はぴテク相談室:やりがいのある毎日と、ゲームの罪悪感の話
はぴテクさん、聞いてください。春に転職して、今の仕事がすごくやりがいがあるんです。毎日「意味のあることしてるなぁ」って充実していて。ただ一つだけ気になっていて、夜にゲームや動画をダラダラ見ていると、「この時間も、もっと意味のあることに使った方がいいのかな」って、ちょっと罪悪感があるんですよね。
やりがいのある毎日、素敵ですね。その悩み、ちょうどぴったりの研究があるんです。オランダの研究チームが、189人に14日間、1日5回スマホで「今なにしてる?その活動はどれくらい楽しい?どれくらい意味がある?今どんな気分?」と聞き続けた研究です(Röder et al., 2026)。
1日5回!それはリアルですね。で、やっぱり意味のある活動の方が、気分にいいんですか?
その瞬間で見ると、良い気分を上げていたのは両方でした。でも、嫌な気分とストレスをしっかり下げていたのは、「楽しい活動」の方だったんです。意味のある活動は、良い気分をそこそこ上げるものの、嫌な気分は少し下がる程度で、ストレスとはほぼ無関係でした。
え、意外です。なんとなく、意味のあることの方が上だと思ってました。
実は研究者たちも、「楽しいことはその場限りで、意味のあることは後からじわじわ効くはず」と予想していたんです。昔から、快楽より意味や自己実現こそが良い人生だ、という考え方もありますしね。
後からじわじわ。それはどうだったんですか?
約2.5時間後の気分も調べたところ、一見、効果が少し残っているように見えました。でも、「気分の持ち越し」の分を差し引くと、意味のある活動も楽しい活動も、追加の効果はほぼゼロになったんです。
気分の持ち越し、ってなんですか?
「感情の慣性」とも呼ばれるもので、朝にいいことがあると、お昼まで機嫌がいいまま、というような現象です。2.5時間後に残って見えた効果は、「活動が後から効いた」というより、「その時の良い気分が続いていただけ」で説明できた、ということなんです。
うーん、じゃあやりがいのある仕事をしても、気分的には意味がないってことですか?ちょっとショックです。
いえいえ、そこは安心してください。この研究はあくまで「数時間単位の気分」の話です。やりがいのある仕事が、何か月、何年という単位で人生の充実感を育てることを否定するものではありません。それに、うれしい発見もあって、仕事や勉強のようなストレスがたまりそうな活動が多かったのに、意味を感じることとストレスはほとんど関係がなかったんです。意味を感じることで、ストレスからの回復が助けられているのかもしれない、と著者たちは考えています。
なるほど。やりがいは、ちゃんと支えになってるんですね。じゃあ、ゲームの罪悪感の方は?
楽しい活動は、嫌な気分とストレスを下げる力が一番強かったので、立派な回復の時間です。罪悪感を持つ必要はありませんよ。一つだけ小ネタを言うと、楽しい活動が終わった後、嫌な気分がほんの少し戻る傾向も見られました。ただ、これはごく小さな効果なので、気にしすぎなくて大丈夫です。
ゲームをやめた後の、ちょっと虚しい感じ、わかります(笑)
ですよね(笑)。それと面白いのが、活動ごとの違いです。勉強は意味は高いけど楽しさは低め。テレビやゲームは楽しいけど意味は低め。そして、運動、友達と会う、外食、美術館や映画などの文化活動は、意味も楽しさも両方高かったんです。
両方を満たしてくれる活動があるんですね!
そうなんです。幸せの4つの因子で言うと、やりがいのある仕事は「やってみよう因子(自己実現と成長)」、友達との食事は「ありがとう因子(つながりと感謝)」を満たしてくれますし、自分のペースで楽しむゲームは「ありのままに因子(マイペース)」にも通じるかもしれません。いろいろな幸せを組み合わせるイメージですね。
明日から、具体的に何をすればいいですか?
3つ提案します。1つ目は、仕事の合間に小さな楽しいことを挟むこと。気分は持ち越されるので、「ごきげんのバトン」をつないでいく感覚です。2つ目は、週に1つ、意味と楽しさを両方満たす活動を入れること。3つ目は、ゲームや動画は「今日は楽しむ時間」と決めて、罪悪感なく味わうことです。
ごきげんのバトン、いい言葉ですね。
ありがとうございます。ただ、この研究は若いオランダの人が中心で、気分も活動の評価も自己申告なので、日本の一人ひとりにそのまま当てはまるとは限りません。ぜひ、ご自身で試して、しっくりくる組み合わせを見つけてみてください。
今夜は堂々とゲームします!それで週末は、友達を誘ってご飯に行きます。
最高ですね。やりがいも、楽しさも、つながりも。今この瞬間のごきげんを積み重ねていきましょう。
■ 今日のまとめ
- 楽しい活動は、良い気分を上げ、嫌な気分とストレスを下げる力が強い。罪悪感なく楽しんでOK
- 意味のある活動は、良い気分を上げ、ストレスとはほぼ無関係。ただし、数時間後に「上乗せ」で効く効果は見られなかった
- 気分は持ち越されるので、小さな楽しさをこまめに挟み、意味も楽しさも満たせる活動(運動・友達・食事など)を組み合わせるのがおすすめ
■ 出典・注意事項
- 出典:Röder, T., Olaru, G., van Scheppingen, M., & van Roekel, E. (2026). The Temporal Effects of Meaningful and Pleasurable Activities on Affective Wellbeing and Stress: Insights from an Experience Sampling Study. Journal of Happiness Studies, 27, 125. https://doi.org/10.1007/s10902-026-01108-1
- 和訳:「意味のある活動と楽しい活動が感情的ウェルビーイングとストレスに与える時間的効果:経験サンプリング研究からの知見」
- 著者の所属:ラドバウド大学、ティルブルフ大学(オランダ)、シャルロッテ・フレゼニウス大学(ドイツ)
- 対象は主にオランダの若い成人(平均25.8歳、女性約75%、心理学部の1年生が多い)で、他の年代や文化にそのまま当てはまるとは限りません
- 気分も活動の評価も自己申告で、その時の気分が「楽しさ」や「意味」の評価に影響している可能性があります
- 観察研究のため、活動が気分を「変えた」という因果関係を直接示したものではありません
- 扱っているのは約2.5時間という短い時間スケールです。意味のある活動が長期的に人生の充実感を育てる可能性を否定するものではありません
- 幸せの4つの因子(前野隆司)との対応づけは、本論文の内容ではなく、はぴテクによる解釈です
論文の紹介はこちら
楽しいことと、人生に意味のあることはセットにする
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-24-1790215320/