ウェルビーイングの調査・報告書

報告書・指針毎年データ:公開

人間開発報告書

Human Development Report(HDR)

国連開発計画(UNDP)人間開発報告書室

所得だけでなく健康と教育も合わせた人間開発指数(HDI)で、各国の発展を比べる国連の報告書。
対象
(国単位の統計)
対象の国・地域
193か国・地域(HDR 2025のHDI)
方法
行政データ
頻度・期間
毎年(1990年〜2025年)・例年5月ごろ発表
幸福の測り方
人間開発指数(HDI:健康=出生時平均余命、教育=就学年数、生活水準=1人あたり国民総所得)。不平等調整済みHDI、ジェンダー開発指数なども
データの入手
公開 hdr.undp.org/data-center/documentation-a… ↗

日本の人間開発指数(HDI)の推移

日本(各年版の統計に掲載された値)(指数(0〜1))・各年版の公式資料から
0.920.920.930.930.920.93222425

横軸は報告書の発行年で、指標の年はこれより前である(2025年版は2023年の値、2021/2022年版は2021年の値)。順位は19位(2022年)、24位(2024年)、23位(2025年)。各号で算出方法が見直されるため、厳密な比較には最新の時系列表を使う。

どんなレポートか

人間開発報告書(Human Development Report/HDR)は、国連開発計画(UNDP)の人間開発報告書室が1990年から出している報告書である。土台にあるのは「人間開発」という考え方で、公式ページはこれを「経済の豊かさではなく、人間の生活の豊かさを広げること」と説明する。人々とその機会や選択に焦点を当てる考え方である。中心となる人間開発指数(HDI)は、国の発展を測る最終的な基準は経済成長だけではなく人々とその能力であるべきだ、という点を強調するために作られた。主観的な幸福感を尋ねる調査ではない。ただし、GDP以外の物差しで社会の進歩を測る試みの代表例として位置づけられる。

何をどう測っているか

HDIは、健康・教育・生活水準の3つの側面を一つにまとめ、0〜1の値で示す合成指数である。健康は出生時平均余命で測る。教育は就学予測年数と平均就学年数で測る。生活水準は1人あたり国民総所得で測る。元になるのは各国の行政データなどの国単位の統計で、2025年版では193か国・地域を順位づけている。HDIを補う指数も出している。不平等による目減りを反映した不平等調整済みHDI、女性のHDIを男性のHDIで割ったジェンダー開発指数、地球への負荷を加味した指数、多次元貧困指数(MPI)などである。指数の表と1990年以降の時系列は、公式サイトのデータセンターから無料でダウンロードできる。

これまでの歩み

報告書は毎回テーマを立てる。2019年版「所得を超えて、平均を超えて、今日を超えて」は、21世紀の不平等を正面から扱った。基本的な欠乏では国の間の差が縮む一方、高等教育やブロードバンドのような高度な能力では差が広がっていると指摘した。2020年版は30周年記念号で、テーマは人間の活動が地球を形づくる時代を指す「人新世」である。この号で、地球への負荷を調整した実験的指標PHDIを導入した。2021/2022年版「不確実な時代、不安定な人生」は、世界のHDIが記録上初めて2年続けて低下したと報告した。2023/2024年版「行き詰まりを打破する」は、分断された世界で国際協力をどう立て直すかを論じた。2025年版「選択の問題:AI時代の人々と可能性」は、人工知能(AI)と人間開発の関係を主題にしている。

分かってきたこと

世界のHDIは初めて後退し、回復は鈍い

2021/2022年版は、新型コロナの大流行の後、世界のHDIが2020年と2021年に記録上初めて2年続けて下がったと報告した。この低下で、それまで5年分の伸びが帳消しになった。2023/2024年版は、世界値が2023年に過去最高に戻る見込みとしたが、回復には大きな偏りがあるとした。2025年版は、世界平均が2024年に過去最高に達する見込みだとしている。一方で、その伸びは記録開始以来35年で最小である。

国の間の格差が再び広がっている

2023/2024年版は、HDI上位国と下位国の格差が20年ぶりに拡大に転じたと警告した。2025年版でも、最上位国と下位国の差は過去4年広がっている。2019年版は、こうした格差を「新しい世代の不平等」と呼んだ。たとえば2000年生まれの子どもを比べると、人間開発が非常に高い国では20歳の半数超が高等教育に在籍する。これに対し、低い国では17%が20歳までに亡くなり、高等教育に在籍するのは3%にとどまる。

地球の不均衡と社会の不均衡は結びついている

2020年版は、地球の不均衡と社会の不平等が悪循環をなしていると論じた。そのうえで、暮らし方・働き方・協力の仕方の「大転換」が必要だと主張した。2021/2022年版は、地球規模の変化、社会の大転換、分断(二極化)が重なる状況を「新たな不確実性の複合体」と名づけた。報告書は、これが人々の不安と心の不調を広げていると論じている。

AIの影響は人々の選択で決まる

2025年版は、AIが人間開発に与える影響は技術の性能そのものでは決まらないと主張する。報告書によれば、影響を左右するのは、AIの設計・開発・導入をめぐる人々の選択である。関連して、公式サイトでは「AIと人間開発に関する2025年グローバル調査」の結果も公開されている。

