はぴテク相談室:息子がアニメばかり見ていて心配、という話
高校生の息子が、休みの日はずっと部屋でアニメを見ているんです。友達と出かける様子もなくて。このまま引きこもったらどうしようって、正直不安で。
それは心配になりますよね。ちなみに、息子さんはどんなアニメを見ているか、ご存知ですか?
えっと、ONE PIECEとか、あとジブリの映画は何度も繰り返し見てますね。トトロとか、もののけ姫とか。
なるほど。実は今年、ドイツで「アニメやマンガが好きな人の心の健康」を調べた研究が出たんですが、その話をしてもいいですか?
ぜひ。やっぱりアニメ好きは心が不健康、みたいな結果なんですか?
半分正解で、半分違います。ドイツの一般成人2,591人を調べたところ、アニメやマンガに関心がある人は、ない人に比べて、抑うつや不安、孤独感がわずかに高かったんです。ただし「わずかに」です。差はかなり小さくて、幸せ度や生きがいには違いがありませんでした。
じゃあ、やっぱりちょっとは心配した方がいいんですね。
ここからが面白いところで、「何を見ているか」で結果がまったく変わるんです。ジャンル別に分けて調べたら、ジブリ作品が好きな人は、抑うつも不安も引きこもり傾向も低くて、しかも生きがいが高かったんですよ。
えっ、ジブリだけ逆なんですか?
ジブリが一番はっきりしていました。ONE PIECEのような少年ものも、抑うつや引きこもり傾向が低い方向でした。研究者は、ジブリの静けさや懐かしさ、自然への眼差し、それから希望や勇気といった価値観が、心を落ち着けて「意味の感覚」を育てるのでは、と考察しています。
意味の感覚、ですか。
「生きがい」ですね。この研究では、日本で生まれた「生きがい」の尺度をドイツ語に訳して使っているんです。生きがいと結びついたのは、ジブリとメカものだけでした。作品が伝えるものが「楽しい」を超えて「生きることを肯定する」方向だと、幸せの深い層に届くのかもしれません。
なんだか少し安心しました。でも、それでも部屋にこもっているのは気になります。
そこは大事な視点です。この研究は「関心があるかどうか」しか調べていなくて、何時間見ているか、どれだけのめり込んでいるかは分かりません。研究者自身も、次はそこを調べるべきだと言っています。
つまり、ジブリを見ていればいい、というわけでもない。
その通りです。もう一つ、この研究が引用している別の研究があって、アニメファンの幸福度を上げるのは「ファン同士の交流」だと分かっているんです。閉じた世界で見続けるのか、誰かとつながるきっかけにするのか。そこが分かれ目です。
じゃあ、私にできることって何でしょう。
一番簡単なのは、一緒に見ることです。「もののけ姫、私も好きなんだよね」と言って隣に座る。そして「どのシーンが好き?」と聞いてみる。アニメを取り上げるんじゃなくて、アニメを入り口にして会話を増やす。
取り上げようとしてました。「もうやめなさい」って。
気持ちは分かります。でも、この研究が示しているのは、趣味そのものが悪いんじゃなくて、趣味との関わり方が幸せを左右する、ということなんです。息子さんが繰り返し見ているのがジブリだとしたら、そこには彼なりの「安心できる場所」があるのかもしれません。
安心できる場所、か。確かにトトロを見てるときは、なんだか穏やかな顔をしてます。
その顔を見逃さないでください。「なんでそんなに好きなの?」と聞くだけで、息子さんが何を大切にしているかが見えてきます。それが分かれば、部屋の外の世界とつなぐ糸口も見つかりやすくなりますよ。
今週末、一緒にトトロを見てみます。感想を聞くところから。
それだけで十分です。作品が伝える価値観と、それを共有できる人がいること。この二つが揃うと、趣味は「逃げ場」から「生きがいの種」に変わっていきます。
■ 今日のまとめ
- アニメ好き全体では心の健康がわずかに低めだが、ジブリ好きは逆に抑うつ・不安・引きこもり傾向が低く、生きがいが高い。「何を見るか」で結果は変わる
- 趣味そのものより、閉じた世界に籠るか、人とつながるきっかけにするかが幸せを左右する
- 取り上げるのではなく、一緒に見て「どこが好き?」と聞く。作品の価値観を共有できる人がいることが、趣味を生きがいの種に変える
■ 出典・注意事項
- Hajek A, König HH (2026). From shōnen to seinen to Studio Ghibli: attraction to anime and manga, and their relation to mental health and social outcomes. Journal of Public Health. https://doi.org/10.1007/s10389-026-02891-0
- 本研究はドイツの成人を対象にした横断研究であり、因果関係を示すものではありません。「ジブリを見ると心が健康になる」とは言えず、心が健康な人がジブリを好む可能性もあります
- 効果量はいずれも小さく、個人の状態を趣味から判断することはできません
- 視聴時間やのめり込みの度合いは調べられておらず、実際の引きこもりが心配な場合は専門機関への相談をおすすめします
- 対話はフィクションです
論文紹介はこちら😊
アニメ・マンガ好きとウェルビーイングの関係
〜少年マンガは活力に効き、ジブリはWB・つながり・生きがいに効く〜
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-28-1790538480/