この号の内容
幸福を11の側面で測る
報告書は、人々の暮らしとウェルビーイングを形づくる最も重要な側面として11項目を挙げている。所得、仕事、住居、健康、仕事と生活の両立(ワーク・ライフ・バランス)、教育、社会的つながり、市民参加とガバナンス(統治)、環境、個人の安全、主観的幸福の11項目である。主観的幸福とは、人々が自分の生活をどう感じ評価しているかという側面を指す。報告書はこれらを通じて、物質的な生活条件と生活の質の両方を人口全体にわたって捉えようとしている。
📖 報告書では:公式ページ要旨(abstract)
過去15年で平均は向上
報告書は、過去15年間に平均的なウェルビーイングが向上したと結論づけている。人々はより豊かになり、就業している可能性も高まった。住居の状態は改善し、大気汚染にさらされる度合いは下がった。寿命は延び、教育水準は上がり、犯罪に遭う機会も減った。ただし報告書は、国ごとの差は大きいとも述べている。
📖 報告書では:公式ページ要旨(abstract)
低学歴・低所得層の一貫した不利
報告書によれば、とくに学歴の低い人と低所得の人は、取り上げた11の側面すべてで一貫して不利な状況にある傾向がある。こうした人々は寿命が短く、健康上の問題を多く報告している。その子どもの学校の成績は低く、本人は政治活動への参加が少ない。困ったときに頼れる社会的なネットワークは小さく、犯罪や汚染にさらされやすい。生活全体への満足度も、学歴が高く所得の高い人より低い傾向にある。
📖 報告書では:公式ページ要旨(abstract)
GDPを超える進歩の把握
報告書は、ウェルビーイングについてより良い情報を求める市民のニーズに応えることを目的としている。同時に、社会の進歩をより正確に示す材料を政策立案者に提供することも狙いとしている。冒頭では「誰もが良い暮らしを望むが、『良い暮らし』『より良い暮らし』とは何を意味するのか」という問いを立てている。この問いへの答えとして、平均だけでなく人口全体にわたる暮らしの姿を描くことを掲げている。
📖 報告書では:公式ページ要旨(abstract)
より良い暮らしイニシアチブ
本報告書は、OECDが創設50周年を機に立ち上げた「OECDより良い暮らしイニシアチブ(OECD Better Life Initiative)」の一部である。このイニシアチブは、OECDの使命に沿って「より良い暮らしのためのより良い政策(Better Policies for Better Lives)」を推進することを目指している。もう一つの柱が「より良い暮らし指標(Your Better Life Index)」である。これはウェブ上で利用者が操作できる、ウェルビーイングの総合指標である。社会の進歩をめぐる議論に市民を巻き込むことを狙っている。
📖 報告書では:公式ページ要旨(abstract)
この号の調べ方
対象はOECD加盟国とその他の主要経済国である。所得・仕事・住居・健康・ワーク・ライフ・バランス・教育・社会的つながり・市民参加とガバナンス・環境・安全・主観的幸福の11の側面について指標を比較している。時期は刊行(2011年10月)までの過去15年間の変化を扱う。物質的な生活条件と生活の質を、人口全体および学歴・所得などの集団別に見ている。
この号から言えること
- 報告書は、平均で見ると過去15年間にウェルビーイングは多くの側面で向上したと結論づけている。
- 一方で、学歴が低く所得の低い人ほど、寿命、健康、子どもの学業成績、政治参加、社会的ネットワーク、犯罪・汚染への暴露、生活満足度のすべてで不利な傾向にある。平均値だけでは見えない格差が、この号の読みどころである。
- 幸福をGDPや所得だけでなく、主観的幸福を含む11の側面で同時に捉えるという枠組みを示した点に意義がある。この枠組みは「より良い暮らし指標(Your Better Life Index)」とあわせて提示されている。
読むときの注意
今回参照できたのは公式ページの要旨のみである。各国の具体的な数値や順位、日本の結果は含まれていないため、本稿では扱っていない。学歴・所得と各側面の不利との関係は、集団間の差を示したものとして読むべきである。学歴や所得が直接それらを引き起こすことを示すものとして読むべきではない。