どんな調査か
全国学力・学習状況調査は、文部科学省と国立教育政策研究所が全国の子どもたちの学力の状況を把握するために行っている調査である。文部科学省の公式ページによれば、平成19年度(2007年度)から実施されている。対象は小学6年生と中学3年生で、対象学年の全児童生徒を調べる悉皆調査(全員を対象にする調査)である。教科の調査と併せて、児童生徒への質問調査が行われる。質問調査は学習習慣や生活習慣を尋ねるほか、「自分にはよいところがある」「普段の生活の中で幸せな気持ちになる」といった、第4期教育振興基本計画の指標と同じ文言の項目を含んでいる。このため、子どものウェルビーイング(心身の良好な状態)を全国規模で毎年追える数少ない資料のひとつとなっている。
何をどう測っているか
調査は毎年4月ごろ、国公私立の小学6年生と中学3年生を対象に行われる。教科調査では国語、算数・数学のほか、年度によって理科や英語も実施される。児童生徒質問調査では、「普段の生活の中で、幸せな気持ちになることはどれくらいありますか」「自分には、よいところがあると思いますか」などの質問に4段階で答えてもらう。結果は「よくある+ときどきある」「当てはまる+どちらかといえば当てはまる」のように、肯定的な2段階を合わせた割合で示されることが多い。毎年同じ学年の全員を調べる横断調査(その時点の集団を切り取る調査)であり、悉皆調査なので都道府県・指定都市別の結果も公表される。近年は解答方式のデジタル化が進み、2024年度には質問調査が初めて全面オンラインで実施された。大学等の研究者は個票データの貸与を申請でき、練習用の疑似データも公開されている。
これまでの歩み
2022年度(令和4年度)は、小学校・中学校とも国語、算数・数学、理科の3教科で実施され、平均正答率は小学校で国語65.8%・算数63.3%・理科63.4%、中学校で国語69.3%・数学52.0%・理科49.7%であった。2023年度は中学校で4年ぶり2度目の英語調査が行われ、「話すこと」の平均正答率は12.4%(推計値)にとどまった。2024年度は児童生徒質問調査が初めて全面オンラインで実施され、平均正答率は小学校で国語67.8%・算数63.6%、中学校で国語58.4%・数学53.0%であった。2025年度は中学校理科で初めてCBT(コンピュータ上で解答する方式)が導入され、集計対象は小学校949,308人、中学校896,785人であった。2026年度は中学校英語を4技能(聞く・読む・話す・書く)すべてCBTで実施し、平均IRTスコア(問題の難しさを考慮して算出する得点)は499であった。同年度の平均正答率は小学校国語61.1%、算数56.6%、中学校国語64.2%、数学57.4%である。このように、紙からコンピュータへの移行と、質問調査でのウェルビーイング項目の扱いの拡大が近年の流れである。
分かってきたこと
「幸せな気持ち」「よいところがある」は高い水準で推移
「普段の生活の中で、幸せな気持ちになることがある」と肯定的に答えた割合は、小学6年生で2024年度91.6%、2025年度92.9%、2026年度92.4%である。中学3年生も2024年度89.9%、2025年度91.6%、2026年度91.0%と、9割前後を保っている。「自分には、よいところがあると思う」の肯定的回答は、小学校で2024年度84.0%、2025年度87.0%、2026年度85.6%、中学校で83.4%、86.2%、84.0%である。いずれの項目も小学生のほうが中学生よりやや高い。
主体的に学ぶ子ほど自己有用感が高い傾向
2024年度の報告書が最も大きな読みどころとして示すのは、授業で主体的に取り組んだと答えた子どもほど「自分にはよいところがある」と答える割合が高いという関係である。報告書は、挑戦心・自己有用感・幸福感等に関する回答と、授業での主体的・対話的な学びの回答との間に相関があることを示している。これは相関であり、主体的な授業が自己肯定感を高めると証明したものではない。
家庭の背景と学び方の関係
2023年度の結果では、家にある本の冊数が少ない児童生徒ほど正答率が低い傾向があった。一方で、授業で工夫して発表していた児童生徒は、本の冊数が少なくても正答率が高い傾向があった。報告書は、「主体的・対話的で深い学び」(自分で考え、話し合い、表現する授業)に取り組んだ児童生徒ほど、家庭の社会経済的背景が低くても正答率が高い傾向を示している。
根拠を示して書く・伝える力に課題
2025年度は、複数の資料から必要な情報を探すこと、根拠を明確にして書くこと、割合や数学用語の意味を理解することに課題が見られた。2026年度も国語・英語でいずれも「考えは書けても、理由や根拠を示して伝えること」に課題があると報告されている。教科を越えて、根拠に基づく表現が続けて課題に挙がっている。
学校生活への意識は横ばい
2022年度に「学校に行くのは楽しい」と肯定的に答えた割合は小学校85.4%、中学校83.0%で、前年度と比べて横ばいであった。「将来の夢や目標を持っている」は小学校79.8%、中学校67.4%で、こちらも横ばいであった。「今住んでいる地域の行事に参加している」は、前年度と比べて特に小学校で減少している。