幸せの国ブータンの「GNH(国民総幸福)」と気候変動についての、オーストラリアの最新研究
ブータンの政策キーパーソン41人へのインタビューと文献分析から調査頂きました。
いつもと毛色が違うんですが、気候変動対策を、いかに幸せ指標に組み込んで取り入れたかというブータンの事例で、
政治や、企業なんかで、他の概念と幸せを融合させていく方法としても参考になります。
ブータンは、GDPではなく「国民の幸せ」を国の目標にしている国。
9つの領域・33の指標で国民の幸福度を測って、
新しい政策は全部「幸せに貢献するか」の審査を通らないと承認されない。
一方で、世界で唯一のカーボンネガティブ国(CO2を出す量より森が吸う量の方が多い国)なのに、
気候変動の被害はめっちゃ受けやすい。という切ない立場でもあります。
そこで今回の研究は、
「気候変動を、幸福の測定と政策審査の仕組みに直接組み込めないか?」を行った事例を分析。
気候変動は33指標のぜんぶと関係していることが判明。
生態系だけじゃなく、
- 睡眠(熱帯夜で眠れない)
- 心の健康(災害のトラウマ)
- 文化(お祭りや聖地が災害でダメージ)
- 家族(移住で離ればなれ)
まで、幸せのあらゆる側面に気候変動が効いてくる。
そして影響の中身を整理すると、
「気温ストレス」「災害」「生計の不安定」「心理的ストレス」など10種類にまとまり、
これを各指標に埋め込んで、幸福の測定がそのまま気候対策のモニタリングにしていこう。という提案。
気候変動って環境問題というより、「幸せの問題」なんだなぁ。と捉え直させてくれる研究。
気候対策も「地球のため」より「みんなの幸せのため」と考えた方が、自分ごとになって進みますね。
(これ大事で、道徳の第一歩目は、自分のメリットにもなるよね、と自覚することが有効。という研究もあります。)
会社で幸福度測る際は、ビジョンミッションとかも、ESG的な活動とか、もろもろ幸せに繋がっているんだよ!とデータで出す事で、
それ以降推進しやすくなったりもしますね😊
日本でも環境省さんが、ウェルビーイングを最上位の目標に掲げられていますが、そことも繋がる話ですね。
Exploring opportunities to integrate climate change into Gross National Happiness for Bhutan and its application for global wellbeing-centred Climate Resilient Development
ブータンの国民総幸福(GNH)への気候変動統合の機会の探索と、ウェルビーイング中心の気候レジリエント開発への世界的応用
Tashi Dorji(エディス・コーワン大学、オーストラリア), Angus Morrison-Saunders & David Blake
Environmental Management, 2026/5/28
https://doi.org/10.1007/s00267-026-02501-5
気候変動を 「幸福」の視点から 解決する ブータンのGNH(国民総幸福量)から学ぶ、 世界のためのウェルビーイング中心の気候対策 気候変動は「環境や経済」だけの問題ではない 従来の焦点:物理的・経済的被害 気温上昇 洪水被害 経済損失 見過ごされる焦点:人間の内面と文化 気候不安 文化遺失 コミュニティ分断 IPCCの第6次評価報告書(AR6)は、気候対策の核に「社会的公平性」と「人間のウェルビーイング(幸福)」を據えることを強く提唱しています。 しかし現実の政策は依然として「気温上昇の抑制」や「インフラ・経済的損失の回避」に集中しており、人々の心理的・文化的な幸福への深刻な影響が見過ごされています。 アプローチのパラダイムシフト 従来のアプローチ | ウェルビーイング中心のアプローチ 目的 経済成長(GDP)と炭素排出削減 | 人間と地球の双方の繁栄 指標 物理的被害・経済的損失 | 心理・文化・社会への多角的な影響 焦点 インフラ保護と技術的解決 | レジリエンス(回復力)と社会的支援ネットワーク 解決策 トップダウン型の制度設計 | 地域固有の知識を含む多様な知の統合 ブータンの気候パラドックス 世界唯一の「カーボンマイナス」国 (排出量より吸収量が多い) 極めて高い「気候リスク脆弱性」 (ヒマラヤの氷河融解、洪水など) ブータンの「無群の脆弱性」 (ヒマラヤの氷河融解、洪水など) 圧倒的な環境保全を実現しているにもかかわらず、ブータンは気候変動の最前線に立たされています。この矛盾に立ち向かうため、同国は国家の基本理念である「GNH(国民総幸福量)」を気候対策の基盤に統合する独自の挑戦を始めています。 Gemesis Notebooks GNH(国民総幸福量)を構成する「9つの領域」 心理的幸福 生活水準 環境の多様性 良い統治 地域の活力 文化の多様性 教育 時間の使い方 健康 GNHは単なるスローガンではありません。 「33の客観的・主観的指標」を用いて国民の生活を多角的に測定し、政策を決定するための極めて実践的なガバナンス・システムです。 Genuine Notebook 気候と幸福をつなぐ「ミッシングリンク」 GNH(幸福) 10の ストレス要因 気候変動 これまでGNHの精緻な枠組みの中に、「気候変動」の影響」は明示的に組み込まれていませんでした。 最新の研究により、気候変動が人々の幸福をどのように脅かすかを示す 【10のストレス要因】が特定されました。 これをGNHに直接統合することが、社会変革の第一歩となります。 