この号の内容
3面でレジリエントな4か国・地域
報告書は、数学の成績、公平性、ウェルビーイングの3面について、教育システムがレジリエントかどうかを評価している。3面すべてでレジリエントとされたのは、日本、韓国、リトアニア、台湾の4か国・地域である。ほかに21の教育システムが、3面のうち1面または2面でレジリエントであった。報告書は、数学でレジリエントだった国・地域は、コロナ対応、保護者の支援と学校の雰囲気、生徒の選抜・グループ分け、学校の運営と資源配分の点で、他の国・地域と違いがあったとしている。
📖 報告書では:公式ページ 要旨(Executive summary)「Resilient education systems」
学校への所属感は国で明暗
学校への所属感とは、生徒が学校の一員だと感じているかを表す指標である。2018年から2022年にかけての推移はまちまちで、「横ばい」「改善」「悪化」の国・地域がそれぞれ同じ割合であった。改善または横ばいだった47の教育システムのうち、所属感がOECD平均以上の水準を保つか達成したのは20にとどまる。2022年には、社会経済的に不利な生徒ほど、学校で親しい絆を結ぶ機会が少ないと答える傾向があった。一方で、学習機会がより公平なシステムほど、社会的な機会もより公平である傾向が示されている。
📖 報告書では:公式ページ 要旨「Resilient education systems」
休校が長いほど成績・所属感が低め
コロナ禍では、3分の2の国・地域が、生徒の過半数に対して3か月を超えて学校を閉鎖した。長期休校を免れた生徒の割合が大きいシステムほど、数学の得点が高く、学校への所属感も強かった。OECD平均では、家庭学習中に学校の課題へのやる気を出すのに頻繁に苦労した生徒はほぼ2人に1人、課題を十分に理解できないことが頻繁にあった生徒は3人に1人であった。休校中に学習とウェルビーイングを保つ活動を多く提供した学校のシステムほど、生徒は再び休校になっても自律的・遠隔で学べるという自信が高かった。
📖 報告書では:公式ページ 要旨「How learning continued when schools were closed」
授業の様子とデジタル機器
OECD平均で約40%の生徒が、ほとんどの授業で教師が生徒一人ひとりの学習に関心を示さない、または生徒が理解するまで教え続けないと答えた。約30%の生徒は、ほとんど、またはすべての数学の授業でデジタル機器を使って気が散ると答えた。他の生徒がデジタル機器を使うことで気が散ると答えた生徒は25%であった。
📖 報告書では:公式ページ 要旨「Life at school and support from home」
安全と家庭の支援、生活満足度
OECD平均では、学校で安全だと感じ、いじめや危険にさらされていない生徒ほど、学校への所属感が強く、自分で学ぶ力への自信が高く、生活満足度(自分の生活への満足の度合い)も高い傾向がある。データのあるすべての国・地域で、家族からの支援が多い生徒ほど、学校への所属感と生活満足度が高く、自分で学ぶ力にも自信を持っていた。また、ほとんどの国・地域で、こうした生徒は数学への不安が低いと答えている。
📖 報告書では:公式ページ 要旨「Life at school and support from home」
就学前教育と留年
OECD平均と過半数の教育システムで、就学前教育を1年以上受けた生徒は、受けなかった生徒や1年未満の生徒に比べて、留年した割合がかなり低かった。この差は社会経済的要因を考慮した後でも残っている。公平で成績の高い教育システムでは、ほぼすべての生徒が就学前教育を受けており、留年した生徒は少ない。
📖 報告書では:公式ページ 要旨「Selecting and grouping students」、表II.4「Snapshot of selecting and grouping students」(第4章)
日本の結果
この号の調べ方
PISAは、生徒が数学・読解・科学について何を知り、その知識で何ができるかを調べるOECDの国際調査である。PISA 2022は第8回の調査で、新型コロナウイルスの世界的流行のさなかに実施された。第2巻では、休校中と休校後の学習、学校生活と家庭の支援、学校での進路、教育への投資、学校の運営を扱い、比較可能なデータがある指標については推移も検討している。学校への所属感の推移は2018年と2022年の比較で示されている。
この号から言えること
- 日本は、成績が高いだけでなく、公平性とウェルビーイングもそろってレジリエントとされた数少ない国の1つである。3面すべてを満たしたのは4か国・地域だけである。
- 長期休校を免れた生徒が多いシステムほど、数学の得点と学校への所属感がともに高い傾向がある。報告書は、レジリエントなシステムの共通点として、より多くの生徒のために学校をより長く開け続けたことを挙げている。
- 学校での安全や家族の支援がある生徒ほど、所属感・生活満足度・自分で学ぶ力への自信が高い傾向がある。学力とウェルビーイングを同じ枠組みで見ている点がこの号の読みどころである。
- 所属感が改善・横ばいだった47システムのうち、OECD平均以上の水準にあったのは20にとどまる。下げ止まっていても水準が低い国が多いことがわかる。
読むときの注意
休校期間や家庭の支援と、成績・所属感・生活満足度との関係は、国や生徒を比べた相関であり、それ自体が因果を示すものではない。本記事は公式ページの要旨と表II.4の注にもとづいており、日本の得点や所属感の指標値など、国別の具体的な数値は参照した抜粋には含まれていない。