どんな調査か
「子どもの生活と学びに関する親子調査」(Japanese Longitudinal Study of Children and Parents/JLSCP)は、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で行うパネル調査である。パネル調査とは、同じ人を何年にもわたって追跡し、その変化を調べる調査のことである。調査は2015年から毎年7〜9月に行われ、小学1年生から高校3年生までの子どもとその保護者を対象とする日本最大級の親子調査である。2025年調査では約2万組の親子が対象となっている。プロジェクトは、子どもを取り巻く状況の変化と、子どもが社会人として自立するまでの成長の過程を明らかにすることを目指している。そこで得られたエビデンスをもとに、今を生きる子どもにとってよりよい子育てや教育のあり方を検討することを目的としている。
何をどう測っているか
調査では、子どもと保護者に、学習時間や学習に対する意識、日々の生活、親子の関わりなどを尋ねる。子ども本人が回答するのは小学4年生以上で、小1〜小3については保護者が回答する。同じ親子を毎年追跡するため、ある時点の様子だけでなく、一人ひとりがどう変わったかを追うことができる。幸福については「自分は今、幸せだ」という質問を、子どもと保護者の双方に4段階で尋ねている。学習時間は、宿題、宿題以外の家庭学習、学習塾を合わせた「学校外の学習時間」として測っている。高校卒業後は、別の調査(Japanese Longitudinal Study of Youth/JLSY)で子ども本人の追跡が続けられ、社会に出てからの様子も調べている。データの一部は、東京大学のデータアーカイブSSJDAに申請すれば利用できる。
これまでの歩み
調査は2015年に始まり、以後毎年7〜9月に実施されてきた。2024年12月には、「自分は今、幸せだ」への回答をもとに、保護者と子どもの幸せ実感の関連を分析した結果が報告された。2024年調査の結果は2025年5月29日に公表された。この号は、子どもの「なりたい職業」の移り変わりと、進路について考える行動を主なテーマとしている。2025年調査の結果は2026年6月30日にニュースリリースとして発表された。この号では11年間の追跡をふまえ、学校外の学習時間の減少と、宿題以外の家庭学習をまったくしない「家庭学習0分層」の増加が中心的な話題となった。このように、各年の公表では、学習、進路、幸福といったテーマを切り口にして、長期の追跡データが分析されている。
分かってきたこと
学校外の学習時間はどの学校段階でも約2割減った
2025年調査によると、宿題、宿題以外の家庭学習、学習塾を合わせた1日あたりの学校外の学習時間は、11年間で減少している。減少幅は高校生22分、中学生19分、小4〜6生17分、小1〜3生9分で、いずれの学校段階でも約2割の減少である。減少は一部の学年に限られず、小学生から高校生まで共通して見られる。
家庭学習をしない子どもが4〜5割に増え、格差も広がった
宿題以外の家庭学習をまったくしない「家庭学習0分層」は、11年間で10ポイント前後増え、4〜5割に達した。この層は、成績が低い子どもや、家庭の社会経済的地位(SES:親の学歴や収入などで測る家庭の経済的・社会的な位置)が低い子どもほど多い。成績やSESによる家庭学習時間の差は、11年間で広がっている。
進路を深く考える経験は学習意欲と結びついている
2024年調査では、「進路について深く考える」経験がある子どもほど、勉強が好きで学習時間も長い傾向が見られた。また、尊敬できる先生がいる子ども、探究的な授業に取り組む子ども、父母との会話が多い子どもほど、この経験をしている比率が高い。これらは関連を示した結果であり、どちらが原因かを示したものではない。
同じ夢を持ち続けた子どもは35.0%いた
小5のときと同じ種類の「なりたい職業」を高2まで持ち続けた子どもは35.0%であった。その子どもたちは、進路について深く考える機会が少なかった。夢が変わらないことが、必ずしも進路を深く考えた結果とは限らないことを示すデータである。
親と子の幸せ実感は互いに関連している
2024年12月の報告では、「自分は今、幸せだ」への回答から、保護者と子どもの幸せ実感が互いに関連していることが示された。さらに、一方の幸せ実感は、3年後の相手の幸せ実感とも関連していた。同じ親子を追跡するパネル調査だからこそ、こうした時間差を含む関連を確かめることができる。