この号の内容
調査の規模と今年度の特徴
調査は令和8年4月20日〜5月29日に実施された。集計対象は小学校934,973人(18,271校)、中学校865,360人(9,430校)である。今年度の特徴は二つある。一つは中学校英語の4技能すべてをCBTで行ったことで、令和5年度にCBTで実施したのは「話すこと」だけであった。もう一つは、小学校の児童質問にランダム方式を導入したことである。
📖 報告書では:第1章「令和8年度全国学力・学習状況調査の概要」p.2
小学校国語:引用して書くのが課題
平均正答率は61.1%(7.9/13問)である。話の構成メモの工夫を選ぶ問題は74.0%が正答し、良好な結果であった。一方、集めた情報から本の題名と本文を引用して考えを書く問題の正答率は33.6%にとどまった。考えは書けていても引用の条件を満たさない誤答が29.1%あった。文章に続く文を選ぶ問題(49.0%)や、メモの整理を説明する問題(55.8%)からは、情報と情報の関係を捉えることにも課題が見られる。「引用して書く授業を受けた」と肯定的に答えた児童ほど、引用の設問の正答率が高く、無解答率も低い傾向がある(相関係数0.164)。
📖 報告書では:第2章(1)小学校国語 p.5–10
中学校国語:語句の文脈理解に課題
平均正答率は64.2%(9.6/15問)である。問題形式別では、選択式73.0%に対し記述式は45.9%と低い。「投げられる」の単語の類別を問う問題は正答率70.3%で、20.4%が助動詞「られる」を助詞と捉える誤答であった。国語辞典を参考に「ほうふつとさせる」の言い換えを抜き出す問題は正答率35.5%、無解答率19.5%である。擬態語「きっぱり」の効果を書く問題は正答率39.3%であった。「読書が好き」と答えた生徒ほど、言い換え問題の正答率が高い傾向がある(相関係数0.201)。
📖 報告書では:第2章(2)中学校国語 p.11–15
小学校算数:計算と意味理解の差
平均正答率は56.6%(9.1/16問)で、領域別では「変化と関係」が41.4%と最も低い。一辺8cmの立方体の体積を求める式を書く問題は72.9%が正答した。一方、1cm³の立方体36個でできた直方体の体積を問う問題の正答率は40.4%であった。式の問題に正答した児童の51.1%は、体積の意味を問う問題に正答できていない。テープの長さが1.5倍になる図を選ぶ問題は34.5%、混み具合を求める式の意味を選ぶ問題は36.2%で、割合や単位量当たりの大きさの理解に課題が示された。
📖 報告書では:第2章(3)小学校算数 p.16–23
中学校数学:説明・証明が課題
平均正答率は57.4%(9.2/16問)である。観点別では、知識・技能の63.3%に対し、思考・判断・表現は39.6%と低い。箱ひげ図の読み取りは正答率75.9%でできている。2直線が平行になる条件の問題は49.6%で、24.2%は平行四辺形の性質と混同した誤答であった。証明の仮定を選ぶ問題は37.5%である。「A−B」の値を説明する問題は正答率45.2%・無解答率26.1%、動画の時間を求める方法を説明する問題は正答率34.5%・無解答率39.0%であった。
📖 報告書では:第2章(4)中学校数学 p.24–29
中学校英語:IRT499、理由が弱い
4技能を統合した平均IRTスコアは499、標準偏差は108.1である。IRTスコアとは、問題の難しさを考慮して学力を推定し、500を基準に表した得点である。5段階のIRTバンドの分布は、バンド3が36.2%、バンド2が27.1%、バンド4が24.7%であった。社会的な話題について考えと理由を書く問題は正答率28.4%で、35.4%は考えは書けても理由を書けていない。聞いたことに対して考えと理由を話す問題は正答率25.8%、留学生としたいことと理由を話す問題は53.5%であった。聞き取り(76.3%)や、メールから必要な情報を読み取る問題(72.8%)はできている。
📖 報告書では:第2章(5)中学校英語 p.30–48
日本の結果
この号の調べ方
対象は全国の小学6年生と中学3年生で、令和8年4月20日〜5月29日に教科調査と質問調査を実施した。中学校英語はCBTで行い、IRT(項目反応理論=正誤のパターンから学力を推定し、異なる問題でも同じものさしで比べられる統計理論)によるスコアで結果を示した。全国値は、「話すこと」を当日実施した学校の46,645人分のデータから算出している。各学校には、3技能(876,529人分)を統合したスコアが返却される。
この号から言えること
- 国語・英語の複数の問題で、「自分の考えは示せるが、引用・根拠・理由を添えて伝えることに課題がある」という共通の傾向が報告されている。
- 小学校算数では、立方体の体積の式は書けても体積の意味は理解できていない児童が、式の問題に正答した児童の51.1%に上る。計算と概念理解の間に差があることが示された。
- 質問調査とのクロス集計では、関連する授業や読書に肯定的に答えた児童生徒ほど正答率が高い傾向が見られた(相関係数0.164〜0.302)。
- 英語はIRTバンドごとに誤答の型を分析しており、バンドに応じた指導改善のポイントが示されている。
読むときの注意
報告書は、問題の難易度を年度間で厳密に調整していないため、前年度の正答率(例:小学校国語67.0%)と単純に比較するのは適当でないと明記している。クロス集計の結果は相関であり、授業の取り組みが正答率を高めることを示したものではない。また、本記事は抜粋に含まれた教科調査の部分が中心で、ウェルビーイング項目の数値は含まれていない。