日本の結果

日本の順位の推移(各年版の公式資料から)
10位20位30位19位19位19位24位23位1920222425
日本のHDIは、2025年版(2023年の値)で0.925、193か国・地域中23位である。2023/2024年版では0.920で24位だった。その内訳は、出生時平均余命84.8年、就学予測年数15.5年、平均就学年数12.7年、1人あたり国民総所得43,644である。2021/2022年版では0.925で、韓国と並び19位だった。同じ号では、不平等調整済みHDIが0.850(不平等による損失8.1%)、ジェンダー開発指数が0.970(女性0.908、男性0.936)とされ、女性の国会議席の割合は14.2%にとどまる。2025年版は、日本では75歳以上のインターネット利用が約50%で、95%超の若者との差が大きいことを示した。あわせて、介護ロボットが介護職の雇用増と結びついている例や、広島AIプロセスが行動規範につながったことを紹介している。2019年版は、47都道府県を91指標で測る日本の「人間の安全保障指標」を取り上げた。報告書は、その尊厳の次元が物質的指標では捉えられない不平等を示すと述べている。

各年版(5)

  • 2025 Human Development Report 2025: A matter of choice: People and possibilities in the age of AI(2025年5月) この号を読む → 国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書2025』は、「選択の問題:AI時代の人々と可能性」をテーマとする号である。人間開発指数(HDI=健康・教育・所得から国の発展度を0〜1で示す指標)の世界平均は2024年に過去最高に達する見込みだが、伸びは記録開始以来35年で最小である。最上位国と下位国の差は過去4年広がった。報告書は、AIの影響は技術の性能ではなく、設計・開発・導入をめぐる人々の選択で決まると主張する。
  • 2024 Human Development Report 2023/2024: Breaking the gridlock(2024年3月) この号を読む → 国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書2023/2024』は、「行き詰まり(gridlock)を打破する:分断された世界で協力を再構想する」を副題とする号である(2024年3月13日公開)。人間開発指数(HDI=健康・教育・生活水準をまとめて国の発展度を0〜1で示す指標)の世界値は2020・21年に史上初めて低下したが、2023年には過去最高に戻る見込みである。ただし回復には大きな偏りがある。報告書はHDI上位国と下位国の格差が20年ぶりに拡大に転じたと警告している。そのうえで、紛争・気候変動・政治的分極化のなかで国際協力をどう立て直すかを論じている。
  • 2022 Human Development Report 2021/2022: Uncertain Times, Unsettled Lives(2022年9月) この号を読む → 国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書2021/2022』(副題「不確実な時代、不安定な人生:変容する世界で未来を形づくる」)は、新型コロナの大流行の後、世界の人間開発指数(HDI)が記録上初めて2年続けて下がったと報告した号である。HDIは、健康・教育・所得から国の暮らしの豊かさを測る指標である。この2年の低下で、それまで5年分の伸びが帳消しになった。報告書は、気候などの地球規模の変化、社会の大転換、分断(二極化)が重なる状況を「新たな不確実性の複合体」と名づけた。そのうえで、これらが人々の不安と心の不調を広げていると論じている。
  • 2020 Human Development Report 2020: The Next Frontier: Human Development and the Anthropocene(2020年12月) この号を読む → 国連開発計画(UNDP)が1990年から出している人間開発報告書の30周年記念号である。テーマは「人新世(Anthropocene)」で、人間の活動が地球を形づくる支配的な力になった時代を指す。報告書は、地球の不均衡と社会の不均衡(不平等)が悪循環をなしていると論じる。そのうえで、暮らし方・働き方・協力の仕方の「大転換」が必要だと主張する。いちばんの話題は、地球への負荷を加味した新しい実験的指標「地球への負荷を調整した人間開発指数(PHDI)」の導入である。
  • 2019 Human Development Report 2019: Beyond income, beyond averages, beyond today(2019年12月) この号を読む → 国連開発計画(UNDP)の人間開発報告書2019年版は、「所得を超えて、平均を超えて、今日を超えて」を副題に、21世紀の人間開発における不平等を正面から扱った号である。報告書は、極度の貧困や乳幼児死亡のような基本的な欠乏では国の間の差が縮む一方、高等教育やブロードバンドのような高度な能力では差が広がっていると指摘し、これを「新しい世代の不平等」と呼ぶ。2000年生まれの子どもを比べると、人間開発が非常に高い国では20歳の半数超が高等教育に在籍するのに対し、低い国では17%が20歳までに亡くなり、高等教育に在籍するのは3%にとどまる。所得や富の格差、ジェンダー規範、気候変動、技術変化まで広げて不平等を論じ、生涯を通じた政策の選択肢を示している。

どう読む・どう使う

研究では、各国の健康・教育・所得を同じ物差しで並べ、1990年以降の長期的な変化や国の間の格差を見る基礎データとして使える。政策の場では、GDPだけでは見えない側面を示す材料になる。不平等やジェンダー格差、地球への負荷を加味した補助指数と並べれば、平均値の裏にある偏りを点検できる。教育の場では、「発展とは何か」「豊かさをどう測るか」を考える教材になり、主観的な幸福度の調査と見比べる使い方もできる。毎号のテーマ章は、不平等、人新世、不確実性、国際協力、AIといった時々の世界的課題を、人間開発の視点から整理した論考として読める。

読むときの注意

HDIは、平均余命・教育年数・所得という客観指標を合成したもので、人々の幸福感そのものを測ってはいない。報告書の発行年と指標の年はずれる(2025年版は2023年の値)。算出方法の見直しで過去の値や順位も改訂されるため、各号に載った順位を並べても厳密な推移にはならない。年をまたいで比べるときは、最新の時系列表を使う必要がある。

日本語版・邦訳

国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所「人間開発報告書2025年版」日本語の概要:undp.org/ja/japan/publications/hdr2025 ↗

確認日:2026-10-07。URL・数字は公式の資料で確かめたものです。解説は、公式ページと報告書本文に書かれていることだけをもとにAIが書き、数字が元資料にあることを照合しています。

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