〜幸福は「喜び」を軸につながり、不幸は「貧困」と「孤独」を軸につながる〜
「幸福」「不幸」から連想する言葉についての、日本の最新研究
日本の20〜79歳、2,507人に調査頂きました。
やり方がおもしろくて、
「幸福」から思いつく言葉を5つ、
さらにその言葉から思いつく言葉を3つずつ、
と雪だるま式に連想を膨らませてもらい、
言葉同士のつながりをネットワークにして分析。
「不幸」についても同じことをやっています。
幸福の連想は、8つのかたまりに分かれました。
食(おいしい、満腹)
健康
休息(自由、睡眠、旅行)
富(お金、余裕)
喜び(楽しい、笑顔)
人間関係(家族、友人)
安心(平和、安定)
目標(夢、希望、やりがい)
不幸の連想は9つ。
孤独、貧困、別れ(死別)、病気、争い、失敗、災難(事故)、ストレス、災害
「災害」が独立して出てくるのは、地震の多い日本ならでは。
で、ここからが本題。
「どの要素があるか」より、「要素同士がどうつながっているか」を見ています。
幸福の真ん中にいるのは「喜び」。
人間関係、休息、安心、富、ぜんぶ喜びと強くつながっている。
要は幸福について考える時は、
それが喜びにつながっているか、という観点で見ると良さそう。
逆に喜びにつながっていなければ、それは幸福ではない。
不幸の真ん中にいるのは「貧困」と「孤独」。
貧困はストレス、病気、孤独、別れとつながり、
「病気」→「死」のつながりが不幸の中で一番強い。
ちなみに、
女性は人間関係と喜びを、男性はお金を多く挙げる。
学歴が高い人ほど「夢・希望・やりがい」を多く挙げる。
同じ「喜び」でも、女性は「笑顔」「楽しい」、男性は「ゲーム」「スポーツ」。
幸せ観点で言うと、
- 幸せの真ん中は「喜び」。笑顔や楽しさが、家族もお金も休みも束ねている。
- 不幸の真ん中は「貧困」と「孤独」。この2つを防ぐのが、不幸を遠ざける近道。
という感じ。
幸せを増やすことと、不幸を減らすことは、別々に考えたほうが良さそうですね。
そして、幸せという言葉は色々と人によって定義がされているからこそ、
ウェルビーイングという新語が大事だなぁとも思うわけです😊
Semantic Schema and Group Differences in Everyday Conceptions of Happiness and Unhappiness: An Investigation with a Word-association Network
幸福と不幸の日常的な概念における意味スキーマとグループ差:単語連想ネットワークによる検討
Zeyu Lyu(東北大学、日本), Zhemeng Xie, Sachiko Yasuda, Aguru Ishibashi, Takaharu Saito & Hiroki Takikawa(東京大学)
Journal of Happiness Studies, 2026/9/26
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-026-01113-4
自由連想ネットワークで解き明かす「幸福」と「不幸」の認知構造(スキーマ) 認知スキーマの探求 幸福 (Happiness) 不幸 (Unhappiness) 話連想調査により、人々が頭の中で「幸福」と「不幸」をどのように構造化しているかを独自の ネットワークを持ち、社会グループによる認識差も往往。 幸福のネットワーク構造 健康 (Health) 家族 (Family) 喜び (Joy) 左人 (People) 家族 (Family) お金 (Money) 幸福の中心は「喜び」、健康、家族、お金が要素関を繋ぐ重要なハブになる。 不幸のネットワーク構造 福音 (Blessing) 貧困 (Poverty) 原因 (Hardship) 孤独 (Loneliness) 不安 (Anxiety) 従業 (Disaster) 病気 (Sickness) 孤立 (Isolation) 不幸の中心は「貧困」と「孤独」。日本独自要素として「災害」が出現し、病気は「死」や「孤立」に繋ぐ。 性別による認識のギャップ 経済・成果 お金 (Money) 成功 (Success) ゲーム (Game) 男性 関係性・感情 笑顔 (Smile) 楽しさ (Fun) つながり (Connection) 女性 男性は「経済・成果」を、女性は「関係性・感情」を重視する傾向。 学歴による認識のギャップ 自分 (Self) 目標 (Goal) 自己実現 (Self-Realization) 幸 (Happiness) 仕事の成果 (Work Outcome) 高学歴ほど幸福において「目標・自己実現」を重視し、夢や仕事の成果を高く評価。 心の星座 データが明かす「幸福」と「不幸」の地図 2,500人の頭の中を可視化して見ててきた。 私たちの感情の本当のカタチ。 120° 90° 60° 180° 0° Genius Notebook 幸せは、単なる「点数」ではない。 これまで、私たちは幸福を1から10のスケールで測ろうとしてきました。 しかし、現実の感情は一次元ではありません。 