アラーム設定で対応しました。
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▼ 5. 研究2の目的——研究1の2つの精緻化
・精緻化①:社会的文脈をより細かく
 ・研究1は同伴者を「関係タイプ」(家族・友人など)で分類しましたが、同じカテゴリ内でも関係の質は様々です。
 ・そこで研究2では、先行研究(Reis & Shaver, 1988; Vlahovic et al., 2012)にならい、同伴者との知覚された親密さ(どれくらい近しく感じるか)の評定を追加しました。
・精緻化②:ユーモアを「直近15分」で測定
 ・研究1の「1日単位」ではなく、直前15分間のユーモア使用を毎回の通知で尋ねることで、ユーモアと瞬間的幸福の関連を検証できるようにしました。
・その他の改善
 ・研究1では通知が固定時刻だったため、時刻の偏りを減らす目的で、研究2では別のシステムを使い、ランダムな時刻に通知を送りました。
ーー
▼ 6. 研究2の方法
・参加者
 ・日本の大学の学部生・大学院生を募集し、最終的に24名(男性3名、女性19名、性別未回答2名、18〜25歳)。報酬は最大2,700円。
・手続き
 ・LINEを通じてWebベースのESMプラットフォームから通知を受信。
 ・2021年11月10日〜2022年11月5日の間に、各参加者が連続60日間参加。
 ・通知は8:00〜22:00の間にランダムな時刻で1日3回(最低2時間間隔)。1回の回答は約70秒。
 ・事前にCES-D(うつ症状を測る自己記入式尺度)の日本語版(Shima et al., 1985)に回答しましたが、これは記述目的のみで分析には使用されていません。
・測定内容
 ・瞬間的幸福:7件法(1=全く幸せでない、7=とても幸せ)。
 ・活動・同伴者:研究1と同じ項目に加え、同伴者との親密さを7件法(1=全く親しくない、7=とても親しい)で評定。
 ・ユーモア使用:研究1と同じ6項目について、直前15分間に行ったものを選択。チェック数(0〜6)が「直近15分のユーモア・レパートリーの幅」。
・信頼性
 ・活動コーディングの一致率は87.1%(κ=0.54)と、研究1と同水準でした。
ーー
▼ 7. 研究2の分析方法
・モデルIII(瞬間的幸福と社会的相互作用)
 ・研究1と同じ枠組みですが、親密さの扱いに工夫があります。
 ・親密さは「他者がいるとき」のみ効果を推定するゲーティング(条件付け)方式を採用。
 ・さらに親密さを、個人内成分(その人の普段と比べて親密さが高い/低い)と個人間成分(普段から親密な相手と過ごしがちな人かどうか)に分解して投入しました。
・モデルIV(瞬間的幸福とユーモア使用)
 ・瞬間的幸福を、直近15分のユーモア・レパートリーの幅で予測。研究1のモデルIIと同じシンプルな構造です。
ーー
▼ 8. 研究2の結果
・回答状況
 ・24名から計2,607回答。回答率は31〜91%(平均60%)。
・モデルIII:瞬間的幸福と社会的相互作用
 ・ICCは約0.20(変動の約20%が個人差)。
 ・幸福が低かったのは、一人でいるとき(−0.78)、勉強中(−0.46)、家族といるとき(−0.32)。
 ・幸福が高かったのは、食事(+0.56)、受動的余暇(テレビ視聴など、+0.46)、能動的余暇(+0.42)、外出(+0.20)、家事(+0.23)。
 ・交互作用は2つ観察されました。
  ・「外出×家族」はプラス(+0.40):家族との外出は特に幸福と結びつく(家族の主効果はマイナスなのに、外出と組み合わさると様相が変わる点が興味深いところです)
  ・「食事×一人」はマイナス(−0.27):食事のポジティブな関連は、一人で食べると弱まる
 ・親密さについては、他者がいる場面で、個人間成分(+0.53)・個人内成分(+0.16)の両方が幸福と正の関連を示しました。つまり「普段から親密な人と過ごす人ほど幸福」かつ「その人にとっていつもより親密な相手といる瞬間ほど幸福」という二重の関連です。
 ・固定効果で瞬間的幸福の分散の22%を説明しました。
・モデルIV:瞬間的幸福とユーモア使用
 ・直近15分のユーモア・レパートリーの幅は瞬間的幸福と正の関連(推定値0.48)。
