ウェルビーイングの調査・報告書

2025年版テーマ:人工知能(AI)と人間開発:AIが人々の選択肢と主体性(エージェンシー)をどう広げ、また損ないうるか

Human Development Report 2025: A matter of choice: People and possibilities in the age of AI(2025年5月)

国連開発計画(UNDP)人間開発報告書室

国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書2025』は、「選択の問題:AI時代の人々と可能性」をテーマとする号である。人間開発指数(HDI=健康・教育・所得から国の発展度を0〜1で示す指標)の世界平均は2024年に過去最高に達する見込みだが、伸びは記録開始以来35年で最小である。最上位国と下位国の差は過去4年広がった。報告書は、AIの影響は技術の性能ではなく、設計・開発・導入をめぐる人々の選択で決まると主張する。

この号の内容

世界のHDI、伸びが35年で最小

世界のHDIは2024年に過去最高に達する見込みだが、伸びは記録開始以来35年で最も小さい。1990〜2024年(2020〜2022年を除く)の平均的な伸びと比べると、約4.5分の1にとどまる。数十年縮まってきた最高位HDI国と低HDI国の差は、過去4年広がり続けた。数年前までは2030年までに世界全体が「最高位HDI」(基準0.800)に達する見通しだったが、現在はその到達が数十年遅れると予測されている。報告書は、停滞がすべての途上地域に及ぶとし、背景に「三重の締め付け」を挙げる。対外資金の不足、自動化などによる製造業の機会減少、貿易摩擦による輸出機会の制約である。

📖 報告書では:概要(Overview)「Human development gaps are widening…」PDF p.18–19(本文p.4–5)、図O.2・図O.3

AI利用はすでに約2割

本報告書のための国際調査では、どのHDI水準の国でも、回答者の約20%がすでにAIを使っていた。低・中・高HDI国の回答者の約3分の2は、HDIの3分野にあたる教育・健康・仕事で、1年以内にAIを使うと見込んでいた。数値は21か国のデータをまとめて算出している。「実際の利用」は過去30日の利用、「利用見込み」は今後12か月の利用意向で、両者の差を「利用の増加見込み」としている。

📖 報告書では:概要 PDF p.17–18(本文p.3–4)、図O.1(UNDP「AIと人間開発に関する調査」)

高齢者はAIから取り残されがち

第3章は、幼児期から高齢期までのライフステージごとにAIとの関わりを検討する。60歳以上でChatGPTやGoogle Gemini、Microsoft CopilotなどのAIツールを使ったことがある人は半数に満たない。カナダでは15〜24歳の99%がインターネットを使うのに対し、75歳以上は72%である。コートジボワール、フランス、日本、メキシコでは、若者の95%超が利用する一方、75歳以上は約50%にとどまる。報告された詐欺は2023年から2024年に14%増えた。報告書は、その一因として音声複製を使う生成AIツールの可能性を挙げている。

📖 報告書では:第3章「Older age—trained, empowered and healthier?」PDF p.98–100(本文p.83–86)、図3.9・図3.10

障害・ケア・ジェンダーの語られ方

第4章は、技術がひとりでに社会を決めるという見方(技術決定論)を退け、AIをめぐる語られ方を問い直す。従来型と新興型(AI・ロボット・VR)の支援技術の特許は、多くが中国、米国、日本、韓国、欧州諸国で出願されている。これらの国の技術は、他地域の障害者の現実を十分に考慮しないことが多い。介護ロボットは、設置・操作・清掃・監視といった新しい仕事を介護職に生む。家事の自動化で女性の時間が日本で9.3%、英国で5.8%空くとの推計もある。ただし報告書は、家電がこれまで性別役割を変えてこなかった点も指摘している。

