この号の内容
教員の専門性を測る5つの柱
TALIS 2018は、教員の専門性(プロフェッショナリズム)を5つの柱で分析する。教えるための知識と技能、キャリアの機会と労働規則、教員間の協働文化、教員に与えられる責任と自律性、職業の地位と評価である。第2巻はこのうち後半の4つ、すなわち社会的評価、キャリアの機会、協働、自律性を扱う。報告書は、教員には教科の知識に加えて子どもの発達、学級経営、事務、心理学の専門性まで求められるため、教職は単なる「仕事」ではなく「専門職」と呼ばれると位置づけている。対象は48か国・地域である。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー冒頭(公式ページ「Executive summary」)
満足90%、社会的評価26%
OECD平均で教員の90%が仕事に満足しており、91%が教員になったことを後悔していない。それにもかかわらず、自分の仕事が社会で評価されていると考える教員は平均26%にとどまる。勤続年数の長い教員ほど、若い同僚に比べて教職が過小評価されていると答える傾向がある。報告書はこれを、キャリアを重ねるにつれて一定の職業的な幻滅が生じていることを示唆するものと解釈している。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー「How do society and teachers view the teaching profession?」
50歳以下の14%が離職を希望
50歳以下の教員の14%が、今後5年以内に教職を離れたいと答えている。報告書は、これは定年年齢よりかなり前の離職希望にあたると指摘している。社会的評価の低さや、勤続とともに強まる過小評価の認識と並べて示されている結果である。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー「How do society and teachers view the teaching profession?」
強いストレス18%、要因は事務作業
仕事で強いストレスを感じると答えた教員は18%である。主なストレス要因として「事務的な業務が多すぎること」を挙げた教員は49%にのぼる。報告書によると、仕事上の強いストレスは、教員の仕事への満足度や教職を続ける意向と強く関連している。これは関連を示す結果であり、ストレスが離職意向を直接生むと示したものではない。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー「How do society and teachers view the teaching profession?」
30歳未満の48%が有期契約
OECD平均では大半の教員が無期雇用で、有期契約と答えた教員は18%である。ところが30歳未満の教員に限ると、この割合は48%に跳ね上がる。有期契約には一定の柔軟性がある。一方で、契約期間が1年未満の教員は、調査対象国のおよそ3分の1で、指導への自信が低いと答えている。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー「What are the main features of teachers' employment contracts and how do they feel about it?」
給与満足は教員39%、校長47%
給与に満足しているのは、OECD平均で教員の39%、校長の47%である。人事評価が昇給や賞与と結びついている学校に勤めると答えた教員は平均41%で、一般的な仕組みとはいえない。ただし、前回のTALIS調査と比べると、参加国・地域の半数以上でこの割合が有意に増えている。この仕組みは、学校の管理職が教員の給与にある程度の権限を持つ場合に見られやすい。また、学校の意思決定に参加する機会や職能開発の支援があると答えた教員ほど、給与以外の雇用条件に満足している傾向がある。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー「What are the main features of teachers' employment contracts and how do they feel about it?」
この号の調べ方
TALIS(Teaching and Learning International Survey)は、教員と校長に勤務環境や学習環境を尋ねる最大規模の国際調査で、5年ごとに実施される。本号は2018年調査の結果を扱い、対象は48か国・地域である。数値は主に、TALIS参加国のうちOECD加盟国・地域の平均で示されている。いずれも教員・校長本人の回答(自己報告)にもとづく割合である。
この号から言えること
- 教員の仕事への満足度は90%と高いが、社会で評価されていると感じる教員は26%しかいない。個人の満足と社会的評価の認識には大きな開きがある。
- 強いストレスを感じる教員は18%で、その要因として最も目立つのは授業ではなく事務作業の多さ(49%)である。報告書によると、ストレスは満足度や教職を続ける意向と強く関連している。
- 若手ほど雇用が不安定である。30歳未満の約半数(48%)が有期契約で働いている。
- 意思決定への参加や職能開発の支援がある学校の教員ほど、雇用条件への満足度が高い傾向がある。報告書はこれを専門職化を進める政策提言の根拠のひとつとしている。
読むときの注意
数値はOECD平均であり、国・地域ごとの差は大きい。今回の元資料(公式ページとエグゼクティブ・サマリー)には日本の個別の数値が含まれていないため、日本の結果は本文PDFの国別の図表で確かめる必要がある。ストレスと満足度・離職意向の関係は同時点の回答どうしの関連であり、因果関係を示すものではない。