気候が人々の幸福を奪う「10のストレス要因」 温度ストレス (猛暑・熱波) 水攻気候の変動 (干ばつ・豪雨) 災害への曝露 (洪水・土砂災害) 氷河・雪氷圏の変化 (氷河融解) 生態系・生物多様性 の危機 生計・収入の不安定性 (農業被害など) インフラの分断 (道路・病院の損壊) 移住・避難の圧力 (コミュニティの分断) 健康と疾病リスク (感染症の増加) 心理的・感情的ストレス (トラウマ・伝統喪失) 統合アプローチ①:測る(GNH指標への組み込み) 100のストレス要因 直接ストレス 水文気候の変動 災害への備え GNH 33のGNH指標 気候への感度を備えたウェルビーイング指標への進化 全国調査で使われる「33のGNH指標」に、10のストレス要因を連動させます。 【具体例】生活満足度の測定 「心理的幸福」の指標を測る際、単なる気分ではなく「気候災害による生計の不安定さ」や「トラウマ」などの要因を組み込んでスコア化します。 統合アプローチ②:審査する(政策スクリーニング) 新しい政策案 GNH政策スクリーニングツール 承認・実行 気候ストレス要因を含む23の評価基準 すべての国家政策を評価 データベースでは、新しい政策を導入する際「GNH政策スクリーニングツール」を通過する必要があります。ここに気候ストレス要因を新たに組み込みます。 得られるインパクト すべての政策が「人々の幸福」を向上させるかをだけでなく、「気候変動」へのレジリエンス」を損なわないかを強制的に評価する仕組みが完成します。 測定と実行が回す「レジリエンスの両輪」 現状を測る (全国GNH調査) 気候渋動に強い国づくり (Climate Action) 政策を正す (スクリーニング審査) 指標によって気候変動の影響を「可視化」し、スクリーニングによって政策の方向を「制御」する。 この2つのアプローチが相互に補完し合うことで、GNHは単なる哲学から、 極めて強力な気候アクションの実践ツールへと進化します。 ブータンのモデルを世界へ:CRDの実現 GNH特有の宗教的・文化的な背景はブータン独自のものですが、その「仕組み」の核となる哲学は、世界中の中央政府や自治体で応用可能です。 気候変動に強い開発(CRD: Climate Resilient Development) IPCCが提唱する最新の国際フレームワーク。緩和・適応・持続可能な開発を統合し、人間のウェルビーイングを最終目的に掲げるアプローチです。 ウェルビーイング中心の気候対策:6つの実践経路(1/2) 1 ガバナンスと リーダーシップ テクノロジや効率だけではなく、 倫理や「人間の価値観」を意思 決定の中心に据える。 2 指標の組み込み (Metrics) 気候政策のモニタリングの中に、 「心理的・文化的・社会的な幸福 度」を測る指標を正式に設定する。 3 多様な知識の統合 (Knowledge) 科学的なデータ(降水量など)に 加え、地域社会の経験や伝統的 知識を対等に尊重する。 ウェルビーイング中心の気候対策:6つの実践経路(2/2) 4 地域レジリエンスと 世界枠組みの接続 地域の文化に根ざした活動を、パリ協定などの国際的な目標と 連動させる。 5 資金の再配分 (Finance) 防波堤などのインフラだけでなく、 「心のケア」や「コミュニティの絆の維 持」に対しても気候基金を投入する。 6 多層的な統合 (Multi-level Integration) 地域、国、世界レベルで重なる気候影響 (例:地域のトラウマ vs 国の経済的打撃) を認識し、貫したアプローチをとる。 人間と地球がともに繁栄する 「未来への設計図」 気候変動 幸福/GNH 10の ストレス 要因 ①ガバナンスと ②指標の組み込み ③多様な知識の統合 ④地域しレジリエンスと ⑤資金の再配分 ⑥多国的な統合 リーダーシップ 世界秩序の琴統 ウェルビーイング中心のCRD(気候変動に強い開発) 気候と幸福の結びつき(10のストレス)を正確に把握し、6つの経路を通じて 社会システム全体に実装する。これが統合的アプローチの統括です。 Geonesis Notebook 真の気候レジリエンスとは 単に災害から「生き延びる」ための防壁を築くことではありません。 不確実な未来の中で、私たちが「いかに豊かに生きるか」を 社会のシステムから再構築することです。 ブータンの挑戦は、気候対策の究極の目的が、炭素の削減そのものではなく 「人間のウェルビーイング」であることを、世界に
【背景】
▼ 1. 出発点:気候変動がウェルビーイングを脅かしているという認識
▼ 2. 国際的な政策の転換点:IPCCによるCRDの提唱
▼ 3. 既存研究の問題点:知見がバラバラで統合されていない
▼ 4. 本研究に直接つながる先行研究:著者ら自身の4本の研究
▼ 5. GNHそのものについての先行研究
▼ 6. まとめ:先行研究の流れと本研究の位置づけ
【研究内容】
▼ 1. 研究の問いと全体の構え
▼ 2. 研究方法(前半):気候変動をGNHに統合するための方法
▼ 3. 研究方法(後半):世界応用のための方法
▼ 4. 結果1:GNH指数(9領域・33指標)への統合
▼ 5. 結果2:GNH政策スクリーニングツール(23決定要因)への統合
▼ 6. 結果3・考察:世界応用のための6つの経路
▼ 7. 限界と移転可能性の課題
▼ 8. 結論:この研究が示したこと
会話形式での紹介は、こちら😊
はぴテク相談室:気候変動のニュースで気が滅入るあなたへ。「地球のため」より「幸せのため」の話
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-15-1789462320/