 ・固定効果で分散の14%を説明し、研究1の日単位の結果と一致する形で、瞬間単位でもユーモアの幅と幸福の関連が確認されました。
ーー
▼ 9. 総合考察
・2つの60日間ESM研究を通じて、日常の幸福を特徴づける2種類の相補的な情報が示されました。
 ・瞬間的幸福は「活動×同伴者」の文脈によって変動する(何をしていて、誰がいたかという状況情報)
 ・ユーモア・レパートリーの幅は、日単位でも瞬間単位でも幸福と正の関連(体験への関わり方の情報)
・活動×同伴者の知見について
 ・活動と同伴者は、別々に見るより組み合わせで見た方が情報量が多いことが、両研究で確認されました。これはCsikszentmihalyi & Hunter(2003)やQuoidbach et al.(2019)の先行研究を拡張する結果です。
 ・さらに研究2では、関係タイプだけでは捉えきれない変動を親密さが説明することが示されました(Reis & Shaver, 1988; Vlahovic et al., 2012の流れを裏付ける結果)。
・ユーモアの知見について
 ・日単位(研究1)と瞬間単位(研究2)という異なる時間スケールで結果が収束した点が重要です。
 ・ただし著者らは、これらの分析は関連を示すもの(相関的)であり、「ユーモアが幸福を高める」という因果の方向は確定できないと明確に注意しています(Heintz, 2017; Wellenzohn et al., 2018)。
・本研究の中心的貢献
 ・「状況情報」と「関わり方の情報」という2つの視点で日常の幸福を記述する相補的枠組みの提示です。
 ・この2つは幸福の評点そのものには含まれない異なる情報を提供するため、両方を見ることで幸福報告をより豊かに特徴づけられます。
 ・なお、この相補性は2つの測定が同じ出来事を指すことを要求しません(研究1では文脈は昼、ユーモアは夜にまとめて測定されており、この点で特に重要な前提です)。
ーー
▼ 10. 限界と今後の展望
・自己報告のみに基づくため、弱い紐帯(weak ties:顔見知り程度の浅いつながり)との短い交流などが過小報告された可能性があります(Sandstrom & Dunn, 2014)。今後はEAR(Electronically Activated Recorder:日常の音声を自動録音して社会的行動を観察する装置、Mehl, 2017)などの自然観察的手法との併用が期待されます。
・個人単位のサンプルサイズ(研究1:26名、研究2:24名)は控えめでした。
・「誰といたか」は測ったものの、交流の形や質(会話していたのか、ただ同じ空間にいたのか等)は区別していません。
・活動カテゴリは短い自由記述からのコーディングのため、粗い文脈指標として解釈すべきです。
・2つの研究はコロナ禍の異なる時期(研究1は2020年、研究2は2021〜2022年)に実施されており、社会状況の違いが活動や交流の範囲に影響した可能性があります。
ーー
▼ 11. ひとことまとめ
・日常の幸福は、「何を・誰としているか」という状況と、「ユーモアという形でどれだけ幅広く体験に関わっているか」という2つの窓から、より豊かに記述できる——これが本研究のメッセージです。

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動画解説はこちら😊
https://youtu.be/lGjb2U1o0c8

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ショート動画解説はこちら😊
https://youtube.com/shorts/ZH0_c4eBJ90?feature=share

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会話形式での紹介はこちら😊
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-11-1789099020/

論文紹介 ありがとうなんとかなる 主観的幸福・幸福測定人間関係・恋愛感情・レジリエンス

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