それは無数の意味や経験が複雑に絡み合った「ネットワーク」としてのなの中に存在しています。 THE MYTH 不幸 幸福 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 THE REALITY トップダウンの質問から、ボトムアップの「連想」へ。 最初のキーワード 幸福 5つの言葉と連想 家族 お金 健康 食事 旅行 笑顔 安心 愛 さらに3つの言葉と連想 研究者が決めた選択肢ではなく、2,500人の日本人が「幸福感に関いている言葉」を抽出し、 8つの島からなる「幸福」の地図 人間関係 豊かさ 健康 休息 喜び 食事 安心 目標 「喜び」と「人間関係」が中心の引力となり、他のすべての島を引き寄せている。 Geness Notebook 9つの領域が交差する「不幸」の地勢 貧困 孤独 失敗 別れ 病気 対立 不運 ストレス 喧嘩 不幸の構造は、「農園」と「庭園」という複カテゴリーホールを中心に回転している 不幸は、単なる「幸福の欠如」ではない。 幸福の中心 喜び 人間関係 安心 不幸の中心 貧困 孤独 ストレス 幸福が「喜び」という感覚をハブにして広がるのに対し、不幸のネットワークは「貧困」という物理的・経済的要因が「孤独」や「ストレス」を引き起こす構造になっている。 まったく異なる2つの「心のルール」が存在する。 領域をつなぐ「架け橋」となる言葉 健康 家族 喜び 安心 「健康」は、幸福の島々をつなぐ最大のインフラ。 病気 貧困 死 孤独 「病気」は、貧困の苦しみを「孤独」や「死への恐怖」へと直結させてしまう最も危険な橋。 日本人の心に刻まれた「特有のカタチ」 喜び 食事 人間関係 個人の喜びとしての「食」。 欧米では食は「社会的な絆」に結びつきやすいが、 日本では「個人の純粋な喜び」として機能している。 地震 火災 災害 火災 不幸の独立峰「災害」。 地震や自然災害が、日常のストレスには別次元の 「独立した不幸の概念」として定着している。 性別によって見ている「景色」は異なる 人間関係 喜び 孤独 感情と繋がりの重視。 女性は人間関係や感情体験を幸福の中心に置き、ネガティブな感情(孤独)にも敏感である。 富 資源と達成の重視。 男性は、社会的な階待ちに影響され、経済的豊かさ(富)を幸福の重要な要素として捉える傾向が強い。 Gemma Notebook 同じ「喜び」という言葉でも、思い浮かべる世界が違う 幸福の同じ「島」に立っていても、男性は「活動や趣味」を通して喜びを語り、 女性は「感情や美情」を通して喜びを語っている。 ゲーム スポーツ 遊ぶ ゲーム スポーツ 遊ぶ 女性 活動 プレイ 速ぶ 遊ぶ 直ぶ 速楽 ゲーム スポーツ 遊ぶ 速ぶ 活動 遊ぶ 速楽 直ぶ 速楽 スポーツ 遊ぶ 速楽 喜び 笑顔 楽しい 喜び 実頼 美頼 こっくり 喜ぶ 嬉しい 喜ぶ 喜ぶ 実頼 喜ぶ 美情 16:9 学びが広げる、未来への「視座」 希望 夢 目標 未来 教育水準が高くなるについて、幸福の地図の中で「目標」という領域の比重が大きくなる。 教育は単なる知識の蓄積ではなく、自己実現や「未来の夢」を幸福の一部として捉える力を育む。 「10点満点」の呪縛から解放されるために 私たちは皆、異なる「心の地図」を持って生きています。年齢、性別、環境によって、重視する島も、架けられている橋も違います。 経験 自己 理解 環境 価値観 他者 背景 共感 感情 視点 誰かの幸せや悲しみを本当に理解するためには、相手の点数を争うのではなく、相手が「どんな地図を歩いているのか」を想像することから始まるのです。 © Genius Notebook
【研究背景】
■ この研究が立っている土台:幸福をどう捉え、どう測ってきたか
この論文(Lyu, Xie, Yasuda, Ishibashi, Saito & Takikawa, 2026)は、「ふつうの人にとって幸福とは何か、不幸とは何か」を、単語連想ネットワークという方法で調べたものです。その前提となる既存研究を、論文の流れに沿って整理します。
■ 1. 幸福は古くからの関心事であり、いまや政策の対象にもなっている
▼ 哲学から実証研究へ
▼ それでも残る問い
■ 2. 「スキーマ」という見方:幸福観は要素のリストではなく、つながりを持った構造
▼ スキーマとは
▼ 文化的スキーマの2つの特徴
▼ ネットワークとしてのスキーマ
▼ 関連する社会学的な系譜
■ 3. 日常的な幸福観をどう測ってきたか:3つの系譜とその限界
▼ 系譜1:質問紙(トップダウン)
▼ 系譜2:自由回答(ボトムアップ)
▼ 系譜3:テキスト分析(自然に生じた文章から意味を回収する)
▼ 系譜4:スキーマ/ネットワークに基づく手法
■ 4. この研究が採用する「単語連想」の方法論的基盤
▼ 日本語の手がかり語について
■ 5. 幸福観の集団差:何を挙げるかは調べられてきたが、どう組織するかは手薄
▼ 性別
▼ 教育
■ 6. 不幸は幸福の「裏返し」ではない
▼ 独立した概念としての不幸
▼ 不幸の多面性
▼ 不幸における集団差
■ 7. 背景のまとめ:この研究が埋めようとした空白
【研究内容】
■ この研究が明らかにしようとしたこと
