この号の内容
進路を深く考える子は勉強好き
「進路について深く考える」経験があった子ども(経験あり群)は、「勉強が好き」と答える比率が高く、「勉強しようという気持ちがわかない」と答える比率は低かった。学習行動でも違いがあった。経験あり群は「ニュースに関心が強い」「興味を持ったことを、学校の勉強に関係なく調べる」の肯定率が高く、学習時間も長い。分析対象は小4〜6生2,916名、中学生2,846名、高校生1,990名で、統計的な検定で有意な差があった項目に印が付けられている。報告書はこの結果から、進路を深く考える経験が学習意欲を高め、学習行動を促す「可能性」があるとまとめている。
📖 報告書では:調査結果詳細 1「進路を考える意義」、図表1-1・1-2(PDF p.2)
尊敬できる先生と探究的な授業
学校側の要因として、「尊敬できる先生がいる」と答える子どもは、「進路について深く考える」経験をしている比率が高かった。学校で探究的な学びに取り組んでいる子どもも同様である。探究的な学びとは、「グループで考える」「討論する」「ふりかえる」といったスタイルの授業を指す。報告書の解説は、教員との良好な関係や探究的な授業が「進路を深く考える」経験と関連していたと述べている。分析対象の人数は図表1と同じである。
📖 報告書では:調査結果詳細 2「進路を考えることに影響する要因」、図表2-1(PDF p.3)、解説「周囲の大人はどうかかわるか」(PDF p.6)
親子の会話が多いほど深く考える
家庭側の要因として、父母との会話が多い子どもほど、「進路について深く考える」経験をしている傾向がみられた。解説では、話題の例として「将来や進路」「社会のニュース」が挙げられている。報告書は冒頭で、子どもが進路を深く考える経験には教員や保護者の存在や働きかけが影響していると結論づけている。ただし、示されているのは会話の多さと経験の有無の対応関係である。
📖 報告書では:調査結果詳細 2、図表2-2(PDF p.3)、冒頭リード(PDF p.1)、解説(PDF p.6)
3人に1人が小5の夢を高2まで
同じ子どもの「なりたい職業」の記述を毎年追跡した。対象は、2015〜18年調査の小5時点で記述があった2,991名で、2021〜24年調査で高2になるまで追った。その結果、3人に1人にあたる35.0%が、小5のときと同じ種類の職業希望を高2まで持ち続けていた。同じ子どもを繰り返し調べる縦断調査だからこそ得られた結果である。
📖 報告書では:調査結果詳細 3「なりたい職業の個人変化の追跡」、図表3-1(PDF p.4)
夢が一貫した子の課題
小5と高2の両方で職業名の記述があった950名を、二つのグループに分けて比べた。分け方は、小5と高2のなりたい職業が一致しているかどうかである。比べた数値は高2時点のものである。職業希望が一貫している子どもは、「自分の進路について深く考える」「疑問に思ったことを自分で深く調べる」などの機会が少なかった。報告書は、重要なのは早い時期になりたい職業を決めることではなく、さまざまな選択肢に触れて柔軟に進路を考えることだと述べている。
📖 報告書では:調査結果詳細 3、図表3-2(PDF p.4)、解説「個人の変化の追跡」(PDF p.6)
なりたい職業1位は10年変わらず
2024年調査で、なりたい職業の1位は学校段階ごとに次のとおりだった。小4〜6生は「プロスポーツ選手」、中学生は「プロスポーツ選手」と「教員」の同数、高校生は「教員」である。小4〜6生を男女別にみると、男子は「プロスポーツ選手」、女子は「店員(花屋・パン屋など)」が人気だった。なりたい職業が「ある」と答えた人数は、2024年が小4〜6生1,872名、中学生1,403名、高校生1,100名、2015年が小4〜6生2,595名、中学生1,997名、高校生2,031名である。中高生の1位が「教員」であることは、この10年間変わっていない。
📖 報告書では:参考データ、図表4-1・4-2(PDF p.5)、図表4-3(PDF p.6)
日本の結果
この号の調べ方
対象は全国の小学1年生〜高校3年生の子どもとその保護者で、約2万組である。小1〜3生は保護者だけが回答する。調査はこのプロジェクトの調査モニターを対象としている。2015年から2024年まで毎年7〜9月に、同じ親子を繰り返し調べてきた。このように同じ人を追い続ける調査をパネル調査という。調査方法は年によって違う。2015年は郵送とWEBの併用、2016〜20年は郵送、2021年は郵送とWEBの併用、2022〜24年はWEBである。今回の分析は、学年別の比較(小4〜6生2,916名、中学生2,846名、高校生1,990名)と、小5から高2までの個人追跡(2,991名と950名)を組み合わせている。
この号から言えること
- 進路を深く考える経験の有無で、勉強の好き嫌い、ニュースへの関心、自分で調べる習慣、学習時間に差がみられた。報告書は、進路について考えることが学ぶ姿勢と結びついているとみている。
- 子どもが進路を深く考える経験は、学校での尊敬できる先生や探究的な授業、家庭での親子の会話と関連していた。
- 早くから同じ夢を持ち続けた子ども(35.0%)は、進路を深く考える機会が少なかった。報告書は、特定の職業を早く決めることよりも、さまざまな角度から進路を考えることが重要だとしている。
- 中高生のなりたい職業1位が「教員」である状況は、2015年から10年間変わっていない。
読むときの注意
学習意欲や親子の会話と「進路を深く考える経験」の関係は、同時に起きている傾向(相関)を示したものであり、どちらが原因かを確かめたものではない。報告書自身も「可能性」と表現している。図表の具体的な比率は今回の抜粋には含まれていないため、細かい数値は原典の図表で確認する必要がある。また、主な指標とされる「自分は今、幸せだ」の結果はこの号では扱われていない。