どんな調査か
国際教員指導環境調査(TALIS=Teaching and Learning International Survey)は、OECD(経済協力開発機構)が行う、教員と校長を対象とした世界最大の国際調査である。学校の学習環境と、教員・校長の勤務環境を本人に直接たずねる。調査は2008年・2013年・2018年・2024年に実施され、次回は2030年の予定である。日本は文部科学省と連携して国立教育政策研究所が実施しており、2013年調査から参加している。2018年調査以降は、教員のストレスの程度と要因、仕事が心身の健康に与える影響、仕事への満足度、離職意向を尋ねるようになり、教員のウェルビーイング(心身の良好さ)を国際比較できる資料になった。
何をどう測っているか
中心となる対象は中学校段階(国際的な教育段階の区分でISCED 2=前期中等教育)の教員と校長で、日本は2024年調査で小学校にも参加した。2024年調査は55か国・地域が参加し、28万人の教育者が回答した。小学校の参加は16か国・地域で、日本では小学校約200校・中学校約200校の校長と教員が答えた。ストレスは「仕事でストレスを感じる程度」を「まったくない」から「非常に感じる」までの4段階でたずね、あわせて仕事が精神的健康・身体的健康に悪影響を与えている程度、事務作業や保護者対応などのストレス要因を聞く。仕事への満足度は「全体としてみれば、この仕事に満足している」などの質問で測り、今後5年以内に離職するつもりかもたずねる。仕事時間の内訳も詳しく尋ねており、働き方とウェルビーイングの関係を見る材料になる。調査はその時点の状況を切り取る横断調査で、個票データ(回答者ごとのデータ)はOECDから入手できる。
これまでの歩み
第1回の2008年調査は23か国の中学校段階を対象とし、報告書『効果的な教授・学習環境の創出(Creating Effective Teaching and Learning Environments)』は2009年7月20日に公表された。この号は学習環境の質を、生徒の学習成果に対して政策で動かせる最も重要な要因と位置づけ、教員の89%が研修に参加したが半数超がもっと受けたいと答え、4分の3が仕事の質を高めても評価されないと答えたことを示した。2013年調査の報告書(2014年6月25日公表)は「今日の学校の多様な課題に向き合えるよう、各国はどう教員を備えさせられるか」を問いに据え、日本が初めて参加した。2018年調査の第2巻『専門職として尊重される教員と校長(Teachers and School Leaders as Valued Professionals)』(2020年3月公表)は、職業の価値の見方、仕事上のウェルビーイングとストレス、労働条件への満足度を正面から分析した巻である。2024年調査の報告書『Results from TALIS 2024: The State of Teaching』は2025年10月6日に公表され、公式ページは教員の人工知能(AI)の利用、新任教員へのメンター支援と配置、教職にとどまるかを左右する雇用条件の3点を大きく扱っている。2018年と2024年はストレスや満足度を同じ形でたずねており、変化を比べられる。
分かってきたこと
仕事には満足しているが、社会に評価されているとは感じていない
2018年調査では、OECD平均で教員の90%が仕事に満足していた。一方で、教職が社会で評価されていると思う教員は26%にとどまった。報告書はこの落差を最大の話題として示している。2024年調査でもOECD平均で89%が全体として仕事に満足しており、満足度の高さは続いている。
ストレスの大きな源は事務作業
2018年調査では、仕事で強いストレスを感じる教員がOECD平均で18%、事務作業の多さをストレス源に挙げる教員が49%いた。2024年調査ではOECD平均で19%が仕事で「非常に」ストレスを感じると答え、仕事が精神的健康に「非常に」悪影響を与えているは10%、身体的健康は8%であった。授業そのものではなく、事務作業や保護者対応といった周辺業務がストレス要因として上位に挙がる点が、日本の結果でもはっきり表れている。
評価と研修への不満は第1回から見えていた
2008年調査の時点で、教員の4分の3が仕事の質を高めても評価されないと答えていた。研修には89%が参加していたが、半数超がもっと受けたいと答えた。2018年調査の「社会で評価されていると思う教員26%」と合わせると、教員が自分の努力や職業が認められていないと感じる傾向は、版をまたいで繰り返し現れている。
教員を職にとどめる条件へと関心が移った
2024年調査の公式ページは、新任教員へのメンター支援と配置、教職にとどまるかを左右する雇用条件を主要な話題に掲げている。2018年調査以降は今後5年以内の離職意向も尋ねている。あわせて教員のAI利用も新たな柱として扱われている。