「幸福とは何か」を普通の人々はどう考えているのか。この論文(Lyu et al., 2026)は、幸福に結びつけられる要素を列挙するだけでなく、それらの要素がどのように結びつき、どれが中心的な位置を占めるのかという「構造」まで捉えようとしています。
著者たちは、日常的な幸福の観念を「スキーマ」として捉えます。スキーマとは、人が情報を解釈し、物事を評価し、行動を導くために用いる、心の中の組織化された知識構造のことです。Boutyline & Soter (2021) の定義では、文化的スキーマは「自動的な認知の中で用いられる、社会的に共有された表象」であり、概念をノード(点)、暗黙の連想をエッジ(線)とする「概念ネットワーク」として表せるとされます。幸福なら、健康・おいしい食事・人とのつながりなどが自動的に結びついて想起される、という具合です。
研究の問いは3つに整理できます。
■ 先行研究の限界と、この研究の位置づけ
▼ 従来の測定法の問題点
▼ この研究のアプローチ
Wulff & Mata (2022) が「リスク」の意味表現の研究で用いた「ミニ・スノーボール単語連想課題」を幸福・不幸に適用しました。連想語を集めてネットワークを作り、コミュニティ検出(つながりの密なグループを自動的に見つける手法)で要素を抽出するため、研究者があらかじめカテゴリーを決める必要がありません。また、調査に人口統計変数を組み合わせることで、集団差も分析できます。連想課題から作った意味表現は、テキストの共起データから作ったものより人の判断や行動をよく予測することが示されています(De Deyne et al., 2016)。
Hunzaker & Valentino (2019) が「貧困」のスキーマ構造が政治的立場によって異なることを示したように、スキーマ・ネットワーク的手法は構造的な違いを可視化できます。ただし既存手法は構成概念が事前に定まっている場合に有効で、幸福のようにコンセンサスがない概念にはボトムアップ型が必要だ、と著者らは論じています。
■ 方法
▼ 調査と連想課題
▼ データ処理
▼ ネットワークの構築
▼ 集団差の分析(2段階)
■ 結果1:幸福と不幸の構成要素
▼ 幸福の8つの要素(中心的な語の例)
▼ 不幸の9つの要素
著者らは、「災害」が独立した要素として現れたのは、自然災害の多い日本の文脈を反映している可能性が高いと述べています。
■ 結果2:要素同士のつながりと「橋渡し語」
▼ 要素間の結びつきの強さ
異なるコミュニティ間のエッジ重みを合計し、ネットワーク内の最大値で割って正規化(最大が1.00)しました。
幸福スキーマでは、「喜び」が多くの要素と強く結びついていました。
また「富–安心」が0.52と強く、経済的な豊かさが安心感と密接に結びついて捉えられていることが示されました。
不幸スキーマでは「貧困」がより中心的な位置を占め、「孤独」のような否定的感情の要素も多くの要素と結びついていました。
▼ 媒介中心性が高い語(複数のコミュニティを橋渡しする語)
媒介中心性とは、ネットワーク内で他のノード同士の最短経路上にどれだけ位置するかを表す指標で、高いほど「橋渡し」の役割が大きいことを意味します。
幸福ネットワーク:
不幸ネットワーク:
■ 結果3:性別・学歴による差(要素レベル)
▼ 性別
著者らは、女性の結果は、女性が心理的・感情的な問題に敏感で親しい人から情緒的支援を求めやすいとする先行研究(Bedrov & Gable, 2022; Fuhrer et al., 1999)と整合すると述べています。男性の結果は、社会的期待や男性的自己アイデンティティが男性により大きな経済的要求を課すとする研究(Crowley, 1998 など)と一致するとしています。
▼ 学歴
著者らはこれを、教育が人間の能力を育むとする能力アプローチ(Nussbaum, 2000, 2006)や、有利な立場の人が高次の欲求を前面に出しやすいとする欲求階層説(Maslow, 1954)と関連づけて解釈しています。
■ 結果4:単語レベルの差
同じ要素の中でも、集団によって強調する語が異なることが示されました。性差が最も顕著だった「富」と「喜び」が例示されています。
▼ 富コミュニティ
▼ 喜びコミュニティ
つまり、同じ「喜び」という要素でも、集団によって込められている意味が異なりうる、ということです。
■ 考察
▼ 先行理論との整合と日本的な特徴
▼ 構造から見えること
▼ 不幸は幸福の裏返しではない
▼ 手法の意義
著者らは、単語連想ネットワークが、幸福・不幸の日常的観念の要素・構造・集団差を捉える有用な枠組みであると結論づけ、人生の意味、健康、社会関係など他の概念にも応用できる可能性を挙げています。また、より文化的に根ざした測定尺度の開発への実践的示唆があるとしています。
■ 研究の限界(著者らの指摘)
データとコードは公開リポジトリで入手可能とされています。
会話形式での紹介はこちら😊
はぴテク相談室:「わたしの幸せって何?」を頭の中の地図で探してみる
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-29-1790615641/