📖 報告書では:第4章 PDF p.119–128(本文p.105–114)、図4.1・図4.2・図4.3

AI開発力と人材は高所得国に集中

第5章は、アルゴリズムが社会の選択と権力を形づくる現状を論じる。デジタル基盤では、米国、韓国、日本、ドイツの順に高所得国が優位に立つ。科学知識の生産では、米国、中国、英国、ドイツ、カナダが先行し、なかでも米国と中国の優位がはっきりしている。AI人材は高所得国へ流れており、自己申告のAIスキル普及度はインドが最も高い。米国は5,000億ドル規模の「スターゲート計画」を、EUは2,000億ユーロ規模のパートナーシップを打ち出した。報告書は「一つのAI競争」ではなく「多くのAI競争」として捉え、協力の機会を探るべきだとする。

📖 報告書では:第5章「Who has the power?」PDF p.160–165(本文p.146–151)、図5.7・図5.8

補完の経済と教育・健康への投資

第6章は、AIが人の仕事を置き換えるのではなく人を補う「補完の経済」を築くことを提言する。世界で数学と理科の基礎的技能に達する子どもは約40%にとどまる。その割合は低HDI国の約4%から最高位HDI国の67%まで開きがある。出生時平均余命は、ナイジェリアの55年と日本の85年で30年の差がある。世界人口の約半数は、基礎的な保健サービスを十分に受けられていない。労使対話の事例として、AIの導入と成果の分配を労使で決めた取り組みも紹介している。

📖 報告書では:第6章「Investing in capabilities that count」図6.8、スポットライト6.3 PDF p.209–210(本文p.195–196)

日本の結果

日本はHDIで193か国中23位(0.925)である。第6章では、日本の出生時平均余命は85年で、ナイジェリア(55年)との30年の差の上端として示されている。日本では75歳以上のインターネット利用が約50%にとどまり、若者(95%超)との差が大きい。日本では介護ロボットが介護職の雇用増と結びついていること、家事の自動化で女性の時間が9.3%空くとの推計も紹介されている。国際的なAIガバナンスでは、日本の「ネットワーク化されたAI」研究が44か国の支持を得たOECDのAI倫理勧告に影響を与えたこと、広島AIプロセスが行動規範につながったことが記されている。労使対話の事例としては、イオングループと労働組合の取り組みが挙げられている。

この号の調べ方

HDIは、健康(出生時平均余命)、教育(就学年数)、生活水準(1人あたり国民総所得)を合成した指標である。2024年の世界HDIは人間開発報告書室(HDRO)による予測値である。AI利用の数値は、UNDPの「AIと人間開発に関する調査」による21か国のデータをまとめたもので、過去30日の実際の利用と今後12か月の利用見込みを尋ねている。各章では、ITU、WIPO、OECDなどの外部データも用いている。

この号から言えること

  • HDIは過去最高を更新する見込みでも伸びは35年で最小であり、国家間の格差は再び広がっている。最高位HDIの世界の到来は数十年遅れる予測である。
  • 人々はすでにAIを使い始めており、低〜高HDI国の約3分の2が1年以内に教育・健康・仕事で使うと見込んでいる。報告書は、AIの行方は予測ではなく人々の選択の問題だと位置づける。
  • 高齢者、障害者、女性、低所得国といった立場によって、AIの恩恵とリスクは異なる。開発力と人材は一部の高所得国に集中している。

読むときの注意

2024年の世界HDIやその伸び、格差の値は予測値である。報告書は、分析部分の一部の数値はHDROなどによる推計で、各国の公式統計とは限らないと明記している。AI利用の調査は21か国のデータに基づくもので、全世界を直接表すものではない。介護ロボットと雇用の関係なども関連を示したもので、因果関係を示したものではない。

出典

主に参照した箇所:本文PDF p.16–19(概要、図O.1–O.3)、第3章 PDF p.98–100、第4章 PDF p.119–128、第5章 PDF p.160–165、第6章(図6.8、スポットライト6.3 PDF p.210)。この記事は、上の公式資料に書かれていることだけをもとにAIが書き、記事中の数字が元資料にあることを照合しています(2026-10-12取得)。正確な値や文脈は原典で確かめてください。

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