この号の内容
成績の低下、読解は急落
OECD諸国の平均は、科学・読解・数学のいずれも過去最低の水準となった。2015年から2025年にかけて、数学はOECD平均で22点低下し、読解はOECD諸国で28点、それ以外の国・地域で16点低下して最大の落ち込みとなった。今回の中心分野である科学は、OECD平均でゆるやかに低下し、非OECD諸国ではおおむね横ばいである。速く読むが正確でない「急ぎ読み(hasty reading)」は2018年から2025年にかけてほぼ倍増し、9%に達した。一方で、コスタリカ、スロバキア、トルコ、英国では2022年以降、科学の得点が上がった。
📖 報告書では:公式サマリーページ「Introduction」および「Education performance continues to decline, with huge drops in reading」
AI利用と成績の複雑な関係
OECD諸国の生徒の46%が、学習の助けとして週1回以上AIチャットボットを使っている。文章の要約や下書き、調べものなど特定の課題にAIを使う生徒は、使わない生徒より科学の得点が平均で約20点低い。報告書はこの差を、約1年分の学校教育に相当すると説明している。一般的な目的で毎週AIを使う生徒の成績は、使わない生徒とほぼ同じである。AIを日常的に使い、学校でAIリテラシー(AIを適切に使いこなす力)を学ぶ機会がある生徒は、科学の得点がやや高い傾向にある。ただし、こうした学習機会は社会経済的に恵まれた生徒に多く、報告書は「AI格差」が広がるおそれを指摘している。
📖 報告書では:公式サマリーページ「Key figures」および「The relationship between AI use and student performance is complex」
学校への所属感が改善
生徒の学校への所属感は2022年より改善し、39の教育システムで「学校に所属していると感じる」生徒の割合が高まった。OECD平均では76%の生徒が学校に所属していると感じている。割合が最も高いのはスペインの90%で、日本がこれに続く。反対に、デンマーク、ポーランド、イタリア、リトアニアでは64%以下にとどまる。女子は男子より所属感が有意に弱く、社会経済的に不利な生徒も恵まれた生徒より所属感が低い。報告書は、包摂され、受け入れられ、他者とつながっていると感じる度合いが学習成果と関連していると述べている。
📖 報告書では:公式サマリーページ「Key figures」および「Student sense of belonging at school improves」
新設のコンピュテーショナル問題解決
PISA 2025では、モデル化やプログラミングの道具を使い、実験を行い、デジタル製品を設計・開発する力を測る「コンピュテーショナル問題解決」の評価が新たに導入された。この尺度には公式の基礎水準はないが、報告書はレベル3を、しっかりした知識と技能を示し、急速に伸び始める段階と位置づけている。OECD諸国では約3分の2の生徒がレベル3以上に達し、約4分の1が最上位の二つのレベル(レベル5または6)に達した。平均得点が最も高いのはマカオ(中国)の572点で、シンガポールの563点、北京・上海・江蘇・浙江(中国)の560点が続く。OECD平均は500点である。
📖 報告書では:公式サマリーページ「Solid computational problem-solving skills are widespread」
誤情報に弱い生徒が半数超
OECD平均で、情報源の信頼性を確かめ、かつ常識より科学的根拠を信頼すると答えた生徒は46%で、半数に届かない。情報源は確かめるが常識に頼る生徒は37%、情報源を確かめずに科学的根拠を信頼する生徒は11%である。どちらも行わない生徒も5%いる。報告書は、15歳の多くが誤情報や偽情報(意図的に流される虚偽の情報)に影響されやすい可能性があると指摘している。
📖 報告書では:公式サマリーページ「Over half of students may be vulnerable to misinformation and disinformation」
結論:成績と学ぶ姿勢の両立
報告書は、変化の速い社会で若者が活躍するには学力だけでは足りず、生涯にわたって自ら学ぶための意欲、主体性(エージェンシー)、学習方略が必要だと述べている。こうした学びへの関与は成績と正の関連があり、互いに強め合う関係にある。多くの教育システムでは、成績の後退と関与の弱まりが同時に起きている。生徒は、所属感を持ち、学校教育に価値を見いだし、安全で支えのある環境で学んでいるほど成功しやすい傾向がある。家族や教師との強い関係も重要とされる。なお、OECD諸国の生徒の28%が、科学の授業のほとんどまたは毎回、周りの生徒がデジタル機器で気を散らしていると答えている。
📖 報告書では:公式サマリーページ「Conclusion」および「Key figures」
日本の結果
この号の調べ方
PISA 2025は第9回の調査で、2025年に91か国・地域の76万人超の15歳が受験した。対象者は世界の約3千3百万人の15歳を代表する。科学(今回の中心分野)・数学・読解に、新設のコンピュテーショナル問題解決を加えて測定し、あわせて質問紙で好奇心、粘り強さ、AI利用、学校への所属感などをたずねている。第I巻は全3巻の1冊目で、中核分野の成績と、学ぶ意欲・主体性・適応力・学校への態度を扱い、性別・社会経済的背景・移民背景による差も分析している。
この号から言えること
- OECD平均の成績は3分野とも過去最低となり、なかでも読解の落ち込み(2015〜2025年でOECD平均28点低下)が最も大きい。
- 成績が下がる一方で、学校への所属感は2022年より改善し、39の教育システムで高まった。日本はスペインに次いで所属感の高い国である。
- AIを特定の課題に使う生徒は科学の得点が約20点低い一方、AIリテラシーを学ぶ機会のある日常的な利用者はやや高い。報告書は、こうした機会が恵まれた生徒に偏ることによるAI格差の拡大を懸念している。
- 報告書は、学力と学ぶ姿勢(意欲・主体性・所属感)の両方を重視する包括的な教育を求めている。
読むときの注意
AI利用や所属感と成績との関係は、同じ時点で調べた関連(相関)であり、AIの使い方や所属感が成績を変えたことを示すものではない。今回の元資料は公式サマリーページの抜粋で、日本の具体的な得点や割合、生活満足度の結果は含まれていない。詳しくは本文PDFと日本の国別ノートで確認する必要がある。