どんな調査か
PISA(Programme for International Student Assessment、生徒の学習到達度調査)は、OECD(経済協力開発機構)が義務教育修了段階の15歳を対象に行う国際調査である。15歳が読解力・数学・科学の知識と技能を、実生活の課題にどれだけ活用できるかを測る。あわせて生徒質問調査で、生活満足度や学校への所属感など、生徒のウェルビーイング(心身の健康や生活の充実)も尋ねている。2015年調査では、OECDが国際報告書の1巻(Volume III「Students' Well-Being」)を丸ごと生徒のウェルビーイングにあてた。調査は3年ごとに行われ、生活満足度と所属感は2015・2018・2022・2025年の推移を比べられる。日本では文部科学省と国立教育政策研究所が実施している。
何をどう測っているか
生活満足度は「全体として、最近のあなたは自分の生活にどのくらい満足していますか」という質問に、0(まったく満足していない)から10(十分に満足している)で答えてもらう自己評価である。報告では平均値のほか、「十分に満足」と「満足」を合わせた割合や、0〜4の「満足していない」層の割合も示される。学校への所属感は、「学校の一員だと感じている」「学校ではよそ者だと感じる」など6項目への回答をまとめた指標で、値が大きいほど所属感が強い。2022年調査のOECD平均はこの指標で−0.02である。2025年調査には91か国・地域の約76万人が参加し、日本からは183校・約6,500人が参加した。日本の対象は高校1年生などの15歳である。生徒の個票データはOECDのサイトから誰でも入手できる。
これまでの歩み
2015年調査の第III巻『生徒のウェルビーイング(Students' Well-Being)』(2017年4月公表)は、学力ではなく15歳の心身の健康、生活への満足、他者とのつながり、将来への意欲を扱った。中心の問いは、学校で起きることが生徒の幸福とどう結びついているかである。2018年調査の第III巻『学校生活が生徒の生活にもつ意味(What School Life Means for Students' Lives)』(2019年12月公表)は、学校の雰囲気をつくる教師と保護者の役割や学校での人間関係を取り上げ、ウェルビーイングの指標と学校の雰囲気との関係を分析した。2022年調査は新型コロナウイルスの世界的流行のさなかに行われた。第II巻『混乱の中で、そして混乱から学ぶ(Learning During – and From – Disruption)』(2023年12月公表)は、教育の「レジリエンス(逆境に耐えて立て直す力)」を、成績・公平性・ウェルビーイングの3面から分析した。第9回の2025年調査では、第I巻『未来に備えた生徒(Future-Ready Students)』(2026年9月公表)が91か国・地域の結果を報告した。この巻は、学力の低下と、学校への所属感の改善を並べて示している。
分かってきたこと
生活満足度は2018年に落ち込み、2025年に持ち直した
OECD平均の生活満足度は、2015年が7.3、2018年が7.0、2022年が6.7、2025年が7.2である。2018年版は、OECD平均で生活に満足している生徒が67%にとどまり、2015年から5ポイント減ったことを最大の話題とした。2022年にかけてさらに下がったあと、2025年には2015年に近い水準まで戻っている。
学力の高さと生活満足度は必ずしも一致しない
2018年版は、多くの国で、失敗への恐れが強い生徒ほど読解の得点は高いが、生活満足度は低い傾向を示した。学力とウェルビーイングは同じ方向に動くとは限らない。これは相関の関係であり、失敗への恐れが得点を上げたり満足度を下げたりすることを示したものではない。
コロナ禍で成績・公平性・ウェルビーイングを保てた国がある
2022年版は、数学の成績・公平性・ウェルビーイングの3面すべてで「レジリエント」な国・地域として、日本・韓国・リトアニア・台湾の4つを挙げた。報告書は、休校の影響を受けた生徒が少なかった国・地域ほど、数学の得点と学校への所属感が高かったと示している。
学力が過去最低でも、所属感は改善した
2025年版では、OECD平均が科学・読解・数学の3分野すべてで過去最低の水準となった。一方で学校への所属感は2022年より改善し、OECD平均で76%の生徒が学校に所属していると感じている。所属感を持つ生徒の割合が最も高いのはスペインの90%である。