この号の内容
28万人が答えた世界最大の教員調査
TALISは教員と校長を対象とする世界最大の調査である。2024年調査では55の教育システムから28万人の教育者が、労働条件、職能開発(教員としての学び直しや研修)、教室の実情について回答した。今回の版では、AIを使っているか・どう使っているか、なぜ教職を選んだか、教職を続けたいかが新たな焦点になっている。報告書は、各国政府がこのデータをもとに学校の教育・学習条件を改善する政策をつくると位置づけている。
📖 報告書では:公式ページ「Introduction」
AI利用は国で大きく異なる
教員のAI利用はシステムによって大きく異なる。シンガポールとアラブ首長国連邦(UAE)では約75%の教員がAIを使っており、報告書はこの2つを先行例として挙げている。これらのシステムの教員は、AIの使い方についての研修を受けたと答える割合も最も高い。報告書は、教員と教育システムにはAIを取り入れると同時に、その有害な影響から生徒を守る責任があるとしている。
📖 報告書では:公式ページ「Teachers’ usage of artificial intelligence varies tremendously」
メンターのいる新任教員ほど満足度が高い
TALISのデータでは、メンター(指導役の先輩教員)がいる新任教員ほど、仕事への満足度とウェルビーイング(心身の良好な状態)が高い傾向がある。報告書は、メンター制度が教員養成から実際の教室での指導への移行を大きく和らげうるとしている。一方で新任教員はメンター支援を以前より多く受けているものの、依然として困難な環境に配置されているとも指摘する。
📖 報告書では:公式ページ「Novice teachers receive more mentorship but are still allocated to difficult environments」
年功優先の配置が新任を困難校へ
報告書は、教員の配置の仕組みが年功(勤続年数)を優先することが多く、その結果、最も経験の浅い教員が最も困難な教育環境に置かれうると指摘している。そのため政策担当者は、新任教員がどこで教えているかにも目を向ける必要があるとしている。
📖 報告書では:公式ページ「Novice teachers receive more mentorship but are still allocated to difficult environments」
給与より雇用条件が離職を左右する国も
報告書は、教員の高い離職率が生徒の学力に悪影響を及ぼしうるとしている。他の職業と同様に、給与は教員が教職にとどまるか去るかの重要な要素である。しかしTALISのデータでは、常勤か非常勤か、契約の安定性、労働条件といった他の要素が、一部の国では給与と同じくらい、あるいはそれ以上に重要であることが示されている。
📖 報告書では:公式ページ「Employment conditions may influence teachers’ career choices more than salaries」
この号の調べ方
TALIS 2024は、2024年に55の教育システムの教員と校長、計28万人を対象に行われた質問紙調査である。労働条件、職能開発、教室の実情、AIの利用、教職を選んだ理由、教職を続ける意向などを教育者自身が回答する形で測っている。OECDが実施し、2025年10月6日に報告書が公表された。
この号から言えること
- AIの利用率が約75%と高いシンガポールとUAEでは、AIの研修を受けた教員の割合も最も高く、利用と研修がセットで進んでいる。
- メンターのいる新任教員ほど仕事への満足度とウェルビーイングが高い傾向があり、支援の有無が新任期の働き方と結びついている。
- 年功優先の配置により経験の浅い教員ほど困難な学校に置かれうるという、制度上の課題を報告書は指摘している。
- 教職を続けるかどうかには給与だけでなく、常勤・非常勤の別、契約の安定性、労働条件が関わり、国によってはそれらが給与以上に重要である。
読むときの注意
今回の元資料は公式ページの要約部分であり、仕事のストレスの程度、ストレスの要因、仕事への満足度の割合、離職意向、日本の数値などの具体的なデータは含まれていない。メンターの有無と満足度の関係は同時点の調査で見た関連であり、メンターがいることが満足度を高めたと示したものではない。日本の結果は公式ページに掲載された日本の国別ノート(Japan)と本文PDFで確かめる必要がある。